高松亮騎手は今年デビュー13年目。昨シーズンは岩手リーディング4位に付けたように、近年は騎手リーディング上位を安定して確保している。また、東海地区や兵庫など冬期間の期間限定騎乗にも積極的だ。今回は2年連続で挑んだ園田競馬場での冬季遠征の話を中心にうかがってみた。
この冬も園田競馬で期間限定騎乗をしましたね。短い期間ながら成績も良くて、あちらでの評判も上々だったと聞きました。
小牧毅調教師が良い馬を用意して、自分に勝たせたいって待っていて下さったので、自分はそれに何とか応えようとがんばっただけですよ。去年行った時にも凄くお世話になったので今年は少しでもお返しって言うか、自分の力で何かできないかと思いながら行ったんですけど、結局今年もお世話になりっぱなしで。もう"感謝"という言葉しかないです。
その園田競馬に行ってみて、どんな事を感じましたか?レースの流れとか。
そうですね。例えばですけど、たいていの競馬場は"いいポジション"というのがそれぞれあると思うんですよね。馬場状態とかにもよるでしょうが、"ここの競馬場なら道中はこの辺にいて、どこから動けばいい"というのが比較的はっきりしていると。園田の場合は、それがレースによって変わってくるんですよね。それを素早く感じ取らないと良い結果にならないですね。
園田は自分も見ていて感じるんですが、ホント海千山千の騎手ばかりで、意外な展開になることも多いですよね。
ベテランの方も多いですしね。お世辞抜きで皆さん腕が良い。だから乗っていて少しでも注意をそらすと......みたいな緊張感がありました。難しい競馬場だと思いますよ。それもあっていかに素早くレースの流れを読み取るか?がカギだとも感じました。
そんな中での1年目と2年目の違い、変化のポイントとすればどんな所が挙がりますか?
去年行った時は、他の騎手が作った流れに上手く乗って、他の騎手たちの隙を突いて・・・という形が多かったと思います。今年は良い馬・強い馬に多く乗せていただいたおかげで自分でレースの流れを作る事もできたのかなと。
さっきも話したように"この辺に付けていればだいたい大丈夫"。"こういう流れならこんな感じの展開になるだろう"というセオリーのようなものがない、他の競馬場の常識が通用しない競馬場ですから、強い馬に乗っていたおかげとはいえ、そういうところで自分のレースの流れを作る事ができたのは良い経験になった。勉強になりましたね。去年と今年で違うとすればそこかな。
では、また次回、園田競馬に乗りに行く機会があったら、その時はどんな"変化"を目標にする?
変化かあ。変化......。そうですね、ちょうど自分が帰る頃にあちらの騎手旅行があるんですよね。次はそれに参加したいです(笑)。
それはそれとして、そうですね。2年続けて行って感じたのは若手の騎手の成長、頑張りだったんです。自分もえらそうに言える立場ではないですが、自分より若い騎手たちが1年で凄く伸びていたのが自分にも刺激になったので、次行く機会があるなら、そんな若手の騎手たちに負けないように自分も成長していないとな、と思っています。
去年のシーズンとか今年のここまでとか、高松騎手の騎乗を見ていると園田に行った経験は活きているなと思う。
経験値を上げるのも遠征に行く意味って言うか、行った事による価値だと思うんですよね。勝ち負けとか騎乗技術だけじゃなく他の騎手の騎乗ぶりも見つつ、いろいろ感じたり考えたりして、地元ではできない経験を積んでくるという。その点自分は、園田では年齢的に年上のベテラン層と若手層の間くらいだったから、ベテランにも若手にも話を聞きやすい立場だったから良かったですよ。
ビュレットライナー(2015年5月11日盛岡4R・1着)
さて高松騎手にはもうひとつ聞きたい事があります。ビュレットライナーなんだけども。本当に凄い馬だよね。
14歳になりましたがそんな年齢を感じさせないですね。今でも調教では掛かるくらいの勢いを見せるし、レースでも自分から前に行ってくれるし。乗りやすい馬ですよ。今年も、まずは無事に過ごして欲しいんですけど、やっぱり勝てたらいいなと思いますね。
高松騎手にとってビュレットライナーというのはどんな馬ですか?
