2018年4月に船橋から高知へ移籍した林謙佑騎手。初めて高知で通年騎乗している今年は、リーディング上位に迫る活躍を見せています。現在の心境をうかがいました。
今年は66勝(2019年10月24日現在)を挙げて好調を維持していますね。
今年は初めて1年間を通して高知で騎乗しているので、好調というか、たくさん乗せていただいていることが大きいです。いい馬にもたくさん乗せてもらっているので、本当はもっと勝たないといけないなと。
現在高知リーディング5位ですよ。
5位というのはありがたいですね。もう本当に馬たちのお陰です。順位というのは特に意識していなくて、高知には上手いジョッキーがたくさんいますし、その中で5位というのはとても光栄です。
4位の西川敏弘騎手とは1勝差につけています。
西川さんは本当に上手で、僕の前にいるのが当たり前の方なので、そこは気にしていないです。ただ、目の前のレースに勝ちたいという気持ちは強いですね。もっと上手くなって、たくさん勝てるようになりたいです。
林騎手は2015年に船橋でデビュー、2017年3月から1年間、高知で期間限定騎乗をしました。
レースに乗りたいという想いが強くて、たくさん乗せてもらえるように頑張って行きたいなと思って期間限定騎乗に行きました。高知は仕事がキツイって言われますけど、船橋の時もたくさん調教していましたし、それほど大変とは思わなかったですね。確かに時間的には仕事しっぱなしですけど、僕はゆっくりする時間があると寝てしまうので(笑)。
約1年の期間限定騎乗を終えて、2018年4月に完全移籍しました。大きな決断でしたね。
そうですね。当時はまだちょっと迷いがあって。南関東所属でデビューできたことはすごくありがたかったんですけど、やっぱりレースに乗れなかったら意味ないのかなと。周りの方に相談して、自分でも悩んで。どっちの方が自分が役に立てるか、活躍できるかということを考えて決めました。
昨年(2018年)の3月、完全移籍の直前には御厨人窟賞をセトノプロミスで勝利。初重賞制覇を果たしました。
重賞を勝つというのは大きいですね。あの時は3番人気だったんですけど、重賞の割には緊張しなかったんです。逆に最近の方が、1番人気に乗る時とか緊張します(笑)。馬が強くて、勝たせてもらった感じでしたが、ゴールした時は本当に嬉しかったですね。
重賞初制覇となった御厨人窟賞(2018年3月11日)
さらに昨年はトレノ賞も勝ちました。5着までがコンマ2秒差の大接戦でしたね。
あの時は初めてレースでサクラインザスカイに乗せていただいて、本当にギリギリでしたけど、外から差し切ったのは気持ちよかったです。今年はまだ重賞で勝てていなくて、スプリングガールでチャンスをいただいたのに、勝ち切れなくて悔しいです。
今年のトレノ賞で2着、そして金沢へ遠征した読売レディス杯でも2着でした。
特に金沢のレースが悔しいです。あの時、内に行ければもしかしたら勝っていたかもしれないのに、外を回ってロスしてしまったんです......。先生とも、「今日は雨馬場だし、内が使えないこともないな」という話をしていて、高知でも内を突いた経験があったのに。なんであの時、外に行ってしまったのかって。今でも悔しいです。
スプリングガールはどんな馬ですか?
攻め馬の時はちょっとハミを噛んで来るんですけど、レースは砂を被っても大丈夫だし、スタートも速いし、どこからでも競馬ができますね。癖がないし、自在に乗れるところが武器だと思います。
読売レディス杯のように、一緒に遠征に行けるというのは大きな経験でしたね。
そうなんですよ。遠征は(赤岡)修次さんが乗ることが多いですし、せっかくいただいたチャンスだったのに......。僕は修次さんと同じような馬に乗ることが多いんですけど、自分が乗っている時よりスタートもいいし、道中のスイッチの入り方も違うと思います。これは事実なので、しっかり分析して勉強していきたいです。
今後の目標は?
年間100勝してみたいですね。なかなか遠いですけど、頑張ります!
高知はすごく売り上げが上がって、注目度も上がっています。実感されていますか?
