今年度のばんえい競馬の最初の重賞、ばんえい十勝オッズパーク杯をインビクタで勝利した島津新騎手。昨年7月には通算1000勝を達成し、今季もリーディング2位(6月26日現在)と波に乗っています。
ばんえい十勝オッズパーク杯は見事な逃げ切りでした。昨年9月の岩見沢記念は最低人気での勝利でしたが、今回は3番人気と支持を集めました。
降りてからの踏ん張りがきくようになりました。道中行きたい気持ちの強い馬なので、練習でも我慢を教えてきた。これまでも落ち着かせたり、ハミを変えたりしてきましたし、成長してくれています。吉本芸人の方も来られていて、表彰式ではゲストでプレゼンターを務めたCOWCOWの多田さんが、賞金をなかなか手放さなくて笑いがおきました(笑)。
インビクタでばんえい十勝オッズパーク杯を勝利
最初の重賞を獲り、今後はハンディが重くなります。
先に獲っておいて、気が楽になったかも。ハンディがつくことでこれまでとは違う競馬になるかもしれないが、違う一面が見えてくるかもしれない。プラスに捉えています。
今年のばんえい記念にも出走しましたね(8着)。
ばんえい記念で重い荷物を引いてから、馬自身が自分でゴールが途中にあるのではない、とわかってきた。ちょっとは大人になったかな。
インビクタには勉強させてもらいました。3歳時にも乗っていて、止めてもすぐに出て行くし、行きたがって、後半失速するパターンが続きました。行き過ぎる馬をどう扱うか、コントロールする勉強になった。インビクタと出会ったことをきっかけに、成績が上がっていると思います。ターニングポイントかな。
昨年度は戒告、騎乗停止がなく、NPOとかち馬文化を支える会・ばんえいサポート推進会議の2022年度フェアプレー賞も受賞しました。騎乗する上で大事にしていることは。
受賞は無理をしない騎乗をするタイプだからだと思います。馬の気持ちを尊重しながら乗っています。馬の特徴、特性を知るようにして、どう競馬に生かすかを考える。そのためには、攻め馬やレース映像を見て、乗っていた人に聞くなどしています。癖のある馬は特にそう考えます。
癖のある馬といえば、昨年2歳重賞のナナカマド賞を勝ったタカラキングダムでしょうか。
わからない馬です(笑)。反抗心が強い。その反抗心を生かそうと思って乗るようにしていました。コースに来たらテンションが上がるんです。
大きいですよね。横に来たら、でかいなー、と思います。今年度から変わった砂に向いていないようで、結果が出ていません。
ナナカマド賞を制したタカラキングダム
これからですね。ほかの馬はどうでしょうか。
ノエルブラン(牡9)もインビクタ同様、行きたがる馬なので勉強になります。フェアリースズ(2021年ヒロインズカップ・引退)も、ハミをさわるとどんどん行くタイプの馬。ゴールドハンター(牡6)も、行きたい、行きたい、という馬ですね。
昨年7月に1000勝を達成したのもノエルブランでした。ちなみに、一番行きたがる馬は誰でしょう。
行きたがるのは、フェアリースズかな......。性格もきつくて、知らない人が馬房に来たら、扉を蹴っていました。
最近は若い騎手も増えてきました。
若い人たちには、活躍している姿を見せられれば、と思います。俺が騎手になった時よりは、皆追えています(笑)。昔よりは先輩騎手への緊張感がなくなって、輪に入りやすくなっていると思います。
最後にオッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
家族層が多くなってきたと感じます。ふれあい動物園もありますし、馬を見に来る感覚で、競馬場に来てほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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デビュー10年目を迎えた島津新騎手が、今年大ブレイク。ミノルシャープで重賞3連勝(北斗賞、旭川記念、ばんえいグランプリ)、3歳馬のコマサンダイヤとゴールドハンターで1つずつと今シーズン9レース行われた重賞ですでに5勝しています。
すばらしい活躍ぶりですね。周りの反応はいかがですか。
周りに冷やかされています。「おかしいな」って(笑)。いい馬に乗せてもらっていますから。
7月から観客が入場できるようになり、「おめでとう」の声はうれしかったです。
有観客になってからのインタビューも島津騎手ばかりですね。それぞれの馬について振り返ります。まずはミノルシャープ。昨年秋の北見記念の前から乗り替わり、騎乗してほぼ1年です。
馬の良さは降りてからのふんばりと、伸び。馬も強くなっているが、重賞を何回か使って古馬のゆったりしたペースに慣れたのはある。若い時は2障害まで着くのも速いですからね。経験とペースです。性格はやる気満々。負けん気が強いんです。
特にばんえいグランプリは、自信が表れたレースでしたね。障害手前で横を向いていたのが気になりましたが。