いろいろな事を教えてもらった馬ですね。ひとつひとつのレースだけでなく1頭1頭の馬への想いとか。うまく言葉にしづらいんですけど、あの馬に出会った事によって馬の見方、馬の状態の判断の仕方みたいなのが勉強できたと。
高齢馬ですし、なるべく良い状態でレースに出したい、無事に走らせてあげたいと思うじゃないですか。じゃあどうすればいいか?どう接してやればいいか?を考えて。それが他の馬に対する時にも役立っている。馬の状態を見る時の観察力とか判断力とか。
だから、最近自分の成績が少しでも上がっているとしたら、それはライナーと一緒に戦ってきて自分が学べた事が活きてきたから......だと思っています。
いろいろ教えてもらった、と。
そうですね。ただ、よく騎手が言うじゃないですか。"この馬にレースを教えてもらった"。"この馬にレースでの仕掛けどころを教わった"みたいな。それとはまた違うと思うんですよね。レース以前の調教とか普段の接し方、過ごし方。1頭の馬に対する見方。そういう部分をビュレットライナーに教えてもらいましたね。馬の観察力って言うんですかね。そういう部分は本当に勉強になっています。
筆者は、実は園田での高松騎手をまだ見た事がない。しかし現地からの高評価、好評はよく伝え聞いていた。
他地区への挑戦や馬との出会い、それが両輪となって彼の成長を促しているのなら、次の機会には園田へ足を運ばねばなるまい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
今年デビュー21年目を迎えた金沢の平瀬城久(ひらせ・くにひさ)騎手。昨年は84勝を挙げて金沢リーディング第3位に躍進しました。大きなケガを乗り越え、再びトップ3に返り咲いた今、その胸の内を語っていただきました。
去年は84勝を挙げ、リーディング3位でした。一昨年の32勝、13位からかなりジャンプアップしましたね。
ありがとうございます。関係者の皆さん、応援してくれる皆さんのお蔭です。一昨年はレース中の落馬(2014年6月8日第2レース)で脳挫傷をやって、約2か月休んでいたので成績が落ちたんです。かなりひどいケガだったので、騎手引退も考えたんですけど......。復帰してからもいい馬に乗せてもらって、こうやって成績が上がっているのは周りの方々のお蔭です。本当に感謝しています。
脳挫傷というのは相当大変でしたね。
そうですね。自分でもどうなって落ちたかまったく記憶がないんですよ。気が付いたら病院だったので。ビデオで見て、「これはひどいな」と思いました。4コーナーで先頭に立って、直線を向いたところで馬が内ラチに突っ込んで行ってしまったんですけど、今まで馬に乗ってきて初めての経験でした。激突の時の記憶がなくて良かったですよ。
大きなケガでしたから、ショックも大きかったのではないですか?
大きかったですね。相当ショックでした。骨折とかではなくて、脳というのもショックでした。しばらくはずっと脳震盪のような状態が続いて、頭の中がクラクラクラクラしてました。それがなかなか治らなかったし、もしかしたら騎手復帰は無理かもしれないと考えたこともありましたね。
ジャングルスマイル(2015年6月14日、百万石賞)
その時、励みになったことはなんですか?
