
今年4月29日、地方競馬通算1000勝を達成した杉浦健太騎手。
デビュー16年目で、近年は安定してリーディング上位に名を連ねています。
地方通算1000勝達成、おめでとうございます。
ありがとうございます。一つの大きな区切りだったので、達成できて嬉しいです。園田では100勝ごとの区切りで「祝・何勝」と書かれた額を持って記念撮影をするので、1000勝が近づいてきているな、という意識はありました。あと10勝くらいからは強く意識していて、リーチがかかってからすぐ達成できてよかったです。
前週にリーチをかけてからすぐに決めましたね。1000勝目となった相棒はジョウショータイガ。高知からの移籍初戦でした。
レースで初めて跨ったんですけど、高知でのレース映像を見ていると短い距離(820m)でも十分対応できる感じを受けました。枠も良くて、スタートも上手く決まってスピードに乗ってくれました。リーチがかかっていて意識していたので、4コーナーを手応え良く回ってこられた時には「あ!」と思いました。
地方競馬通算1000勝達成してガッツポーズ
記念撮影にはお子さんも写っていましたね。
ちょうど祝日で学校が休みだったので、いいタイミングでした。松木(大地騎手)が息子に僕の勝負服を着せて連れてきてくれて、いい思い出になりました。僕が勝つと妻から「今日、お父さん勝ったよ」と聞くようで、息子も「おめでとう」と言ってくれます。普段は競馬は見ていないようですけど、やんわりと「騎手になりたい」と言っていて、聞いた時は嬉しかったです。だけど、危険だし大変な思いもするので、複雑。まだ小学生なので、まだまだ将来のことは分からないです。
1000勝目となったジョウショータイガは雑賀伸一郎厩舎。重賞2着のあるプリムロゼなど近年、この厩舎への騎乗が増えていますね。
元騎手の中越豊光厩務員や木村厩務員が僕を推してくださっている縁で乗りはじめました。最初の頃に結果が出て、そこから乗せていただくようになりました。中越さんには騎手時代から可愛がってもらっていて、二人で高知旅行をして、中越さんの実家に泊まったこともあります。
今年は1月に姫路競馬場で兵庫ウインターカップをスペシャルエックス(北海道)でも勝ちました。
チャンスある馬で依頼をいただいて、結果を出せたことは大きな自信になりました。これまでのレースからも、促して促して、直線を向いてもう1回伸びるというのがこの馬に対するイメージでした。だから、向正面で追うのは想定内で、「ここさえ辛抱して、ポジションをキープできれば」という思いで直線まで凌ぎました。
直線では一瞬、進路がないかもと思う場面もありましたけど、外にスペースが空くとそこから抜け出しました。
直線は伸びる確信を持っていたので、少しでも空いた所があったら行こうと思っていました。姫路は外有利なので、ジョッキー心理としては直線は外に振る傾向があります。外を見た時にちょうどスパッと空いてくれたので、そこに行きました。勝つ時って、上手くいきますね。
北海道のスペシャルエックスで兵庫ウインターカップを勝利
さて、オフの時間には騎手仲間で野球チームを作って、他場の野球チームとも対戦していますね。
野球は見るのもやるのも大好きで、ジョッキーを集めて「やろうか」となりました。以前はチーム自体はなかったものの、JRA栗東トレセンの厩務員さんチームと定期的に試合をやっていました。「ジョッキーズのチームを作って、定期的にやろうや!」と言い始めたのは僕や鴨宮(祥行騎手)。若い子も増えてきたので面白そうと思って、レース以外でも楽しんでいます。
オリジナルのユニフォームもできていますね。
形から入るタイプなんです。総監督の新子雅司調教師が「作ったるわ」と言ってくださって、お揃いです。
話を競馬に戻します。かねてより目標に掲げていた年間100勝には届きそうで届かないものの、毎年安定した勝ち星を挙げています。何か課題は感じていますか?
