10月25日に14年連続200勝を達成し、佐々木竹見元騎手の持つ記録を塗り替えた赤岡修次騎手(高知)。さらに11月23日には地方競馬通算4,000勝も達成。現在の心境を伺いました。
まずは地方競馬通算4,000勝達成おめでとうございます!すごい数字ですね。
ありがとうございます。ここまで勝たせていただいて、頑張ってくれた馬たち、関係者の方々、応援してくれたファンの皆さんに感謝しています。ただ自分ではあまり実感がないですし、数字的に言えば上には上がいますからね。4,000という区切りに関してはそれほど意識していなかったです。今年は14年連続200勝の記録更新がありましたから、そっちの意識の方が大きかったですね。4,000勝は積み上げていけばいつか達成出来るけれど、14年連続200勝の記録は今年途切れたら終わりですから。
偉大な記録ですが、200勝の連続記録があるということによく気が付きましたね。
倉兼(育康)さんがね、「こんなに長いこと200勝している人いないんじゃないか?」って言って、そういう記録ってあるんですかねって。「僕は知らないけど、あるのかね」なんて話していたんです。それで、こういう記録は佐々木竹見さんだろうということで川崎競馬に聞いてみたら、やっぱり竹見さんが記録を持っていた、という流れです。それが去年だったんですけど、正直去年で記録更新かと思ったんですよ。そうしたらタイ記録で、記録更新にはもう1年あると...。そこからの1年は長く感じましたね。大きい怪我をしないということも重要ですから、達成するまではこれまでとは違うプレッシャーがありました。
無事に達成した時の表情が、とても嬉しそうというか、ホッとしているように見えました。
早く達成したくて仕方なかったですからね。すごくホッとしました。いい馬たちに乗せていただいていますが、結局競馬って勝つか負けるかわからないじゃないですか。特に記録が懸かっていて、数字を意識していると余計にそう感じます。
10月25日高知第6レースで14年連続200勝達成
今年はいろいろな意味で特別な一年になりました。もともと今年は南関東の期間限定騎乗は入れていなかったそうですね。
そうなんです。昔怪我をした左膝の状態があまり良くなくて、3週間くらい休んだりもしました。南関東は平日毎日競馬で忙しいですし、体的に今年はキツいなと思って、いつもお世話になっている内田勝義先生に「まず体調を戻します」とお伝えしていました。もちろんスポットでは騎乗するつもりでいましたが、それもコロナで行けなくなってしまいましたね。
3月半ばから遠征に行けない時期が続きましたが、その頃のお気持ちはいかがでしたか?
乗りたい気持ちはもちろんありますが、今はコロナが落ち着いてくれるのが最優先ですから。南関東は今も遠征には行けないですが、少しずつ遠征出来る競馬場もあって、他場の方からも騎乗依頼をいただけるのは本当にありがたいです。
11月1週目は門別でJBC2歳優駿に騎乗して、次の日は園田の楠賞をサロルンで勝ち、翌日は笠松でラブミーチャン記念に騎乗と、怒涛のスケジュールでした。しかも園田終わりで高知に帰って朝調教を付けてから笠松に入ったそうですね。
そうですね、帰りました。帰れる時は帰りたいんですよ。ホテルとかであまり眠れないタイプなので。
とはいえ、早朝に調教してからまた移動するというのは、体力的にかなりキツくないですか?
よくそう言われるんですけど、あんまり調教を人任せにするのが好きじゃないんですよね。もちろん日程的にお願いする時もありますけど、なるべく自分で乗りたくて。いい馬たちも任せていただいていますし、自分のリズムで調整したいという気持ちが強いです。以前2日連続で川崎の重賞に乗せていただいた時に、レースに乗って高知に帰って、次の日の朝調教して、また川崎に行ったら、「本当に高知に帰ってまた来たぞ」って驚かれましたけど(笑)。
そのモチベーションはどこから来るんですか?