やっぱり、応援してくれる人がいるということです。関係者の方から「待ってるよ」と言ってもらって、本当に有難かったですね。実際に復帰したら、すぐにケージーキンカメに乗せてもらったんですよ! 東海ダービーを勝った年でノリノリの時で、それなのにこんな自分に乗せてくれて......。自分自身では、「乗ってみてダメだったら辞めよう」と思っていたんですけど、周りの方に恩返ししたいという気持ちが強くなって、もっともっと上を目指したいと思うようになりました。
その気持ちの強さが、去年のジャンプアップに繋がったんですね。
ケガから復帰して重賞を7つも勝たせてもらいましたし、去年は84勝という数字を残すことができました。ただ、リーディング3位というのは相当悔しかったです。13年ぶりのトップ3入りだったし、自分でもこんな感情が沸き起こるとは思っていなかったんですけど。ここまで行ったらやっぱり、もっと上に行きたかったという気持ちが強いです。まだ田知(弘久騎手/1位)や藤田(弘治騎手/2位)には負けたくないです。
平瀬騎手といえば、金沢の顔であるジャングルスマイルと長くコンビを組んでいますけれども、去年も重賞3勝して本当にすごい馬ですよね。
すごい馬ですね。もうこういう馬は出て来ないんじゃないかって思いますよ。何より丈夫で、10歳になった今も脚元はなんともないし、現役バリバリですからね。若い頃はかなりやんちゃで調教で手こずったり、レースでも難しい面があったそうですが、僕が乗るようになった頃(2012年)はもうだいぶ大人になっていて、レースでは素直に集中して走ってくれるようになっていました。ジャングルさんに乗ると毎回感動するんですよ。生き物だからどうしたって調子の波があるじゃないですか。「大丈夫かな」ってこちらが不安に思ってても、レースでは必ず一生懸命走ってくれて結果を出してくれるんです。百万石賞なんて、去年勝って4勝目ですからね。これまでジャングルさんを倒した馬たち、ナムラダイキチやケージーキンカメや他にもいましたけど、今も現役バリバリなのはジャングルさんだけですから。本当にすごい馬ですよ。
ジャングルさんて呼んでるんですね。
はい、敬意を込めて。ジャングルさまっていうのはちょっとやりすぎかなと思って(笑)、ジャングルさんに落ち着きました。この馬には長い間本当にいい思いをさせてもらって、感謝してもしきれません。今ももちろん元気でがんばっていますけど、ゆくゆくは無事に引退して欲しいというのが一番の願いですね。
では、今後の目標を教えて下さい。
去年以上の成績を挙げることです! ジャングルさんはじめ、今年もいい馬にたくさん乗せてもらっているので、1つ1つ丁寧に乗って結果を出したいです。去年の兼六園ジュニアカップを勝ったブライトエンプレスは相当期待しています。追い切りでもかなり速い時計がでるし、僕はデビューして21年目になりますが、2歳であれだけ動いた馬は初めてでした。今年は3歳のシーズンなので、大きいところを狙います!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:石川県競馬事業局)
竹吉徹騎手は2006年のデビューから10年が経過。2015年は53勝で佐賀リーディングの第9位と、堅実な成績を残しています。
でも、成績的にはそれ以前からずっと変わらない感じなんですよね。自分より年上の騎手が引退しましたが、そのぶんの勝ち星が自分のところに回ってきていないという感じもありますね。騎乗数自体はけっこうあるんですけれど。
その状況を打破したいところですね。
自分自身、改善しなければ、というところは把握しています。まずはウエイトトレーニングをしっかりやらないとダメですね。あとはスタート。佐賀競馬場はたとえば1400mの1コーナーで先行争いになったとき、内から3頭目の場所を回らされてしまうと、よほど力がある馬でない限りは勝つチャンスがありません。だから本当にスタートがポイントで、ゲートのなかで馬をきちんと立たせることが重要ですね。でも、自分自身にちょっとでも力が入っているとうまくいかないんですよね。そんな失敗をした馬が、次にベテランの騎手に替わるとタイミングよく出たりするんですよ。見習いたいです。
所属の山田義人厩舎は所属馬が多いですね。普段の仕事量も多いのではないですか?
だいたい30頭前後いますからね。1頭目の調教を開始するのは、深夜の12時20分です。全部の馬に乗る日もありますが、そういうときは朝の9時くらいまでかかります。大変は大変ですけれど、馬に乗るのは楽しいから大丈夫ですよ。自分で調教した馬で勝つと、なおさらうれしくなります。
10年で400勝(2016年1月30日に達成)。もう一段のステップアップをしたいところですね。
そうですね。タイトルもほしいと思います。S1重賞で2着は何回かあるんですが。それと、他の競馬場の空気も吸ってみたいですね。普段の仕事が忙しくて期間限定騎乗という形は難しいので、騎手交流競走がもっとたくさんあればいいなと思います。
竹吉騎手は広島県出身。でもデビューの地は福山競馬ではなくて、佐賀だったんですね。
出身は広島県の竹原市で、福山はわりと近いんですが、親も親族も競馬にはまったく関係なくて、僕は競馬をゲームとかで知ったんです。それで騎手に興味をもって、中学校の先生に相談したらいろいろと調べてくれました。JRAの試験も受けましたが不合格で、その年の秋に地方競馬の試験を受けたら合格できました。それで那須の教養センターにいたときに山田先生が誘ってくださったので、佐賀に行くことにしたんです。
それからの10年、振り返ってみていかがですか?
