2020年10月11日、高知7Rをマイネルトゥランで勝ち、永森大智騎手(高知)が地方通算2,000勝を達成しました。現在、高知リーディング2位の勝ち星を挙げる永森騎手ですが、メモリアルまであと10勝に迫ったのは7月19日。区切りの勝利を挙げるまでの約2カ月間、どんな気持ちで過ごしていたのでしょう。また、かつてコンビを組んだグランシュヴァリエの産駒リワードアヴァロンでの高知優駿制覇についてもうかがいました。
地方通算2,000勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。残り10勝くらいになってから、調教中に足の親指を骨折して騎乗を1週間休んだりして達成まで長かったので、やっと出来たっていう安心感と、ホッとした気持ちがありました。達成した日はちょうど母の誕生日で、その日に決められて嬉しかったです。
2,000勝は意識していましたか?
周りの方が「もう少しだな」って言ってくれていて、気にしてもらえているのは嬉しかったんですけど、勝ち急ぎすぎる性格なので、自分ではあまり考えないようにはしていました。でも、どこかで意識していたのがあったんじゃないですかね。
10月11日高知7Rで地方通算2,000勝達成(写真:高知県競馬組合)
この夏から秋にかけては永森騎手自身も「あまり調子が良くない...」と話していました。
毎年そういう悪い波はくるんですけど、今年はちょっと長すぎました。乗せてくれた方には迷惑をかけてしまったので、少しずつでもまた信頼してもらえるようにしっかり乗りたいです。
足の親指のケガの影響もあったのでしょうか。
1週間だけレースを休んでまた乗り出したんですけど、多少かばって乗っている部分があったので、別の部分に違和感がありました。今は全然大丈夫ですけど、そういうことで余計にリズムが崩れたっていうのはありました。
今年はリワードアヴァロンで高知優駿を制覇。父は永森騎手とのコンビで高知県知事賞連覇など重賞3勝を挙げたグランシュヴァリエで、ゆかりのある馬ですね。
そういう巡り合わせも今年はあったので、悪いことばかりじゃなかったなと思います。グランシュヴァリエは気性の難しい馬で、馬とケンカすると走る気を損ねてしまいました。そういう操縦性の難しさや気性を産駒も受け継いでいて、気分良く行った時は強いんですけど、ちょっとでも機嫌を損ねると一切走らなくて、レース後に全然息が上がっていないこともあります。
リワードアヴァロンで高知優駿制覇
そうなると、高知優駿では戦前から逃げる形を考えていたのでしょうか。
枠順が出た時点で、ああいう展開がベストかなと思いました。対戦相手との枠の並びも良かったので、リワードアヴァロンに向いてくれると思い、レース前から全てがうまく噛み合っていた感じです。スタートしてリワードアヴァロンは仕掛ければ行ける手応えだったので、内の馬が無理にでも行くのならば僕も仕掛けるっていう感じで内を見ながら行きました。折り合いに若干難しいところがありますが、最初のコーナーで折り合いもついてペースも良かったので、あとはどれくらい頑張ってくれるかだと思いました。揉まれない位置がこの馬にとっては一番よくて、あの形になって負けたら仕方がないなっていう感じだったので勝ててよかったです。
話を永森騎手自身に戻しますが、これで"ゴールデンジョッキー"の仲間入りをしました。
毎年、園田で行われる『ゴールデンジョッキーカップ』の出場権を得ただけですが、2,000勝はみんながみんな達成できる数字じゃないので、デビューからずっとお世話になっている雑賀正光先生に感謝したいです。
高知優駿口取り。左が雑賀正光調教師
さっそく2,001勝目は遠征先の園田でのエキストラ騎乗で決めました。波が戻ってきた感じはありますか?
