4月23日に初勝利を挙げた塩津璃菜騎手(兵庫)。乗馬を始めた頃は揺れが心地よくて馬上で寝ていたというほどの馬好きです。初勝利前には「大きな経験になった」というあるレースがありました。
4月16日に園田第1レースでマイネルシャテールに騎乗し、デビューを果たしました。デビュー戦はどうでしたか?
マイネルシャテールは16歳のベテラン馬で、調教では意外と掛かって動くんですけど、レースでは全然動く気配がありませんでした。コーナーで馬の力が強すぎて内に入れることができず、外を大きく回りすぎてしまいました。それでも最後まで頑張ってくれました。
初めてのレースで横や前後の馬との間隔はどう感じましたか?
見ているより乗った方が迫力がありました。たまに鐙がぶつかって、最初は少し恐怖もあったんですけど、調教でも併せ馬をしていて当たることが多かったので、慣れました。
デビュー3日目にディニータに乗った時はスタートを決めましたね。
自分でもビックリしました。それまでは自分で出そうとしている部分もあったんですけど、新子雅司調教師から「ゲートは馬に任せておけ」と言われたのでその通りにしたら、ちゃんと馬が出てくれたのでホッとしました。
それはいい成功体験になりましたね。
この経験は一番大きかったです。それからはスタートをちゃんと出るタイプは馬に任せちゃうようになりました。
初勝利を挙げたフィオリーノも好スタートからの逃げ切り勝ちでした。
見るからに速そうな馬体をしていて、体も仕上がっているように見えたので結構自信を持って乗れました。ゲートの中から姿勢を低くして乗って、スタートが決まりました。その後のダッシュで吉村智洋騎手の方が前に出そうかなと思ったんですけど、吉村騎手の姿勢を真似して低くして追ってみたら、こちらの方が前に出ることができました。体はめちゃくちゃ硬いんですけど、この時は自信を持っていたので全部出しきろうと思って姿勢を低くできました。
初勝利の記念撮影(写真:兵庫県競馬組合)
勝った時のお気持ちは?
嬉しいというよりは、馬が頑張ってくれたなって思いました。
検量室に戻ってくると、いろんな人から祝福を受けたでしょう。
松本幸祐騎手が「1着を取れてよかったね」と言ってくれました。お父さん感覚で、「もっとこうすればいいよ」とか細かく教えてくれていました。私の所属厩舎は西脇ですけど、園田の先輩方も優しく乗る姿勢とか色々と教えてくれます。
所属厩舎の長南和宏調教師や兄弟子の石堂響騎手からは?
先生からは「おめでとう」と、石堂騎手からも「おめでとう。よかったね」と声をかけてもらいました。
目標とする騎手には石堂騎手を掲げていますね。
石堂騎手は乗る姿勢が綺麗で、そこを目指しています。それができるようになったら、さらに下原理騎手や吉村騎手を目指していきたいです。
長南調教師もいろいろとアドバイスをしてくださるのでは?
レースで着外になった時など、細かく教えてくれます。以前は進路取りについて教えてもらって、いまは騎乗姿勢です。
ところで、ジョッキーを志すきっかけは元々馬が好きだったからだとか?
小さい頃、動物園で初めて馬を見て大好きになりました。その後、テレビでたまたま乗馬の様子をやっていて、親に「乗ってみたい」と言ってすぐに近くの乗馬クラブで乗らせてもらいました。でも、最初のうちは馬の上で寝ていたんです。
え、状況が飲み込めません(笑)。
馬の動きが気持ち良すぎて眠たくなっちゃって。鐙をしっかり踏んでいたので落ちはしなかったですけど、何ヶ月かは目が半開きになりながらも頑張って乗っていました。
好きすぎるがゆえ、なのかもしれないですね。競馬を知ったのはいつでしたか?
初めて知ったのは中学3年生の時でした。それまでは乗馬クラブで色々と大会とかに出たいなと思っていたんですけど、たまたま地上波の競馬中継を見て「ジョッキーになってみたいな」と思いました。
進路選択のタイミングで出会ったんですね。そこからジョッキーになるまでの道のりは?
中学卒業後に千葉県の馬の専門学校に何ヶ月か行きました。そこを辞めた後に地方競馬教養センターを受けたんですけど落ちて、その後はトレーナーをつけてもらったりしてずっと運動していました。そんな時、地元の銀行で元ジョッキーの方が働いていて、長南先生を紹介してもらって8ヶ月ほど厩舎でアルバイトをさせてもらって、2度目の受験で合格しました。ひと安心しました。
そういった経緯だったんですね。ご家族も初勝利は喜ばれたのではないですか?