どうなんでしょうね。自分でもよくわからないですけど、責任感ですかね。モチベーションというより、いい馬たちを任せていただいているという責任感の方が強い気がします。
11月23日高知第10レース、モルトベーネに騎乗して地方通算4,000勝を達成
今年も数々の名レースを見せていただきましたが、特に印象深かったのが、盛岡競馬場で行われた地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップでした。全国のリーディングジョッキーが集まった中で2戦ともに違う逃げ方で見せ場を作り、特に第2戦目は4番人気馬で勝利しました。逃げることは意識していましたか?
意識していました。前の週に南部杯に乗せていただいて、高速馬場だったんですよね。1週間でそこまで極端に大きく変わるわけではないだろうなと思いましたし、当日の地元のジョッキーたちのレースを見て、多少の違いはあるけど前に行った方が有利だろうと思いました。
第1戦は内枠からスローペースの逃げ、第2戦は外枠から流して行く逃げと、どちらも違う逃げ方でした。逃げの引き出しはいくつあるんですか?
逃げは得意ですからね。引き出しはいくつも持っているつもりです。僕は逃げでリーディングジョッキーになったんですよ。以前の高知はハイペースで逃げるジョッキーはいなくて、特にアラブもいた頃は溜め逃げ、いかにスローに落とすか、という競馬が多かったんです。でも僕は抑えるより気分よく走らせた方がいいと考えていて、サラブレッドが主流になってからは余計そう感じるようになりました。左膝の大怪我をして低迷していた時期があったんですけど、そこから奮起して乗り出した時、よく乗せていただいた厩舎が逃げるのが好きで。「全部行ってくれ」というくらいだったんです。それでハイペースで逃げる競馬をして人気薄でも勝って。だから昔を知っているジョッキーからは、「お前が高知の競馬を変えた」って言われます。今はスピード競馬じゃないと勝てないですからね。
高知競馬は売り上げも上がってとてもいい波に乗っていますね。
馬券を買って応援してくれるファンの皆さんのお陰です。本当に感謝しています。高知はみんながどん底から頑張って、今すごくいい流れになりました。賞金だけではなく騎乗手当も上がりましたし、若い子たちもやる気出るでしょうね。今は馬の質も上がっているし、馬場が深いのでスピード競馬だけどパワーもないとダメという競馬で、僕らもどの馬が逃げるかわからなかったりしますから、すごく面白いなと感じます。
今後の目標は何でしょうか?
もう数字的な目標はないですね。14年連続200勝が大変でしたし、もう目標は作らないようにしています。目の前の1頭1頭を大切に乗って行く、結局行きつくところはそこでしょう。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただきありがとうございます。今はなかなか競馬場に来るのは難しいと思いますが、中央も地方もいろいろな記録が生まれていて、競馬自体は凄く盛り上がっていますよね。高知競馬もみんな頑張っていますので、これからも宜しくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:高知県競馬組合)
2018年、第51回日本プロスポーツ大賞功労賞を受賞した赤岡修次騎手。NARグランプリ2018では6年ぶり3回目となるベストフェアプレイ賞も受賞しました。"高知競馬の顔"は全国の重賞レースへのスポット参戦などにより今や全国区の活躍となり、コンビを組むサクラレグナムとはダートグレードレース初制覇の期待も寄せられます。「プロの旬は短い」と話す赤岡騎手が考える今後とはどのようなものなのでしょうか。
第51回日本プロスポーツ大賞功労賞の受賞、おめでとうございます!
ありがとうございます。新人賞ぶりですね。NARグランプリとはまた違って、なかなかとれないものですからね。地方競馬で受賞の可能性があるのは基本的には新人賞と功労賞ですが、デビューして2回もらった人って、そんなに何人もいないんじゃないですかね。嬉しいことです。
NARグランプリ2018では3回目となるフェアプレイ賞を受賞されました。こちらもおめでとうございます。
ありがとうございます。南関東に行きはじめて特に「綺麗に乗る」ということを意識しました。みんな綺麗に乗りますし、多頭数のレースで馬の力が拮抗しているので、そうしたことまで考えないと勝てないなと思いました。そういったことがフェアプレイ賞にも繋がったのかもしれませんね。
NAR2018祝賀会にて、筆者と
さらに2018年9月28日には地方通算3500勝も達成されました。高知競馬所属騎手の歴代最多勝記録を更新し続けていますが、それに対するプレッシャーなどはありますか?
