馬の値段
生まれて半年の、それも牝馬に6億円?!と、目をむいた人は多かっただろう。
毎年、北海道千歳市のノーザンホースパークで行われるセレクトセールは、サラブレッドの駿馬が揃う超一流のセリ市場。今年も7月10日から12日までの3日間、1歳馬と当歳馬のセールが行われたけれど、その最高落札額が何と6億円だったというから……何をかいわんや!
私の親しくさせてもらっているJRAの小檜山調教師も来られたし、11日には私も見学兼取材に行こうと思っていたのだけれど、どうしても書かなければならない原稿がアップしていなくて、悔し涙に暮れながら千歳行きを断念した。
もっとも、この開催3日間、ずっとグリーンチャンネルの中継を横目で見ながら仕事をしたせいで、結局、原稿は書きあがらず。編集部に霹靂を落とされたから、こんなことなら、潔くセリに行っちゃえば良かった。
という訳で、上記6億円の馬が落札された場面も、テレビ中継とは言え、バッチリ、ライブで見させてもらったのだけれど、それにしても6億円とは……。
顧みて、我らが「ばんえい競馬」に出走する馬達の値段は、というと……読者各位は、どのくらいかご存知?
景気の良かった10年前なら、当歳で数百万円、能力試験で好タイムを出した馬なら1000万円の声がかかることも珍しくなかった。
勿論、前述、セレクトセール上場馬に比べれば桁が違うけれど、バブル崩壊以降下降し続ける一般のサラブレッドの値段を考えれば、ばんえい競走馬の生産者が、サラブレッド生産者に羨ましがられる時期だってあったほど。
と、しかし、このところ、ばんえい競馬も売り上げダウンの余波が生産界まで浸透して、ばんえい競走馬の値段も急降下。前回、ご紹介した共進会でも、体格も血統も優秀な馬が150万円で取引きされるのを目撃したし、谷さんに聞いても、「200万円も出せば、そこそこの馬が買えるよ」というから、生産者にとっては辛い時代である。
と、馬を生産・販売している私としては、ついつい生産者の立場に立って嘆いてしまうのだけれど、ファンの立場からすれば、一転、今こそが大チャンス!
だって、ですよ、軽自動車1台分の値段で競走馬が買えてしまう。しかも、月々のカイバ代だって、JRAの3分の1程度とお手軽。馬主資格の取得も、さほど厳しくない。
馬代金はともかくとして、月々のカイバ代は、ちょっと辛い、というサラリーマン諸氏には、共同馬主って手もある。
そう言えば、先日、帯広に取材に来られた古林先生と話をしていたら、
「何人かで馬を持って、谷調教師に預けたいな」と、柔和なお顔いっぱいにチャーミングな笑みを浮かべて夢を語られていたから、
「そうですよ、馬主になって、オーナーズカップに出走されるといいですよ」と申し上げて、火に油を注いでおいた。
「あ、それ、いいな」と、ますます微笑みのパワーをアップされておられた古林先生。当情報局に、先生の「オーナーズカップ奮戦期」が掲載される日も近い……かも。
いや、しかし、古林先生ばかりではない。本欄読者だって、前述のように、ばんえい競走馬を取得する資格は充分あるはず。
しつこいようだけど、馬の値段が下落している今こそがチャンス。馬主なんて夢のまた夢、と考えていた、あなたも、ポケットマネーで、ばんえい競馬のオーナーになってみませんか?