「頑張れ」とか「勝てるまで応援するよ」と言ってくれていて、初勝利はすごく喜んでいました。
では最後に、これからの目標とオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
石堂騎手みたいな姿勢で乗れるように、まずは頑張りたいなと思っています。1鞍1鞍大切に乗って、勝てるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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2024年4月1日に笠松競馬場でデビューした明星晴大騎手。デビューから約2カ月(2024年6月5日現在)で7勝を挙げています。父は競輪選手の明星晴道選手。騎手を志した経緯や、デビュー後の心境を伺いました。
まずは初勝利(4月18日笠松第3レース、スングリダンダン騎乗)おめでとうございます。
ありがとうございます。ゴールした瞬間は「やっと勝てた...」とホッとして、周りの方々からも「おめでとう!」と言っていただいてすごく嬉しかったです。でもあとでレースVTRを見たら、人間が焦ってしまって追い方とかが不細工だったので、もっとかっこよく勝ちたかったです。
4月1日にデビューして19戦目での初勝利でしたが、ここまでの期間はどんなお気持ちでしたか?
同期が14人いて、どんどん初勝利を挙げていったので、焦る気持ちもありました。チャンスをいただいていたのに勝てなくて、実際のレースは難しいです。教養センターでは4頭5頭立てのレース形式を何度も訓練してきましたが、10頭11頭となると周りとの間隔が難しくて。当然ですけど、前後左右、斜め前後にも馬がいて距離が近いしですし、その中でどう安全に進路を選択していくか、というところが今の課題です。
4月18日、デビュー19戦目で初勝利
5月24日には初めて1日2勝を挙げました。コツを掴んできたのでは?
いい馬に乗せていただき、周りの方々に感謝していますし、勝てたこと自体は良かったのですが...、反省点もたくさんありますね。特に2勝目の時は自分の選択ミスで先輩騎手を危ない目にあわせてしまいました。もっと冷静に落ち着いて、周りを見ながら乗れるようにしていきたいです。
では、騎手を目指したきっかけを教えてください。
父が競輪選手なので、その影響もあって公営競技の選手になりたいと考えていました。競輪、競馬、競艇、オートがあるわけですけど、父のような競輪選手は筋肉バリバリで、太ももなんかは相当太いんです。僕は小柄で細身だったので、競輪ではないなと。中学3年生の春に高知競馬場でレースを見て、スピード感や迫力に感動して騎手を目指そうと決めました。
馬には乗ったことがあったんですか?
一度もなかったです。教養センターの試験で初めて乗って、高いなと思いました(笑)。
教養センターの同期には小さい頃から乗馬をしてきた候補生も多いと思いますが、入所してから大変ではなかったですか?
最初は同期についていくのが大変でした。でも馬に乗るのは楽しかったですし、辞めたいとは思わなかったです。
ご出身は愛媛県ですが、笠松競馬場を選んだ理由はなんですか?
騎手の人数が少ない分、頑張ればチャンスをたくさんいただける環境だと聞き、希望しました。後藤佑耶先生とはリモート面談をしていただいて所属になったんですけど、初めて笠松競馬場に行った時からみなさん優しくて、すぐに溶け込むことができました。
ご家族は勝った姿を見ましたか?
レースはたまに見に来てくれていて、多分勝った姿も見てくれたと思います。とにかくケガに気を付けてって言っていますね。そこは心配しているみたいです。
今後の目標を教えてください。
2年以内に100勝して減量を取りたいです。
では、オッズパーク会員のみなさまにメッセージをお願いします。
ヤングジョッキーズシリーズがあるので、地元の笠松はもちろん、他の競馬場で騎乗できるので、たくさん吸収したいです。そしてファイナルに行ってJRAで乗ってみたいです。もっともっと上手くなれるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:岐阜県地方競馬組合)
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5月10日に地方通算1000勝を挙げた廣瀬航騎手。デビューから15年は年間25勝未満ながら、地道に努力を続けた結果、5月23日には全国の強豪が揃うオグリキャップ記念(笠松)をタイガーインディで制覇しました。飛躍的な活躍を遂げた本人は、現状をどう感じているのでしょうか。
オグリキャップ記念をタイガーインディで勝利、おめでとうございます。3頭横並びの大接戦で、ゴール直後には外の2頭を見ていましたね。
突き抜けたかな、と思って(吉原)寛人に「(僕が)勝ったんちゃうん?」と聞いたら、向こうは「負けた」と言っていました。同期なんです。
タイガーインディは2走前の黒船賞JpnIII・3着の一方、内枠だった昨年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIは内に包まれて9着。砂を被ったり、揉まれるのが苦手なのかな?と感じましたが、オグリキャップ記念で内の2番枠が当たった時はどう思いましたか?