今はもうないです。「高知競馬が良くなるために」と思っていた時はプレッシャーというか、「自分がミスをすれば高知競馬全体のイメージが下がる」と分かっていたので、自分のためでもある一方、高知競馬や今後の若い子たちのためにも失敗はできないと思っていました。でも今はもう道を作ることができたので、これからの高知競馬を背負っていく20代、30代の子たちが自分自身でどういう風に騎手人生を作っていくかを決めることかなって思っています。
2015年からは南関東で期間限定騎乗を毎年行っていますし、重賞のたびに各地で騎乗するなど全国区で活躍されていますね。
こうして声を掛けていただけるうちが僕の騎手人生の華かなって思っています。今は地元のリーディングにこだわっているわけではなくて、あとは騎手としていい晩年を迎えられればいいかなって思います。吉原(寛人)もですが、僕もこれだけ全国で重賞を勝たせていただける流れを作ってくださったのは、内田利雄さんであったり菅原勲さんであったり、ですよね。以前は他場のジョッキーを重賞に呼ぶなんてまず考えられませんでした。それを内田さんや菅原さんが前例を作ってくれました。菅原さんはメイセイオペラや南関東に期間限定騎乗で行った時、南関東の重賞で本命馬や川島(正行)先生のところの馬を頼まれて勝つのを見て「すごいな」と思いましたよ。なかなか結果を残せるものじゃないです。あの方たちがいたから、こういう流れがあるんじゃないかなって思います。
赤岡騎手は初めて南関東に期間限定騎乗に行かれる時、馬のことだけでなく騎手の癖なども研究したとうかがいました。そういった点も遠征先での結果に繋がっているのでしょうね。
「この騎手ならあそこまで行ってくれるから、自分はここくらいで競馬しよう」って考えたりしますね。特に上手いジョッキーに関しては「こういうレースをするんじゃないのかな」っていうのがある程度は想像できます。
昨年11月の笠松グランプリでは吉原騎手が行くのを見て、赤岡騎手はその後ろに控えました。まさしく今おっしゃったようなことなのでしょうか。そのレースでは騎乗したサクラレグナムは残念ながら2着でしたが、スピードのある馬ですね。
昨年の春に高知へ移籍してきましたがJRA所属馬相手でもスピード負けしないですし、南関東で重賞を勝てるくらいのポジションにいた馬です。昨年は習志野きらっとスプリントでも勝ったアピアとそんなに差もなかったですしね。
赤岡騎手が感じるサクラレグナムの一番の持ち味はどんなところでしょうか?