目標は達成できていないですけど、良くも悪くも平均的に勝たせてもらっていることが1000勝に繋がったのかなと思います。その中でも2着が多いので、それを1着に持ってこられたら目標の100勝にさらに近づくのかなと思います。今年は例年に比べて取りこぼしが減ったとは思うんですけど、勝ち星がもう一つ伸び切れていないので、きっかけがあれば、と思います。
これからの目標は?
区切りは達成できたので、年間100勝ですね。ずっと言い続けているので、そろそろ実現させないといけないと思っています。
最後に、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。これからも若手騎手に負けないようアグレッシブに元気よく頑張るので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:大恵陽子、兵庫県競馬組合)
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今年4月、園田競馬場でデビューした小谷哲平騎手 。父は同地の騎手会長も務める小谷周平騎手で、所属するのはイグナイターやアラジンバローズなど有力馬を多く擁する新子雅司厩舎です。恵まれた環境のように見えますが、トレーニングを積み重ねて1年足らずで体重を5kg増量するなど努力家でもあります。
騎手になったきっかけから教えてください。
競馬場内に住んでいましたけど、競馬は全く見ていませんでした。小学1年生の時に父がトーコーヴィーナスで園田プリンセスカップを勝って重賞初制覇をした時も「勝ったんやな」くらいで、覚えていません。小学2年生からはずっとサッカーをやっていたんですけど、中学2年生の時に父から「乗馬に行ってみないか?」と言われて、興味本位で阪神競馬場の乗馬スポーツ少年団に応募したら運よく通ったのがきっかけです。乗ってみたら1頭1頭違う楽しさが忘れられなくて、「もっと続けたい」「ジョッキーになりたい」と思うようになりました。
騎手候補生時代、厩舎実習中にはアラジンバローズの調教や、イグナイターの厩舎周りでの前運動に乗ったこともありました。その背中はどうでしたか?
アラジンバローズは前駆が強くて、短い乗馬経験の中でも背中がしっかりしていることが分かるほどでした。イグナイターもガッシリしていて、「すごい厩舎に所属させてもらったな」と思いました。
デビュー2日目に初勝利。父・小谷周平騎手(左)、所属する新子雅司調教師(右)と(写真:兵庫県競馬組合)
初勝利はデビューから2日目の4月16日、自厩舎のアルディートクライ。逃げる父・周平騎手を直線で交わしました。
4コーナーで前を見たら、父の黄色い勝負服が見えたので「これは交わしにいかないといけない」と思って、必死に追うだけでした。勝てて本当に嬉しかったです。前日のデビュー日は8鞍も乗せてもらっていたのになかなか上手くいかなくて、新子先生からも「お前ならもっとできるのにな」と言われてヘコんでいたので、勝ててホッとしました。
新子調教師はデビュー前から高い期待を寄せていましたからね。このインタビューの直前、6月5日園田9レースで接戦を制して勝った時も、検量前の枠場まで出てきていました。レースは序盤から積極的な運びで2番手につけました。
石橋満先生からも逃げる競馬をしてほしいとのことだったので、スタートを出てから押っ付けました。内から他の馬が来ていたので2番手外に収まって、3~4コーナーは手応えがあったので。人間がバテない限り大丈夫かなと思っていました。外から2着馬が伸びてきているのは視界に入っていて、ゴールの瞬間は負けたかと思いましたが、勝ててよかったです。普段は園田競馬場で調教に乗っていますが、西脇トレセンの馬で勝てたのはこれが初めてで、それも嬉しかったです。
6月5日園田第9レース。石橋満厩舎のレベッカレインボーで勝利
こうした追い比べでも、騎乗フォームが大きくブレないように感じます。厩舎実習の頃から新子調教師の指導の下、しっかりトレーニングを行っていたそうですね。
厩舎実習の時から「毎日木馬に乗るのと、走りなさい」と言われて、それを実践してきました。いまも休日にはジムに行ったり、体のケアをしています。厩舎実習に来た時は体重が43kgだったんですけど、いまは48kg。とにかく食べることを意識しています。たくさん食べることはキツいですけど、少しずつですね。ご飯は実家に食べに行っています。
それだけ筋肉がついたんですね。小谷騎手は口数が少ない印象ですけど、負けず嫌いエピソードとかありますか?
