今年デビュー21年目を迎えた金沢の平瀬城久(ひらせ・くにひさ)騎手。昨年は84勝を挙げて金沢リーディング第3位に躍進しました。大きなケガを乗り越え、再びトップ3に返り咲いた今、その胸の内を語っていただきました。
去年は84勝を挙げ、リーディング3位でした。一昨年の32勝、13位からかなりジャンプアップしましたね。
ありがとうございます。関係者の皆さん、応援してくれる皆さんのお蔭です。一昨年はレース中の落馬(2014年6月8日第2レース)で脳挫傷をやって、約2か月休んでいたので成績が落ちたんです。かなりひどいケガだったので、騎手引退も考えたんですけど......。復帰してからもいい馬に乗せてもらって、こうやって成績が上がっているのは周りの方々のお蔭です。本当に感謝しています。
脳挫傷というのは相当大変でしたね。
そうですね。自分でもどうなって落ちたかまったく記憶がないんですよ。気が付いたら病院だったので。ビデオで見て、「これはひどいな」と思いました。4コーナーで先頭に立って、直線を向いたところで馬が内ラチに突っ込んで行ってしまったんですけど、今まで馬に乗ってきて初めての経験でした。激突の時の記憶がなくて良かったですよ。
大きなケガでしたから、ショックも大きかったのではないですか?
大きかったですね。相当ショックでした。骨折とかではなくて、脳というのもショックでした。しばらくはずっと脳震盪のような状態が続いて、頭の中がクラクラクラクラしてました。それがなかなか治らなかったし、もしかしたら騎手復帰は無理かもしれないと考えたこともありましたね。
ジャングルスマイル(2015年6月14日、百万石賞)
その時、励みになったことはなんですか?
やっぱり、応援してくれる人がいるということです。関係者の方から「待ってるよ」と言ってもらって、本当に有難かったですね。実際に復帰したら、すぐにケージーキンカメに乗せてもらったんですよ! 東海ダービーを勝った年でノリノリの時で、それなのにこんな自分に乗せてくれて......。自分自身では、「乗ってみてダメだったら辞めよう」と思っていたんですけど、周りの方に恩返ししたいという気持ちが強くなって、もっともっと上を目指したいと思うようになりました。
その気持ちの強さが、去年のジャンプアップに繋がったんですね。
ケガから復帰して重賞を7つも勝たせてもらいましたし、去年は84勝という数字を残すことができました。ただ、リーディング3位というのは相当悔しかったです。13年ぶりのトップ3入りだったし、自分でもこんな感情が沸き起こるとは思っていなかったんですけど。ここまで行ったらやっぱり、もっと上に行きたかったという気持ちが強いです。まだ田知(弘久騎手/1位)や藤田(弘治騎手/2位)には負けたくないです。
平瀬騎手といえば、金沢の顔であるジャングルスマイルと長くコンビを組んでいますけれども、去年も重賞3勝して本当にすごい馬ですよね。
すごい馬ですね。もうこういう馬は出て来ないんじゃないかって思いますよ。何より丈夫で、10歳になった今も脚元はなんともないし、現役バリバリですからね。若い頃はかなりやんちゃで調教で手こずったり、レースでも難しい面があったそうですが、僕が乗るようになった頃(2012年)はもうだいぶ大人になっていて、レースでは素直に集中して走ってくれるようになっていました。ジャングルさんに乗ると毎回感動するんですよ。生き物だからどうしたって調子の波があるじゃないですか。「大丈夫かな」ってこちらが不安に思ってても、レースでは必ず一生懸命走ってくれて結果を出してくれるんです。百万石賞なんて、去年勝って4勝目ですからね。これまでジャングルさんを倒した馬たち、ナムラダイキチやケージーキンカメや他にもいましたけど、今も現役バリバリなのはジャングルさんだけですから。本当にすごい馬ですよ。
ジャングルさんて呼んでるんですね。
はい、敬意を込めて。ジャングルさまっていうのはちょっとやりすぎかなと思って(笑)、ジャングルさんに落ち着きました。この馬には長い間本当にいい思いをさせてもらって、感謝してもしきれません。今ももちろん元気でがんばっていますけど、ゆくゆくは無事に引退して欲しいというのが一番の願いですね。
では、今後の目標を教えて下さい。
去年以上の成績を挙げることです! ジャングルさんはじめ、今年もいい馬にたくさん乗せてもらっているので、1つ1つ丁寧に乗って結果を出したいです。去年の兼六園ジュニアカップを勝ったブライトエンプレスは相当期待しています。追い切りでもかなり速い時計がでるし、僕はデビューして21年目になりますが、2歳であれだけ動いた馬は初めてでした。今年は3歳のシーズンなので、大きいところを狙います!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:石川県競馬事業局)