前向きさだと思います。すごく前向きさがあるので長い距離は良くないでしょうが、小回りだとどういうレースでもできるんじゃないかなって思います。兵庫ゴールドトロフィーの時に安藤(勝己)さんが「赤岡の馬、印薄すぎるけど、俺は本命だと思うんだ」って言ってくださったんです。僕も「52kgで走れるので」と話していました。南関東などでダートグレードレースを走っても勝ち馬からは0コンマ何秒差です。兵庫ゴールドトロフィーは4着で馬券圏内には絡めませんでしたが、「やれるな」って感じました。ただ、あの時はかなりイレ込んでいたんです。南関東に行くと「こんなんで大丈夫かな?」というくらい落ち着いているんですけどね。
その後、大高坂賞、黒潮スプリンターズカップと連勝しました。
輸送が入るとどうしても疲れが残るタイプなので、その分地元は楽なんじゃないですかね。遠征と地元じゃ全然馬の雰囲気が違いますから。黒潮スプリンターズカップではスタートして他の馬が行きそうだったので、控えてレースを進めました。前が速くなって、展開的にもいい流れでした。
サクラレグナムで大高坂賞を勝利(2019年1月14日、写真:高知県競馬組合)
いよいよ3月21日には地元で黒船賞(JpnIII)が実施されます。地元でのダートグレードレース制覇を期待するファンのみなさんも多いかと思います。
楽しみですね。去年は兵庫のエイシンヴァラーが勝ちましたし、頑張りたいです。高知の馬場は県外の馬がいきなり来て重賞を勝つのは難しい馬場だと思います。出走を予定しているサクラレグナム自身も輸送のない地元戦はプラスに働きますから、なんとかいい結果を残したいですね。
今後の目標を教えてください。
全国から声を掛けていただいて乗りに行くことをいつまで持続できるか、が目標ですかね。全国で乗っているのが当たり前になったので、それがなくなったらダメなんじゃないかなと思います。重賞の時期になると高知にはレースの時だけ帰ってきて、また他地区へ乗りに行くという感じでほとんど高知にはいませんが、プロの旬は短いのでやれる間に行っておきたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
今は全国どこに行っても「赤岡」って言ってくれて応援していただけるのがすごくありがたいです。レースで勝つか負けるかは分からないですが、精一杯がんばりますのでこれからも温かい声援をよろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大恵陽子
2016年4月9日の高知競馬第7レースで、地方通算3000勝を達成した赤岡修次騎手。高知競馬のリーディングジョッキーとして長年君臨していましたが、昨年からは新たな場所でもその実力と存在感を示しています。公私ともに絶好調です!!
3000勝達成した率直なお気持ちを聞かせてください。
全然意識はしていなかったのですが、自分が3000勝もできるなんてデビューの頃は思ってもいませんでした。素直に嬉しいです。
高知競馬の騎手では初の快挙ですね。
僕は、そういう記録とか数字には興味ないんですよ(笑)。
これまで特に思い出に残っている馬は?
デビューして始めの頃に出会ったイージースマイルです。大型の牝馬で、来た時からオープン並の体をしていた馬。跨らせてもらった瞬間に「どこのオープンが来たんですか?」と聞いたくらい。その時に「この馬、県外に行けますよ」と言ったのを覚えています。デビューしたての頃にこういう馬の背中を知ることができたのは、すごく馬運が良かったですね。
今、期待している馬は?
やはりサクラシャイニーです。10歳という年齢もあって回復が遅いので厳しくなっているけど、南関東の準重賞(総の国オープン)を勝った時はとても強かったですよね。今は休養中ですが、がんばってほしいです。
4月20日の羽田盃ではジャーニーマンに騎乗して3着
昨年、初めて南関東で期間限定騎乗されました。かなりの覚悟があったのではないですか?
これまで興味はありましたが、高知競馬は通年開催で離れらないですし、南関東のパイプもなかったので。でも、2014年のワールドスーパージョッキーズシリーズに出場した時、1戦目で逃げて2着に入ったレースをいろんな方が見ていてくれて、関係者の方が南関東の期間限定騎乗で来てみないかと声をかけてくれたんです。川崎の内田(勝義)調教師も快く引き受けてくれました。勝ち負けするような馬にたくさん乗せてくれたのでびっくりしましたし、感謝でしたね。同期の今野(忠成騎手)も「大丈夫か?」と心配してくれました。でも、僕がポコポコ勝つことができたので、「心配なくなった。良かった~」と。毎日、今野の家でご飯を食べていたんですよ(笑)。
実際に南関東で騎乗していかがでしたか?
多頭数のレースに毎日乗るし、賞金も高くて期待度も違うし、自分の乗り方が通用するのかなと思っていました。求められて来たわけではないので、良い馬ばかりじゃないですからね。だた、南関の良いところは、1つのレースの中でタイム差が少ない馬が多いということ。何か1つが違うと本命でも飛ぶという印象がありました。だから工夫しだいで変わる。それが自分の結果に繋がったというのもありますね。
かなり研究されたのではないですか?
