昨年の名古屋競馬リーディングは4位。今年に入って3月23日現在3位、元日の重賞・尾張名古屋杯も制し、さらなる飛躍を目指す大畑騎手にお話をうかがいました。
坂本:まずは元日の尾張名古屋杯についてですが、どんな感じで乗られたんですか?
大畑:新年早々、重賞に乗れることもそうですし、しょっぱなですから勝ちたいっていうのはありました。勝てば波がよくなるかなとも思いました。
元日の尾張名古屋杯をネオンオーカンで制覇
坂本:昨年の名古屋リーディングは4位。3位の柿原騎手とは2勝差でしたが?
大畑:最後は交わせるかなと思ったんですけど。それまでだいぶ離された時期があったんで。後半は勝ち鞍ものびてきたんで、これなら交わせると思ってたんでくやしいですね。たった2つですからね、2つミスなく乗れば達成できる数字ですから。
坂本:今年は今のところ3位です。
大畑:納得はしてないです。(トップの)岡部さんの次くらいにはきたいですよね。
坂本:実は、現在2位が柿原騎手。ライバルとして意識するところはありますか?
大畑:そうですね、最近は競い合ってますね。翔とは同世代というか、翔のほうが年は1つ下なんですけど、以前はあまり意識することはなかったんですけど、最近はちょいちょいくるもんで意識はするようになりましたね。
あと今井も。身近なところにそういう存在がいるというのは、自分にとってもプラスですよね。
坂本:そして、今年は厩舎に後輩(木之前葵さん)が入ってきます。先輩になるわけですが、どうですか?
大畑:自信ないです(笑)。レースとか乗れるのかなって心配になりますね。
坂本:アドバイスとかすることも出てくるんじゃないですか?
大畑:そうですね、普通に乗ってみてってことかな。たくさん勝てということはない。普通に乗ってさえいれば、勝ち鞍も増えていくし、そういうことの積み重ねだと思ってますから。
坂本:今後は後輩の面倒もみながらということになると思いますが、今年の目標を聞かせてください。
大畑:そうですねぇ、今でも自分のことで精いっぱいなので面倒みてあげれるか心配なんですけど、とりあえず今年は去年以上を目指したいなと思います。それと、年内に1000勝が達成できたらいいなと思ってますし、それに向かって120~130は勝ちたいと思ってます。
坂本:去年が127勝でした。
大畑:なので、今年は120......130......欲を言えば150(笑)。ま、自分としては100勝を毎年の目標にしてるんですけど。
坂本:ネオンオーカンにミヤジメーテル、重賞やオープンで活躍するお手馬がいます。
大畑:まぁ、恵まれすぎですよね。たまたま......です。
坂本:この馬たちで大きいところを狙いたいという思いは?
大畑:狙いたいですよ。ミヤジメーテルでグランダム・ジャパン......全国めぐりしたいですよね。またこういう馬と全国に行けるというのは楽しみですし、仕事としても、そういう馬に毎日またげるというのもね。調教で乗ってても仕上げないかんなぁとも思うし、レースに行ってもしっかり乗らないかんなぁと思うし。
坂本:全国どこでも乗りに行けるといったら、何処に乗りに行きたいですか?
大畑:南関もそうですし、盛岡とか大きい競馬場で乗ってみたいですね。
坂本:右回りと左回りではどっちが乗りやすい?
大畑:名古屋・笠松が右回りなんで右回りが乗りやすいのはもちろんなんですけど、左回りでも小回りじゃなくて盛岡のようにゆったり乗れるとこなら気にならないですね。
坂本:大きい競馬場で重賞に乗るというと、もちろん他地区からの遠征もあります。他地区で仲のいい騎手は誰ですか?
大畑:金沢の畑中と大井の真島は同期ですし、あとは北海道の岩橋とかはちょいちょい連絡はとりますね。
ほとんど仕事の話しかしないですけど。ま、ヤツらも結構上のほうにいたりするんで、そういうところでも刺激になります。
坂本:では、今後の目標をお願いします。
大畑:リーディングを取りたいですね(笑)。ま、岡部さんがいるので、その次くらいかな?