僕はいいタイミングで入らせていただいたので、ここまで築き上げてくれた方々に感謝しています。どん底から上がって来た方々に申し訳ないですし、迷惑を掛けるようなことはしたくないです。真面目にやって行きたいですね。
休みの日はどんな風に過ごしているんですか?
僕、意外と多趣味なんですよ。スポーツでいったら、休日だとゴルフに行ったり、平日で時間がある時は野球とかサッカー、テニスをします。休みの日で家にじっとしているというのはなかなかないかな。一時期ゲームにハマった時は家にいましたけど(笑)、今はほとんどないですね。
"高知の林謙佑騎手"もすっかり浸透して来ました。得意なレースを自己分析すると?
そうですね、レースは特に先行が好きです。逃げ馬の後ろくらいから行く感じで。あとは自分で言うのも何ですが、1番人気だとちょっとまだ緊張してしまうので、3、4番人気くらいだとリラックスして乗れます。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
まだ移籍してそれほど経っていないのですが、もっと上手くなってたくさん勝てるよう頑張ります。よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:高知県競馬組合)
2019年に門別競馬場でデビューした小野楓馬(おのふうま)騎手は、両親が日高の牧場スタッフという"馬産地競馬"ならではの出自。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンド門別当日(8月21日)にはその第2戦を含む1日5勝、翌週29日のリリーカップでは、デビューからわずか4カ月で重賞初制覇を果たすなど、1年目からめざましい活躍を見せています。
ご両親が牧場にお勤めとのことで、名前にも「馬」がついていますが、小さいころから馬には興味があったのでしょうか。
小さいころは父が勤めていた牧場の社宅に住んでいて、玄関を出たら目の前に牧場があるような環境でした。名前は両親が一緒に考えて、母が「楓」という字を使いたかったそうなんですけど、「馬」の字も自然とついたんでしょうね。この牧場で育った馬が将来競馬場を走るということは子どもながらに理解していましたし、小学1年生くらいのときから、テレビでディープインパクトや武豊さんを観て「強いんだなあ」と思っていました。その頃、家の近所にあったカントリー牧場で生まれたウオッカがダービーを勝ち、なおさら親近感が湧いてきましたよね。
騎手を目指したのも自然な流れだったんでしょうか。
もともと体が小さくて、両親から「ジョッキーになったら?」と勧められた影響もあって、4~5歳の頃から「大きくなったら騎手になる」と周囲に言い回っていました。小学生のころから三木田乗馬学校というところでポニーに乗っていて、馬に乗る楽しさは感じていたんですけど、本当に決意を固めたのは中学生になって進路を考え始めたときですね。小さい頃から言ってきたせいで周りからも「騎手になるんでしょ?」っていう雰囲気が固まっていて、今さら後に引けなかったのもあるんですけど(笑)。
最初は中央を目指していたんですけど、高2のはじめに母の知り合いから「小野望先生が騎手を欲しがっている」という話を聞いて、ホッカイドウ競馬に目が向くようになりました。ちょうど門別競馬場で子どもたちのポニーレースがあって、ゴールした馬を捕まえるバイトで行ったときにレースを観たんですけど、「地元から近くて、歓迎も応援もしてもらえるなら、ここで騎手になるのもいいな」とシンプルに思いましたね。
教養センター時代大変だったことを教えてください。
ホロシリ乗馬クラブや静内農業高校の馬術部でも経験があったので、乗馬に関しては未経験の子よりは余裕があったつもりでしたけど、だんだん技術が追いつかれるにつれて焦りを感じたことですね。自分がケガをして2週間くらい馬に乗れなかったときに、他の子たちはどんどん訓練を進めて巧くなっていきましたからね。そのぶん、自分ももっと頑張らなければと思えたのはプラスでしたし、同期とはお互い助け合って、一緒に高め合っていけるような関係でした。
デビュー当初はどうだったのでしょう。
デビュー戦(4月17日門別3R・ジェイドリームで2着)は田中淳司先生がいい馬を用意してくださったんですけど、馬に遊ばれてゴール前に差し返されてしまい、改めて自分の力不足に気づかされました。最初のころは緊張もしましたけど、周りからの歓声も届いていましたし、テレビで見ていた騎手の方々と一緒にレースをしているというのは新鮮な感覚で、そのとき騎手になった実感がわいてきましたね。