思った通りのレース運びができました。これまでは「勝てるかな」と思っていたのが「勝つんだ」という気持ちで乗りました。コウシュハウンカイと並んでも、切れで勝負できると思いました。障害手前で、左向いて休む癖があるんです。前向くと行くサイン。
ばんえいグランプリを制したミノルシャープ
3歳路線一冠目のばんえい大賞典を勝ったコマサンダイヤは。藤野俊一騎手が騎乗停止で乗り変わりの勝利となりました。
イレネー記念を藤野さんが勝った時、インタビューで「(今後は)島津君に返します」と言っていたが返してくれなかった(笑)。やっと返してくれました。
レースは「この馬が一番強い」と思って騎乗しました。天板で苦労した分、馬に負担をかけて申し訳なかったが、頑張ってくれた。最近は、前に行きたい気持ちが出てきている。障害が上手ですね。
ばんえい大賞典を制したコマサンダイヤ
コマサンダイヤが回避し、騎乗した3・4歳重賞はまなす賞のゴールドハンターは、末を生かすこの馬の勝ちパターンに持ち込んだように思います。若いころは逸走もして、騎手にとって大変なイメージがありますが...。
積極的に勝ちに行ったレースでした。ご存知の通り若い時はやんちゃでしたが、厩舎が仕上げてくれて以前よりは落ち着きが出てきた。いつも120%の力で走ってくれるのがいいところです。まだやんちゃな部分はあるので、1障害まではそりに座っています。
はまなす賞を制したゴールドハンター
若い馬など、たまに騎手がそりに座ることがありますよね。なぜでしょうか。
横に逃げる馬は、手綱でお尻から挟むようにして制御します。力も入りやすい。
4歳馬は、銀河賞でコマサンブラックに騎乗しますね。
3歳になって力をつけてきた。あと重賞でどれだけ頑張れるか。
期待の2歳馬は。
アバシリサクラはまだ障害に課題があるかな。これからですね。
ミススマイルはまだ850キロくらいしかないが、切れ味があるから面白いよ。
ここ最近は、思い切りのいいレースが多いですね。
一瞬の判断ですね。インビクタ(牡4)に乗ってから思い切ったレースができるようになったのかも。道をひらいてくれた馬です。
10年経ち、自分自身の変化は感じますか。2011年度は日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ優秀新人騎手賞受賞を受賞し、その後も70勝前後の勝利数は挙げていますが、昨年度まで重賞勝ちは2勝のみ(2011年クインカップ・キタノサクラヒメ、2014年帯広記念・ホリセンショウ)で、ちょっとさみしいように感じていました。
最近は勝ちに焦らなくなったかな。確かに、以前はもう少し勝ちたいなと思っていたが、我慢していればそのうち、と。この時代があるからの今だと思う。
藤野騎手からの乗り変わりも多いですが、同じ道南の出身でデビュー当時から憧れの騎手でしたね。勝負服も似ています。
はい、藤野さんと鈴木恵介さんのレースはいつも見ています。ゴール前や障害を見て、何か盗もうとしています。よく調整ルームでビデオを見ています。
ではオッズパークのファンに向けて一言お願いします。
長澤幸太騎手の舞(そりの上で舞うように馬を追う)を見てください(笑)。というのは冗談として、今はコロナ禍ですから、競馬場に来て迫力を見てとも言いにくいし、難しいですね。中継映像やインターネットで熱いレースを感じてほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
デビュー年からコンスタントに活躍を続ける島津新騎手(23)。4年目を迎えた年男は、帯広記念を制し今年も良いスタートをきることができました
斎藤:帯広記念はホリセンショウで、病気の鈴木恵介騎手に乗り替わっての勝利でした。
島津:朝、乗り換わりの紙が貼られているのを見て初めて乗ることを知りました。「あー乗るんだなー」って(笑)。うちの厩舎(岩本利春)の馬だからどんな馬かもわかっているし、馬体重があるから、荷物(負担重量)にも負けないと思っていました。
斎藤:レース中は、いつ勝ちを意識しましたか。
島津:障害で膝を折ったのは想定内。レースは落ち着いて騎乗することができました。障害を最初に越えた時に、もしかしたら、と思いました。ゴールまで3回止まって、残り20メートルくらいでキタノタイショウとニュータカラコマが来ているのが見えましたが、ニュータカラコマは辛そうに頭を上げていたから止まるな、と。その後、2頭が止まった時点で行けるかな、と思いました。
斎藤:ホリセンショウの田山克廣オーナーは北斗市の方で、島津騎手のお父様とよく一緒にばん馬大会に参加していますね。
島津:小さい頃から知っている人だったので嬉しかったです。周りの人も喜んでくれました。
斎藤:乗り換わりってプレッシャーはないですか? というか、プレッシャーを感じているのを見たことがないような気がします。
島津:乗り換わりは逆に、プレッシャーなく乗ることができます。いい騎手にはいい馬が乗るのだから、馬を回してもらえるのは光栄です。印が多いと緊張しますよ。逆にいろいろと考え過ぎてしまう。
斎藤:コンスタントに活躍を続けていますが、1年前と変わったと感じるところはありますか?