岡部さんの乗り方はとても勉強になるし、自分が乗ってないときは必ずレースを見るようにして、少しでも近づけるように、またいつかは追い越せるようにと思ってます。
インタビュー中も笑顔が絶えることがなかった大畑騎手。自厩舎で同世代の厩務員が退職した際には、最後の優勝写真をプレゼントするなど優しい一面も持ち合わせる好青年が、今年の名古屋の台風の目になるかもしれません。
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※インタビュー・写真 / 坂本千鶴子
真面目で、馬を大切にすると関係者からも信頼が厚い船山蔵人(くらんど)騎手。デビュー7年目を迎えました。
船山:出身は道東の浜中町です。幸太(長澤騎手)も近くに住んでいて、昔から知っていました。
父が馬を飼っていたことや、周りに馬や牛が多かったので、動物、特に大動物の仕事をしたいと思っていました。獣医になりたかったんです。父も馬が好きで、2人で道東の馬を見て歩いていた時に知り合った人に、ばんえいで働いてみないかと誘われました。父は自分が騎手になってから馬主になったんです。
斎藤:初勝利もお父様の馬、コトノカツマでしたね。
船山:今は種馬になりました。初年度が1歳ですが、いい馬が出ているみたいで、種馬としても活躍していますよ。
斎藤:昨年、ヒロインズカップで初重賞制覇したエンジュオウカン(牝12)について教えてください。
船山:自分が競馬場に来た年に、エンジュオウカンもデビューしました。1歳の時から草ばん馬で活躍していたので、名前は知っていたんです。ヒロインズカップは馬が自分でレースをしたので自分は乗っているだけ。騎乗前には、(以前乗っていた、同厩舎で元騎手の鈴木)勝堤さんに話を聞きました。ヒロインズカップ後、久田調教師に「ばんえい記念も乗れ」と言われ、その時は「無事ゴールできるかな......」と。ただ、コロナウイルスにかかって、取り消すことになってしまいました。ばんえい記念は一番上のレースですから、憧れです。うちの鈴木邦哉厩舎は、先生もだし、その兄の勝堤さんも2着までしか取れなくて。
斎藤:背が高くて、手足も長いですよね。2年目の舘澤騎手が、似た体形の船山さんにアドバイスを伺っていると聞きました。
船山:183センチです。有利なように思われますが、足場が狭くて乗りにくく、不利なところもある。
舘澤とは普段仲もいいんです。経験ないところ、センスないところが僕とそっくりじゃないですか(笑)。あいつはビュッフェとかおしゃれなところが好きなので、ランチに連れていかれます(笑)。
同期のケン(西謙一騎手)も仲がいいです。センスもいいし、今は若手のリーダー的存在になっています。上位騎手ともつきあいながら、自分の持ち馬を若手に乗せたりしています。
目標はやはり、鈴木恵介騎手です。兄弟子の村上章騎手は、みんながいやがる2歳馬の馴致や厩務作業も張り切っていて、1人でもやっています。そのようなところが目標ですね。
斎藤:ばんえいでは、左利きが有利と言う人もいます。今は、大口騎手と2人ですね。
船山:馬が進むのは叩くだけではなく、レース展開も重要だから、左というのがすごく有利かというと......ただ、ソリの立ち位置やハミの当て方も右と左では違うので、その点も違ってきます。
調教では、あまり叩くと馬の寿命が縮むという勝堤さんの教えがあるので、あまり叩かずにトレーニングをしています。ここぞ、というときだけ。
斎藤:レースで大事にしていることはなんでしょうか。
船山:馬との関係です。初騎乗の馬は運動を良く見るようにして、引っ張る格好やウイークポイントをチェックします。
斎藤:普段の生活を教えてください。
船山:調教は4時半頃から午前中いっぱいまで。今はデビュー前の馴致もあり、先日は旭川まで行って来ました。レースがない時は、午後も厩務員作業があります。今は、オイドン(牡5、ばんえいダービー、天馬賞など重賞5勝)と妹のハイカラサン、父が持つキタノリョウマとアキシノブを担当しています。
馬は驚くと普通は横や後ろを向くけど、オイドンは、前に飛ぶ(走る)んです。それでも大人になりました。年齢もありますし、荷物張るようになったので......。若い時は、体ができていないので無理させず、成長させるために調教の荷物も小さくします。今は体ができたので、レースもですが、運動も荷物を重くするんです。
ハイカラサンは気性が似ています。いつでも走ってるし、性格はキツい。ちゃかちゃかしてるから、危ないです(笑)。
馬との関係は、友達や兄弟のような感覚ですね。めんこがり、怒るときは怒る。オイドンは、タイプでいうと兄かな......意外と、構ってくれないんですよ。ハイカラサンは妹ですね。手を焼きます......。
斎藤:オイドンに乗りたいんじゃないですか。
船山:オイドンはトップホースすぎて、今の僕ではまだ無理です。
斎藤:そういえば、安藤勝己さんが騎手を引退しましたが、JRAジョッキーデーで話はしましたか?
