8月31日に地方競馬通算2000勝を達成した愛知の大畑雅章騎手。2001年のデビューから20年、ここまでのことを振り返っていただきました。
地方競馬通算2000勝達成、おめでとうございます!
ありがとうございます。デビューした頃はまさか2000勝も出来ると思っていなかったので、すごく嬉しいですね。周りの方々や頑張ってくれた馬たちに感謝しています。
デビューからちょうど20年の節目に達成となりました。
20年......、長かったですね。デビューした頃は全然乗り馬がいなかったですし、目立たない存在でした。そこから自分なりに努力しましたし、錦見勇夫厩舎に移籍したのが分岐点だったと思います。本当にたくさんのいい馬たちに乗せていただきました。
2000勝達成はガッツポーズでゴール
その中でも、印象深い馬を挙げるとしたらどの馬ですか?
やっぱりピッチシフターとカツゲキキトキトは特別です。2頭ともかなり我が強いんですけど(笑)、全国の舞台で戦うことが出来て、ダートグレードでも上位争いをしてくれて、とてもいい経験をさせていただきました。
思い出のレースはどのレースですか?
たくさんありすぎて、どのレースとは言えないですね。まずピッチシフターでいろいろな経験をさせてもらって、その後にカツゲキキトキトに出会って、ピッチシフターでの経験がすごく活きたと思います。どんな舞台でも平常心で、緊張することもなかったですから。カツゲキキトキトで勝った東海ダービーは、初めてダービーを獲らせてもらって思い出深いですけど、とにかく馬の力で勝たせてもらった感じです。ダートグレードでもいい勝負をしてくれて、周りもすごい人馬が揃っている中でレースが出来たというのは面白かったです。
カツゲキキトキトで東海ダービーを制覇(2016年6月7日)
デビューから20年、今も馬乗りは楽しいですか?
楽しいですね!毎朝2時から攻め馬が始まるので1時半くらいに起きて、8時くらいまで乗りっぱなしです。だいたい20頭ちょっとくらいの攻め馬を毎日、それを20年やって来ました。確実な答えがないし、今でも馬乗りは楽しいです。
やめたいと思ったことは?
ないですね。全く乗れなかったデビューの頃も、怪我をした時も、やめたいと思ったことはないです。
では今後の目標を教えて下さい。
数字としては3000勝まで頑張りたいです。実は僕の兄の息子が今年の4月から地方競馬教養センターに入ったんですよ。兄は競馬とはまったく関係ない仕事をしているんですけど、甥っ子が僕を見て名古屋で一緒にやりたいって言うんでね、その子が一人前になるまでは付き合いたいと思っています。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも名古屋競馬を応援していただき、ありがとうございます。今の競馬場は来年の3月までで、着々と移転する準備が進んでいます。弥富のコースは毎日調教で乗っていますけど、すごく乗りやすくて、名古屋より直線が50mも長いですから、レースの質も変わってくると思います。今の競馬場がなくなるのは淋しいですけど、最終日までしっかり頑張って、新しい競馬場でも楽しんでいただけるよう頑張ります。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)
10月11日笠松競馬第3レースで、地方通算1500勝を達成した名古屋の大畑雅章騎手。地方競馬を代表する馬に育ったカツゲキキトキトとのコンビで、いよいよダートグレード制覇を目指します。
1500勝達成おめでとうございます。
ありがとうございます。区切りなので嬉しいですね。ここまで来ることができたのは関係者の方々のお陰ですし、がんばって走ってくれた馬たちのお陰です。これからも感謝の気持ちを忘れずがんばります。ただ、1500という数字はそれほど意識はしていなかったです。やはり2000勝が目標なので、ここは通過点だと思っています。
大畑騎手といえば、カツゲキキトキトとのコンビで全国的に活躍していますが、本当に強くなりましたね。
ですね。使うたびにどんどん力を付けてくれています。白山大賞典は2着にがんばってくれましたけど、レース前はJRAの強い馬たちがたくさんいるし、掲示板に乗れたらという気持ちもありました。でも最後までがんばってくれて、クリノスターオーとの叩き合いを制して2着になってくれて...。勝ち馬は強くて負けは負けですけど、本当に力を付けてくれたし、価値のある2着だったと思います。
去年の白山大賞典は6着でしたもんね。
去年と比べると相当力を付けてますね。3歳から4歳にかけてすごく強くなりました。具体的には馬が落ち着いたことが大きいです。もともとやんちゃというか、けっこううるさいんですよ(苦笑)。そのあたりが落ち着いてきて、いい方向に向かっているんだと思います。
カツゲキキトキトは、ゴールド争覇(10月27日・名古屋)でトウケイタイガーとの一騎打ちを制した(写真:愛知県競馬組合)
前々走のゴールド争覇は兵庫のトウケイタイガーとの一騎打ちを制しましたが、やはりトウケイタイガーは意識していましたか?