密かに同期の(米玉利)燕三には負けたくないと思っています。
だけど、彼だけじゃなくて先輩に近づきたいという思いの方が大きいです。
米玉利騎手も父が厩務員で、子供の頃からお互いを知っているだけに、ライバル心も強くなるでしょうね。他にも子供の頃から知っている人が多いのでは?
園田所属のジョッキーはほとんどが顔見知りで、小さい頃からよく遊んでもらったりしていました。
川原(正一)騎手さんは「すごく上手に乗ってきているよ」って言ってくださいます。
小谷家といえば、大家族。6人きょうだいで、小谷騎手は上から2番目の長男です。
僕がジョッキーになってから、みんな「ジョッキーになりたい」と言い始めました。今年から乗馬を始めた弟(次男、4番目)や、最近ジョッキーが練習に使う木馬に乗っている妹(三女、5番目)など。嬉しいですし、もっと僕もしっかりしないといけないな、と思いました。
弟や妹たちにとってカッコいいお兄ちゃんなんですね。父・周平騎手からはレースに関してアドバイスなどは受けますか?
調整ルームの部屋が隣で、晩ご飯を食べ終わってから一緒に騎乗したレースを振り返って、次の日に生かしています。
これからの目標は?
年内に100勝したいです。そうしたら、新子先生が重賞に乗せてくれる、と言ってくださっているんです。
オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
これからも全力で頑張るので、応援お願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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今年4月5日に高知競馬場でデビューを果たした近藤翔月騎手。
初日から5鞍に騎乗し、最終レースで初勝利を挙げました。記念すべき初勝利や、騎手を目指したきっかけ、これからの目標などを伺いました。
まずはデビューおめでとうございます。実際のレースに騎乗してみていかがですか?
すごく難しいです。見ているのとは違って、なかなか自分が思っているようには乗れないですね。
そんな中でもデビュー初日に初勝利を挙げました。
強い馬に乗せていただいて、馬が頑張ってくれました。乗せていただいた関係者の皆さまに感謝しています。初日から5鞍乗せていただいて、初勝利の前に4鞍乗ったのですが上位に入ることができませんでした。勝った時はずっと馬の手応えがよくて、1着でゴールした時にはものすごく嬉しかったです。ファンの方々からの声援も聞こえましたし、あの光景は一生忘れないですね。
4月5日第11レース、ノーブルシェイドに騎乗して勝利
デビュー2カ月で9勝(6月8日現在)、ご自身ではどう感じていますか?
たくさんいい馬に乗せていただいて、順調に勝たせていただいていると思います。先ほども言いましたが、まだまだ難しいことが多くて、もっと成長しなければという気持ちが強いです。
具体的にはどんなところが難しいですか?
自分でイメージしたことを実際に競馬でなかなかできないことです。特にスタートしてからのポジション取りが難しいですね。今はそこが一番の課題だと思います。先輩方に質問したり、自分なりにいろいろ試行錯誤しているところです。
よく質問する騎手はどなたですか?
皆さん本当に優しいので質問すれば教えてくれる方ばかりです。その中でも年齢的に近いこともあって、聞きやすいのは井上瑛太騎手です。山崎雅由騎手にもよく質問しています。所属の宮川浩一先生や厩務員さんにもよく教えていただきますし、浩一先生の兄弟である宮川実さんともお話させていただいて、とてもいい環境でやらせていただいています。
勝負服のデザインは、厩舎カラーの紫と、兄弟子の妹尾将充さんのデザインを取り入れたそうですね。
将充さんは自分の中でお兄ちゃんみたいな存在なんです。毎日のように連絡を取っていますし、競馬開催中は将充さんがレース後コメントを取っているんですけど、そのコメントのやり取りだけではなくて、もっとこの辺りを走ってくれば良かったんじゃないかとか、もう少し早めに仕掛けたら良かったね、という風なアドバイスもくれるので、とてもありがたいです。
愛媛県出身の近藤騎手ですが、どんなきっかけで騎手を目指したのですか?