毎日レース映像ばかり見ていました。自分の騎乗馬がどういうレースをしているかもそうだし、騎手の癖も頭に入れないといけないから。2カ月の短い期間、しかも始めから結果を出さないと乗せてもらえないだろうから、とにかくずっと研究していました。
赤岡騎手の活躍によって、高知競馬も注目されるわけですよね。
無様な結果だと高知競馬全体がそういう目で見られる。チャンスをもらった馬は結果を出さないと、自分だけでなく高知競馬が評価されるなっていうことは最初から頭にありました。
高知を離れるということは、地元のリーディングを明け渡すことになりますよね?
そうですね。でも今はもうそこにはこだわっていません。10年連続でリィーディングも獲れたし。違うこともやってみたいな、調教師という道もあるのかなとも考えていました。でも、南関東で騎乗して、また新しい世界が広がりましたし、モチベーションって大事だなというのも感じました。ただ、大井記念でジャルディーノに騎乗し5着だったように、良い馬に乗せてもらっても、なかなか勝てるもんじゃないと改めて勉強になりましたね。
5月18日の大井記念ではジャルディーノに騎乗して5着
6月からまた南関東での期間限定騎乗が始まります。今回の目標は?
重賞を勝ちたいですね。チャンスももらっているし、1つ勝てば色々と見えてくることもあると思いますし。
赤岡騎手が不在の分、昨年は永森騎手がきっちりリーディングを獲りました。後輩たちの存在はいかがですか?
これからの高知を背負って行く次の世代が、しっかりと成長しないといけない。登って来てくれる方が僕も面白いですし。今の環境は、若手がなかなか騎乗機会に恵まれない状況にあります。育てるシステムとういのを改めてしっかり作っていかないと競馬できなくなると思います。でも、高知は面白い騎手が揃っていますよ。永森をはじめ、佐原、三村、宮川と、中堅が伸びてきていいるので。だから、自分が切り込み隊長になって、県外で良い結果を出して、後輩たちの道を開いていかないといけない。選択肢を広げてあげるのが僕の役目かなと思っています。
さて、最後にこの話題に触れなくてはなりません。ご結婚おめでとうございます!!
ありがとうございます。昨年の12月に入籍しました。
家庭を持ったことで気持ちの面など何か変わりましたか?
特に変わりません(笑)。奥さんが騎手についてとても理解があるので、独身の頃と同じようにやらせてもらっています。騎手に集中できるようにしてくれているのは有り難いですね。
お子さんが生まれた心境は?(実はこのインタビューの二日前に第一子が誕生)
まだこれから会いに行くくらいですから、実感わかないですよ(笑)。これからですね!
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※インタビュー / 秋田奈津子
9年連続高知リーディングに向かって、今年も勝ち星を積み重る赤岡修次騎手。今年1月には、地方通算2500勝を達成した。高知の顔として活躍する赤岡騎手が語る、「高知競馬の魅力」とは?
2500勝、おめでとうございます。高知で2500勝を達成したのは、歴代最多勝を更新中の西川敏弘騎手と、赤岡騎手のみ。西川騎手との差が、少しずつ詰まっています(3月24日現在、20勝差)。
でも、すぐには抜けないと思います。いま、西川さんがすごく頑張ってますから。高知は調教をつけないとレースに乗せてもらえないところがあるんですけど、西川さんは以前よりも、攻め馬の数を増やした。めちゃめちゃ働いてますからね。僕があの年齢で、もう一度、あれぐらいやる気を出せるかというと、自信がない。西川さんの姿を見て「すごいなあ」と思いますし、刺激を受けます。西川さんと同世代のユタカさん(武豊騎手)の影響も、あるんでしょうね。高知には、見るべき部分がある騎手が多いと思います。こないだの真衣ちゃん(別府真衣騎手)も、中央遠征で見せ場を作りましたからね!