師匠の小野望調教師からはどのような指導を受けているのでしょう。
基本的に馬のリズムに合わせ、馬の気持ちを尊重することを教えていただいています。レース前には「この馬がこういうレースをするだろう」とか、レース後も「こうすればこうなるからこういう結果になる」と、1年目の自分でもイメージしやすいように馬のことやレースのことを教えてくださるのは本当にありがたいですね。自分が馬の上にいるだけでは気づかないような視点をいつも与えてくださっています。
1年目から当初の目標としていた30勝をクリア。8月にはプリモジョーカーとのコンビでリリーカップを制し、重賞も勝利しました。
キッカケを与えてくださった関係者の皆さんと馬に感謝というか、本当にいい経験をさせてもらっているということを実感しています。1年目から重賞に乗せてもらえるということ自体なかなかないことだと思いますし、馬が走ってくれたおかげというのはもちろん大きいですが、ひとつ重賞を勝たせてもらったおかげで、気持ちの面でも少しゆとりを持ってレースに臨めることができるようになった気がします。
プリモジョーカーのグランド牧場の伊藤社長は、自分が所属していた柔道の少年団で会長をなさっていて、社長のお子さんともよく一緒に練習していたんです。実績のある馬だったので、乗せていただけるという話を聞いたときはさすがにビックリしましたが、変に緊張とかプレッシャーとかを考えたりせず、角川(秀樹)先生から要求されたことを当たり前に実行して、馬の力を信じてさえいれば、少なくとも馬の能力を出し切ることはできるとすぐ切り替えたつもりです。
レースでは内目の枠から果敢に逃げました。
先生からは「最初はハナを取るつもりで出していって、自分よりも速い馬がいたら2番手でも仕方ないね」という話を聞いていましたが、この週はインコースが特に軽かったので、「行けるならハナへ行ってやろう」というつもりで乗っていました。ゲートを出てから自然といいハミがかりで行けたので、コーナーに入っても馬の邪魔をせず、気持ちだけは抜かさないようにすることをいちばんに意識していましたね。直線はとにかくしっかり追うことだけを考えていたんですけど、最初聞こえていたムチの音や足音がだんだん聞こえなくなってきたときは内心とても驚きましたし、馬に対して「お前すごいんだな」っていう思いを抱えながらゴールまで乗っていました。検量室で出迎えてくれた小野先生もすごく喜んでくれましたし、ほかのジョッキーからも「おめでとう」と声をかけられて、やっと緊張がほぐれて喜びを噛みしめられましたね。
プリモジョーカーでリリーカップを制し重賞初制覇
地元で行われたヤングジョッキーズシリーズでは第2戦を勝利。この日は5勝を挙げる活躍でした。
2戦目で騎乗したレルシュタープは転入初戦で、中央では馬なりでもハナに立つような競馬をしていたので、無理しなくても逃げられるかなと思っていましたが、2番手の馬が引っかかってきたので、流れは速かったですよね。道中はなるべくリラックスさせることに専念し、勝負どころで抑えていた手綱を放して「気持ちよく行ってもいいよ」と合図を出して最後は馬の力を信じたら、直線ではこちらの叱咤にもしっかり応えてくれました。
それまでの4勝は、人気になるような馬も多かったですからね。そういう馬を任せてもらえるのは本当にありがたく思いますし、だからこそ気をさらに引き締めて、期待に応えていくしかないと。ちょうど当日、同期の福原杏(浦和)もYJSに乗りに来ていて、「昨日ようやく楓馬に勝ち星で追いついたんだ」という話を聞いていたので、「自分も負けてられないぞ」と余計に燃えました(笑)。
YJSトライアルラウンド門別第2戦を制して、1日に5勝
次のトライアルラウンドは11月19日の川崎です。
門別で1回勝たせてもらって、いい位置にいさせてもらえる以上、ファイナルに残れるようにしたいですよね。川崎は最後のトライアルラウンドなので、あと何ポイント必要か計算しやすいのはありがたいです。左回りのレースはおそらく初めてになりますが、いい経験をさせてもらいながら、冷静に、ひとつでも上の着順を目指したいと思います。去年は(山本)咲希到さんと落合(玄太)さんがファイナルに進出されたので、自分もそれに続きたいです。
