谷厩舎の期待馬たち
谷さんが調教師デビューしたら、すぐにも一筆、と思っていたのに、他にも色々書きたいことがあって、寄り道するうちに、あらら、気がつけば6月も下旬。開催も帯広から旭川へ、そして、岩見沢に行ってしまったのだから、正に光陰矢の如し、ですねぇ。
……なんて感慨にふけっている場合じゃなかった。谷厩舎発進、というお話である。
ご案内の通り、ばんえい競馬の場合、新調教師は10馬房をもらって開業するのだけれど、開業前、谷さんは「10頭も揃えられるかなぁ」と、ちょっぴり心配気だった。(写真:谷さん自らの手になる谷厩舎の看板)
「地震・雷・谷あゆみ」と称され、度胸の座っていることでは、そんじょそこらの男性なんて比べものにならない彼女が、「ちょっぴり」とは言え心配そうな顔をするなんて、こりゃ相当に大変なことらしい、と、脇で見ているだけの私なんぞは大いに気を揉んだのだけど……。
案ずるより何とやら。谷さんの人徳のなせる技なのだろう、ほどなく馬房は埋まって、4月23日にはデビューから僅か5戦目で初勝利を挙げたのだから、いやはや、凄いね、谷さんは。
さて、そんな谷厩舎で、私が注目する馬はマクベツテンリュウ(牡2歳)とホシマツリ(牡7歳)。
マクベツテンリュウは能力試験時から谷さんが期待していた馬。その期待に応えて、谷厩舎の初白星を挙げたのも、先日19日には岩見沢で白星を重ねて谷厩舎に4勝目をプレゼントしたのも、この馬なのである。
かくして谷厩舎の看板馬となったマクベツテンリュウだけれど、私が、この馬に興味を持ったのは、その血統。何と、この馬、父の父も、母の父もヒカルテンリュウ。つまり、2×2の近親交配で生まれた馬なのである。
これだけ強い近親交配だと、遺伝的不具合が危惧されるけれど、谷さんによれば、マクベツテンリュウは立派な体躯とゆったりした精神構造を持った優良馬であるとのこと。名馬ヒカルテンリュウの良い資質をうまく受け継いだマクベツテンリュウが、どこまで成長してくれるか、楽しみは尽きない。
もう1頭、谷厩舎の注目馬はホシマツリ。当欄の読者なら良くご存知のオープン常連馬である。デビューから15戦連続1番人気(うち9勝)という記録を持つ実力馬。縁あって今春から谷厩舎所属馬となった。さすがに上位のクラスだけに簡単に勝ち星はあげられないけれど、それでも常に上位に食い込んでいるから、この馬も厩舎の看板馬である。
ただし、オープン馬だからと言って行動も優等生かと言えば、そんなことはない。かえって、こういうクラスの馬には一癖あることの方が多いようで、ホシマツリも、その華麗な名前とは裏腹に、なかなかのヤンチャ坊主らしい。
先日も、厩舎に入った谷さんの頭をガブリ。
「本気じゃなかったと思うんだ。私が頭をあげたのと、ホシマツリが、ちょっかいをかけに来たのが同時だっただけで……」と谷さんは言うけれど、頭に歯型がガッチリついたというから……キャー! すぐに病院で何針だか縫う治療を受けたそうな(何針縫ったか、聞いたけど怖いから故意に忘れた)。
けれど、まあ、そんなヤンチャ振りにメゲる谷さんであるはずもなし。この原稿を書くために、先程電話して、「大丈夫? ちゃんと髪の毛生えた?」と尋ねたら、「髪の毛? 生えたんじゃないかなぁ。」と、すっかり傷のことなんか忘れたみたいに呑気な声を出していたから、さすがは谷さんである。
と、今回は谷厩舎主力2頭をご紹介したけれど、谷さんに言わせれば、「ハルツヨシは、第2障害を降りてからが速いから、レースが面白いよ」とか「牝馬3頭もめんこいよ」と、どの所属馬も個性豊かだから、いずれ、また本欄で、ご紹介したいものである。
ところで……。今回は特別付録として「若かりし頃の谷さんの写真」を添付しちゃうのである。谷川牧場勤務時代と言うから、?年前の貴重な写真。本稿の内容には特に関係ないけど、いつも本欄を読んで下さっている皆さんへの感謝の印として特別公開。
どうです、一緒に写ってる当歳馬も可愛いけど、ふっくらとした面差しの谷さんも可愛いー!! でしょ?