別府騎手は、クロスオーバーでチューリップ賞に参戦。結果は12着でしたが、積極果敢に先行して、高知競馬をアピールしましたよね。
よくやったと思います。高知のジョッキーらしいレースをしてくれた。一鞍入魂で、3番手から行って、魅せてくれました。あの騎乗を見て感動しない人は、競馬人じゃないでしょう。
大舞台の緊張感や、「有力馬を邪魔してしまうんじゃないか」という不安を感じさせませんでした。
あたりさわりのないレースをしても、見ていて面白くない。ケツから行って、なにも伝わってこない競馬をしてしもうたら、話題にもならない。「真衣ちゃんは先輩らがやってきたことを、ちゃんと見ちゅうな」と思いました。
別府騎手いわく、「JRAの騎手が気さくに話しかけてきてくれて、リラックスしてレースに臨めた」と。JRAジョッキーズと高知ジョッキーズは、朝まで飲み明かすほど仲がいいですもんね。武騎手には、「化粧、濃いんとちゃうか?」とからかわれたそうです(笑)。
ユタカさんがいたら、まちがいないんでねえ(笑)。
赤岡騎手と武騎手の親交が、有形無形、様々な財産を生んでいますね。
いやいや。そうやって縁を生かしてくれれば、一番いいんですよ。
武騎手が騎手仲間と共に高知にやってくる夏の「夜さ恋フェスティバル」のトークショーは、今年で5回目を迎える福永洋一記念(4月28日)が創設されるきっかけにもなりました。
すごくありがたいですよね。みなさんが快く協力してくれるおかげで、高知競馬の認知度が上がりました。
高知競馬に、「また行きたい」と思わせる魅力があるからだと思います。みんな明るくて朗らかだし。関係者のみなさんは、馬券の売り上げが回復したことで、よりいっそう明るくなったんですか?
いや、ぜんぜん変わらないですね。県民性じゃないですか? 高知の人って、ポジティブな人が多いと思います。僕なんかもそうですけど、「どうにでもなるろう」って考えている人が多い。高知県民は、いきあたりばったりですから。坂本龍馬が計算づくで動いていたとは、僕には思えません(笑)。
そうなんですか!?
高知県民は、人と付き合うのが好きなんです。だから自分の流れに、人を巻き込んでいくんですよね。坂本龍馬は、それがたまたま上手く流れたから、歴史に名を残しているんじゃないでしょうか。
赤岡さんも、誰とでもすぐ友達になりますもんね。Facebook等を通じて、ファンとさかんに交流しているとか。
北は北海道から、南は沖縄まで、インターネットを通じて馬券を買ってくれている人がいますからね。こんな交通の便のよくない競馬場まで足を運んでくれる人の存在も、本当にありがたい。色んな人が応援してくれているのを感じるようになって、「自分ひとりで乗ってるわけじゃない」という想いが、強くなりました。
そういう想いが、高知競馬の復活に繋がっているんでしょうね。そして、競馬をネット観戦する人にとって、レース実況はすごく大事だと思うんです。橋口浩二アナウンサーの実況は素敵ですよね。
僕らがゲート裏で待機している間も、出走馬の血統背景などを紹介してくれますからね。勉強になりますし、ファンの方も、飽きないんじゃないでしょうか。生産牧場の名前なども出てくるから、牧場関係者の皆さんも、喜んでいるそうです。橋口さんは競馬のことを本当に考えてくれていますし、アナウンサーっていう立場だけじゃなくて、高知競馬の一員という感じです。高知競馬には、みんなに「なんとか盛り上げていこう」っていう気持ちがある。一体感がありますし、変えるべきところを、すぐに変えていける気質がありますからね。
一体感やチャレンジ精神があるからこそ、高知の人馬は遠征で活躍するんでしょうね。だからファンもメディアも、高知競馬から目が離せない。
いきあたりばったりで危なっかしいところもあるから、見捨てきれないのかもしれません(笑)。
母性本能を......。
くすぐるような(笑)。「危なっかしいな、この競馬場」って。遠征で活躍すると、喜んでくれますしね。やっぱり、愛されてるんでしょうね。高知の馬や騎手が、時々すごい活躍をするところに、面白味があるのかも。波があるけど、爆発力がありますよね。
今、期待している馬を教えてください。
アイアムルミエール(牝3、田中守厩舎)という馬ですね。まだぜんぜん完成されていないので、これから成長してくれれば、楽しみはあると思います。
ところで、検索サイトで「赤岡修次」と入力すると、「結婚」という単語が自動的に表示されました。「赤岡修次 結婚」で検索している人が多いんですね
ホントに!?