いや、まったく。まったくというか、ダートグレードを勝っている強い馬ですから、胸を借りるつもりで乗っていました。それに、1400mもこの馬には忙しくて苦手傾向があるので。でもレースは強かったですね。ダッシュがいまいちで後方からになりましたけど、道中は自分のリズムを大事にして進みました。3~4コーナー外からいい手ごたえで上がって行って、そこからすごく伸びてくれて。相当力をつけているなと思いました。
そして前走の東海菊花賞は6馬身差の圧勝でしたね。
得意の距離でしたし、メンバー的にも絶対に勝たないといけないと思っていました。すんなり2番手につけられましたし、最後まで手ごたえも良くて何も言うことないレースでした。
カツゲキキトキトは東海菊花賞(11月16日)で6馬身差圧勝(写真:愛知県競馬組合)
大畑騎手も自信を持って騎乗しているように見えます。
そうですね。この馬は前に馬がいればいくらでも追いかけるし、自分が先頭に立っても後ろから来る馬がいるだけ動きます。本当に根性があるし、闘争心が強いんですよ。
次は名古屋グランプリということでいいでしょうか?
はい。今年の最大目標です! 去年はまだ力をつけている段階で、たまたま3着に入れたという感じでした。今年は狙って勝ちに行きたいです。
こういう馬がいると、モチベーションも高まるんじゃないですか?
本当にすごい馬と出会うことができました。最初に乗った頃は、まさかここまで来るとは思っていなかったです。正直、なんでここまで強くなったのか(笑)。いきなり強くなりましたからね。最初は笠松デビューだったんですけど、ひ弱で体質が弱くてという感じで、負けるレースも多かった。もともと心肺機能は優れていたんですけど、3歳になってから体も増えていって、いろいろなものが身になったのかなと。ダートグレードを狙える馬に出会えるなんて、なかなかないですから。
普段の調教から大畑騎手がつきっきりだということですが、性格はどんな馬ですか?
多分やんちゃすぎて他の人では調教つけられないかもしれないですね(苦笑)。
全然落ち着いてないじゃないですか!
いや、前に比べればだいぶ落ち着いたんですけど、ちょっと油断するとどっか行っちゃいますから。力があるし、行ったらもうダメです。抑えられないです。それに、人を見て悪さをするんです。頭がいいんですよ。そういう意味でも普段から緊張感を持って乗っていますね。
ダートグレードや全国交流戦で注目されるというのは、プレッシャーもあると思いますが。
そこは以前乗せていただいていたピッチシフターでの経験が生きていると思います。いろいろな競馬場に行かせてもらって、ダートグレードの乗り方も教えてもらいましたから。やっぱりダートグレードは他のレースとは違うので。この馬にもいろいろ経験させてもらって、基本的には普段は緊張しなくなりました。ただ、地元重賞の方が緊張しますね。絶対に負けられないので。
では最後に、名古屋グランプリに向けて意気込みをお願いします。
ダートグレードでいいレースができる馬がいるというのは、周りの方々も応援してくれますし、期待していただけて嬉しいですね。去年は3着でしたけど、今年は勝ち負けを意識して乗ります。どういう競馬になるかわからないですけど、1つでも上の着順目指してがんばります。
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※インタビュー / 赤見千尋
11月15日現在、名古屋リーディング2位に付けている大畑雅章騎手。1位の岡部誠騎手は韓国遠征中であり、5位の安部幸夫騎手までが少差でリーディング争いを繰り広げています。新たな名古屋の顔として頭角を現してきた大畑騎手に、現在のお気持ちを語っていただきました。
大畑騎手といえばピッチシフターの印象が強いですが、10月に急きょ引退となってしまいましたね。
やっぱり寂しいですよね。あの馬とは一昨年からコンビを組ませてもらって、地元だけじゃなく全国に連れて行ってくれましたから。ダートグレードでも勝負できる馬に出会えるなんて、騎手としてなかなかないことですし、本当にいい経験をさせてもらいました。
一番印象に残っているレースは?
いろいろありますけど、去年の佐賀ですね(2014年サマーチャンピオン・2着)。すごく状態が良かったし、最高の走りをしてくれました。勝てなかったのは残念ですけど、牡馬のJRA勢相手に2着に来たんですから立派な成績です。ただ......、あそこで頑張りすぎちゃったのか、その後はなかなか体調が戻らなくて。あのレースがピークだったんだと思います。
昨年のサマーチャンピオンは惜しくも2着(右から2頭目)
ピッチシフターはどんな馬でしたか?