船山:あまり話はしなかったのですが、安藤さんならばんえいの騎手になってもかなり乗れるんじゃないですか。地方から中央に行ったくらいだし、感覚がよさそうです。来られたら乗り馬が減るから困ります(笑)
斎藤:最後に目標を教えてください。
船山:今の目標は、自分というよりは、オイドンを一番の馬にすることです。これからもっと活躍しますよ。自厩舎の成績がいいことで、自分も含めて厩舎全体が盛り上がっていくような流れを作りたいです。
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インタビュー・写真 / 斎藤友香
3月1日時点で笠松リーディング5位、2月にはゴールドジュニアで久々の地元重賞Vを果たした佐藤友則騎手。そんな好調期まっただ中、レース直前の慌ただしいところ時間をいただいてインタビューしてきました。
地元のゴールドジュニアをゴールドブラザーで制覇(13年2月15日)
坂本:今年に入って調子がいいようですが?
佐藤:そうですね、リズムはいいですね。
坂本:先月(2月15日)にはゴールドジュニアも勝ちました。重賞は久しぶりのように記憶してますが?
佐藤:そうですね。地元重賞は久しぶりですね。オグリシルクの東海ゴールドカップ(08年12月31日)以来ですね。他地区も含めると、去年の盛岡での絆カップ(11月10日、トウホクビジン)以来です。
坂本:ご自身で『調子がいいな』という感じはありますか?
佐藤:トウホクビジンへの騎乗を頼まれるようになってから、ほんとにリズムがいいというか、他場でも勝つようになって、今まで東海以外では(JRA)阪神でしか勝ててなかったんですけど、盛岡、園田、大井でも勝たせてもらってるんで、リズムはいいですね。名古屋も今年はもう勝ってますし。
坂本:去年までと今年とで、乗っていて違いというのはありますか?
佐藤:う~ん、そういう違いというのはないんですけど、なんか流れがいいというか、リズムがいいなという感じはありますね。
トウホクビジン
坂本:最近、トウホクビジンで他地区へ遠征するようになりました。そういった他地区へ遠征したときの気持ちはどんな感じですか?
佐藤:関東へ行ったときは、雰囲気もいいですし、普通のオープンとか地方重賞とかだと勝ち負けしてくるから、気持ちは違いますよね。そこそこいいところまでくるんじゃないかという期待感と、馬もがんばってくれるので。
坂本:トウホクビジンの絆カップのときはありえないような位置から追いこんできました。
佐藤:馬主さんからも『着には来てほしい』というのはあって、折り合いだけをつける乗り方をしようと思ったら結果的に位置取りが後ろになっただけなんですけど、ペースも速かったので思った以上に後ろになっちゃったんですけど、まぁ、焦らず乗れたから馬も頑張ってくれたっていうのもあると思います。勝とう勝とうという気持ちよりもちょっとでも前にっていう気持ちがあったので、馬に余計な力をかけさせない乗り方ができたんじゃないかと思いますし、それが結果につながったと思います。
坂本:どのあたりで『勝ち』を確信しましたか?
佐藤:直線ですね。直線入るまでは3着はあるなと思ってたんですが、直線向いたら前が見えたので。直線に入る瞬間に馬もグンとハミ取って、一気に前との差がなくなったので、『これはとらえられるな』と思いましたね。
坂本:今年、まだ始まったばかりですけど『ここで乗ってみたい』という競馬場はありますか?
