リーディング獲得経験はないが、数々の重賞を制して存在感をみせているのが真島正徳騎手。佐賀競馬に携わる一家に生まれ、騎手の道を自然に選んだ真島騎手の魅力は、類まれなる勝負強さだ。
真島騎手は2011年1月30日に小倉競馬場で行われたくすのき賞で、佐賀所属のウルトラカイザーを勝利に導いた。
ウルトラカイザーに最初にまたがったときは、すごい馬という感触はなかったですね。それが「これはスゴイ」に変わったのは3戦目の1750m戦。そこで、地元では抜けた存在であることを確信しました。
最初に中央に遠征したとき( 小倉芝1200m)は大敗しましたが、あのときはイレ込みが激しくてどうにもならない状態。2回目の遠征は適性的に合っているダート1700mでしたが、レース前は今回もどうかなあと思っていたんですよ。それがあのときのウルトラカイザーは、パドックですごく落ち着いていて、返し馬での気合の入り方もよくて、レースでもスンナリ逃げられました。それでもまだ半信半疑でしたね。中央のレースは向正面からペースが上がるものなので。でもそのときは3コーナーでも地元と同じようにタメ気味に逃げられたんです。だから4コーナーの出口では馬に叫びましたよ。『根性を見せてみろ!』って。最後の直線でも手応え十分で、残り100mで勝ったと思ったので、あとは降着にならないように気をつけながらゴールに入りました。
そのくすのき賞は、単勝の配当が1,480円、複勝の配当が1,180 円という極端な数字を記録した。
それ、すごいですね。皆さんの応援の証明かな。馬主さんは、ウルトラカイザーが初めて持った馬なんですよ。小倉のあとは反動がきてしまって九州ダービーにも間に合わない感じですが、将来的には交流重賞で他地区に遠征という夢を託すことができる馬だと思っています。
真島騎手は2008 年のトゥインクルレディー賞(大井)で、スターオブジェンヌに騎乗して勝利。大舞台での強さが光る、単勝10 番人気での勝利だった。
馬主さんに騎乗を依頼されたんですが、ナイター競馬に乗れるし本命でもないし、気楽なものでしたね。それよりも52㎏で乗るのがきつくて好走する予感とか気にできる余裕はありませんでした。そのレースは甥っ子(真島大輔騎手)の馬(チヨノドラゴン)が人気だったんですが、4コーナーで逃げていたその馬に並びかけたら、僕のほうが圧倒的にいい手応えなんですよ。最後の直線では「勝っちゃっていいのかなあ」と思いましたね。本当に気持ちがよかったです。
そのほかにも数々の重賞レースを制している真島騎手。しかし、リーディング争いには食い込めない状況だ。
鮫島(克也)さんみたいになりたいと昔から思ってはいるんですけれど、でも追い抜きたいとは思わないんですよね。欲がないというか、そういうのは子供のころからの性格です。やっぱり一番に考えたいのは所属厩舎ですし、チームプレイというか、和のほうを重要視したいというのが本当のところです。それでも大きいレースを勝たせてもらっているのは、今のはやり言葉で言うと『持っている』のかな?(笑)
「欲がない」というのは、勝負を生業にしている人にしては珍しい。それでも勝利を重ねていくために、真島騎手は心がけていることがあるという。
佐賀競馬場は基本的に先行有利。そのせいか、スタートして隊列が決まったらスローペースになる傾向があるんです。僕はそれが嫌いでして。お客さんも行った行ったのレースばかりじゃ面白くないでしょう? だから、 そんな展開のときは積極的に動くようにしています。レース後、ほかの騎手に「何しとる?」と言われることもありますが、それでも自分は思い切ったレースをしていきたいんです。
その心がけが、ときに勝利を呼び込むこともある。メガチューズデーで勝利した2010年12月の中島記念は、まさにそんなレースだった。
あのときは雪とドロで前がほとんど見えなくて、それでもマンオブパーサーだけは見失わないようにしていました。それで流れに乗って早めに動いたら、うまいことマンオブパーサーを雪が積もっているインコースに閉じ込めることができたんです。まさか勝てるとは思っていませんでしたし、結果的に会心のレースになりましたね。
一般戦でも重賞でも観客に存在感を示している真島騎手。これからもマイペースで騎乗していくつもりだ。
正直なところ、騎手間の競争は厳しいですよ。自分自身、今のままでいいとは思っていませんが、だからといって自分が勝つために若手のお手馬を取るとか、そういうことはしたくありません。自分もそんな経験をいやというほどさせられましたから......。逆に言うと、そこが自分の弱いところ。それが3 番止まりの理由なんだと思います。
それでも重ねた勝利は1700 あまり。2000 勝という数字も見えてきた。
招待レースには参加してみたいですが、他地区で騎乗するなどの考えはないですね。自分で自分の騎乗フォームを見てもカッコいいとは思えないですし、素質があるという気もしないんですよね。それでもここまでこられたのは、馬の特徴をしっかり把握してレースに臨むという普段の心がけと、レース経験の積み重ねだと思います。あとは、大きなケガをしていないことかな。けっこう落馬とかしているんですが、みんなには『不死身』とよく言われます。唯一の大ケガといえば、上の前歯。馬が急に頭を上げて僕の顔面にぶつかって、それで6本も差し歯になってしまったんです。あれはショックだったなあ。
真島騎手は肋骨を折ったことがあるそうだが、「ゴルフスイングが原因」とのこと。「体はむしろ硬いほうだと思うんですけれど、面白いですね」。そんな話からも、真島騎手 には持って生まれた強運が備わっているという感じがする。それは勝負の世界ではすごく 重要なこと。それが味方についているならば、これからも大舞台で大仕事を成し遂げるシーンを私たちに見せてくれることだろう。
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真島正徳(佐賀)
ましままさのり
1970年1月5日生まれ やぎ座 O型
佐賀県出身 真島元徳厩舎
初騎乗/ 1987年10月18日
地方通算成績/ 11,899戦1,713勝
重賞勝ち鞍/中島記念3 回、栄城賞3 回、九州大
賞典3回、九州ジュニアチャンピオン2回、吉野ヶ
里記念、たんぽぽ賞、トゥインクルレディー賞、
サラブレッド・グランプリなど35勝
服色/胴紫・黄山形一本輪、そで紫・黄縦じま
※ 2011年5月16日現在
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※成績は2011 年5月16日現在 (オッズパーククラブ Vol.22 (2011年7月~9月)より転載)