もう10年も経ったのかという感じですね。まだ20代なんですけど(笑)。これから少しでも成績をよくできるようにしていきたいです。そして、佐賀競馬がもっと面白くなるようにしたいですね。自分がその代表になるつもりで頑張ります。
勝負服のデザインはどうやって決めたんですか?
先生が騎手だったころの服色を参考にして、自分で決めました。そうしたら、岩手の陶文峰騎手と同じだったんですよね。学校の先生にも何も言われなくて、デビューしてしばらくしてから気がつきました。以前、M&Kジョッキーズカップで陶騎手が佐賀に来たとき、同じレースに乗ったことがありますよ。
ところで、その髪型はなかなかカッコいいですね。
これ、天然パーマなんですよ。とくに何もしなくてもこんな感じです。だから楽ですね。色は少し染めています。以前は赤っぽい色にしたり、すごく明るくしたりしたんですが、評判があまり良くなくて。なので、今はおとなしめの色にしています。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典
デビューから15年目、現在30歳の柿原翔騎手。東海リーディングトップ10の常連であり、将来の名古屋競馬を担う騎手の1人です。現状に悩みながらも、持ち前の明るさとマイペースな雰囲気がとても魅力的でした。
今年はデビューから15年目の年になります。ここまではいかがですか?
うーん、最近はなかなか勝てなくて悩んでいますね。
勝ち鞍だけ見ると、デビューから年々増えていて最近は安定しているように見えますが。
いや、良い馬に乗せてもらっているので、もっと勝てるはずです。
2012年は、年間120勝をあげました。この時は調子良かったのですか?
あの時も、もう少し勝ちたかったです。これまで満足した年は一度もありません。数字はあまり気にしない方ですが、1年の終わりには数字になって表れてしまうので、それを見るともっと勝てたなと。
昔と比べて、ここが変わったというところは?
良い意味で、がむしゃらさはなくなりました。
がむしゃらは良くないということですか?
そうですね。馬に伝わってしまいますから。自分の焦りだったり色々な気持ちが影響してしまいます。
普段、レースで心がけていることは?
安全第一です! 周りを良く見て乗るようにしています。
最近は、中央競馬での騎乗機会もありますよね。
まだ勝てていないので、早く勝ちたいですね。やっぱりレースの質も何もかもが違います。乗っていると楽しいです。
中央競馬に遠征した時、チェックしている騎手はいますか?
外国人のレースは見ますね。やっぱりきれいだと思いますよ。
今までで思い出に残っているレースや馬は?
初めて中央に行った時です。テキサスイーグルの京都大賞典(2008年)。前の方につけてどうかなと思いましたが、最後はバタバタ...(笑)。力が全然違いますから結果は仕方ないですが、馬も人も良い経験になりました。緊張というよりも、お祭りみたいな感覚でした。
話は変わって、休みの日は何をしていますか?
休みの前の日に遅くまで飲んで、次の日はずっと寝ています。
騎手だと誰と仲が良いのですか?
今井(貴大騎手)とか、友森(翔太郎騎手)なんかとよく遊んでいますね。ずっとだらだら飲んでいますよ(笑)。その時は、競馬の話はほとんどしません。
騎手から見て、名古屋競馬の良さはどんなところですか?
ファンとの交流が多いところだと思います。バーベキューや夏祭り、トレセンツアーなど、騎手みんなが協力しあって、積極的に参加しています。4月29日にサンクスホースデイズが開催されますが、そこでも騎手ブースを出します。木馬の体験コーナーなどがありますのでたくさんの方に来てほしいです。もっと活気ある名古屋競馬にしていきたいですね。
さて、今年は、現在18勝(3月17日時点)ですが、2016年の目標を教えてください。
今年、全然勝ててないですね。勝てるレースはたくさんあるんですが。でもリーディングを狙いたいと思います。通算1000勝までも近いですが、来年かなぁ。早いうちに決めたいですね。
これからの目標は?
中央で勝つこと。名古屋では年間150勝したいです。
夢はありますか?
凱旋門賞制覇!!!!(笑)
では最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします!
東海の貴公士に会いに来てください!
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※インタビュー / 秋田奈津子