まさにお嬢様って感じでした(笑)。もうね、こちらの言うことなんか全然聞く気ないんですよ。攻め馬の時から本当に大変で、わがまま女子でした(笑)。でもそのぶんコミュニケーションの取り方も勉強になりましたし、全国いろいろな競馬場に行って勝負できたことはかけがえのない財産です。
やっぱり他地区に遠征に行くことは大きいですよね。
大きいレースになればなるほど上手なジョッキーばかりになりますし、少しでもミスをすれば致命傷になってしまう。それに地方同士だとかなり人気になりますから、そういうプレッシャーの中で戦えたこともいい経験になりました。
現在は生まれ故郷に帰ってお母さんになる準備をしているそうですね。
長い間頑張ってくれて、本当にありがとうございましたという気持ちです。無事に元気な仔を産んで欲しいですね。欲を言えば......、子供に乗せてもらえたら幸せです。
大畑騎手は現在名古屋2位に付けていますけれども、リーディングは意識していますか?
僕よりも周りが意識してますね。1位の岡部誠騎手とほとんど差がなくなって来て、その岡部さんは韓国に遠征中ですから。さすがに「今年はリーディングを!」という空気になってきました。今年はこのまま順調に行けば、今までで一番勝ち鞍を挙げられそうなんですけど、でもそれだって岡部さんがいないからですから。僕自身のことではないんですよ。
岡部騎手は2カ月間の南関東期間限定騎乗と、11月からの韓国遠征とで地元を長く空けていますけれども、存在の大きさは感じますか?
感じますね。僕なんてまだまだ足元にも及びませんよ。南関東から戻って来て、韓国に行くまでの間は神懸かってましたから。これまでも別格で上手かったですけど、より磨きがかかりました。一緒に乗っていると圧倒される時があります。
どんなところに圧倒されるんですか?
具体的に言うのは難しいですけど、まさに天才ですよ。吉田稔さんと岡部さんは天才です。まだまだ追いつける存在ではないですね。でも僕は運が良くて、その2人に可愛がってもらって、いろいろなことを教えていただきました。少しずつでも追いつきたいと思ってます。
どんなことを教わったんですか?
吉田稔さんに言われたのは、「どんなに人間が入れ込んだところで、走るのは馬なんだ」ってことです。人気馬に乗ったり、大きなレースになると人間が先に入れ込んでしまうけど、それはまったく意味がないんだって。まぁ、メンタル的なことなので、なかなか実行するのは難しいですけど、ピッチシフターや、これまで出会ったたくさんの馬たちに経験を積ませてもらったお蔭で、稔さんの言っていたことを少しは実行できるようになったかなと思います。
確かに、レース前後でもあんまり緊張している感じを見かけないです。
そうですね。昔は緊張したこともありましたけど、今は硬くなったりすることはほとんどないです。僕ね、あんまり固定観念を持たないようにしているんですよ。もちろん、騎乗馬や相手馬のことは研究しますけど、でもゲートを出たら何が起こるかわからないですから、臨機応変に対応できるようにと思ってます。こうしなきゃいけない!という気持ちがあると、どうしても緊張して体が硬くなってしまうんですけど、固定観念を持たないようにするといい意味でリラックスできるんです。
デビューから15年、早い段階からかなり勝ち星を挙げていますね。
最初はなかなか上手く行かなかったんですけど、3年目で錦見勇夫先生が拾ってくれたんです。そこからいい馬をどんどん乗せてくれて、育ててくれました。錦見先生がいなかったらとっくの昔に騎手を辞めていたと思うし、本当に恩人ですね。先日、先生が2000勝を達成(11月2日名古屋第2レース・スキャットソング)したんですけど、少しは恩返しできたかなと思って嬉しかったです。僕が騎乗したわけじゃなくて、妹弟子の木之前(葵騎手)が乗っていたんですけどね。
先日、木之前騎手にお話を伺った時、「兄弟子にいろいろ教えてもらってます」と言っていました。
周りからは「もっとちゃんと教えろ」って言われているんですけど(苦笑)。木之前も一生懸命頑張っているので、少しでも役に立てればと思います。自分が先輩たちに教えていただいたことを今は後輩に伝えていく立場になったのかなと。まだまだ僕自身も勉強ですけどね。
では、今後の目標を教えて下さい。
今は自厩舎のノゾミダイヤが頑張ってくれて、東海ナンバー1と言えるような位置にいます。これからどういうローテーションを進むかはわかりませんが、これからも東海の看板を背負えるような立場に居続けたいと思ってます。それから、リーディング争いは4人(3位今井貴大騎手、4位丸野勝虎騎手、5位安部幸夫騎手)が差なく競っていて、年末に向けてさらに熾烈な戦いになると思います。岡部さんがいない間、自分たちが盛り上げなければいけないと思っていますし、ファンのみなさんに1つ1つのレースで熱い戦いをお見せできるよう頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋
昨年の名古屋競馬リーディングは4位。今年に入って3月23日現在3位、元日の重賞・尾張名古屋杯も制し、さらなる飛躍を目指す大畑騎手にお話をうかがいました。
坂本:まずは元日の尾張名古屋杯についてですが、どんな感じで乗られたんですか?