小学校1年生の時にたまたま阪神競馬場の近くへ行く用事があって、ちょうどその日に宝塚記念があるということで、本当にたまたま競馬場へ行ったのがきっかけです。その時ラブリーデイが勝ったのですが、レースを見て「これだ!」と思いました。最初は両親も驚いていましたが、自分が本気で目指したいと伝えたら本気でサポートしてくれて、小学4年生からは乗馬クラブにも通わせてくれました。けっこう費用がかかるのに通わせてくれて、とても感謝しています。愛媛には競馬場がないですから、騎手という仕事を知らない同級生も多かったのですが、自分の中ではまったくブレず、ずっと騎手になりたいと思っていました。諦めそうになったことは一度もないですね。
宮川浩一厩舎に入ったのはどんなきっかけですか?
教養センターに入った時には所属が決まっていなかったので、高知競馬所属を希望して、公募という形でどなたか所属にして下さる先生はいないか聞いていただいたところ、8名の先生が手を上げてくれて。各先生とリモート面談をした時に、浩一先生が競馬場実習からどういう風に育成していくかという計画を立てていてくれて、そのお話を聞いた時に自分の中でとても響いたんです。それで決めさせていただきました。
実際に厩舎に入ってみていかがでしたか?
競馬場実習で競馬場に行った時、最初は緊張していたんですけど、すぐに皆さんが話しかけてくれて、仲良くしてくださったので、すんなりと馴染むことができました。
競馬場実習の時には、ユメノホノオに跨ったことが印象深かったそうですね。
あの時は本当にいい経験をさせていただきました。僕の調教が全頭終わったタイミングでユメノホノオが馬場に行くところが見えたので、せっかくだからと思って調教を見ていたんです。馬場から帰って来た時に、「すごい馬ですね」って山頭信義厩務員に話しかけたら、「跨ってみるか?」って言ってくれて、整理運動をさせていただきました。常歩ですけど、背中ががっちりしていて跨った雰囲気も全然違いました。すごい馬の背中を感じることができて、とても嬉しかったです。
デビュー当日に行われた紹介式
今後の目標を教えてください。
浩一先生からは、5年でリーディング争いに食い込めるようになれと言われています。難しいことだとは思いますが、そのくらい期待してくれているということなので、その期待に応えられるよう頑張ります。目の前の目標としては、今は減量があるので、その減量を活かして積極的な騎乗をしたいです。
では、オッズパークユーザーの皆様にメッセージをお願いします。
まだまだ未熟ですが、これから高知競馬を盛り上げていけるよう全力で頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:NAR、高知県競馬組合)
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2025年4月21日に名古屋競馬場でデビューを果たした小笠原羚(おがさはられい)騎手に、デビューからの1カ月を振り返りつつ話を聞きました。
デビューの当日は、緊張と楽しみと半分ずつぐらいの気持ちでした。前日とかの方が緊張していましたね。初日は1レースから5レースまで連続で騎乗していたので、始まってみると思っていた以上に時間がなくて本当に慌ただしかったです。装鞍して、下見所行って、乗って、その繰り返しで、レースのあとビデオもあまり見られなくて。でもいまでは、大分慣れました。
所属の沖田明子調教師)の方針で、4月になっても最初の開催はレースには乗らず、その間に同期がデビューしていました。焦りはなかったですか?
それはもう決まっていたことなので、焦っても仕方ないなと思っていました。同期のレースは見られるときには見ていました。活躍しているのを見て凄いな~と(笑)。私もデビューしたら頑張りたいなという思いはありました。
デビューまでの3週間は、どのように過ごしていましたか?