あんまり好ましくはないなとは思いましたけど、かえって「せこく乗ったろうかな」と思いました。黒船賞では馬の後ろに入れた場面があって、その時は気になりませんでした。微妙なところですけど、兵庫ゴールドトロフィーが走らなかっただけでは、と思います。めっちゃ不思議ですけどね。
レースは序盤から4頭が競り合う形となりました。
1コーナーの時点では前が競り合ったので、前の馬が止まって相手は矢野貴之騎手(デュードヴァン)になるのかなと思っていました。4コーナーでスペシャルエックスとセイルオンセイラーの間を行く時だけちょっと怯みましたけど、直線では前の馬が少しずつ止まってきているなと思いました。吉原と笹川(翼)の追い合いを内から差し切ることは、たぶんもう騎手人生でないと思います。嬉しかったです。
オグリキャップ記念で3頭の接戦を制したタイガーインディ(左)
コースレコードに0秒4に迫る1分24秒0での勝利。レコードが出た頃とは時計の出方も異なりますし、前走・兵庫大賞典も好タイムでしたから、この先へ楽しみが広がります。
7歳と年齢は重ねていますけど、佐賀・サマーチャンピオンを目標に、と聞いていて楽しみです。
今回は馬主服を持参していたものの規定で着用できず、貸し服での騎乗となりました。サマーチャンピオンでは正規の服でいい競馬を期待しています。ところで、表彰式終了後は急いで馬場を走って帰っていました。翌朝も早くから調教だったのでは?
深夜1時からでした。調教はマックスで約23頭で、新人騎手より乗っています。最後の時間帯は他に誰もいないですね。南関東の騎手からは「日本一乗っているんじゃないですか?」と言われます。レースもほぼフル騎乗で、目指していたところなのでありがたいですけど、みんなが山道を登るところを僕だけ崖を登っています(苦笑)。
2015年までは年間平均16勝だったのが、1000勝を達成できるなんて後輩にとっては夢のある話だと思います。
後輩にも言われますけど、人にはこのやり方は勧めないです。「これは正しくないし、こんな出世の仕方はせんでええよ」と。先が見えないですし、続けたところで出世できる保証がないですから、「頑張れ」くらいしか言えないです。
個人的な印象では、木村健騎手(2018年引退)が腰痛などで騎乗数を絞りはじめた頃から技術と人望のあった廣瀬騎手がブレイクしたように感じます。
それは大きいと思います。それと、16年に35勝した時、結構穴を開けたんです。そこから変わってきた印象があります。その後、19年に怪我をしてしまって「やってもうた......」と思いました。62勝、75勝と挙げた次の年で、「最悪や」と。
いい波に乗っていても、戦線離脱で一気に騎乗馬が減ることはよくあることですものね。しかしその年を58勝で踏ん張ると、翌年は87勝とさらに伸ばしました。
そこでもう1回持ち直したのが大きいですね。
兵庫では上位3人が変わりつつも、「トップ下争い」と言われる4位争いがありますが、それを一気に制すると、5月10日には地方通算1000勝を達成。グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』でも密着取材を受けていました。
「また暇やったら来てください」とスタッフさんに言っていたら、本当に来てくれたんです。1000勝目はめっちゃ緊張しました。なんか知らんけど出遅れましたしね(苦笑)。馬の能力が抜けていて、ゴール後はガッツポーズをしていました。この時とオグリキャップ記念を勝った時に「騎手になってよかった」と、めっちゃ思いました。
(写真/兵庫県競馬組合)
そんな今の夢を含め、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
もう十分やらせてもらったと思いますけど、ダートグレード競走を勝つことがいまの夢です。サマーチャンピオンはチャンスがあるんじゃないかなと思っているので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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2022年12月にデビューし、今年の4月23日第3レースにはドウナンテンリュウで通算100勝を達成しました。馬がいる環境で育ったばんえい騎手最年少の21歳は、落ち着いた騎乗で次世代のトップジョッキーを目指します。
1年4カ月での100勝です。おめでとうございます。
まわりから100勝の話が出ていましたが、あまり気にせず、いつも通りに1戦1戦その馬のベストを尽くしていました。振り返るとうまくいったレースはなかなかないですね。デビューして当初は焦っていましたし、馬とけんかしてうまく乗れなかった。勝ってもどこか課題がありました。レース展開や息の入れ方、障害の上げ方など、まだまだ勉強中です。負けても次に生かせるように、と考えています。