島津:道中、他の馬を見られるようになりましたね。帯広記念がそうでした。それまでも見られていたと思っていたけれど、今ほどではない。自分が乗っている馬だけではなく、周りの馬もわかっていないといけないから、調整ルームでは自分が騎乗していなかったレースを見るようにしています。乗っていない馬の能力が分かるようになってから、レースがしやすくなった。調教とレースではがらっと変わる馬がいるから、レースを中心に勉強します。
斎藤:3月にはばんえい記念があります。どのような存在ですか。
島津:夢! 乗ってみたい。小学校低学年の時の文集に「ばんえい記念に勝ちたい」と書いていました。当時、(祖父が馬主の)シマヅショウリキが活躍していたからなおさら。
斎藤:今、乗ってみたい馬はいますか。
島津:キタノタイショウに乗ってみたいですね。乗るのが簡単じゃないみたいだから、挑戦してみたい。負けず嫌いなんです。
斎藤:趣味は釣りだそうですが、競馬と似ているところはありますか?
島津:集中力。あと、駆け引きかな。でかい魚を釣った時の気持ちはレースに勝った時と似ていますね。厩舎作業があるのでたまの休みにしか行けませんが。
斎藤:ところで、昨年結婚されたとか。おめでとうございます。帯広記念も勝ててよかったですね。
島津:ありがとうございます、奥さんも帯広記念を勝って安心していると思います。一緒に住むようになってからは、ご飯作ってくれるので楽。5月には子どもも生まれます。
斎藤:食べてもっと太った方がいいんじゃないですか。バレンタインのチョコは届きましたか?
島津:今は62~63キロ、ちょうどいいから大丈夫です(笑)。チョコは、ファンから届くのを期待していたのに、届きませんでした(笑)。奥さんからしかもらっていません。
斎藤:女性ファンのみなさん、来年は競馬場宛に送ってください(笑)。さて、ばん馬が登場する映画『銀の匙』が3月に公開されますね。
島津:先日、関係者で試写会がありました。面白かったです。全国で公開されますし、漫画にもたくさんばん馬が使われているので見てください。ちょっとは映りましたが、それより(赤塚)健仁がいっぱい出ています(笑)。
斎藤:目標を教えてください。リーディングですか(2月24日現在83勝、8位)。
島津:今、6~10位が接戦なんですよね。来年度は100勝が目標です。今年度の目標は90かな…。これからは、ベテラン騎手を引きずり下ろすくらいの活躍をしたいです(笑)。 今年は例年ほど帯広は寒くないんです。ぜひ本場に足を運んで、馬の迫力を感じてください。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
2011年1月8日の初騎乗初勝利後、29日には減量特典のない特別戦でも勝利。10月には重賞初騎乗初勝利のほか1日5勝(1日最多勝利タイ)など、ばんえいの新人騎手記録を次々と塗り替えている島津新(あらた)騎手(21)。いずれもばんえいからは4人目となる、2011年度日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ2011の優秀新人騎手賞を受賞。デビュー年にばんえい新人史上最多の86勝、3月5日現在通算95勝を挙げており、100勝目前だ。
斎藤:2つの新人賞受賞、おめでとうございます。引っ張りだこですね。
島津:あちこち行って、正直ちょっと疲れましたね。白鵬は大きかった! 内藤大助選手は、同じ北海道出身だからか、世間話をずっとしゃべっていました(笑)。東京でご飯も食べましたが、混んでるし、帯広の方が美味しいかもしれません。
斎藤:新人賞はデビュー時からの目標でしたね。いつ頃獲れると思いましたか。
島津:重賞獲ったとき(10月16日クインカップ、重賞初騎乗で4番人気のキタノサクラヒメで勝利)。重賞に乗りたいなぁとはずっと思っていました。勝ててほっとした。キタノサクラヒメは、ここを勝ってクラスが上がり、重量も増えて苦戦しています。
斎藤:新人賞受賞のインタビューでは「勝利数には満足しているけど、内容に満足していない」とコメントしていましたね。満足できない点を具体的に教えてください。