今シーズンもあと2か月を切りました。今後の目標と課題を教えてください。
当初の目標だった30勝は達成できましたが、これからも目の前の勝利を1つ1つ積み重ねていき、今度は50勝を目指したいですね。去年落合さんが1年目から57勝(門別のみ。ほか1勝)を挙げられたので、「もっと上がある」と考えられるのは、自分にとって恵まれた環境だと思います。まだ臨機応変さが足りないというか、レース中に慌てて、中途半端な位置取りになることもあるのが課題ですね。あとはやっぱりスタートですかね。ゲートの中で同じ体勢を取っても出たり出なかったり、「どうして今回は出なかったんだろう」とか試行錯誤しています。やっぱり考えて乗るのはいちばん大事だなと思います。
では、最後に、オッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
これからも馬主さんや厩舎スタッフの方、そしてファンの方に、見ていて面白いと思ってもらえるような、魅力ある騎乗を心がけたいです。乗せていただけることを当たり前だと思わず、謙虚に、ひとクラひとクラしっかりレースに臨みたいですね。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
地方通算3944勝(9月17日時点)を挙げ、年内には4000勝のメモリアル勝利も見えてきた田中学騎手。デビューした頃には2000勝すら想像のつかない数字だったと言いますが、「1つでも上の着順を」と試行錯誤してきたことやこだわりの返し馬など、26年間積み重ねてきたものがありました。
7月17日に地方通算3900勝を達成して、いよいよ4000勝へのカウントダウンとなりました。
ありがとうございます。
今年は菊水賞など重賞2勝を挙げるジンギやMRO金賞を制覇したテツなど楽しみな3歳馬が多いですね。
3歳馬もですし、古馬でも遠征であちこちに行かせてもらって、ありがたいですよね。遠征が続くと「大変でしょう?」って言われるんですが、僕けっこう遠征に行くのも好きなんですよ。遠征先で美味しいものを食べるとか観光を特にするわけじゃないんですが、ひとりでただボーっと過ごす時間も楽しいなぁって。
移動時は体に負担がかかりそうです。2015年下半期は原因不明の腰痛が続いて半年ほど休養されたこともありましたが、いま体のコンディションはいかがですか?
あの時は病院をいろいろ回ったけど、なかなか原因が分からなかったんですよね。今もたまに痛みが出る時もありますが、なんとか持ち堪えています。最近は調教にはあまり乗っていないですが、それでもレースで乗せてくださる関係者には感謝しています。
菊水賞(4月11日)を制したジンギ(写真:兵庫県競馬組合)
先日は高知競馬場へ西日本ダービーでテツと遠征されました。残念ながら4着でしたが、馬の状態などはいかがでしたか?
返し馬で砂がちょっと深いかな!?と感じました。4コーナーで前の2頭を交わす時に一緒に合わせて走ろうとするなど、まだ幼い面がありました。でも、逃げてしか勝ったことがなかったのが、今回は1つポジションを下げても向正面で手応えが良かったです。長い距離でもいけそうですし、思ったより力をつけています。
テツやジンギ、エイシンニシパなど橋本忠明厩舎とは名コンビですね。
橋本調教師も僕と同じく2世(父・橋本忠男さんは元調教師)。調教師になった当初から「全部マナブくんに乗ってもらうくらいのつもり」って声をかけてくれて、本当に嬉しかったです。エイシンニシパは去年の園田金盃で乗り馬が重なってしまって手放したんですが、責任だけはちゃんと果たしたいなと思って、今も調教には乗っています。すごく乗りやすい馬で、僕はただ跨っているだけです。
田中騎手の父・道夫調教師は騎手出身ですが、「人とは違うことをしないと何千勝もできない」とおっしゃっていました。
たしかに、同じ馬を同じように乗っていたって結果が出ることはないです。僕らでも新人の頃は1~2頭、同じ馬ばかりに乗っていました。その中で、別の馬が回ってきたら1つでも上の結果を残したいので、「(上手い人と)何が違うのかな?」って考えていました。
MRO金賞(7月30日・金沢)を制したテツ(写真:石川県競馬事業局)
そういうことの積み重ねが勝利につながっていくんですね。田中騎手は返し馬をじっくり丁寧にされる印象がありますが、そこに込められたポリシーは?
