2023年4月30日第10レースをアサゾラで勝ち、ばんえい競馬史上28人目、現役では8人目となる通算1,000勝を達成した。デビューして15年目、昨年度は133勝を挙げて過去最高のリーディング2位。信頼の置ける中堅騎手として、実績を積み重ねている。
1000勝おめでとうございます。意識はしていたのでしょうか。
みなさんのおかげです。周りに競馬関係者がいないところからスタートして、最初はここまで続けられないと思っていました。3月に昨年度の開催が終わった時点で990勝だったので、お祝い返しをどうしようかと考えていました。最近ばんえいでは自分の名前が入ったグッズを作ることが多いのです。かぶらないようにと悩みました。
現実的ですね(笑)。500勝まで約10年、そこから1000勝まで5年と、急速に勝ち星を増やしています。振り返って、転機はありましたか。
センゴクエースでしょうか。強い馬に乗せてもらえるようになって責任が増しました。うれしさより大変。下手なことできないな、とプレッシャーがあった。強いけどもろさのある馬で苦労しました。これまでの騎手が、もろさを隠して騎乗していたのはすごいです。
ばんえい記念から翌年のばんえい記念まで1年を通してのレースの運び方、重賞に向けた乗り方を学びました。
プレッシャーはどのように克服してきましたか。
それはもう、慣れですね。強い馬に乗れたのは大きかったです。
ほかにもさまざまな強い馬に乗ってきました。思い出はありますか。
サクラリュウは多くの重賞にも乗ったし、初めてばんえい記念で乗れたのはいい経験でした。気性の荒い馬でした。当時はそのような馬に多く乗っていたので、「あのような馬に乗れるなら」と騎乗依頼も増え、評価につながっていったと思います。
今年から種牡馬になりました。脚を痛めて休んでいたので良かった。よく助かりました。
キタノユウジロウは、2021年のばんえい記念で2着になったのが印象深いです。
急な乗り代わりでしたけどね。今思うと、獲れたかな......って思う。体が大きい馬で力があった。いい子を出してくれれば、と思います。
オーシャンウイナーは古馬戦線で戦うようになりましたが、まだこれからです。上の馬たちは強い。臆病な馬。キタノタイショウの子はそのようなところがありますが、その憶病さがいい。切れはあるが、我慢が効かない。
オーシャンウイナー
3歳のキョウエイプラスは、馬場が軽くなればいいかな。真面目で走りたがりな馬で、前に行く気持ちを制御しながらレースを進めています。走れるうちはいつも走っている。普段の練習の時は歩いているのにね。
ヤングチャンピオンシップを制したキョウエイプラス
コウテイも、乗りたいけど最近は乗り馬が重なってしまい、乗れていません。力はあるし、障害もいい。またばんえい記念に出てくれれば楽しみです。
騎乗するうえで、大事にしていることはありますか。
真っすぐ、ロスなく走らせることです。負担をかけないように。若い頃よりはいい意味で、力の抜き方を覚えました。若いときはとにかく乗りたかった。若い騎手の手本になれるように、と思う。
騎手になりたい人が増えているのはいいことです。騎手になりたいけど体重制限がきつい人もばんえいなら騎手を目指せる。厩務員も、生き物が好きな人はもちろん、背中に乗らなくてもいいから落馬の危険もない。女性厩務員もやりやすいと思います。
昨年お子さんが生まれて、変わったことはありますか。
稼がないといけないですね。しっかりやらなきゃ、と思います。妻の家族が応援してくれたり、職場で自慢したり、周りの親戚に騎手であることを喜んでもらえているのがうれしいですね。
ばんえいの認知度が高まっている証拠でこちらもうれしいです。では、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
どんどん、帯広に来てほしいです。目の前で迫力あるレースを見せられれば、と思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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明け3歳によるイレネー記念をオーシャンウイナーで制し、ばんえい記念ではキタノユウジロウ(牡6)で2着と、活躍が目立つ菊池一樹騎手を紹介します。
ばんえい記念は乗り替わりで2着でしたね。
(前日)朝、調教師に乗り替わりを告げられました。ばんえい記念は、年度最後の目標。お客様の数も違うし、騎手として乗りたいレースです。不安よりは、調子が上がってきている、という思いで臨みました。障害を一腰で上がった瞬間、あっ!(勝てるかも)と。軽馬場の割に道中はみな慎重で、ゆっくりしたペース。(騎乗予定だった)松田(道明)さんならもっと強気に前に行ってたかな、と今になって思います。道中はコウシュハウンカイを見ながら行き、ゴール前で差せるかな、と思っていたら外からホクショウマサルが来て2着でした。
ばんえい記念2着のキタノユウジロウ
前日はイレネー記念を制しました。乗り替わり2戦目ですね。
挑戦者という気持ちで乗りました。ゴール前は、脚がもちそうだと思ったのでハミをあてながら進みました。乗りやすいいい馬です。真面目で行きっぷりがいいし、息も入れやすい。降りてからもしっかり歩いてくれる。性格は臆病なところがあります。キタノタイショウの子はみんな父に似て、臆病なところがある。
厩務員さんが喜んでくれてよかったです。「ありがとう」って握手を求めてきました。これからはクラスも上がるので、ゆっくりと使っていくことになると思います。
イレネー記念を制したオーシャンウィナー
乗り替わりでの勝利が多いですね。緊張はしないですか?