佐藤:3月(17日)に金沢での騎手招待レースに呼ばれてるんですけど、そういった招待レースというのには呼ばれたいですよね。正直なところ、WSJSの予選にも出てみたいですね。今のところ、リーディング争いも横並び状態ですし、今の調子が続けばチャンスは十分あるんじゃないかと思ってます。藤原(幹生)もがんばって勝ち鞍伸ばしてますし、お互いにいい刺激になってます。
坂本:では、今後の抱負を。
佐藤:まあ、焦らずのんびりと(笑)上位争いできればと思ってます。
他地区への遠征というチャンスからしばらくの間遠ざかっていましたが、『現役最多遠征馬?』トウホクビジンとのコンビで、はたまた招待騎手として活躍の場を広げるであろう佐藤騎手の今後の活躍に期待です。
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※インタビュー・写真 / 坂本千鶴子
荒尾競馬廃止と共に、一度は騎手を引退した田中純騎手。昨年再び騎手免許を取得し、弟の田中直人騎手と同じ佐賀競馬場で、第2の騎手人生を歩み始めています。引退から復帰までの葛藤、そして現在の心境をお聞きしました。
赤見:まずは荒尾時代のお話からお聞きしたいんですけど、廃止が決まった時はどんなお気持ちだったんですか?
田中:廃止と聞いた時は......正直全然実感がなかったですね。毎日の生活というか、調教してレース乗ってっていう今までと変わらないことをしていたので、廃止って言われてもピンと来なくて。 何年も前からそういう話もあったし、どこかに移籍しようかなとは少し考えたんですけど。自分の中でちょっと冷めてたというか、どこの競馬場に行ってもまた廃止の話が出るんじゃないかっていうのが頭にあって、結局移籍に関しては真剣には考えなかったです。
赤見:荒尾廃止後は、北海道の牧場で働いたんですよね?
田中:そうです。今まで騎手の仕事しかしたことがなかったので、初めての経験ばかりでした。牧場の仕事をやらせてもらって、騎手をしている時に忘れていた、騎手としての喜びを想い出したというか......。やっぱり、レースで馬と一緒にゴールに入れるのは騎手だけじゃないですか。そういう楽しかった想い出ばっかりよみがえってきて、改めて騎手になりたいって思ったんです。
赤見:そこからどう行動を起こしたんですか?
田中:今所属している頼本盛行先生や、真島元徳先生に相談しました。佐賀で厩務員をしながら騎手を目指そうと、真島厩舎でお世話になることになったんです。と言っても、厩務員さんの仕事というよりは、調教に乗ることが仕事だったので、レースに乗らないだけで、仕事内容は騎手時代とあまり変わらなかったです。
赤見:改めて、騎手免許試験を受けた時はどうでした?
田中:騎手を辞めてそんなに時間が経っていたわけではないので、試験の内容自体はそんなに苦労はなかったです。ただ、周りの方々にすごく良くしていただいて、すごくお世話になっていたので、絶対に失敗できないと思いました。こんなに環境を整えてもらったのに、落ちるわけにはいかないですから。とにかく、早く乗りたくて乗りたくて仕方なかったですね。
赤見:見事合格したわけですが、再デビューは福山競馬場でしたよね?
田中:そうなんです。地区によって騎手免許試験の日程が違っていて、佐賀より福山の方が試験日が早かったんですよ。それで、福山の方から、ジョッキーも少ないし期間限定でいいから来てみないかと言っていただいて。3か月限定で、騎乗させてもらうことになりました。
赤見:実際に再デビューした時はどんな気持ちでした?
田中:約10か月ぶりだったんですけど、やっぱり嬉しかったですね。ただ、もともと乗っていた荒尾だったらまだしも、初めて乗る競馬場だし、人間関係も大切ですから、不安もありました。新人と同じと言っても、10年も乗ってるわけだし、許されるふり幅は少ないという気持ちでした。でも本当に温かく迎えてくれて......。すごく感謝しています。
赤見:田中騎手が福山で騎乗している間に、福山の廃止が決定してしまいましたね......。
田中:僕も1年前に同じ経験をしましたから、気持ちはすごくわかりました。荒尾の時と同じように、やっぱり毎日の調教やレースがあるので、みんなあまり実感がない様子でした。廃止は経験してみないとわからないし、実際に終わってからじゃないと実感は沸かないと思います。 でも僕の存在を見て、『騎手を辞めようかなとも思うけど、お前みたいに乗りたくなるかもしれないから、移籍しようかな』と言ってくれた人たちがいて、すごく嬉しかったです。福山に行って良かったなと思いました。騎手を辞めるのは簡単だけど、戻るのは大変ですから。
赤見:現在は佐賀所属となりましたが、どんな心境ですか?