毎年、波がありますけど、徐々には戻ってくるんじゃないかなと思います。それは(雑賀)先生も分かっているので、園田に行く朝に「園田は内が軽いんやぞ!」ってアドバイスされました(笑)。「先生、僕初めて行くんじゃないんですけど」って。
このあとの目標を教えてください。
このあと3,000勝を目指していないわけではないですけど、今まで大きな怪我もなくこられたから2,000勝を達成できたと思っているので、第一に怪我をしないように乗りたいと思います。それを前提において、あとは少しずつでもまた技術を上げていければなと思います。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
永森大智騎手は2017年の高知競馬でもっとも多くの勝利を挙げ、2015年から3年連続で高知リーディングとなっている。今年も狙うのは当然、その地位のキープです。
2017年も高知リーディングになりました。ただ、勝ち星(高知のみ)は一昨年の238から190に減ってしまいました。
賞金が上がったことで、いわゆる"いい馬"が入ってくることが多くなりました。その関係で以前より競馬が難しくなっています。数年前は、力の差がわりとハッキリしているメンバー構成のレースが今より多かったと思うのですが、最近は同じレースに勝つチャンスのある馬が何頭も出走している感じですからね。そのおかげで騎手が積極的に乗るようになっているので、レースの流れが変わったようにも思います。ただ、一昨年の238勝は、こう言ったらナンなのですが、ちょっとでき過ぎだったような気もしますね。
それでも高知での勝利数は高い水準を保っています。
でも振り返ってみると、去年は取りこぼしが多かったように思います。リーディング厩舎(雑賀正光厩舎)の所属騎手としてたくさん乗せてもらっているわけですから、勝てるレースを落とさないようにしていかないと。今年の目標はまず、去年達成できなかった年間200勝ですね。
それでもリーディングの座をキープしたことで、今年もいろいろな舞台が待っていると思います。
やはりスーパージョッキーズトライアル(SJT)には出たいですね。今年も出られるのかどうか、まだわからないわけですが(2017年は、前年4月1日から3月31日までの所属場での勝利数1位の騎手が出場騎手に選定)、ワールドオールスタージョッキーズのあの味、あの空気を知ってしまったら、また行きたくなりますよ。
リーディングジョッキーになると、盛岡競馬場で行われるジャパンジョッキーズカップなどの騎手交流戦に呼ばれることも多くなります。
盛岡のあのイベントは本当に楽しいので、何回でも行きたいですね。JRAの騎手とも話ができますし。SJTはかかっているものが大きすぎて、なんていうか、ピリピリとした感じがあるんですけれど、ああいった純粋な騎手交流戦はまったく違いますからね。普段と違う舞台で楽しく乗れて、刺激にもなります。レース後の飲み会も含めて(笑)。
2016年ジャパンジョッキーズカップ(盛岡)でも優勝
となると200勝という数字とともに、高知リーディングの継続も目標ですね。
そこはキープしていきたいと思っています。ただ、だんだんと勝つのが難しくなってきているのは間違いなくて。それをなんとかするために最近とくに心がけているのは、その日の馬場の変化に注意すること。第1レースから始まって、その日の天気やコンディションでインコースが使えるようになってくるとか、馬場の状況が時間とともに変わっていきます。その変化に誰よりも早く気づきたいんですよ。そして早く気づいたぶん、1レースだけでもいいから自分を有利にしたいんです。当然、ほかの騎手も同じようなことを思っているのでレース後のVTRをみんな見ていますが、それでもその一歩先を進めるようにしたいと考えているんです。
そして、重賞勝利も増やしていきたいのではないですか?
そうですね。去年はカッサイだけでしたからね(黒潮スプリンターズカップ、建依別賞)。でもそういうのはめぐりあわせもありますから。そういう意味では、これまで高知を代表する馬で大きなレースを勝たせてもらった、その経験には大きいものがあります。
そういえば永森騎手って、まだ31歳なんですよね。もっとベテランかと思っていました。初めて重賞を勝ったのが2011年。それから急上昇してきた感じがするのですが、ご本人としてはいかがでしょう。
もちろん、そのころはこんなふうになるなんて少しも思っていませんでした。赤岡さんをはじめ、巧い人がたくさんいる競馬場ですし。それでも初めて重賞を勝たせてもらったリワードレブロンから始まって、エプソムアーロン、グランシュヴァリエといった存在は、自分のなかでは特別なものですね。
最近は高知競馬でデビューした馬たちの活躍が目立っています。そういった馬との出会いにも期待したいですよね。
それもめぐりあわせですよ。ひとつひとつのレースを大切にして、その延長線上にそういう馬が出てくればと思います。そのうちに、ですね。自分自身、これまで「そのうちに、そのうちに」という気持ちでやってきました。自分なりに最善を尽くしていくということを、これからも続けていきたいと思います。
赤岡騎手は他の競馬場の重賞で乗ることも多いですが、そこも今年の目標のひとつでしょうか。
そこまではちょっとどうかなあとは思いますが(笑)、でももっと全国に名前が売れるように、ほかの競馬場から声がかかるような騎手になりたいという思いはあります。地元では自厩舎はもちろんですが、ほかの厩舎からも信頼してもらえるように。あとはケガをしないことですね。そこに気をつけて、今年も頑張っていきたいです。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典
毎年全国のリーディングジョッキーたちが激突するスーパージョッキーズトライアル(SJT)。今年は第2ステージの名古屋で2連勝し、大逆転で高知の永森大智騎手が優勝を果たしました。SJTでの熱戦の模様、そしてワールドオールスタージョッキーズ(8月27・28日 札幌競馬場)に向けて、意気込みをお聞きしました。
まずは、SJT2016優勝おめでとうございます! 第2ステージの名古屋で2連勝して大逆転での優勝劇でしたね。
ありがとうございます。まぐれですよね。去年の藤田(弘治騎手)くんも第2ステージ2連勝で決めたじゃないですか。その時は「すごいな」って思って見ていたんですけど、まさか自分が同じように優勝できるとは思いませんでした。
SJT本戦出場は2度目でしたが、レース自体はいかがでしたか?
