第7回 ばんえい界期待のプリンス 西謙一
7回目は、NARグランプリ2007の優秀新人騎手賞を受賞し、デビュー2年目も活躍中。西弘美騎手の息子、西謙一騎手です。
--- お疲れのところ、ありがとうございます。昨日(7月11日)は笠松競馬場(岐阜)でイベントの手伝いをしてきたんですよね。模擬レースだけではなくて子どもをばん馬の上に乗せる手伝いもしてきたとか。今までイベントに行かれたことはありますか。
行かないす、行かないす、行かないす。はじめてです。やってみたら大変ですね。行ってみないとその辛さはわからないっていうか……。服部先生とかすごいっす。本当に。
--- さて、ここのところ大活躍ですが。デビューした頃から変わってきたことはありますか。
いやいやいや、たいしたことないですよ。変わってきたこと……。最初よりは気軽にレース乗れるし、あまり緊張することもなくなったし。
何回も乗っているうちに同じ馬ばっかり乗るから、どんだけ無理させれば山あがるとか、馬の特徴とかわかってきたから……。慣れですね。
--- 厩務員時代も含めて、思い出に残る馬はいますか。
あー、いるいる。自分の担当馬だった馬で、タケトップクイン。騎手デビューしたときも4連勝してくれたし。
ギャンブラークインですか? 今乗ってないですもん(笑)。
(重賞・特別は減量の)10kgもないから、その時に展開とかいろんなこと教えてもらった。特別4つも取らしてくれたし。
--- 高校を卒業してから厩務員になられましたね。厩務員時代から現在所属の大橋(和則)厩舎でしたか。
大橋厩舎。叔父さんにあたる人だから、気軽でいいし。俺のオヤジの奥さん……俺の母ちゃんの弟なんです。
高校出てからなんもすることないから、ひとまず競馬場入って(仕事)探そうかと思って。いつの間にか騎手になって現在に至る。
だから特別な思い、ないんです(笑)。
騎手試験は2回目で合格です。厩務員3年。で、今5年目ですね。
--- 子どもの頃は競馬場ではなくて、青森の実家にいたとか。子どもの頃から馬と生活していると、馬とのつきあい方も慣れたものでしょうね。馬が友達とか。
うーん、昔はよくわかってなかったな。それが普通だと思っていたし。青森にいるときも普通に馬いたし。
はじめて大きい馬見たらすごいなって思うけど、ちっちゃい時からずっと見てたから……特別な思いないんですよ。ハハハハハ。
青森の馬ですか? 育成。預かって馴らしてた。俺はやんないっすよ、エサやってただけ。昔は12月で競馬が終わっていたから、終わったら(父の弘美騎手が)帰ってきて馴らしていたから。
競馬場には、夏休みとか冬休みとか、休みの時に行ってバイトしてました。厩舎作業や運動したり。自分で操作はしないですけど、小学校の時から馬ソリに乗せてもらったり。中学校くらいから運動して。
--- へぇ〜。本当に競馬一家ですね。乗っている時に騎手になりたいとかは……。
思わない思わない、思わないっすよ。騎手試験も、うちの調教師が勝手に応募したみたいな(笑)。
--- ミスコンみたいですね(笑)。でも、上手だから受けてみれってことではないですか。
言われない、言われない。受かった時でさえ、自分では落ちたと思ってましたもん。だから騎手受かった時も1次(試験)受かって2次いくとき、これじゃだめだから、受かっても落としてくれって言ったんですよ。
競馬場に自分が入ってですか? 言葉遣い荒い人いっぱいいるけど、面白いっすよ。
酒は飲まないっすよ。ちょっと飲んだだけで真っ赤っ赤。
--- 競馬一家というメリットはありますか?
やっぱり乗り馬に不自由しない。馬まわしてもらったり。
馬見に行く時でも、オヤジのことは誰でも知ってるから、それで顔見知りになって乗せてもらえるようになったり。
一番大きいですよね。数乗らんとうまくならない。
最初はプレッシャーあったけど、今は別に。気にしないですね。
--- 結果残してるからね。
いい馬乗せてもらってるし。
レースのビデオは見てます……予想ばっかたててる(笑)。
今年はうちのいとこが(騎手試験)受けるって言ってます。叔父……西康幸の息子。騎手試験は8月末かな。いつも岩見沢の時でしたから。
--- ところで、(船山)蔵人騎手といつも一緒にいますよね。
同期だから話しやすいっていうか……気遣わんでいい。同期だけど蔵人のほうが年上なんですよ。ハハハ。
蔵人と比べるとだいぶ俺の方が楽だなって。
(蔵人騎手の所属している)鈴木(邦哉)さんのところは騎手多いから厳しいですよね。10kg(の減量)なくなったし。
勝堤さんのご飯つくったり、身の回りの世話して……俺なんか逆に作ってもらってるし。気軽でいい。
--- 厩舎作業はやっていますか? それだと休みも少ないですよね。
厩舎作業もやっています。休みは釣りに行くくらいですね。
一緒にいった奴のサオ借りて投げてるだけですけど。準備してまでは行かない。釣りする人多いけど、騎手とは行かないっすよ。厩務員とか普通の友達と行きます。そっちの方いいですもん。騎手同士だと気遣ってばっかりでやってらんないすよ(笑)。気休まるところないですもん。
--- それではばんえいのプリンスとして、アイドルトーク行きます(笑)。好みの女性のタイプを教えてください。
(アイドルなんて)ないっす、ないっす……。好みのタイプですか。ないっすよ、本当。自分と性格合う人ですね……。気遣ってばかりだから、気遣わない人がいい。最終的にはそうなる。
ファンレター? もらったことないっすね。オヤジはもらったみたいですけど。
高校時代は寮生活でした。団体行動。時間厳守、みたいな。名寄行けって(旭川の)家から出されたんです(笑)。
--- 勝負服はどのように決められたんですか?
勝負服ですか? 騎手のゲームあるじゃないですか。あれで自分で選びながら。これいいなって(笑)。
--- それでは、ばんえいに対して何か一言。
あ、最初にも言いましたが昨日イベントにはじめて行ってきて思ったのは……。積み重ねが大きいですね。昨日も一カ所で400万売れて……これを4箇所でやったら大きいですよね。
ちっちゃなことからコツコツやって、まとまったら大きくなるってことがわかった。そういったこと大事ですね。
笠松のイベントで同席した赤見千尋さんの協賛レースで約束通り勝利!
おとなしくてクールな印象を持っている西謙一騎手でしたが、話していくうちに気さくに自分のことを話してくれました。よく笑う明るい性格なのですね。
いまどきの若者だな、と思うこともありましたが、自然な流れで騎手になり、様々なことを体験して素直にそれを受け止め、成長している姿がうかがえます。その姿にとても好印象を持ちました。
今の20歳前後の子たちは、こうやって成長しているのだな……とお姉さんは思ったのであります。
取材・文・写真/斎藤友香