だいぶプレッシャーはなくなりましたね。一緒に走っているクラスの馬や、前走、前々走を見るようにしています。
クセのある馬に乗ることが多いように思います。それでもけがは少ないですね。運動神経がいいのでしょうか。
一度気性の激しい馬に乗ってから「菊池に乗せれば大丈夫」というようになったのでしょうか(笑)。他の馬に近づけない、クセを出さない、など事故が起きないよう気をつけています。運動神経がいいわけではないですよ。
ばんえいも新しいシーズンが始まりました。期待馬はいますか。
ヤマトタイコー(セン4)は重賞でどのようなレースをするか楽しみですね。フクフクライデン(牡3)はまだこれから、成長に期待。サクラダイチ(牡8)は年度が変わって、重量が軽くなってからが楽しみです。
2歳はいかがですか。第1回能力検査で時計上位のキョウエイハンターは楽しみですね。ヘッチャラも障害のうまさが目立ちました。
キョウエイハンターは自信を持って乗りました。馬体が大きく期待している。ヘッチャラはセンスがありますね。バネもある。顔に大きな流星があって魚目。見た目も注目してほしいです。
2歳は、デビューするまでにソリにならす馴致を行います。所属厩舎以外からも頼まれながらやっています。1日3、4頭はいるかな。1頭に4人ほどついて行い、私は足が速い方なので、引っ張って馬と一緒に走ることが多いですね。
キョウエイハンター
先行と追い込み、どちらが好きですか。
追い込み馬というのは障害が苦手な馬が多いからなぁ。逃げられるなら、障害力を生かして先行して降りて、歩いてくれる馬がいいですね。
菊池騎手は、もともと平地競馬のファンで、インターネットの求人を見てばんえい競馬の世界に飛びこんだんですよね。
馬ならなんでも良かったんです。平地のファンだったことがかえってよかったのかもしれない。ばんえいを知っていると大変さとのギャップに悩んでいたかもしれません。今は厩務員が少なくて大変です。試しでもいいから体験してばん馬に触れてみてほしい。それから考えてもいいと思う。最初から、人生かけようと思わなくていいんです。最近は、女性厩務員が頑張っていますよ。長く働いていますね。
騎手としては、結果が出なかったり、乗れなかったりするとやめたくなるときもありました。でもそういうときに限って調子が上がってくるんですよね。
オッズパーク会員の方に一言お願いします。
なかなかコロナが落ち着かないですね。ファンの方には体に気を付けてほしいです。今ではインターネットなどの画面でも見られるので、迫力が伝わるレースをできるよう頑張ります。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
8月24日、3歳三冠の一冠目『ばんえい大賞典』をカイシンゲキで勝利し、重賞2勝目を挙げた菊池一樹騎手(27)。初めての1位入線による重賞勝利でした。
おめでとうございます。2012年のナナカマド賞をショウチシマシタで勝った時は、1位入線馬の降着による繰り上がりでしたものね。
やっと周りに「タナボタだ」と言われなくなるのでほっとしました。それまで、あだ名が「タナボタジョッキー」ですよ(笑)。 レースの1週間前くらいから、どう乗ればいいのか考えていました。緊張していたんでしょうね。(カイシンゲキの)槻舘調教師に、「なるようになる」と言われて楽になりました。(2着のハクタイホウ騎乗の)赤塚健仁騎手は勝てば重賞初勝利。それに比べたら、重賞を1つ勝っているので気持ち的には楽だったと思います。
その名の通り、カイシンゲキの快進撃ぶりはすごいですね。ここまで急成長する馬は珍しいと思います。
カイシンゲキは、デビュー前の馴らしからやっていた馬です。この時から引っ張る力はそれなりにあったのですが、悪い癖があったからか、レースでは案外でした。2障害の下に着いたら、左に逃げるんです。(トップ騎手の鈴木)恵介さんが乗っても、逃げたままぐるっと1周してしまうくらい。さぼろうとするのかなぁ。 これからオープンや重賞に出ることになるし、他の馬に迷惑をかけたら危ないので、昨年の秋くらいから強いハミに変えて、しかりつけながら矯正しました。今年度初めのレースでやわらかいハミに戻したら、やる気まんまんになったんです。障害の下につけても抑えないといけないくらいがらっと変わって、行く気になりました。大外枠に入った時、左に寄れたら落ちるのではと心配していたのですが、よれずにレースができました
ばんえい大賞典ではハクタイホウに勝ちました。ゴール前、接戦でしたね。
5月の『とかち皐月賞』(特別)はハクタイホウの2着でしたが、ゴール後おしっこをしていたのは、かなりきつかったからだと思います。この時、ハクタイホウにはかなわないかな、と思いました。でも、やっとライバルと言えるようになりました。カイシンゲキの良さは、切れ味と粘り。 ばんえい大賞典は、先行したハクタイホウを見ながら障害をかけて、先に降りられたので楽でした。ゴール前、しっかりぼえ(追え)ば勝てるかな、と思いました。