やっぱりトップジョッキーが集まって、みんなが「勝ちたい!」って熱くなっているレースなので、特に去年なんかは全然レースをさせてもらえませんでした。今年も第1ステージの盛岡では、第1戦で気負ってしまってスタートで後手を踏んで14着だったんです。正直、「またこの流れか...」って思いました。でも第2戦は直線を向いて一瞬「勝てるかも」と思うくらい手応えが良くて、結果3着だったんですけどとりあえず次の名古屋に行ける順位(下位2名は第1ステージで脱落)だったのでホッとしました。
第2ステージの名古屋はどんな気持ちで挑んだんですか?
暫定8位だったので、あまり気負わずプレッシャーもなかったです。もちろん優勝したいですけど、現実的に一番の目標はSJTの舞台で1つ勝つことでした。第3戦で乗せてもらったメイショウコルシカはかなり気が悪いと聞いていたので、馬の気持ちに逆らわないように後方からの位置になりました。向正面で外に出したらいい感じで上がって行ったので、そこも馬の気持ちを損ねないように気分よく運ぶことに気を付けました。4コーナー手前ではかなり手応えが良かったんですけど、最後2着の馬がものすごい勢いで追い込んで来たので、気持ちが焦って追い方もバラバラになってしまって......。正直、勝ったかどうかわからなかったです。検量に引き上げて来る途中、電光掲示板を見たら僕の番号が1着に出ていたので、「勝ったんだ~」と思いました。
続く第4戦も、後方から追い込んでの快勝でしたね。
ぶっちゃけ1つ勝ってかなり満足したというか、目標が達成できて気持ちが楽になっていたのがよかったんだと思います。乗せてもらったモズノハナミチは差し馬で、VTRを見たらマイルでもハミを噛んでいる感じだったので、初めての1900メートルだし、馬の後ろに入れてゆっくり行きました。ちょうど人気馬に乗っていた(山本)聡哉の後ろに付けられたので、そのまま付いて行こうと思っていました。ただ、その前にいる馬たちが人気薄の馬が多くて、もしかしたら一気にタレてくる可能性もあると思って、向正面で少し捌いて外に出しました。そこからは手応えが違ったし、3戦目よりも余裕がありましたね。
SJT第4戦を制したモズノハナミチ
優勝を確信した時のお気持ちは?
3戦目が終わった時点で自分のポイントを知らなかったので、まさか優勝しているとは思わなくて。4戦目のレースが終わって上がって来る時に聡哉が「2連勝だから優勝ですよ」って言ってくれたんですけど、最初は信じられなかったです。その後優勝だって言われてすごく嬉しかったですけど、JRAで騎乗したことがないので、「初めてのJRAでワールドオールスタージョッキーズの舞台に立つのか......」と早くも緊張しちゃいました(笑)。
確かに、初めての中央遠征で世界の名手が集まるレースというのは緊張しそうですね。
絶対緊張しますよ! (赤岡)修次さんが1回目に行った時、「誰も知り合いがいなくて、居る場所もわからなくて、ホテルの部屋から出たくなかった」って言ってましたけど、自分もあの場に行くのかと思ったら......。ものすごく嬉しい気持ちと、かなりの緊張と半々ですね。
高知の先輩である赤岡修次騎手は2度WSJSに出場していますが、1度目(2007年・総合3位)で知名度を全国区に広げ、2度目(2014年・総合6位)で南関東期間限定騎乗のお声が掛かりました。そういう意味でプレッシャーはないですか?
