2014年、2年目で57勝を挙げ、NARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した石川倭(やまと)騎手。昨年度はホッカイドウ競馬で71勝を挙げリーディング4位、今年も順調に勝ち星を挙げ、8月10日には通算200勝を達成。ついにリーディングジョッキーの座にまで上り詰めました(8月25日現在)。
絶好調ですね。
関係者の方々のおかげでたくさん馬に乗せてもらい、経験を積めた結果だと思います。恵まれたチャンスを生かせている。レースのビデオを見て振り返ってきたことで、成績がついてきているのだと思います。
重賞もいくつか勝っています。昨年は北海優駿を自厩舎(米川昇厩舎)のフジノサムライで勝ち、ダービージョッキーにもなりました。
アクシデント(1番人気のオヤコダカがスタート直後に落馬)はありましたが、逃げというこの馬のレーススタイルを貫けたのが勝利につながりました。スタートしてしばらくは(逃げていたので)落馬は気付かなかったですが、途中で空馬が見えて描いていたレース展開が変わった。逃げればいいところがある、とその時に判断して、レースを進めました。
全体的に、逃げ馬での勝利が多いように思います。
単に、ダートは前でレースをした方が自らレースを作りやすく有利ということだと思います。好きな脚質は差し。ゴールした時にうれしい。
初重賞は2014年イノセントカップのコールサインゼロ。最低人気での勝利でした。
人気はなかったけれど、力があることはわかっていた。それまでは、2歳ということもあって気性面で力を出し切れていなかっただけ。馬の力を出せたことと、馬が所属していた原孝明先生の指示通り、馬のペースに合わせた結果です。
故・原孝明調教師と
コールサインゼロをはじめ、今年5月に急逝された原孝明先生の所属馬にも多く騎乗していましたね。
2年目の中盤からたくさん乗せてくれた。いまの結果は原先生のおかげです。一回一回、騎乗するごとにコミュニケーションを取っていたことが勉強になった。今は、原先生のところにいた活躍馬のオヤコダカ、アウヤンテプイ、シセイカイカなどが自厩舎にいて、僕が攻め馬をしています。これからも結果が出せるようにしないといけない。
因縁のオヤコダカにも騎乗しています。
北海優駿のことは特に気にはしていません。実績のある馬だし、乗せていただいているので感謝しています。パドックでは色気を出したり、うるさいところもありますが、本馬場に向かうとどっしりと構える。レースではスピードとパワーがある。カッとなることもあるけど、溜めが聞いたときの瞬発力や、追い出した時の反応の良さはすごい。このチャンスをいかしたいです。
オヤコダカだけではなく、どの馬も勝てるよう、結果にこだわっていきたいです。自分は、内回りの勝率、連対率が高いんです。直線が短いけれど、展開や位置取り、馬とのコンタクトをそこは瞬時に判断して考えています。
オヤコダカで星雲賞(7月7日)を制覇
昨年末は大井競馬で短期騎乗しました。その経験も、内回りの結果に結びついているのでしょうか。
そうなんですかね...? 大井の方が内回りのコーナーはきついです。調教は馬も人も多いし、馬の作り方や雰囲気も違う。人がたくさんいるので、騎手のフォームや重心の使い方など、刺激を受けることが多かったです。今年は、昨年のイメージを備えにして、雰囲気に慣れ、たくさん乗れるようにしていきたい。
背が高いですよね。
171センチあるので、減量に苦労することはあります。体調管理には気をつけたい。大事にしているのは柔軟な体を作ること。道営にもいますが、特に南関東には体が柔らかい人が多かった。
目の前のレースのことはもちろん、怪我をしないことを目標にしています。毎年怪我をしているんです。去年は8月に2週ほど休んだが、道営は半年競馬なのでそれが結果に響いてくる。
冬は馴致があります。
馬から教わることもあります。どうすれば馬が良くなっていくのか、毎年考えている。試行錯誤です。
8月13日の札幌10Rコスモス賞は、JRAの芝レースで初騎乗でした(ブラックプールで4着)。
新鮮だし、気持ちも良かったですが、緊張することもなくレースに集中していました。力は出せたと思います。
ブラックプールの川島洋人調教師もですし、騎手、調教師ともに道営では若手が頑張っています。
川島雅人調教師は、騎手時代、自厩舎に手伝いに来ていたから教わることも多かった。雅人さんの厩舎の馬で勝って恩返しをしたいです。
200勝達成時もそうでしたし、最近表彰式では、若手騎手が表彰される騎手の勝負服を皆で来ていますよね。微笑ましいです(笑)。
表彰があると、もうそういう流れになっているんですよね。服が並んでいるところから勝手に取ってきます(笑)。若手はみんな仲がいいです。
200勝は、いい馬に乗せてもらっているということなので、感謝したい。これからも結果に応えられるよう、取りこぼすことのないようにしたいです。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保巌義・小久保友香)
一昨年、昨年に続き、兵庫ダービー3連覇を果たした木村健騎手。7月1日には、兵庫デビュー騎手では地方競馬での勝利数がトップの小牧太騎手に並ぶ勝ち星を挙げています(インタビューは6月下旬)。
今年で兵庫ダービー通算5勝目。2011年に初めてダービーを勝ってから、6年で5勝となりました。それにしても今年はきわどい勝利でした。
いやあ、持ってますねえ(笑)。ゴール地点では勝ったかどうかぜんぜんわからなくて、内にいた吉村騎手に「どっちや?」と聞いたら「わからないです!」って答えられたんです。雨も降っていましたからね。でも終わってみれば、クビ差もあったんですね。
ノブタイザンで兵庫ダービー制覇(写真:兵庫県競馬組合)
それにしても、6番人気馬での勝利とはびっくりしました。
レース前は勝てると思っていなかったですよ。ダービーの前のレースで初めて乗ったんですけれど、冬毛がけっこう残っていたんですよね。でもダービーのときは毛ヅヤが一気によくなっていました。ただ、その前走がね......。5頭立てで5着でしょ。レース内容も後方のままでバタバタでしたから。
それなのに大一番で変わり身を見せるとは、本人も驚いたのではないですか?