大畑:新年早々、重賞に乗れることもそうですし、しょっぱなですから勝ちたいっていうのはありました。勝てば波がよくなるかなとも思いました。
元日の尾張名古屋杯をネオンオーカンで制覇
坂本:昨年の名古屋リーディングは4位。3位の柿原騎手とは2勝差でしたが?
大畑:最後は交わせるかなと思ったんですけど。それまでだいぶ離された時期があったんで。後半は勝ち鞍ものびてきたんで、これなら交わせると思ってたんでくやしいですね。たった2つですからね、2つミスなく乗れば達成できる数字ですから。
坂本:今年は今のところ3位です。
大畑:納得はしてないです。(トップの)岡部さんの次くらいにはきたいですよね。
坂本:実は、現在2位が柿原騎手。ライバルとして意識するところはありますか?
大畑:そうですね、最近は競い合ってますね。翔とは同世代というか、翔のほうが年は1つ下なんですけど、以前はあまり意識することはなかったんですけど、最近はちょいちょいくるもんで意識はするようになりましたね。
あと今井も。身近なところにそういう存在がいるというのは、自分にとってもプラスですよね。
坂本:そして、今年は厩舎に後輩(木之前葵さん)が入ってきます。先輩になるわけですが、どうですか?
大畑:自信ないです(笑)。レースとか乗れるのかなって心配になりますね。
坂本:アドバイスとかすることも出てくるんじゃないですか?
大畑:そうですね、普通に乗ってみてってことかな。たくさん勝てということはない。普通に乗ってさえいれば、勝ち鞍も増えていくし、そういうことの積み重ねだと思ってますから。
坂本:今後は後輩の面倒もみながらということになると思いますが、今年の目標を聞かせてください。
大畑:そうですねぇ、今でも自分のことで精いっぱいなので面倒みてあげれるか心配なんですけど、とりあえず今年は去年以上を目指したいなと思います。それと、年内に1000勝が達成できたらいいなと思ってますし、それに向かって120~130は勝ちたいと思ってます。
坂本:去年が127勝でした。
大畑:なので、今年は120......130......欲を言えば150(笑)。ま、自分としては100勝を毎年の目標にしてるんですけど。
坂本:ネオンオーカンにミヤジメーテル、重賞やオープンで活躍するお手馬がいます。
大畑:まぁ、恵まれすぎですよね。たまたま......です。
坂本:この馬たちで大きいところを狙いたいという思いは?
大畑:狙いたいですよ。ミヤジメーテルでグランダム・ジャパン......全国めぐりしたいですよね。またこういう馬と全国に行けるというのは楽しみですし、仕事としても、そういう馬に毎日またげるというのもね。調教で乗ってても仕上げないかんなぁとも思うし、レースに行ってもしっかり乗らないかんなぁと思うし。
坂本:全国どこでも乗りに行けるといったら、何処に乗りに行きたいですか?
大畑:南関もそうですし、盛岡とか大きい競馬場で乗ってみたいですね。
坂本:右回りと左回りではどっちが乗りやすい?
大畑:名古屋・笠松が右回りなんで右回りが乗りやすいのはもちろんなんですけど、左回りでも小回りじゃなくて盛岡のようにゆったり乗れるとこなら気にならないですね。
坂本:大きい競馬場で重賞に乗るというと、もちろん他地区からの遠征もあります。他地区で仲のいい騎手は誰ですか?
大畑:金沢の畑中と大井の真島は同期ですし、あとは北海道の岩橋とかはちょいちょい連絡はとりますね。
ほとんど仕事の話しかしないですけど。ま、ヤツらも結構上のほうにいたりするんで、そういうところでも刺激になります。
坂本:では、今後の目標をお願いします。
大畑:リーディングを取りたいですね(笑)。ま、岡部さんがいるので、その次くらいかな?
岡部さんの乗り方はとても勉強になるし、自分が乗ってないときは必ずレースを見るようにして、少しでも近づけるように、またいつかは追い越せるようにと思ってます。
インタビュー中も笑顔が絶えることがなかった大畑騎手。自厩舎で同世代の厩務員が退職した際には、最後の優勝写真をプレゼントするなど優しい一面も持ち合わせる好青年が、今年の名古屋の台風の目になるかもしれません。
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※インタビュー・写真 / 坂本千鶴子