昨年7月のデビューから、ひたむきに頑張る姿が印象的な、笠松の新人・森島貴之騎手。異色の経歴を持つ22歳の、素顔に迫りました。
赤見:まずは騎手を目指すきっかけから教えて下さい。
森島:中学を卒業してから、すぐ鉄工所に勤めたんです。4年間働いたんですが、そこの先輩で競馬が好きな人がいて。僕は三重県生まれで、競馬に関係する施設も近くになかったから、初めは全然興味ありませんでした。
でも先輩が熱心に勧めてくれて、しかも地方競馬教養センターの願書まで取り寄せてくれたんですよ。あまりにしつこかったんで(笑)、「まぁ受けるだけ受けてみるかな...」という気持ちで受験したんです。
その頃には少しずつ競馬に興味も沸いてましたけど、まさか受かると思いませんでした(笑)。本当、たまたま合格出来たんだと思います。
赤見:センターに入るまで、馬に接したことなかったんですか?
森島:なかったんですよ。同期はみんな乗馬とかバリバリやってたんで、最初はすごく辛かったです。馬は大きくて怖いし、みんなみたいに上手に乗れないし...。
辞めたいって気持ちもあったけど、地元から出て来ちゃってるわけじゃないですか。今さら戻れないなと思いました。ここまで来て辞められないって気持ちで、毎日頑張りました。
赤見:無事に卒業して騎手になるわけですが、今度はデビュー前に怪我をしてしまったんですよね?
森島:そうなんです。3月に卒業して、4月の開催からすぐデビュー出来るはずだったんですけど、調教で落馬して膝を骨折してしまいました。入院自体は短かったけど、ギプスは取れないし自宅療養は長いしで、かなり焦りましたね。
赤見:その時はどんな想いで過ごしてたんですか?
森島:とにかく早く乗りたいって思ってました。毎日時間があるじゃないですか。だからよく同期のレースをネットで見ていたんですけど、いっぱい乗ってるやつもいるし、勝ってるやつもいて...。ものすごく焦りました。 やっとギプスが外れても、筋肉が落ちててリハビリしなきゃいけないし。毎日がすごく長く感じました。
赤見:無事7月にデビューを果たした時はどうでした?
森島:すごく嬉しかったですね。やっとスタートラインに立てたと思いました。 でも実際のレースは緊張してしまって...。一周あっという間だし、センターでやってた実習とは全然違いました。デビュー出来て嬉しいけど、難しいなとも思いましたね。
赤見:初勝利は3ヶ月半後でしたが、どんな気持ちでしたか?
森島:時間がかかってしまったけど、勝った時はものすごく嬉しかったです。
【エーシンファステム】という馬なんですけど、実はまだ候補生だった頃、競馬場実習に戻ってきた時に世話していた馬なんですよ。調教はもちろんですけど、身体を洗ったり、馬房を掃除したり。とても愛着のある馬だったんで、余計嬉しかったですね。しかもその後も2つも勝ってくれて...。僕は今全部で5勝(8月14日現在)なんですけど、そのちの3勝も挙げさせてくれてるんです。もう本当に可愛い馬です。
赤見:今の一番の思い出のレースは、【エーシンファステム】ですか?
森島:そうですね。初勝利もそうだし、1番勝たせてもらっているし。あの馬には、とても感謝してます。
あと、【ミスイサリビ】という馬がいるんですけど、今年の1月1日の1レースで勝ったんですよ。その時両親が見に来てて、目の前で初めて勝つことが出来ました。すごく喜んでくれて、母は泣いてたみたいです(照)。親孝行が出来たかなと思いました。
赤見:ご両親はもちろん喜んだでしょうね。騎手になることをしつこく(笑)勧めてくれた先輩はどうですか?
森島:先輩も喜んでくれてます。もう何度も三重から笠松まで応援に来てくれました。「まさか本当になるとは...」って驚いてました。
今はジョッキーになれて本当によかったって思います。難しいことや悔しいこともいっぱいあるけど、鉄工所にいた頃は、ただなんとなく仕事してましたから。今はやりがいがあって、毎日楽しいです。勧めてくれた先輩には、とても感謝してます。
赤見:騎手になって、変わったことってありますか?
森島:自分ではよくわかんないんですけど。先輩に、顔つきが変わったって言われました。前はナヨナヨしてて...。今もナヨナヨしてますけど、前はもっとしてたんですよ。少し、逞しくなれたのかなと思います。
赤見:この先、どんな騎手になりたいですか?
森島:今はとにかく1つ1つ大切に乗って、勝ち星を重ねることです。まだまだですけど、いつか岡部誠騎手のようになりたいです。
よくうちの厩舎の馬に乗ってもらうんですけど、すごく引っかかる馬でもかからないし、ササって追えないような馬でも真っ直ぐ走るんです。岡部さんが乗ると、簡単に乗ってるように見えるんですけど、それがすごい技術なんですよ。 レースのビデオも、意識して見ています。
兄弟子の花本正三騎手からは、たくさんアドバイスをもらってます。具体的には、自分の進路をしっかり取って、真っ直ぐ走らせろとか、もっと周りをちゃんと見ろって言われます。
落ち込むこともあるけど、花本騎手をはじめ周りの人たちが本当によくしてくれて、ご飯を食べに連れてってくれたり、休みの日には遊びに連れてってくれたりするので、すぐ前向きになれるんです。本当にありがたい環境で、みんなに感謝してます。
赤見:センターを卒業する時、外に出たら阪神戦を見に行きたい!と言ってましたが、実現しましたか?
森島:はい!やっと先月行くことが出来ました。吉井友彦騎手と横井将人騎手と一緒に甲子園まで行ったんですけど、もう本当に最高でした。いい気分転換になりましたね。
赤見:それでは、自己PR&笠松PRをお願いします。
森島:僕は、何をやるにしても一々長かったな、と思うんです。みんなより時間がかかるというか。でも、騎手として歩き始めたので、ここから先はしっかりと技術を学んで信頼してもらえるようになりたいです。 今の売りは、がむしゃらなこと。どんなに後ろにいても、最後まで諦めずに追って来ます。
笠松は、日本で唯一パドックがコースの中にあったり、ちょっと変わってる競馬場です。馬との距離が近いし、人馬の息遣いや騎手のステッキの音なんかも聞えて、すごく迫力あると思います。
ぜひ、生でレースを見に来て下さい!!
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※インタビュー / 赤見千尋