田中:まだ2か月なんで、ボチボチという感じです(笑)。いろいろ難しい部分もありますけど、荒尾からも近くてたまに乗りに来ていたし、荒尾時代の仲間もいるし、佐賀でもすごく温かく迎えてもらいました。弟(直人騎手)がすごい勝ってるんでね、兄の威厳を保つためにも負けてられないです! 一度騎手を引退して、遠回りしたんですけど......。いろんな人に迷惑かけたりお世話になったりして、いろんなものを見せてもらって。今まで見えなかったものが見えるようになりました。周りの方々には、本当に感謝しています。僕にとっては、必要な時間だったのかもしれません。騎手を辞めたことは無駄じゃなかったと思ってます。今、すごく楽しいですから。
赤見:では、今後の目標を教えて下さい。
田中:今は1日でも長く騎手を続けたいですね。もう簡単には辞めないです(笑)。一生懸命頑張って、上の方の人たちを蹴落とすくらいの存在になって、競馬の楽しさを伝えていきたいです。佐賀だけじゃなくて、いろいろな競馬場で乗りたいとも思っています。それで、1人でも多くの人にレースを楽しんでもらえたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:佐賀県競馬組合)
NARグランプリ2012で、最優秀勝率騎手賞を4年連続、さらにベストフェアプレイ賞を2年連続受賞するという快挙を成し遂げた、高知の赤岡修次騎手。地元高知だけでなく、地方競馬を代表するトップジョッキーとなった今、競馬に対する熱い想いを語っていただきました。
赤見:まずは、勝率とフェアプレイ賞のダブル受賞、おめでとうございます! なんかもう、毎年表彰されるのが当然みたいな雰囲気ですよね。
赤岡:そんなことないですよ! 毎年続けて獲らせてもらってますけど、よく獲れたと思いますもん。実際は綱渡りなんですよ。正直、去年の年末頃は、勝率は佐賀の山口勲さんやと思いました。周りの人の中には、『勝率危ないんやったら、勝てそうな馬選んで騎乗制限したら』って言ってくれた人もおったんですけど、自分としてはそういうことして獲るもんやないというポリシーがあって。 最終日の大晦日まで山口さんと競ってたんですけど、最終日は騎乗が4鞍しかなかったんです。でも本当にたまたまが重なって......。倉兼(育康騎手)が騎乗停止になって、さらに西川(敏弘騎手)さんがめったにないことやけど怪我してしまって、普段は乗ることがあんまりない倉兼の騎乗馬が回って来たんですよ。それで勝たせてもらって、最終的に去年も勝率1位を獲ることができたんです。
赤見:フェアプレイ賞も2年連続ですけど、あれだけ騎乗して制裁がないって凄いですよね。
赤岡:こっちはね、意識してできるもんなんで、かなり意識してますよ。僕のポリシーは、とにかく真っ直ぐ走らせることなんです。まだ候補生だった頃、人よりも何か努力しないと一番にはなれないって考えて、とにかく真っ直ぐ走らせようって決めたんです。朝一の馬場って、ハロー車でならした跡が綺麗に残ってるじゃないですか。その線に沿って馬を走らせると、1周真っ直ぐ走れるんですよ。 昔からかなり意識してたし、デビューして10年間は騎乗停止も一度もなかったんで、なんでフェアプレイ賞もらえんのやろって思ってました。『どうやったら獲れるんや!』って思ってたけど、今は明確な基準もあるし、今年ももらえるようにしたいですね。
赤見:今は高知だけでなく、全国で騎乗機会が増えてますけど、得意な競馬場はありますか?
