3月になり、ばんえい競馬はビッグレースが続きます。20日は大一番のばんえい記念。9年連続のリーディングジョッキーに向け、独走を続ける鈴木恵介騎手に話を伺いました。
ばんえい記念の初騎乗は2006年、ミサイルテンリュウ(4着)でした。当時29歳、20代でばんえい記念に乗るのは珍しいと話題になりました。
騎手になってばんえい記念に乗るのが夢だった。緊張しなかったけど、パドックから客の数が違うし、レースに乗れたのが嬉しかった。
ミサイルにはたくさんのことを勉強させてもらった。レースだけではなく、1トンに耐えられる調教、というのも経験できた。
ミサイルテンリュウでばんえい記念初騎乗(2006年)
2009年まで4回騎乗し、2着1回、3着2回、4着1回と惜しかったですね。2010年はナリタボブサップでした(3着)。
やっぱり(2障害を)ひと腰で上がったこと。「うわ、上がった!」と思った。俺も初めてだし、ばんえい記念史上でも初めてだったんじゃないか。ゴール前で弱いところはあったけれど、一瞬の爆発力はすごかった。
そして2012年にニシキダイジンで初制覇です。
この年はインフルエンザでカネサブラックなどの有力馬が出られなかった。馬場も軽いし、チャンスだと思って臨んだ。障害を降りてから止まらないで、と思った。やっぱり嬉しかったよ。馬主の仙頭さんが癌で、その年に亡くなった。最後に獲れてよかった。
毎年騎乗して、今まで掲示板を外していないのは素晴らしいです。ばんえい記念で騎乗するにあたり、気をつけていることはなんでしょうか。
まずは障害。一発目で、いいところまで上げないと。だいたい、馬が坂の8分まで進めたらいい方。それより手前で止まると力を消耗する。
そして、降りてからもほぼ止まるから、相手がいればそこからの駆け引きもある。どこで刻むかが問題。いっぱいいっぱいになる手前で止めてやらないと、次の脚の出方が大きく変わるから。
出るのも10人だし、それに出て勝つのも大変。どのレースもそうだけど、特にばんえい記念に対応した能力がないと勝てない。
今年はいよいよ、オレノココロで初挑戦です。
2月26日のチャンピオンカップは、ハンデもあったけど久々ということで、気持ちが前に行き過ぎた。馬もちょっと入れ込んでいた。膝を付くことが多い馬だから、折らないよう障害を上げることを心がけたい。
帯広記念(1月2日)を制したオレノココロ
昨年、初挑戦のホクショウユウキは8番人気で5着でした。ばんえい記念初挑戦の馬は、1トンの辛さを知らない分一発があると聞いたことがあります。
それはない! ばんえい記念に限ってそれはないわ。2歳ならあるよ。今まで軽い荷物だったけど、重賞でいいレースをすることはある。
さて、鈴木騎手は多くの名馬に騎乗しています。3歳のイレネー記念はホクショウムゲンで制し、センゴクエースは今年の春から古馬との対戦になります。
ホクショウムゲンは馬格もあり、最近は大人になってレースを覚えてきた。これから楽しみ。
センゴクエースはオープンでもいいレースをしているし、もう古馬に対応はできる。ばんえい十勝オッズパーク杯から出る予定。
4歳のホクショウディープもすごく調子がいいね。
ばんえい記念とは対極の、軽量戦スピードスター賞でナナノチカラは有終の美を飾りました。
軽量戦は、(2障害)直行なので先に山を上げることしかない。障害がないようなものだから、差し脚のいい馬が向いている。馬なりだと、道中遅くなる馬もいるから気合を入れることがあるけど、ナナはだまっていても速い馬だった。障害手前から追うくらい。スピードが違った。
ナナは繁殖に上がって、初年度はカネサブラックを付ける予定です。オーナーが自分で繁殖として持ちたいということで、以前から義父の鈴木勝堤さん(元騎手)の牧場に預ける話になっていた。牧場は和牛が中心だけど、馬もいます。昨年勝堤さんが亡くなってからは義母を中心に、馬に詳しいスタッフとともに経営しています。ナナノチカラの仔には、また重賞を穫れるような仔を出して、自分が乗れればなお嬉しい。楽しみです。
ナナノチカラ、引退レースとなったスピードスター賞を勝利
昨年、名騎手で義父の鈴木勝堤さんが亡くなりましたが...。
今、レースに関してのほとんどの技術が勝堤さんから教えてもらったこと。時にうるさく言われていたのはハミ加減で、毎日怒られていた。騎手によって力や握力が違うから、最後のハミざわりは自分で覚えないとだめだと言われました。
ばんえい記念には多くのファンが帯広に集まります。見どころを教えてください。
2障害とゴール前の駆け引きですね。それと、最後までゴールする馬を見ていってほしい。
俺らが見ていても、ファンが最後まで応援してくれるあの光景は嬉しい。騎手みんなで最後まで見てるよ(笑)。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香