昨年初の兵庫リーディング2位に躍進した、下原理騎手。川原正一騎手、木村健騎手、田中学騎手の3人が厚い壁を築いていた中で、岩田康誠騎手がまだ兵庫所属だった2005年以来10年ぶりにトップ3の牙城を崩しました。今年に入ってからもその勢いはとどまらず、リーディングトップを走ります(4月25日現在)。新たな兵庫の王者となるか、現在の心境をお聞きしました。
2015年は初の兵庫リーディング第2位、そして今年はここまで1位をキープしています。かなりいい流れで来ていますね。
そうですね。去年はいつも通りにやっていたんですけど、10月11月12月と今までにないすごいペースで勝つことができました。重賞も勝てたし、これまでに比べると取りこぼしも少なかったのかなと。たくさんのいい馬たちに乗せてもらって、本当にいい経験ができました。
この躍進のキッカケはなんでしょうか?
去年は木村(健)さんと(田中)学さんが休んでいる時期があって、たくさんチャンスをもらいました。その時に結果が出せなければそのチャンスが他の人のところに行ってしまうし、2人が戻って来たらまた同じになってしまう。だからなんとかアピールして、2人が帰って来たあとにも繋げられるようにと思っていました。ある程度結果を出せて、そこでアピールできたのかなと思います。ただ、自分ではまだまだ納得はしてないですけど。
騎乗面で変わったことはありますか?
それはですね、あるんですけど言いたくないです(笑)。僕は岩田(康誠)さんのことを『兄貴』って呼んで可愛がってもらってて、騎乗面のこととかもアドバイスをしてもらってたんですけど、なんていうか、岩田さんて感覚の人じゃないですか。だから言葉で言われてもよくわからないことがあったんです。でもここに来て、その感覚がわかるようになったんですよ。僕が20年掛かってやっと掴んだものを岩田さんは10年くらいでわかっていたんだなって実感しました。去年やっとわかっかというか、ある時フッと『上手い人の乗り方はこれだったのか』って気づいて。少しだけ近づけたかなと思います。やっと気づけた僕の財産なので、言いたくないんです(笑)。
エーシンサルサ(2015年11月5日、兵庫クイーンC/兵庫県競馬組合)
ここ最近で特に印象に残っているレースはありますか?
やっぱりエーシンサルサで兵庫クイーンカップを勝てたことは自信になりました。前に行って渋太い馬だし、トップスタートだったし、今までだったら多少オーバーペースでも下げられなかったと思うんです。下げて負けたら「なんでそんな乗り方したん?」てなるし、二度と乗せてもらえないということが頭をよぎってしまって。でもあの時は中団から差し切るといういつもとは違う競馬で勝つことができました。今は、流れの中で納得できる乗り方をすればいいという心境になりましたね。強い馬たちに乗せてもらって経験させてもらったことで、レース中冷静に乗れるようになったのかなと思います。
アクロマティックとのコンビでも、新春賞、梅見月杯と連勝しましたね。
あの馬はびっくりでした。去年の11月から重賞含めて4連勝したんですけど、厩務員さんが「状態がすごく良くなった」って言ってて、その通り結果を出してくれました。あの馬はかなり気難しい面があるんですけど、4連勝の最初のレースの時、道中で馬が嫌がったので腹を括ってハミをくれたんです。そうしたら、そのあと軽く押しただけでハミを取って進んで行くじゃないですか!「この馬は人間に急かされるのが嫌なんだな」ってことがわかりました。相当力はあるので今年も楽しみなんですけど、なんせ気まぐれなもんで。あの馬の気持ちは今でもよくわからないです(苦笑)。
アクロマティック(2016年1月3日、新春賞/兵庫県競馬組合)
下原騎手といえば、長年兵庫の第4位をキープしていましたが、トップ3の壁というのは大きかったですか?
それは大きいですよ。木村(健)さん、(田中)学さん、川原(正一)さんの3人は鉄板ですからね。今でも大きな壁ですし、抜いたとは思っていないです。3人ともすごく上手だし、こんなすごい人たちと1戦1戦真剣勝負ができることは本当に有難いです。
でも去年は2位で今年はリーディングを走ってますから、成績的には抜きましたよね。
そうなんですけど、僕はまだトップになったことがないので、あんまり意識はしてないですね。だって10勝20勝差なんて、あの人たちなら簡単に覆しますから。今は順位とかよりも、目の前のレースを丁寧に乗って結果を出して、そうすれば結果は付いて来ると思っています。色んなスポーツの方の本とか読むんですけど、どんなスポーツでもトップは孤独との戦いだと思うんですよね。去年新子(雅司)先生がリーディング獲ったんですけど、あれだけ勝ってても「秋口くらいから気になって来る」って言ってて。川原さんも全国リーディングが懸かってた年、「森泰斗騎手の勝ち星が気になる」って。あれだけの人たちでもそういうプレッシャーを感じてくるわけですから、僕もどういう風になるのかなと。後半も今の精神状態で乗れるようにしたいですね。
(写真:兵庫県競馬組合)
では、今後の目標を教えて下さい。
今はすごくいい流れで来ていて、たくさんのいい馬に乗せてもらって本当に感謝しています。それに、この前オッズパークさんのパーティーに出たんですけど、ファンの方と直接お話することができてすごく励みになりましたし、厳しいことも言ってもらって、いい刺激になりました。今年の目標は2000勝を達成すること(2016年4月25日現在1910勝)と、今の精神状態で後半も上位争いをすることです。兵庫の顔になれるよう、これからも頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