島津:レース運びですね。勝てるレースで勝てなかった。今、悩みどころです。キタノサクラヒメのように、今まで勝ってきた乗り馬たちが、クラスが上がって勝てなくなっています。なんとか勝てない馬を勝たせたい。負けても、馬に山を上げる自信をつけさせるような、次につながるレースをしたい。最初からそうしたいとは思っていましたが、最近は実際に考えられる余裕が出てきました。
斎藤:50勝して、減量特典がなくなったあとも苦労したようには見えませんでした。その余裕はどこから来るのでしょうか。
島津:そんなことないですよ。星(減量)が取れた後は苦労して、藤野さんにアドバイスを聞いたりしました。がむしゃらにやっていたら、秋ころには余裕が出てきた感じです。
斎藤:えんじ色の勝負服は、同じく道南出身の藤野俊一騎手を参考にしたそうですね。
島津:父が持っていたシマヅショウリキ(99、00年ばんえい記念など重賞9勝)に乗るなど仲がよかったので、昔から知っていました。今でも尊敬しています。酔っ払って電話かかってきたりしますが(笑)。
斎藤:さて、騎手になったきっかけを教えてください。競馬場に来て1年半、一発合格でしたね。
島津:祖父、父が馬主でした。北斗市は草ばん馬も盛んなので、子どもの頃からポニー引っ張っていました。騎手になろうと思ったのは保育園くらいの時かな。ばんえいの存続が危なくなった時にどうしようか悩んだこともありますが、父のつながりで岩本利春調教師にお世話になりました。
斎藤:1年たって変わったと思うことはありますか? ファンレターとか来るでしょう。
島津:ふけたなぁって...(笑)。写真撮られるのは慣れました。インタビューはまだちょっと...(笑)。ファンレターは来ないですよ。バレンタインのチョコもこなかったです...。(好きな)タイプはおとなしい子です。
斎藤:3月13・20日に放映されるNHKドラマ『大地のファンファーレ』には、主役のライバルとしてエリート新人騎手が出てきますが、モデルは島津騎手じゃないですか?
島津:いや...どうかな(笑)。ドラマには一瞬出ています。ちょっと笑ってますが(笑)
斎藤:普段はどうやって過ごしていますか。また、仲がいい騎手はいますか?
島津:厩務員作業があって遊ぶ時間がないから...釣りは好きです。夏は1人で海に行きました。普段は1人で行動しますが、謙(西謙一騎手)や幸太(長澤騎手)とよく話します。
斎藤:「ケン」や「コウタ」って...先輩ですが、そのように呼ぶんですね。厩舎で、みんなでご飯を一緒に食べたりはしないんですか?
島津:自炊しています。料理はそんなにしないけど...米は炊きます。カップラーメンは食べないです。体によくないから。170センチ60キロです。食べても太らないんです。寝たら元に戻る。弁当箱(騎手重量を合わせる重り)は、佐藤希世子元騎手にもらったものを使っています。
斎藤:よく特別で騎乗しているのはアグリミズキですね。
島津:かわいいですよ、まじめで。おでぶちゃん。1100キロくらいあります。めんこいです。今担当しているのは、父が持っているハヤテショウリキ、アウルメンバー、キュートエンジェル。キュートエンジェルかわいいですよ。でぶだけど。あとは、春にテスト受ける2歳馬。ニシキウンカイの下です。動物は全般好きで、イヌ飼ってます。名前はナナ。(レースでは)逃げるのは楽ですが、追い込みが好きです。
斎藤:乗ってみたい馬、レースはありますか?
島津:ニシキダイジンかな。本当のオープン馬というのがどのような馬か、乗ってみたい。レースでは、大臣賞(ばんえい記念)もですが、イレネー記念も勝ちたいですね。2歳の(最高峰)、っていうのはかっこいい。
斎藤:ばんえいの見どころを教えてください。
島津:馬の迫力や大きさはもちろんですが、そりの上で踊るような、騎手の動きを見てほしいです。僕は藤野さんの左パンチを真似します!
斎藤:扶助として、そりの上で体を揺らすんですよね。左パンチは右手に持った手綱で馬の左側のお尻をたたく時。
島津:はい、邪魔にならない程度に。藤野さんは独特のリズムがあって、きれいなんです。
斎藤:今後の目標を教えてください。
島津:馬を育てられる騎手になりたいです。左パンチ見てください(笑)。馬券、特に島津新の馬券を買って!
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香