このコーナーには2009年1月以来の登場です。当時はデビュー4年目、若干21歳の初々しい姿でしたが、一昨年からの1年間、海外遠征に挑戦するなど、その行動力と向上心には驚かされます。騎手として様々な経験を積み、日々成長している別府真衣騎手。新たな悩みを持ちながらも前向きな姿を見せてくれました。
秋田:前回のインタビューは5年近く前でした。当時と今は何が違いますか?
別府:良い意味でも悪い意味でも焦らくなったというか、落ち着いて状況判断できるようになりました。ただがむしゃらに乗るのではなく、いろいろ考えて乗れるようになったと思います。成績でいえば、がむしゃらに乗っていた頃の方が良いのですが。当時は減量の分もありましたし。精神面の成長がまだ成績には表れていませんが、この落ち着いて乗れるようになったという部分をレースに活かせるようにしたいなと思っているところです。
秋田:この5年間では海外遠征が大きな出来事だと思います。2011年3月から2012年2月までの1年間、韓国で短期免許で騎乗しました。きっかけから教えてください。
別府:釜山で行われた招待レース(2009年8月9日、第1回KRA国際女性騎手招待競走に日本代表として出場)がきっかけです。その時、精神的にやられてしまったんです。今までレディースジョッキーズシリーズでは良い成績を残せましたが、海外に出てみたら全然ダメで...。自分はまだまだだなということに気づかされました。
秋田:それで韓国で乗りたいと申し出たのですね。
別府:そうです。でも高知の騎手は人数が少ないし、その時高知競馬には私と森井美香騎手と女性騎手が2人いて、競馬場を盛り上げていく役目もあったので、なかなか許可が出なかったんです。それでもやっぱり行きたくて。
秋田:想いが叶って韓国・ソウル競馬場での短期免許での騎乗が決まりました。しかし、すぐにケガというアクシデントが...。
別府:着いて2週間くらいで足をケガしてしまいました。言葉も分からないまま手術室に運ばれて、何が何だか分からなくてすごく怖かった...。1年間、韓国にいるつもりだったので、日本の保険なども切っていったから日本にも帰れず、このままいるしかなかったんです。でも、歳が近い騎手たちがお見舞いに来てくれて、言葉が分からないなりにコミュニケーションをとってくれたりしたので、意外に辛くはなかったです。復帰まで2カ月くらいかかりましたが、その間に言葉を覚えることもできました。
秋田:ケガから復帰して、いざ韓国でのレース。日本との違いはどのように感じましたか?
別府:高知より直線が長いですし、韓国の競馬って乗り方が荒いのでけっこう危ないんです。でも、だからこそ冷静に物事を見る力も養えたと思います。
秋田:生活はどうでしたか?
別府:食べ物がすごく美味しくて、5キロ太っちゃったんです。もうパンパンでした(笑)。周りの騎手たちが、体重が軽すぎるからって言ってとにかく食べさせるんですよ。でも太った分レースで鉛を持たなくてもよくなったから、ちょうど良い感じで。日本に帰ってからまた痩せましたが、韓国ではいろんな意味で成長してましたね(笑)。
秋田:その間にレディースジョッキーズシリーズで帰国、見事に優勝しましたね。
別府:韓国での乗り方が慣れてきたところだったので、日本に帰ってきてとまどいました。流れなども違うので。最初の1、2戦はどうなることかと思いましたが、なんとか修正しながら優勝することができました。女性騎手の中では負けたくないという気持ちもありますし。私もいつの間にか女性騎手の中ではお姉さんになっちゃいましたね(笑)。レディースジョッキーシリーズは行われなくなってしまいましたが、このレースを見て騎手になりたいと思う
女の子たちもいると思うので、復活してほしいです。
秋田:改めて、韓国での1年間はどんな1年でしたか?
別府:親元(父は高知競馬場の別府真司調教師)を離れることが初めてだったんですが、意外と楽しく過ごせました。成績としてはあまり勝てたわけではないですが、勉強になった1年間。精神的にはびっくりするほど成長できたと思います。先生も慌てなくなったところは褒めてくれます。
秋田:そんな海外での経験を経て、今年2013年の調子はいかがですか?
別府:今ちょっと自分の中でリズムが良くないんですよね。馬に乗れている感覚がしっくりきていないので、その辺をまず調整することが一番です。足をケガしたからというのもあるかもしれませんが、バランスがとりづらいというか、どうしても可動域が狭くなってしまって。それを戻せれば良い波に乗れると思うし、また勝てると思います。そんなに焦ってはないですよ。
秋田:前回のインタビューでは、NARグランプリの優秀女性騎手賞の獲得と、全国の騎手の中でトップになりたいという目標をあげていましたが、現段階の今後の目標を教えて下さい。
別府:3月17日に地方通算400勝を達成して、宮下瞳さんの記録(地方競馬通算626勝)が見えてきたかなと思っています。ですので、まずはその記録を目指してトップになりたいです!
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 秋田奈津子 (写真:斎藤修)