ダービーのときも、そんなに前半の行き脚はよくなかったですよ。2コーナーで馬に気合を入れようと腰を入れたらあまり反応がなくて、2周目の向正面で牝馬のナツに馬なりでまくられてしまったくらいですから。3コーナーでもそれほどギュンとは来なかったんですが、差を詰めるには外を回らざるをえなくなって、そうしたら内にササりながらも伸びましたからね。今までの競馬人生で経験したなかでは、いちばんというくらいの変身でした。
これで兵庫ダービーは3連覇となりました。
なんなんでしょうかね。オオエライジンの前はあんなに勝てなかったのに。なんかよくわからないですけど、うまいこと行っているという感じがしますよね。今年は展開がハマったおかげですけれど。
(ここで川原正一騎手から「勝つときはそんなもん」とツッコミが......)
そうですね。確かにそういうところはありますね。一昨年のインディウムは勝つ馬でしたけれど、今年のノブタイザンは何もかもがうまくいったというような。
(写真:兵庫県競馬組合)
2011年のダービー初勝利のときは、検量室に戻ってきたときに目が真っ赤になっていました。
あのときは、ホクセツサンデー(2着)のほうが強いと思っていたんですよ。オオエライジンはデビューから負けなしで来ていましたけれど、3カ月の休み明け。ホクセツサンデーは僕が乗った兵庫チャンピオンシップで2着に入っていたという、それが頭のなかにありましたから。いま考えても、あの世代は強い馬が多かったと思います。
続く2012年は、メイレディで逃げ切り勝ち。ダービー連覇となりました。
あれは我ながらミラクルだったなあと思いますね。ロケットスタートを決めて、スローペースになって押し切って。
その翌年はユメノアトサキが逃げ切って、木村騎手のモズオーロラは2着。そして2014年はトーコーガイアで圧勝しました。
あの勝利はインパクトがありましたね。2歳のときから走ると思っていた馬でしたし。そして、その翌年のインディウムも強かった。もううれしくて、メチャメチャ大きくガッツポーズをしてしまいましたからね。それにくらべると、今年は本当に運がよかったんだと思います。4コーナー手前では、5着ぐらいはあるかなという感じだったんですが、直線で手前を替えたらいきなりギュンと伸びましたから。
それも、木村騎手の馬を動かす技術があるがゆえだと思います。今年は下原騎手の勢いがすごいですが、勝率と連対率は木村騎手がトップなんですよ(6月末日時点)。
そうなんですか。でも僕は、ひとつひとつのレースを全力で乗っているだけですよ。いつも言っていることですけれど(笑)。これからも1頭1頭、がんばって乗っていきます。
しかしながら、ファンとしてはどうしても体の状態が心配になります。頼りになる木村騎手だけに......。
もう、そこは覚悟していますよ。いつ、腰がダメになってしまうかなんて、わからないですからね。すでに椎間板が減ってしまっている状態ですから。前回の休養のときはペイン治療をやりました。手術前は怖かったし、ものすごく痛かったですよ。でも、だからといって、レースに出るからには、僕らしくない騎乗は絶対にしたくないですからね。痛み止めを飲んで騎乗することもありますが、これからもずっと全力で乗り続けていきます。
木村健騎手は、このインタビューの翌週、7月6日に椎間板ヘルニアを発症して休養することになってしまいました。騎手は体が資本だけに、良い治療法と巡り会って、快方に向かうことを祈りたいもの。時間はかかっても、木村騎手が再びその豪快な騎乗を見せてくれるときを待っていたいと思います。
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※インタビュー / 浅野靖典