その間先生には、実習で競馬場に来た時に学んだレースや競馬場の1日の流れをもう1回確認して、攻め馬とか、外からレースを見る中でしっかり馬の癖などを把握するようにと言われていました。レースに乗っていない3週間で、まずここに来ての生活に慣れて、それから競馬に向かうことが出来たので、その意味では良かったと思います。
3日目、デビューから20戦目で初めて勝つことが出来ました。勝ちたいという気持ちとか、勝てそうな予感みたいなものはありましたか?
そんなに簡単に勝てるものではないなと思っていましたし、レースに乗る度にまだまだ足りないな、という思いばかりでした。勝ったレースの時には、予感というのはなかったけれど、沖田先生からはレースの前のパドックで「硬くなりすぎているので、何も考えるな」と言われました。この時には、気持ち的には少し余裕を持って乗れていたのではないかと思います。
初勝利を挙げたレースのパドック。右のスーツ姿が沖田明子調教師
初勝利のレースを振り返ってください。
位置的には良いところに行けました。「前が動き出すよりもっと早く追い出せ」と言われていたので、その前の動き見て、それより早く行こう、追い出そう、ということしか考えてなかったです。3コーナーよりも、ちょっと手前から追い出して、徐々に行けたかなと。
途中で「勝てたかもしれない」と思いました?
直線向いて残り100ぐらいで、もしかしたら届くかもと思ったので、あとはもう必死でした。ゴール板を通過したときにはいけたかも、と思ったのですが、(際どい勝負だったので)馬を止めるまでにやっぱり不安だなっていう気持ちになりました。検量の方に引き上げてきて掲示板で1着ってわかって、嬉しかったですね。
4月23日名古屋第6レース、メビウス(外)に騎乗し初勝利
話は騎手になる前のことにさかのぼるのですが、どんな子ども時代でしたか?
山梨の出身で、自然が多い中で育ちました。小学生の時に、姉について行く形で民間のスポーツクラブで陸上を始めました。長距離走、駅伝ですね。小学生の時はクラブで、中学に入ってからは学校の部活動で続けていました。
陸上をやっている中で、得たものとか感じたことはどんなことでしょう。
練習をみんなと一緒にやる中で、辛いところもあるじゃないですか。そこをみんなで声をかけながら頑張って、それでやってこられたかな、という感覚ですね。走るときはひとりなんですけど、チーム全体で取り組むというか。チーム力が大事だなと感じました。
競馬の仕事に通じるところがありますか?
馬に乗ることとの関連というより、挨拶とか礼儀とか、そういういうことを中学の時からとてもよく教わって来ました。人と普通に喋ることが出来るようになったのも、中学の時代に教えてもらって来たことがあったからだなと思うし、そこは大切にしていることです。「人間性」ですね。
現場での取材やインタビューでも、すごくしっかり話をされるじゃないですか。
いえ、人と話すのはすごく苦手でした。中学の時に「変わりたいな」という気持ちもあって、陸上部の部長をやったり、生徒会の副会長をやったりしましたね。競馬場に来てからも、厩舎関係者の人たちとのコミュニケーションは結構頑張りました。話すの得意じゃないので。
そこは「結構」頑張りましたか(笑)
相手はまだ、自分のことは何も知らないわけじゃないですか。とにかく自分のことを知ってもらうためにも、色々話した方が信頼関係に繋がるかなと思いました。話す中身はどうでもいいことばっかりですけどね(笑)。
初めての口取り。応援に来ていた両親と一緒に。プラカードを持つのは宮下瞳騎手
騎手を目指した理由を取材で聞かれると、「小柄でも活躍できる仕事だから」と答えていますが、「小柄」であることにはコンプレックスを感じていましたか?
いましたね(苦笑)。何かと不利じゃないですか。小さいって。スポーツするにしても、身長が高い方がだいたいいいので、背が高い人はいいなーと思います。騎手の仕事は、陸上競技の先輩から、そういう仕事というかスポーツがあるよって聞いて、何だか面白そうだなと思ったのが、知るきっかけです。調べてみて、小さくても出来るんだ、面白そうだなと思って目指しました。
騎手を目指すと決めるまで、競馬とは何か接点があったのですか?
