9月8日園田競馬場第4レースで、木村健騎手(きむらたけし・35歳)が通算2000勝を達成。
デビューから14741戦目のことでした。
竹之上:達成したあとのインタビューでは、開口一番「ホッとした」って言ってたけど、本当のところはどうだったの?
木村:それが正直な気持ちですよ。自分が思うよりも周りから2000勝のことを言われていましたので、今年中にしますわ!っていつも言ってたんです。
竹:嬉しさはどう?
木:もちろん、嬉しいですけど、2000勝だけが目標じゃなかったですからね。でも、あとから考えてみると、2000勝ってすごいなぁって思えてきて、ホンマに2000勝なん?もう一回確かめてよ!って感じになりましたね(笑)。
デビューから17年目、いまや押しも押されもせぬ兵庫のトップジョッキーとなった木村騎手。今春には結婚をし、順風満帆に記録達成へのカウントダウンが始まった矢先、椎間板ヘルニアを患い戦線離脱を余儀なくされます。
木:あのときは全く動けなくなって、このまま馬に乗れなくなってしまうと本気で思いました。
いくつかの病院で治療を受けるも、一向に良化の兆しが見えない中、お世話になっている馬主さんの勧めで、レーザー治療による手術を受けることになります。
木:手術が終わったら、嘘みたいに動けるようになって、これで馬に乗れる!って嬉しくてしょうがなかったです。
闘病中、新婚である木村騎手は、奥様の献身的な支えで苦難を乗り越えていったと言います。
木:本当にありがたかったです。何をするにもずっと一緒にいてくれて、結婚して良かったなぁとつくづく感じました。
竹:でも、それからが大変やったそうやね。
木:そうなんです。実は、休んでいる間にかなり太ってしまって...。食べるものが美味しくてしょうがないんです。ぼくは普段お米は食べないんですが、お米の味をいまさらながら覚えてしまいました。美味しいですね。
竹:ノロ気ますなぁ(笑)。で、どれぐらい太ったの?
木:60キロぐらいまで...。人生初の大台に乗ってしまって...。
いや、大台はそんな低いところじゃないよ。桁が変わるところがあるのよ。とは、そこに限りなく近づいたことがある筆者は言えず、自分を棚に上げた発言をしてしまいます。
竹:それはヤバいでしょ!
木:横っ腹に肉が乗ってるんですよ、あんなの初めてですわ。だから必死で運動をして、落ちた筋肉も回復させたんです。でもそうなると、筋肉量が増えて、今度はなかなか体重が落ちなくて...。
竹:それで復帰後は斤量を55キロ以上に制限したんやね。
木:いまはようやく54キロまで乗れるようになりましたけど、あと1キロがなかなか大変なんです。でも頑張って落として見せます。
竹:2000勝したということは、来年2月(予定)の『ゴールデンジョッキーカップ』(全国の2000勝以上のジョッキーが集う園田の名物レース)に参戦することになるね。
木:すごく楽しみです。これまでは観る側にいたんですが、みんな隙がなくて厳しいレースをしているんです。だから、そこに加えてもらえるのはとても光栄です。
竹:名手が揃うと言えば、園田には以前、国際レースの『インターナショナルジョッキーカップ』があったけど、参戦したときはどんな感じだった?
木:あのときも凄かったです。内に閉じ込められたら、もうジッとしていないとしょうがないんです。抜け出す隙間を作ってくれないんですよ。
竹:じゃあ、そんな経験がいまに活きてる?
木:そう思います。そのお陰で成長できたと思っています。
ではここで、川原騎手にも聞いた質問を、木村騎手にも投げかけてみましょう。
竹:木村騎手にとって、一流ジョッキーの条件は?
木:(やや間があって)...挨拶です。
竹:へっ?礼儀ってこと?
木:そうです。どこの一流ジョッキーを見てもそうでしょ。人間的にすごい人ばかりです。人柄が良くなかったら、馬を集めることってできないと思うんです。騎手は乗ってなんぼ。そのために基本の挨拶ができなかったら、絶対だめです。
竹:深いなぁ。では、技術面ではどう?
木:ムダなく、ロスなく乗ることができることですね。でも、ぼくの場合、見てもらいたいのはダイナミックな追い方ですけどね。
そう、木村騎手の一番の魅力は、誰にも負けないあのパワフルでダイナミックなフォーム。ただ、そこに至るまでは、ムダやロスのない繊細さが必要なんですね。
竹:パワフルな姿勢は、誰にも負けたくない?
木:もちろんです!誰にも負けたくないです。とくに、馬に負けたくないんです!
うわぁ、馬と勝負してたんですかぁ。だからあの迫力、そら誰も敵いませんわ。
ド派手なオレンジの勝負服に、ダイナミックなフォーム。ファンの皆さんが馬券を握りしめていたら、これほど頼りになる男はいませんよ。
--------------------------------------------------------
※インタビュー / 竹之上次男