それはないです。だって、修次さんとはもともと持っている技術が違い過ぎますから。修次さんは周りからかなり期待されての出場でしたけど、僕はそういうわけではないので。挑戦させてもらうという気持ちで挑みます。
でも、2015年は赤岡騎手を抑えて初の高知リーディングを獲得しました。この経験は大きかったんじゃないですか?
リーディングを獲れたことは確かに大きかったです。ただ、去年は修次さんが南関東期間限定騎乗で2か月いなかったので、リーディングを獲るのは当然なんですよ。しかも高知限定では僕が1位ですけど全国の勝ち星でいったら修次さんの方が上なので、高知の競馬新聞では『1位赤岡修次』って出てるんです。数字の上でも技術面でも、まだまだ超えられない壁なんですよ。でも僕もずっと修次さんの背中を追いかけて来て、すごく遠い背中だったのが少しだけ近づけたのかなとは思います。
では、今後の目標を教えて下さい。
WASJでは、高知の代表、地方の代表として行くので、少しでもアピールできるように積極的なレースをしたいです。あと、所属の雑賀(正光)先生と一緒にNRAグランプリで表彰されたいので、去年(雑賀先生が)獲れなかった全国リーディングを獲って、僕は勝率1位(2016年7月19日現在30.2%で第1位)かフェアプレイ賞を狙ってがんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋
昨年は過去最高の195勝を挙げ、全国リーディング8位に食い込んだ、高知の永森大智騎手。今年に入ってからは高知リーディングを快走し、いよいよ、高知の帝王・赤岡修次騎手超えを目指します。現在の心境をお聞きしました。
去年はどんな年でしたか?
去年は今までで一番勝たせてもらいました。馬主さんや雑賀(正光)先生のバックアップのお蔭です。これまでずっと(赤岡)修次さんを追いかけてきましたけど、かなり遠い存在だったんですが、勝利数の差だけで言えば、少し近づけたのかなと思います。ただ、技術的な面で言えばまだまだですね。
具体的にはどんなところですか?
この前も修次さんに怒られたんですけど、2人で1着2着の争いになった時、内からステッキで叩いたら、馬がよれて修次さんの馬にぶつかってしまったんです。結果的には僕が勝ちましたけど、「これからみんなの手本にならなきゃいけない立場なのに、あんな騎乗してたらあかん」て。自分でも本当にそう思います。勝ちたいっていう気持ちが大きくて、意識し過ぎている面もあるので、その辺りを改善していきたいです。
永森騎手ほど勝っていても、そういう気持ちになるんですね。
なりますよ! 僕はまだ、修次さんや西川(敏弘)さんや中西(達也)さんみたいに、自分の位置を確立しているわけじゃないので。勝ち続けないと、何かの拍子に簡単に落ちてしまうと思ってます。去年は本当にたくさん勝たせていただきましたけど、それは僕が一番いい馬に乗せてもらってるから。だからこそ、絶対に負けたくないですね。
いよいよ今年は、"赤岡騎手超え"を意識するんじゃないですか?
修次さんは本当に偉大な先輩で、今でも敵わない部分はたくさんありますが、今年は超えたいと思っています。去年の10月頃、雑賀先生から、「来年はリーディングを獲れるように、いい流れを作って行け」って言ってもらって。そこまで言っていただいてすごく嬉しいですし、かなりバックアップもしてくれているので、今年はリーディングを目指します!
ただ、そのためには超えなければいけない壁は修次さん1人ではないと思っています。最近西川さんがうちの厩舎の馬に乗る時があるんですけど、それまで走っていなかった馬でも、イヤになるくらい前に持って来るんですよ(苦笑)。ゲートで癖のある馬とか、僕が乗ると出遅れる馬とかでも、なんでもないように乗って来て。中西さんはコース取りが本当に上手で、雑賀先生からも「中西のコース取りをよく見とけ」って言われます。ロスがない位置取りをするし、レースに隙がないんですよ。もちろん修次さんもすごいですからね。気の悪い馬でも、ゲートをポンと出て楽に前に付けるでしょう。ジョッキーレースでも結果を出してますし、本当にさすがだと思います。こういう上手なジョッキーたちに囲まれて、まだまだ勉強することは多いですけど、その分刺激になるし、もっともっと上手くなってやる!っていう気持ちになりますね。
永森騎手は2011年頃から爆発的に勝ち星を増やしましたが、何かキッカケはありますか?