(所属する)今井調教師やほかの調教師までもが指導してくれます。レースでは落ち着いて、教えてもらったことができるように心がけています。
100勝して、年度が替わって復活していた10キロの減量特典がなくなりました。影響は感じますか。
多少はありますが、(減量は)ないのが普通ですし、まわりには「早くなくせ」と言われていました。昨年度、6月に50勝して一度なくなっていますが、それでもいろいろな馬に乗せていただき感謝しかないです。
ヤマノコーネル(牡5)では重賞にも騎乗しました。
ヤマノコーネルはキャンターで障害にかかったら、山を上がれないんです。常歩でうまく越えないといけないのですが、島津騎手が調教してくれました。常歩で障害にかかるようになってから、自分が乗っても安定するようになりました。今も難しくて、キャンターに持っていかれてしまう。ハミ使いが難しい。持っていかれたらタイミングが合わなくなり、降りてからの脚にもかかわってきます。
ばんえい十勝オッズパーク杯(2023年)に出走したヤマノコーネル(7着)
力というよりはハミ使いなんですね。祖父である中村光雄さんの生産馬で、よく知っている馬でも難しいんですね。
競馬場に入ったのは同じくらいの年だと思います。幼いころから調教をつけていたし、騎手試験の練習でも乗せてもらっていました。練習ではキャンターを踏まなかったんです。(キャンターで手綱を持っていかれる経験は)レースに行って本番の重量を引いて初めてでした。
ほかに思い出に残る馬はいますか。
100勝したドウナンテンリュウです。2歳のころから鼻水が出るなど、夏過ぎまで調子が上がらず苦しんできた。涼しくなってようやく馬体重も増えて、この馬のレースができるようになりました。馬主さんもこの馬で100勝して喜んでくれました。
名前が残りますから、よかったですね。今井厩舎はみんなで馬の世話をしている印象です。
調教師も明るいし、若い人が多い。みんな年上だけど協力しながら仲良くやっています。減量も苦労していないので、調教師と焼肉に行くこともあります。休みの日はなにもせず、ゆっくり過ごしています。
チャチャクイーン(5月5日、カーネーションカップ・8着)
同厩舎には同時にデビューした今井千尋騎手がいます。子どものころから馬に携わるなど境遇も似ていますが、今井騎手は先に100勝し、素晴らしい活躍ぶり。悔しい思いはありますか?
レースではライバルと思っていますが、女性のハンディがあることはわかっていますので、気にしないようにしています。厩舎に帰ってもお互いの馬の情報交換をするなど、いろいろと話せる間柄だからこそ、気にしないです。
2歳戦も始まりました。
折り合いが重要になってきます。テスト(能力検査)は、レースに向けて教えながらうまく乗ろう、という気持ちです。馴致で馬は変わるから難しい。匠さん(藤本騎手)はうまいですね。「うまく馴致できたらいい騎手になる」と言ってくれました。騎手の先輩方には、アドバイスをしてもらいありがたいです。
自厩舎のほかに、他厩舎の調教をやって、レースも乗せてもらって、いろいろな馬を触れるのが、騎手としてすごい経験になっています。早めに攻め馬に来て特徴をつかむなどして、学んでいければと思います。
子どものころから草ばん馬に乗ってきましたが、よかったと思うことはありますか。
高校生の時に、本走路で行う祭典ばん馬(1歳馬決勝大会)に乗ったことが一番大きかったです。草ばん馬ではないくらい緊張して、自分のメンタルの弱さに気づかされ、頑張らなきゃ、という気持ちにさせてくれました。
子どものころから、騎手の夢は揺らぐことなかったんですね。
なかったですね。もし何か思ったとしても、馬小屋に行って馬を見たら、やめられないな、という思いになりますね。
期待している馬はいますか。
大友厩舎のエクセルホース(牡2)は、行きたい、という気持ちがすごい。折り合いに苦労するが、落ちついてレースができるようになったら楽しみです。
オッズパークの会員の皆様に一言お願いいたします。
一人でも多くの人がばんえいに興味を持って、ファンになってくれたらと思います。最近若い人が来てくれて、いいことだと思います。本場もにぎやかになってきた。その中で応援してくれる人もいるから、期待に応えたいです。みなさんの応援のおかげで乗れていると思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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