テン乗りだと返し馬を大事に、長めにしています。後ろから行く馬の場合は、ちょっと気を入れるようにしっかりとやりますね。そうしたらゲート離れ(スタート)からちょっと違うような気もして。馬体重が増えている時は「返し馬を強めにやりたいな」と思うこともあります。
的場(文男)騎手も返し馬を長めに乗りますよね!?的場さんなりの考えがあるんでしょう。いいものは取り入れたいと思います。
8月23日にはオッズパークプレミアムパーティーに出席されました。どんな雰囲気でしたか?
すごく豪華なホテルで、会員さんが80~90人くらい来ていたのかな。グッズ抽選会では当たった瞬間、「よっしゃぁー!」って声が会場に響き渡ったりしていました。そんなに喜んでくれたら嬉しいですよね。僕は勝負服とステッキ(鞭)とポロシャツをプレゼントしました。パーティーに呼んでいただくこと自体もですが、会員の方から「腰、大丈夫?」など声もかけてもらってありがたかったですね。
他競技の選手も出席されていましたが、どんなお話をされましたか?
競輪のトップレベルの選手やオート、ガールズケイリンの選手も来ていて、いろんな話を聞けました。オートは全然分からないので、仕組みを聞いたり、競馬で言う調整ルームが競輪ではどうなっているのかを聞きました。僕らは個室なんですが、競輪は4人部屋とかのようで、「いいねー」って言われました。
さて、いよいよ通算4000勝が見えてきました。
デビューした頃は2000勝って夢のまた夢っていうか、そんなこと自体、考えたことがなかったです。そんな中での4000という数字。上には上がいますが、4000勝は自分自身が良くやってくれたかなって思います。周りの人たちから助けていただいてばかりなんですけど、自分自身も褒めてあげたいなって。そういう気持ちが出てきてもいい数字かなって感じています。
4000勝を超えて5000勝となると、それはまた1つ上のランクかなと思います。川原(正一)さんもそうですが、すごいですよね。5000勝はいかに長く続けているかと、いかに早くから成績を残してきているかってことだと思います。騎乗できる期間(年数)は絶対的に限られていますから。的場さんなんて「すごい」って言う以前の問題で、「ものすごい」って言葉じゃ片付けられないですよね。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
たくさん馬券を買ってください! それが僕らへの応援になります。迫力のあるいいレースを届けたいっていうのは当たり前のこと。公営ギャンブルが潰れるか潰れないかは売り上げにかかっています。売り上げが上がれば賞金や手当て、待遇が変わって、そうするとモチベーションも上がって魅力のある騎手も増えます。いま、地方競馬の騎手がまた少なくなってきて、園田も30人を切っています。好循環になって、たくさんの人が競馬を楽しんで、馬券を買ってくれる人口が増えればと思います。
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※インタビュー / 大恵陽子
8月11日に行われたばんえい競馬の夏の大一番『ばんえいグランプリ』は、コウシュハウンカイ(牡9)が初制覇。騎乗した4000勝ジョッキー、藤本匠騎手に話を伺いました。
先行して2障害を最初にゆっくりと越え、逃げ切りの勝利でした。
やっとだったけどね。勝った時はほっとしました。最近は年齢からか、1障害を降りてからの「ギュン!」と進む力が弱くなった。でもうまく1障害を越えて、他の馬は2回止めるところを1回にして、若いメジロゴーリキ(2着)と一緒に前へ付けた。ひと腰で2障害を上げないと降りて歩けなくなるから、障害はなんとか止めないようにした。自分のパターンに持ち込めた。
最後の直線は、「頑張れ!頑張れ!」と声をかけていましたね。
祈りながら歩いていた。2年前の力ならゴール前にタイムを縮めて楽勝だったと思う。年齢とともに我慢が少なくなっている。それでも、いつも真面目で同じレースをする。ずるいところがなく、競走馬の鑑のような馬だよ。