具体的にこれっていうのはないですけど、その年にリワードレブロンで初めて重賞(黒潮菊花賞)を勝たせてもらったんです。他場で重賞を勝たせてもらったのもレブロンが初めてで、本当に感謝しています。
去年の笠松『オグリキャップ記念』ですね。
あのレースは自信になったというか、他場でもやれるっていう手応えを感じさせてもらいました。道中はロスなく進めたし、いい感じに外に出せたので。雑賀先生からいつも、「馬場を味方につけろ」と言われていて、その通りのレースが出来たと思います。
笠松・オグリキャップ記念(2014.4.22)
リワードレブロンは、年末のグランプリレース『高知県知事賞』も圧勝でした。永森騎手自身は、このレース3連覇でしたね。
強いレースをしてくれましたね。やっぱり、『高知県知事賞』と『福永洋一記念』は特別なので、その2つを連覇出来ているというのは嬉しいですね。本当に強い馬に乗せてもらっているので、大きいところで結果が出せて嬉しいです。
『福永洋一記念』は、高知の看板レースになりましたね。
あのレースを勝つのは特別嬉しいですよ。洋一さんもいらっしゃいますし、表彰式で表彰してもらえると、すごく感動して...。他のレースとはまた違った重みがあるので、今年も絶対に勝ちたいです!
そして、今年の1月27日には、『佐々木竹見カップ』初参戦でした。
5着、14着で、全く結果を出すことが出来ませんでした...。特に最初のレースはチャンスがあったのに、人間が冷静でいられなくて、何も出来ませんでした...。左回りということもありますし、あれだけのメンバーの中に入って自分のレースが出来るほど甘くないなと。もっともっと勉強しなきゃいけないと痛感しました。
では改めて、今年の目標をお願いします。
今年は絶対にリーディングを獲ります! たくさんの方々にバックアップしていただいてますし、今年リーディングを獲れなかったから一生獲れないくらいの気持ちで頑張ります。
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:斎藤修)
昨年は初の重賞制覇を達成し、リーディング3位と大きな躍進を遂げた、高知の永森大智騎手。デビュー9年目を迎えた今年、ついに覚醒を果たした赤い彗星は、さらなる高みを目指します!
赤見:昨年は初重賞制覇に年間100勝達成と、素晴らしい活躍でしたね。
永森「ありがとうございます。雑賀先生はじめ、本当に周りの人たちのおかげです。ちょっと勝ち過ぎたかな~と、今年プレッシャーもありますけど」
赤見:初の重賞制覇だった『黒潮菊花賞』、振り返るといかがですか?
永森「実はそのちょっと前に、重賞で1番人気に乗って負けてるんですよ。『珊瑚冠賞』で【ギンガセブン】に乗せてもらったんですけど、10着と惨敗して...。
その時、重賞は当分勝てないのかな、まだまだ遠いのかなと思ったんです。
『黒潮菊花賞』は8番人気の【リワードレブロン】に乗せてもらって、逃げてる宮川実騎手の馬が強かったのでついて行こうと思ってました。
勝負所に来ても手ごたえええぞと思って、馬の気分に任せて行きたい時に行かせました。
勝った時はホッとしたというか、やっと勝ったな~って感じでした。
【ギンガセブン】のこともあったので、嬉しさ倍増でしたね」
赤見:周りの方も喜んでくれたんじゃないですか?
永森「本当にそうですね。雑賀先生は、普段は勝ってもあんまり喜んだ感じでは迎えてくれないんですけど(苦笑)、この時はすごく喜んでくれました。
それが僕にとってすごく嬉しかったんです」
赤見:雑賀先生といえば、昨年は年間265勝を挙げて、地方競馬最多勝記録を塗り替えましたね。
永森「すごいですよね。先生は厳しいですけど、尊敬してます。デビューから色々お世話になってるし」
赤見:雑賀厩舎所属になったきっかけは何だったんですか?