赤岡:右回りは自信ありますよ。どこ行っても平気です。でも左回りは......最近は慣れたけど、前は相当意識してました。扶助使う時、とっさに右回りの扶助を使ってしまうんですよ。重心とか脚の位置とか、本当にちょっとしたバランスなんですけど、右回りと左回りでは真逆なんで。今はたくさん遠征させてもらったり、重賞の時のスポット参戦も声かけてもらったりして、経験を積ませてもらったんでね、スムーズに乗れるようになりました。
赤見:スポット参戦だけじゃなく、期間限定で南関東で乗る計画はないんですか?
赤岡:それねぇ......。乗りたい気持ちもあるけど、高知はオフシーズンがないから難しいですね。特に今はいい馬いっぱい任せてもらってて、攻め馬も自分でしてるでしょ。その馬たちを2か月ほっぽって行くことはできませんから。リーディングから落ちたら行きたいなとは思ってます。ただ、絶対落ちたくないですけど(笑)。
赤見:赤岡騎手といえば、ジョッキーとしてだけでなく広告塔として積極的に高知を宣伝してますよね。
赤岡:一時期は『廃止に一番近い競馬場』なんて言われましたけど、今は潰れそうにないですね(笑)。自分で動くの好きやし、色んな人と仲良くさせてもらってるお陰です。 特に(武)豊さんには本当に良くしてもらってますね。昔から何かと声かけてもらってたんですけど、ワールドスーパージョッキーズシリーズに出場した時とか、全国に遠征に行った時とかに、色々話したり一緒にご飯食べたりするようになって。豊さんは凄すぎる人やから、みんな遠慮するんやけど、僕は腹割って話させてもらったり。高知の気質というか、ジョッキーもみんな明るいんで、そういう雰囲気も合ったのかもしれません。
赤見:豊さんから繋がって、福永祐一騎手発案の『福永洋一記念』も始まったんですもんね。
赤岡:そうそう。豊さんが『何でも協力する』って言ってくれたんでね、まずは夏の夜さ恋フェスティバルが実現して、その時に祐一くんを連れて来てくれたんです。それで、『親父の故郷で、冠レースがしたい』って言ってくれたんで、主催者にも『やりましょう!』ってガンガン言いました。協力するって言ってくれてるんやから、あとは自分らが積極的に動いて主催者を動かさんとね。
赤見:営業・企画・広報......すべてやってるんですね。
赤岡:人付き合いが好きなんですよ。中央もそうやし、今野(忠成騎手)が同期なんでね、南関東のジョッキーたちにも良くしてもらってます。南関東の騎手を招く交流戦もやってますけど、最初は戸崎(圭太騎手)が『高知に行きたいから交流戦作って下さい』って言うから動いたのに、アイツはスポットで重賞乗りに来ただけやから(笑)。そうやって『行きたい』って言ってもらえる競馬場と思うと、すごく嬉しいですけど。
赤見:戸崎騎手はJRAに移籍しましたけど、赤岡さんは考えたことありますか?
赤岡:行きたいとも思うけど、勉強して行くのは難しいでしょ。それよりね、違う方法を考えますね、僕は。今のままじゃ、やっぱりダメじゃないですか。中央と地方の壁を無くしていかないと。それには地方がまず全部開くことやと思うんです。高知はもともと色んなとこのジョッキーを受け入れてるんで、そういう考え方なんやけど、地方全体で考えるとまだまだ難しい部分もありますね。 でも、小さいとこが開いていったら大きいとこも開かざるを得なくなるんです。そういう話をね、中央のジョッキーや南関東のジョッキーとも話すんですよ。色んな意見がありますけど、ジョッキー同士やからこそ話せることもありますから。高知のことはもちろんですけど、競馬全体のことも考えていきたいです。少しずつでも変えていけたら、というのが目標です。
赤見:素晴らしい目標ですね!! ちなみに、赤岡さんの私生活って謎ですよね。
赤岡:謎ですか?! たいした生活してないですよ(笑)。毎朝仕事やし。ただ、色んな人と付き合うのは好きなんで、競馬以外の仕事の人たちともよくご飯食べたりしますね。それに、全国にたくさんファンやって言ってくれる方がいて、すごく励みになってます。 え?結婚ですか? そっちも頑張らんといけないですね。ただ、他のジョッキーたちから『赤岡さんが結婚したら夢が無くなる』って言われてるんで。この自由な感じがいいんですかね(笑)。もうしばらくは独身貴族で頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:斎藤修)