母馬のタカラドーベルも騎乗はしたことはないが、真面目な馬だった。
レース前日に雨が降って、1.8%の馬場水分でした。数日前から涼しくなりましたが、今年の帯広は暑く、体調をキープできない馬も多くいました。
暑かったな。松井浩文調教師が、あまり馬に負荷をかけずに調教してきたから。もともと夏は弱いイメージがある馬だが、調子よく迎えられた。とても調教が難しい馬なんだ。
昨年10月の北見記念以来の重賞勝利となります。久々でしたね。
どちらかというとパワーよりスピード勝負の馬だが、昨シーズンの冬はあまり雪が降らなかった。あれが堪えたのかな。だからばんえい記念もパワー勝負だとつらい。スピードレースになれば。
今年のばんえいグランプリは、"生産者の祭典"として行われました。生産者の六車實子さんの牧場は今は閉場されていますが、思い出はありますか。
当歳の時にコウシュハウンカイは牧場で見ているんだ。絵に描いたような体形で、見た瞬間「すごいいい馬だな」と思った。オレノココロも一緒にいたんだけどね。
前哨戦となる9月8日のマロニエ賞も勝ち、3連勝です。次の重賞岩見沢記念を勝てば四市重賞制覇となります。次走に向けて、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
マロニエ賞は障害も楽に上がっていき、レース後も息づかいが良かった。調子はいいね。皆さんの期待に応えられるレースをしたいと思います。
コウシュハウンカイについては、これからも無事に走って将来的に種馬になってくれれば。俺ももう少し乗ろうと思っているよ。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
岩手の3歳二冠を達成したパンプキンズ(水沢・伊藤和忍厩舎)は来る9月16日の不来方賞で三冠目に挑む。レースを目前に控えて、パンプキンズの手綱を取る菅原俊吏騎手にここまでの同馬のレースについて、また不来方賞への意気込みなどを話していただいた。
昨年のデビュー戦を勝ったパンプキンズでしたが、その後しばらくは一進一退の成績が続きましたよね。
2歳の頃はやはりまだ身体がしっかりしていなくて、若馬にありがちな弱さみたいなものもありましたね。流れが合わないと脆さを見せることもありましたが、ただデビューの頃から良いスピードを持っている馬だというのは感じさせていました。
デビュー間もない頃は先行争いで競り合いになって、それで気分を損ねたら止まってしまう......というようなシーンを何度か見た記憶があります。それが寒菊賞の頃からか、粘り強さを発揮するようになりましたね。
そうですね、寒菊賞のひとつ前のレースの頃から馬の状態が凄く良くなってきていて、レースの結果にも現れるようになりました。パンプキンズがレースに慣れていたのもあるでしょうし、いろいろな距離を経験しながら力を付けていたんだと思います。
芝の新馬戦を勝ったパンプキンズ(2018年8月14日・盛岡第3レース)
そして今は2000メートルの重賞も逃げ切るくらいになりました。2歳の頃と3歳になってと、パンプキンズが変わった点、成長した点はどんな部分ですか?
距離に関してはレースするにつれてスタミナもついてきましたね。一番は体がしっかりしたことでしょう。そこがしっかりしてきた今はもう、距離もスタミナもあまり気にしなくてよくなりました。
昔は、なんというか展開に左右されやすいというか揉まれたらつらいというようなところを感じましたが、今はそういうイメージはないですよね。
ですね。スピードもありますけど折り合いもつくので長い距離でも全然問題なくなりました。強い相手に揉まれてきたのも良かったのでしょう。
少し今年のレースを振り返りたいのですが、やまびこ賞ではグレートアラカーに敗れました。その時の敗因を今になって考えるとすると......?
