レディスヴィクトリーラウンド(LVR)2020で総合優勝を果たした岩永千明騎手。昨年6月、3年3カ月に及ぶ療養から復帰しましたが、「LVRは私が『復帰したい』と思うきっかけをくれたレース」だったといいます。人生の転機にもなったLVRに初参戦での総合優勝は、このシリーズに懸ける気持ちの強さを見せました。しかし、開幕戦の高知ラウンドでは「以前のように乗れない......」と悔しさを味わっていたとか。改めてLVR2020を振り返っていただきました。
3月12日に幕を閉じたLVR2020での総合優勝おめでとうございます!優勝から少し時間が経ちましたが、改めて今のお気持ちを聞かせてください。
「まさか!」という思いです。復帰する時は「レディスに出たい」っていうのが目標でしたが、参加できるかどうかも分からなかったのに参加できて、それで優勝だなんて、「こんなことあっていいんだろうか」って思いました。
総合優勝を決めた後、佐賀への帰路はどんなふうに過ごされたんですか?
調教師の先生に優勝の報告をしたり、親からも「おめでとう」と連絡を受けました。親は復帰することに反対していたので、そうして喜んでくれたことが一番嬉しかったです。復帰後はいつもレースを見て応援してくれています。でも、電話するといつも最後に「怪我しないようにね」って言われるので、申し訳ないなって気持ちはどうしてもあります。
LVRでは開幕に先立って帯広競馬場でばんえいエキシビションがありました。初めてのばんえいはいかがでしたか?
ばん馬は可愛かったです。でも、この大きな馬が暴れたら厩務員さんはどう扱っているのかな?って興味がありました。ばんえいは初めてのことで、同じ手綱なんでしょうけど、どうしていいやら。他の騎手は慣れたように操作されていたんですけど、私はレースの時は跨っているだけでした。いい経験でした。
翌月に開幕した高知ラウンドでは5着、6着。「思うように乗れず、悔しい」と話していましたね。
強い馬に乗せてもらったんですけど、うーん......上手く乗れなかったっていう反省がすごくありました。「復帰したけど、やっぱりダメだなぁ」って高知では感じました。
LVRに対する思いが強いだけに、悔しさも大きかったんでしょうね。しかし、続く佐賀ラウンドでは1戦目で見事、勝利を挙げました。
そういった思いがあったから、泣いちゃいました。今回のLVRはすべてにおいて感動して、ホント涙のシリーズでした。ここまで回復できてよかったっていうのもあったし、女性騎手とこうやってレースができているっていう嬉しさや、高知も名古屋も行ったことがある競馬場だったので、「また来られた」っていう感動もありました。
地元佐賀の第1戦で勝利(写真:佐賀県競馬組合)
最終ラウンドとなった名古屋では1戦目2着、2戦目を4着でまとめて総合優勝を決めました。2戦目は4コーナーを内ラチぴったりに回ってきたので、ポイントを意識して少しでも上位を狙っているのかなと感じました。
それまでに乗っていた名古屋の騎手から聞いた馬の特徴や、調教師の指示に従ってこの馬に合ったレースをしようと思っていて、ポイントは全然考えていませんでした。とにかく失敗しないようにという気持ちの方が大きくて、優勝したのかどうかも分からない状態でした。優勝はできましたけど、シリーズ6戦で1勝。悔しいレースばかりで、自分でもですし、お客さんにも納得してもらえるレースがしたいなって思いました。
今回は初めて、デビュー1年目の濱尚美騎手(高知)、関本玲花騎手(岩手)、中島良美騎手(浦和)と一緒にレースに乗りました。
これまで参加していたレディースとはちょっと雰囲気が違うなって感じました。荒尾のレディースの時(2004~06年、全日本レディース招待)は先輩たちばかりで、どう接していいのか分からないっていう不安がありましたけど、今回は新人の子もすごく元気な子ばかりで圧倒されちゃいました(笑)。高知ではみんなとご飯やカラオケに行って仲良くなりました。
フランスから短期免許を取得し来日中だったミカエル・ミシェル騎手(川崎)の参戦も話題を集めましたね。
フレンドリーで接しやすかったです。でも負けず嫌いで、勝負に対しては強いところがあるなって感じました。まだ若いのに外国でこうして活躍しているだけあって、精神的に強いんだろなって思います。追い方にも力強さがあって、私もちょっと見習わなくちゃと感じました。
ところで、佐賀ラウンドでの紹介式や表彰式ではファンから岩永騎手に温かい声援が飛んでいて、アットホームな雰囲気だなと感じました。
私はファンからの声援に支えられています。復帰したのも、ファンの人にまた会いたいっていう気持ちもありました。力をもらっているので、今こうしてお客さんがいないところでのレースは本当に寂しいです。ついついお客さんが普段いる方を見て、「あ、いない」と思っちゃいます。
新型コロナウイルスはなかなか収束のメドが見えず辛い状況ですが、岩永騎手はLVRを終えた後も地元でコンスタントに勝ち星を挙げていますね。
1鞍1鞍を楽しんで乗ろうというのを一番に思っています。そうしたら結果がついてくるだろうと信じています。以前は「勝たなきゃいけない」っていうプレッシャーで馬に対する余裕がなかったんですけど、今は「この馬を勝たせてあげたい」って気持ちで乗っています。競走馬に生まれたからには1勝させてあげたいなと思うんです。馬主さんも、私みたいな上手じゃない騎手を乗せてくださっているので、1つでも上の成績を、という気持ちです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
復帰できたことにホントに幸せを感じています。みなさんの応援に力をもらって、これからも頑張りますので、応援お願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子