あと、「赤岡修次 独身」とか、「赤岡修次 年収」とか、すごくリアルです(笑)。周りの人に、「結婚はまだ?」って言われませんか。
言われますねえ。そりゃ言われるでしょうね。まあ、結婚はタイミングじゃないですか。流されていくんですよ、高知県民は。きっと坂本龍馬も、流されたんですよ。って、坂本龍馬のせいにしゆうけど、怒られますね(笑)。
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※インタビュー・写真 / 井上オークス
NARグランプリ2012で、最優秀勝率騎手賞を4年連続、さらにベストフェアプレイ賞を2年連続受賞するという快挙を成し遂げた、高知の赤岡修次騎手。地元高知だけでなく、地方競馬を代表するトップジョッキーとなった今、競馬に対する熱い想いを語っていただきました。
赤見:まずは、勝率とフェアプレイ賞のダブル受賞、おめでとうございます! なんかもう、毎年表彰されるのが当然みたいな雰囲気ですよね。
赤岡:そんなことないですよ! 毎年続けて獲らせてもらってますけど、よく獲れたと思いますもん。実際は綱渡りなんですよ。正直、去年の年末頃は、勝率は佐賀の山口勲さんやと思いました。周りの人の中には、『勝率危ないんやったら、勝てそうな馬選んで騎乗制限したら』って言ってくれた人もおったんですけど、自分としてはそういうことして獲るもんやないというポリシーがあって。 最終日の大晦日まで山口さんと競ってたんですけど、最終日は騎乗が4鞍しかなかったんです。でも本当にたまたまが重なって......。倉兼(育康騎手)が騎乗停止になって、さらに西川(敏弘騎手)さんがめったにないことやけど怪我してしまって、普段は乗ることがあんまりない倉兼の騎乗馬が回って来たんですよ。それで勝たせてもらって、最終的に去年も勝率1位を獲ることができたんです。
赤見:フェアプレイ賞も2年連続ですけど、あれだけ騎乗して制裁がないって凄いですよね。
赤岡:こっちはね、意識してできるもんなんで、かなり意識してますよ。僕のポリシーは、とにかく真っ直ぐ走らせることなんです。まだ候補生だった頃、人よりも何か努力しないと一番にはなれないって考えて、とにかく真っ直ぐ走らせようって決めたんです。朝一の馬場って、ハロー車でならした跡が綺麗に残ってるじゃないですか。その線に沿って馬を走らせると、1周真っ直ぐ走れるんですよ。 昔からかなり意識してたし、デビューして10年間は騎乗停止も一度もなかったんで、なんでフェアプレイ賞もらえんのやろって思ってました。『どうやったら獲れるんや!』って思ってたけど、今は明確な基準もあるし、今年ももらえるようにしたいですね。
赤見:今は高知だけでなく、全国で騎乗機会が増えてますけど、得意な競馬場はありますか?
赤岡:右回りは自信ありますよ。どこ行っても平気です。でも左回りは......最近は慣れたけど、前は相当意識してました。扶助使う時、とっさに右回りの扶助を使ってしまうんですよ。重心とか脚の位置とか、本当にちょっとしたバランスなんですけど、右回りと左回りでは真逆なんで。今はたくさん遠征させてもらったり、重賞の時のスポット参戦も声かけてもらったりして、経験を積ませてもらったんでね、スムーズに乗れるようになりました。
赤見:スポット参戦だけじゃなく、期間限定で南関東で乗る計画はないんですか?