その前のレース(スプリングカップ)でパンプキンズが逃げ切ったせいか、やまびこ賞ではずっとマークされて、早めに仕掛けられた上にさっと交わされたという感じだったので、そういう展開の影響があったと思います。
その後の東北優駿は、逆にマークされてもやり返してやるぞみたいなレースでしたよね。
そうですね。それ(やまびこ賞)があったから、もう並ばせないように並ばせないようにと、少し早めでも積極的に戦いました。パンプキンズもよく頑張ってくれました。
東北優駿は見事な逃げ切り勝ち(2019年6月9日・水沢)
そして前走のダイヤモンドカップ。短期放牧を経て一足早い秋初戦という感じになったんですけども、ひと夏を越したパンプキンズはどうでしたか。
放牧と言っても牧場では坂路でしっかり乗り込まれていたという事だったので心配していなかったんですけども、暑さの影響は少し感じましたね。他は問題なかったです。ひとまず順調に夏を越せたと思います。
そのダイヤモンドカップは、いわゆる"負けられないレース"になったじゃないですか。乗る方としてはプレッシャーもあったと思うんですが。
正直もう、絶対に負けられないと思っていました。枠が大外で、水沢の1600メートルは外枠から最初に無理をすると脚を使いすぎてしまうという心配もあったんですが、なまじ2、3番手につけるよりはいつもの競馬をした方が良いと思って思い切って戦いました。
ダイヤモンドカップも制して二冠達成(2019年8月18日・水沢)
今はそういうふうに、少々無理をしてハナに行っても頑張れるくらい馬に力がついていると?
そうですね。乗っていてもそのへんは全然心配しなくていいですね。
さて次は不来方賞になるんですが、今の段階でどう戦うかを聞きたいのですが......。結構、いろんな馬が転入して来ちゃいましたね。
2歳の頃に戦ってる相手が多いとはいえ、あちらも力をつけているでしょうし。リセットされたような感じで読みづらいですよね。何がどうなるか正直想像がつかないですけど、乗る方としては自分の競馬をやり通すしかないと思っています。
盛岡の2000メートルという条件は今のパンプキンズにとってどうでしょうか?
ストレートのスタートからになるので、スタートが速いからハナに立つのは難しくないと思うんですけども、問題はその後でしょうね。距離が距離ですから。自分のペースで行けたら最高ですね。盛岡のコースは2歳の時走っていますがあの時も問題はなかったです。逆にコースが広い分、馬群に揉まれ込むリスクが減って戦いやすいかもしれません。いずれにせよ自分の競馬をするだけですね。
レースの前の公開になりますので、意気込みを聞かせてください。
勝てば3歳三冠なので、そこを目指して。強力なライバルがたくさんいますけど、とにかく自分の競馬に徹して、パンプキンズの力を信じたいと思います。
もうひとつ聞きたいのが、藤井勘一郎騎手について。菅原俊吏騎手が先に、オーストラリアから日本の騎手になったわけですが、あちらでは藤井騎手と同じ競馬場で同じレースに乗ったこともあったそうですね。
藤井騎手とは、半年ぐらいかな、一緒に乗ったのは。同じ車で一緒に競馬場に行ったりもしましたよ。向こうの騎手のライセンスを取ったのは多分彼の方が先だと思います。最初から一緒だったのではなくて、たまたま彼が、その頃自分が働いていた厩舎に来たんですよね。当時から結構あちこちを回っていたようです。
オーストラリアで藤井勘一郎騎手と同じレースに騎乗した際のレーシングプログラム(提供:菅原俊吏騎手)
当時の藤井騎手はどんな人でした?
昔から英語が上手かったですね。コミュニケーションも上手いし、レースもどんどん乗るし勝つしで。日本に戻ってJRAの騎手になったのも"なるべくしてなった"という印象ですね。
あっちではプレハブ小屋みたいな宿舎に住み込んでレースに乗ってたって言ってたじゃないですか。そんな頃に一緒に頑張った仲間がJRAの騎手になって活躍してるのは、やっぱり刺激になりますよね。
ですね。自分はまあ、JRAの試験を受けるとかはあれなんで、パンプキンズでJRAのレースに遠征したいですね。それでいつかJRAのレースで藤井騎手と一緒に乗れたら素晴らしいですね。
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※インタビュー・写真 / 横川典視