永森「僕は特に騎手に憧れてたってわけじゃないんですけど(笑)。
中学の時に職場体験学習があったんですよ。
たまに競馬は見に行ってたし、動物も好きだったし、ちょうどいいなと思って。
広報の方から紹介されて、雑賀厩舎に3日間お世話になりました。
初めて馬に乗せてもらって、周りの人からも良くしてもらって。雑賀先生が、「騎手にならないか」って言ってくれたんです。もともと人がしないような仕事をしたいと思ってたし、迷いなく決めました」
赤見:まさに運命の出会いでしたね。
永森「そうですね。今考えても、雑賀厩舎に入れて良かったです」
赤見:そして昨年の覚醒ですけど、一番大きな要因はなんだと思いますか?
永森「精神的なものですね。これが一番大きいです。今までもチャンスはもらってたけど、どうしても1度きりなんですよ。勝負の世界だから当たり前のことなんですけど、そこを気にし過ぎていたんです。
結果出せなかったら乗り替わりやとか思って変に緊張したり、先生が見て納得するようなレースをしようとしてて。
リーディング上位の人だったら納得する乗り方でも、僕がしたら全然ダメだったり、そういう空回りが多かったんです」
赤見:そこからどうやって抜け出したんですか?
永森「それは色んな要素がありますけど、まずは金沢での短期騎乗ですね。2007年に雑賀先生が「行ってみるか?」って言ってくれて、その頃乗り馬もあんまりいなかったんで、思い切って行くことにしました。
先生の知り合いの赤間亨厩舎に行ったんですけど、それまで遠征とかしたことなかったんで、かなり不安でしたね。
周りはいい人ばかりだったけど、最初の頃は全然上手くしゃべれなくて...。そんな時、吉原寛人騎手が調教の時とかによく声をかけてくれて、遊びに連れてってくれたりしたんです。それで周りの人とも話せるようになりました。吉原騎手の存在は大きかったですね。
レースもけっこう乗せてもらって、いくつか勝たせてもらいました。赤間先生はいつも、「好きに乗ってええよ」って言ってくれて、自分で考えてレースして結果が出せたことが自信になりました。
高知に帰ってきた時、(赤岡)修次さんや倉兼さんが金沢のレースを見ててくれたみたいで、「あんなにいいレースが出来たんだから、高知でも出来るんじゃないか」って言ってくれました。その言葉も自信に繋がりましたね」
赤見:2009年には、福山でも短期騎乗してますよね?
永森「その時は檜山龍次郎厩舎にお世話になったんですけど、先生の息子さんが怪我してしまって、調教する人が足りなくてお手伝いのような感じで行くことになったんです。
まだ高知と本格的に交流が始まる前で、この時も最初はしゃべれなかったけど(苦笑)。嬉さんが、高知の西川さんや中西さんと同期で、すごく良くしてくれました。それで周りとも打ち解けたし、色んな厩舎に乗せてもらって、すごく勉強になりました」
赤見:2つの短期騎乗がいいきっかけになったんですね。
永森「そうですね。時期も良かったんだと思います。地元で勉強して、悩んでからの遠征だったので、いい収穫があったんだと思ってます」
赤見:今はかなりいいスパイラルなんじゃないですか?
永森「前は意見を言っても誰も聞いてくれなかったけど、今はけっこう聞いてもらえるようになりました。認められるってほどではないですけど、自分がこう乗りたいとイメージ出来るようになったし、そういう乗り方をしても納得してもらえるっていうのは大きいですね」
赤見:今年に入ってもいいリズムで勝ち星を挙げてますね。
永森「そうですね。昨年は3位だったので、恐れ多いですけど今年は2位の倉兼さんに勝ちたいと思って乗ってます!」
赤見:1位の赤岡さんは?
永森「もちろん、いつか抜きたいです! 何年後かわからないけど抜きたいですね。
修次さんはやっぱり、何かが違うんですよ。一緒に乗ってて本当に上手いなって思うけど、上手いっていうだけじゃない何かがある。その何かが今の僕にはわからないんですよ。
それがわかった時が、修次さんを抜ける時なんじゃないかと思ってます!」
赤見:何年後かのリーディングジョッキー宣言☆楽しみです。
それでは、高知競馬のPRをお願いします!
永森「今の時期は全国的に見てもナイター開催はないので、1年通してのナイターは大きいと思ってます。
本場に来てもらうのが一番だけど、インターネットなどでも今は見ることが出来るので、高知のレースを見てもらえたら嬉しいです」
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※インタビュー / 赤見千尋