赤岡:それねぇ......。乗りたい気持ちもあるけど、高知はオフシーズンがないから難しいですね。特に今はいい馬いっぱい任せてもらってて、攻め馬も自分でしてるでしょ。その馬たちを2か月ほっぽって行くことはできませんから。リーディングから落ちたら行きたいなとは思ってます。ただ、絶対落ちたくないですけど(笑)。
赤見:赤岡騎手といえば、ジョッキーとしてだけでなく広告塔として積極的に高知を宣伝してますよね。
赤岡:一時期は『廃止に一番近い競馬場』なんて言われましたけど、今は潰れそうにないですね(笑)。自分で動くの好きやし、色んな人と仲良くさせてもらってるお陰です。 特に(武)豊さんには本当に良くしてもらってますね。昔から何かと声かけてもらってたんですけど、ワールドスーパージョッキーズシリーズに出場した時とか、全国に遠征に行った時とかに、色々話したり一緒にご飯食べたりするようになって。豊さんは凄すぎる人やから、みんな遠慮するんやけど、僕は腹割って話させてもらったり。高知の気質というか、ジョッキーもみんな明るいんで、そういう雰囲気も合ったのかもしれません。
赤見:豊さんから繋がって、福永祐一騎手発案の『福永洋一記念』も始まったんですもんね。
赤岡:そうそう。豊さんが『何でも協力する』って言ってくれたんでね、まずは夏の夜さ恋フェスティバルが実現して、その時に祐一くんを連れて来てくれたんです。それで、『親父の故郷で、冠レースがしたい』って言ってくれたんで、主催者にも『やりましょう!』ってガンガン言いました。協力するって言ってくれてるんやから、あとは自分らが積極的に動いて主催者を動かさんとね。
赤見:営業・企画・広報......すべてやってるんですね。
赤岡:人付き合いが好きなんですよ。中央もそうやし、今野(忠成騎手)が同期なんでね、南関東のジョッキーたちにも良くしてもらってます。南関東の騎手を招く交流戦もやってますけど、最初は戸崎(圭太騎手)が『高知に行きたいから交流戦作って下さい』って言うから動いたのに、アイツはスポットで重賞乗りに来ただけやから(笑)。そうやって『行きたい』って言ってもらえる競馬場と思うと、すごく嬉しいですけど。
赤見:戸崎騎手はJRAに移籍しましたけど、赤岡さんは考えたことありますか?
赤岡:行きたいとも思うけど、勉強して行くのは難しいでしょ。それよりね、違う方法を考えますね、僕は。今のままじゃ、やっぱりダメじゃないですか。中央と地方の壁を無くしていかないと。それには地方がまず全部開くことやと思うんです。高知はもともと色んなとこのジョッキーを受け入れてるんで、そういう考え方なんやけど、地方全体で考えるとまだまだ難しい部分もありますね。 でも、小さいとこが開いていったら大きいとこも開かざるを得なくなるんです。そういう話をね、中央のジョッキーや南関東のジョッキーとも話すんですよ。色んな意見がありますけど、ジョッキー同士やからこそ話せることもありますから。高知のことはもちろんですけど、競馬全体のことも考えていきたいです。少しずつでも変えていけたら、というのが目標です。
赤見:素晴らしい目標ですね!! ちなみに、赤岡さんの私生活って謎ですよね。
赤岡:謎ですか?! たいした生活してないですよ(笑)。毎朝仕事やし。ただ、色んな人と付き合うのは好きなんで、競馬以外の仕事の人たちともよくご飯食べたりしますね。それに、全国にたくさんファンやって言ってくれる方がいて、すごく励みになってます。 え?結婚ですか? そっちも頑張らんといけないですね。ただ、他のジョッキーたちから『赤岡さんが結婚したら夢が無くなる』って言われてるんで。この自由な感じがいいんですかね(笑)。もうしばらくは独身貴族で頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:斎藤修)