荒尾競馬の廃止により、今年から佐賀に移籍した岩永千明騎手。今年すでに13勝(8月27日現在)を挙げ、新天地にも馴染んだ様子です。そんな岩永騎手に、現在の心境を聞きしました。
赤見:8月15日に行われたサマーチャンピオンでは、アドマイヤダンクとのコンビでダートグレード初騎乗を果たしましたね!
岩永:乗ったことがない馬だったし、すごく緊張しました。周りは中央・地方の一流ジョッキーたちばかりで。パドックではキョロキョロしちゃったし、『ラブミーチャンはこの馬か』とつい目で追ってしまいました(笑)。
ダートグレードは特別なレースですから、すごくいい経験でしたね。乗せて下さった馬主さんや、厩舎関係者の方に感謝しています。騎乗している時には、こんなチャンスはもうないだろうって思ってたんですけど、実際に経験してみるとまた乗りたくなりました。いつかまたチャンスをもらえるように頑張りたいです。
赤見:佐賀の環境にも慣れましたか?
岩永:はい、だいぶ慣れました。入る前はすごく不安だったんですけど、実際移籍してみたらとてもいい雰囲気で迎えていただきました。ただ、勝ち負けにこだわる姿勢は荒尾よりも厳しいです。負けん気が強い方ばかりですね。
赤見:佐賀といえば山口勲騎手と鮫島克也騎手という2大スターがいますが、印象はどうですか?
岩永:やっぱり、迫力がありますね。荒尾時代にも一緒のレースに乗ってましたが、佐賀には佐賀の雰囲気があるので。当たり前ですけど、勝負になると厳しいです。でも、私が勝った時には『良かったな』と声を掛けてくれたりして、普段はお2人ともとても優しいです。
赤見:そんな環境の中、荒尾時代と変わったことは?
岩永:レース自体が全然違うので、最初は戸惑いました。先行争いがとにかく激しくて、1コーナーギリギリまで誰がハナに行くかわかりません。少しでも躊躇したら負けなので、そのあたりの乗り方は変わってきていると思います。
最初は荒尾から移籍した馬に騎乗することが多かったんですけど、最近は佐賀の馬にも乗せてもらえるようになったので、馬たちにレースの仕方を教えてもらってます。
あと、ステッキの打ち方も変わってきているかな。より勝利への気持ちが強くなったことで、自然と変わったんだと思うんです。1つ勝つことの厳しさ、大きさを痛感してますね。
赤見:昨年、残念ながら荒尾競馬が廃止されてしまいましたが、その後の移籍の経緯というのは?
岩永:廃止が決まった時、すぐに移籍は考えなかったです。荒尾が無くなったら騎手を辞めようと思っていたし、続けるかどうか迷いました。色々な方のお話を聞いているうちに、もう一度頑張ろう!って思えたんです。周りの方が後押ししてくれました。
特に、所属だった幣旗吉治先生の言葉は大きかったです。『お前なら大丈夫』って応援してくれて。今でも不安になると先生に電話するんですけど、声を聞くとすごく安心しますね。お父さんみたいな、特別な存在です。
赤見:幣旗吉治先生は引退され、弟である幣旗吉昭先生の所属として佐賀へ移籍したわけですが、さらに小山紗知伽騎手という妹弟子も出来ましたね。
岩永:吉昭先生には荒尾時代から乗せてもらっているので、スンナリ入って行けました。先生と一緒だったから、移籍も心強かったです。他の競馬場からもお誘いをいただいたんですけど、他の騎手は誰も九州に残らなかったので、自分が荒尾の名前を残したいという気持ちもありました。
私は佐賀県出身なので、地元に帰るっていうのも大きなポイントでしたね。昔乗馬クラブに通っている頃、西原玲奈さんを応援したくて佐賀競馬場と小倉競馬場に行ったんです。それがキッカケで騎手になろうと思ったわけですから、佐賀競馬場は私の原点なんです。
紗知伽ちゃんは候補生だった頃から知っているし、頑張って欲しいです。自分が通って来た道なので、今彼女がどういう状況なのかわかるんですよ。色々話したり、相談し合ったりしています。でも、負けたくはないですね。勝負の世界は甘くないですから。
JRAの元騎手・西原玲奈さんと
赤見:具体的にはどんなアドバイスをしてるんですか?
岩永:やっぱり乗らないと上手にならないので、少しでも乗り鞍を増やすように営業することは大事だって言ってます。自厩舎の吉昭先生はそういう部分を理解してくれていて、『他の厩舎もどんどん手伝いに行って来い』って言ってくれるので。たとえレースに乗れなくても、調教を手伝うことでチャンスも増えると思うんです。
あと、ゲートだけはしっかりしないと、という話もしています。特に佐賀は先行争いが激しいし、出遅れたら致命傷になりますから。
赤見:今年からレディースジョッキーズシリーズが休止になってしまい、とても残念です。
岩永:本当に、淋しいとしか言えないですね。他の女性騎手たちと会えることが励みになっていたし、みんなで競っていい刺激でした。レディース競走がなくなると、他の女性騎手の状況が一気にわからなくなって、すごく淋しいです。
シリーズじゃなくてもいいので、ぜひ復活して欲しいですね。今年は紗知伽ちゃんもデビューしたし、来年デビュー予定の候補生もいるそうですから。人数が足りないなら、韓国の騎手を招待したりして、新しいレディース競走を提案したいですね。
赤見:岩永騎手の今後の目標は?
岩永:荒尾の時から、毎年年間20勝を目標にしています。移籍した頃はなかなか勝てなくて、今年は20勝は無理かな...と思ったんですけど、最近たくさん乗せてもらえるようになって、勝ち鞍も増えました。今年も20勝出来るように頑張ります!
赤見:では、佐賀競馬のPRをお願いします。
岩永:レースは先行争いが激しくて、迫力があると思います。それに、20代前半の若手騎手がすごく多いのでフレッシュな感じです。私なんてオバサンですよ(笑)。
馬券的には他にはない7重勝があるし、いろいろな楽しみ方が出来るんじゃないかな。生でレースを見て欲しいので、ぜひ佐賀競馬場に遊びに来てください!!
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※インタビュー / 赤見千尋