全くないです(笑)。山梨に競馬はないですし、テレビで見たこともありませんでした。
2年前、地方競馬教養センターに入所する直前に、レディスジョッキーズシリーズが行われた川崎競馬場に見学に行ったそうですね?
家族と一緒に見に行きました。その場で、宮下瞳騎手に会うことが出来て、少し話も出来ました。ふれあいの時間があるとは思っていなくて......確か紹介式の後に父が声をかけて呼び止めてくれて。会って話せたんです。かっこいー!みたいな(笑)。出てるオーラが違うなって。ああいう感じで、大きな舞台に立てるように頑張りたいと思いました。とても貴重な経験でしたね。
2023年3月2日川崎競馬場。真ん中の少女が教養センター入所直前の小笠原羚騎手
乗馬経験がない中で騎手になり、馬を乗るということに関してどんな風に感じていますか?
馬に乗ることは本当に難しいんですけど、それも含めて面白い、と思います。馬をうまくコントロールできたときが、凄く嬉しいです。昨日引っかかった馬に、普通にうまく乗れた、とか。今日はちょっと折り合いうまくついたな、とかですね。
デビューして1カ月経って、いまどんなことを意識していますか?
馬の邪魔をしない乗り方が出来ればと思います。騎乗姿勢は直したい。姿勢が良い方が、見栄え的にもいいと思いますから。あとは折り合い。馬が引っかかるときの対処が一番苦手なんです。
怪我のないように頑張ってください。ありがとうございました。
はい!頑張ります!!
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※インタビュー・写真 / 坂田博昭
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陶文峰調教師は騎手として昨年まで25年間で地方通算913勝の成績を残し、調教師に転身した。最後の重賞騎乗となった北上川大賞典で勝利するなど引退直前まで活躍し、強烈な印象を残した。そして調教師としても初出走翌日に初勝利を挙げ、順調なスタートを切っている。
いつ頃から調教師を目指そうと思いましたか?というあたりからお話を始めることにしましょう。
騎手としては2000年のデビューだったので、20年続けた2020年からちょっと考え始めていました。その前からも考えてはいたんですけど、20年という節目にきて、そろそろいいかなと思って。それから調教師試験に向けた勉強を始めましたね。
ということは、ちょうど40歳になったあたりで考えたということですね。それ以前からも将来は調教師にと考えていたんですか?
いや、騎手の時は毎年毎年怪我なく乗り越えられればいいかなと思っていて、特に目標はなかったんですけど、だんだん年齢を重ねてきて、そろそろ違う事をと色々考え始めた時に、その20年目というのがひとつの節目になたのかなと。
今は無事調教師になったわけですけど、調教師免許を交付されて厩舎開業までの苦労というか、忙しさというか、どんな感じでしたか?
自分は乗る方がメインでしたから、馬房周りの作業、飼料だとか、馬主さんとの契約関係だとか分からない部分が多すぎて。幸いなことに木村暁先輩がいたし、調教師試験に向けて一緒に勉強した同期もいたし、そういう人たちに教えてもらって進めていました。
盛岡で開業して、新しい厩舎でゼロからのスタートでしたしね。
自分は馬に乗る方はできると思うのですけど、それ以外の部分が、どこからそこに持っていくかが分からなくて。大変というわけではないですけどやらないと分からない、覚えられないところがあると思うから、周りの人にいろいろ聞きながらやっています。そうやって教えてくれる先生も一杯いるから、自分は恵まれていると思いますよ。
陶調教師は騎手時代に盛岡所属だったこともあるから、盛岡で調教するのが初めてではないけれど、厩舎開業となったら水沢と勝手が違うところもあったのではと思いますが、その辺は大丈夫でしたか。
そこは大丈夫でした。調教の流れとかもある程度わかっていたから大丈夫だったんですけど、スタッフを見つけるのがちょっと大変でしたね。水沢から一緒に来てくれる人がなかなかいなくて。今回2人が一緒に働いてくれている事をすごく感謝しています。
新規開業にあわせて、厩務員さんも2人、新人さんでスタートしましたね。
一人は以前競馬場でゲート係をやっていて、厩務員になりたいと言っているという話を聞いたものですから、スカウトしました。すぐに厩舎のリーダーみたいな、お姉さん的な感じでやってもらっているんで助かっています。もう一人は自分を凄く応援してくれる方の親戚で、北海道の育成牧場の経験もあって。馬の仕事をしたいというので、自分も調教師になるからその時は......みたいな話をしたことがあったんですが、自分が合格して改めて聞いてみたら"やりたい"と。それで来てもらいました。
その新人の勤務員さん2人の働きぶりはどうですか?
よく頑張ってくれていると思いますよ。SNSもこまめにやってくれて盛り上げてくれていて、凄く助かっているし、ありがたい。競馬以外の所も頑張ってくれているんでね、良いスタッフに恵まれたと思います。
厩舎初勝利を挙げたスピードスターを出迎える陶調教師
そして初出走から2戦目で見事初勝利を挙げました。
オーナーさんからは1月にお話をいただいていて、厩舎を開いて1週間ほどした頃に入厩したんですけど、これはちょっと面白い馬だなと感じました。雪が積もったりして調整しづらい事もあったんですが、馬に能力がありますからね。上手く応えてくれて、全てが噛み合ったような勝利でした。ちょうどオーナーさんが来ていた時で、厩務員さんも、担当者だけでなくもう一人の方もお手伝いという事で来てもらっていたから、全員揃っていたところで勝てたのもタイミングが良かったです。
厩舎初勝利の口取り(2025年3月10日水沢1レース)
前に聞いた時に、馬をちゃんと作って無事に出してあげたいと言っていた陶調教師でしたが、最初のレースは勝てなくてもいい競馬だったし、2戦目で勝って、うまくいってると言ってもいいのかなと。
そうですね、最初勝てなかったのはいい薬になったし、思っていたより早く勝てたのは嬉しかったですね。次に繋がるレースをどういうふうにやろうかというところで、皆がちょっともがいているような段階なんですけど、みんな前向きにやっている。勝てないとがっかりする......というのも少しあると思うんですけど、そこは自分の感じた手応えとかを説明しつつね。本当に今みんなで勉強中という感じでやってます。
最初の1カ月を終えて、まずは順調なスタートだったと言っていいですか。
そうだと思います。勝てたのは嬉しいですけれど毎回毎回勝てるかというと、なかなか難しい事ですからね。"馬を無事に送り出して、無事に帰ってきてくれる"という僕が思っていることは厩務員の二人も分かってもらっているし、厩舎としてもこれからやるべき事、これからどういうふうに改善していくかというところを見つけて、話し合いをしながら進めていきたい。自分も納得の結果。僕が納得するということでもないんでしょうけど、良かったと思います。
いやあ、もっと喜んでいいスタートだったと思いますが(笑)。
最初良すぎて後でガクっときちゃうのも嫌ですしね。ここからどうやって走ってもらうか、どうやったら勝ってもらえるか、ということを試行錯誤しながらやるのはいい勉強だとも思うし。どんどん勝てればそれもいいですけど、どうやればいいのかという正解はいろいろあると思うんですけど、その過程も大事じゃないかと。
では、ちょっと格好良く言ったら"勝った事で満足しないで、そこからまた勉強していけばいい"みたいな?
そうですね。そうやって悩むくらいの程度がちょうどいいかなと思いますね。
自身が騎手として騎乗していたローガンマウンテンと
では、最後にオッズパークで馬券を購入してくださっているファンの皆さんにひと言と、この先の目標などを改めて聞かせていただければ。
人馬とも無事で、というところを目指してるので、まずそこから。そのうえでオーナーさんなり、ファンの方々にも喜んでもらえるようなレースをして、ちゃんと結果を出せるように送り出していきたいと思います。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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