3・4歳の重賞はまなす賞(2着)も惜しかったですね。
ゴール前、後ろから(勝った)コウシュハウンカイが来ているのが見えたから、どこまでもつか、と思いながらレースをしていました。もう手応えはなかったのですが、予想以上に頑張ってくれました。 カイシンゲキの性格はマイペース。急に引っかかるところがあるけど、普段はゆっくりゆっくりで、カメみたい。これからは重量が増えますね。まだ(馬体重は)1000キロないので少しずつでしょう。まだ成長の余地があります。
菊池騎手は、馬を追う時に膝を大きく上下させているフォームが印象的です。
そうですか? 無意識のうちに、そのように動いているのですね。いろいろな人の追い方を真似して試してきたら、今のフォームになりました。目標の騎手は鈴木恵介さんです。ぼったら一番。馬の反応を見て、タイミングを読むのがうまい。身長が同じくらいなので参考になります。
プライベートでは、釣り好きですよね。
先日、大津でアキアジ2本釣りました。自分でさばいて、料理しますよ。大友調教師と行くことが多いですが、最近若手騎手の中で釣りがブームなんです。西将太や島津新もやっています。
所属厩舎の田上(忠夫)調教師はどのような先生ですか。
優しいです。とても馬を大事にする。馬を叩くことを嫌がります。厩舎に入りたてのころ、調教で馬を叩いたら、その痕を見てすごく怒られました。
次の目標は、通算200勝でしょうか。(9月15日現在192勝)
特に数にはこだわっていません。騎乗している馬が勝てるところで勝ちたい。 目標のレースですか? BGIII(ばんえい大賞典)を勝ったので、BGII、BGIかな。
菊花賞、ダービーで達成できますね。では、ファンに一言お願いします。
競馬場の来場者が増えて、ありがたいです。『銀の匙』効果なのか、若い人が増えましたね。これから帯広では、収穫の秋にちなんだ食べ物のイベントが多くあります。それに合わせて本場にばんえい競馬を見に来てほしいです。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
最近若手騎手の活躍がみられるばんえい競馬の中でも、今年度重賞初制覇と通算100勝を達成。その先陣を切るのが2009年デビューの菊池一樹騎手です。今シーズン39勝を挙げてリーディング15位(1月6日現在)。デビュー5年目の心境をお聞きしました。
斎藤:乗り方で変化したと思うところはありますか。
菊池:差し馬でも、落ち着いた騎乗ができるようになりました。今は、逃げ馬と差し馬では、差す方が好きです。逃げ馬は、逃げる競馬をしなければならないぶん、2着や3着になりやすいですが、差す馬だと勝つか負けるかだから、その分勝ちやすい。
2年目に転厩した田上厩舎の馬も、動かせるようになったと感じるのは今年の春くらいからです。イーグルという馬は、障害で息を入れるタイミングが少しでもずれると上がらないんです。そのような性格だから今年13歳でも元気なんでしょう(笑)。息が入るペースがわかってきたので、後ろからでも行ける自信はつきましたね。
斎藤:昨年4月、サカノテツワンで100勝を達成しました。それから年度内10勝して減量がなくなりましたが、その後苦労した感じは受けませんでした。
菊池:減量なくなったから(騎乗が減って)乗れないべな、と思っていたけれど、乗せてもらえたからです。それから成績が上がりました。
斎藤:同期には日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞した長澤幸太騎手がいますが、意識はしていますか。
菊池:1年目からあきらめました(笑)。同期だからと気にはしていないです。
斎藤:初重賞制覇は、10月ナナカマド賞(2歳)のショウチシマシタで、1位入線馬の降着による制覇でした。
菊池:ショウチシマシタは真面目な馬です。ゴール後は、先輩方も集まって話をしているし、これで(重賞を)獲っちゃうのか、インタビューでどのような質問をされるのかな、という気持ちはありました。でも、獲ったら獲ったでいいかなと。
斎藤:笑顔のインタビューだったので、ファンも見ていて気持ちよかったですよ。また、12月30日の2歳重賞、ヤングチャンピオンシップは2着(アグリナデシコ、7番人気)で惜しかったですね。
菊池:勝った馬が強かったです。アグリナデシコと姉のアグリローズは似ていて、2頭ともものすごく真面目。ハミをぐっと、持っていってくれるんです。牝馬は真面目な馬が多いですね。ただ、ナデシコは変なクセがあって。障害を降りたらおしっこをするんです。牝馬では、気合いを入れるとびっくりして、おしっこをする馬がたまにいるんですが、ヤングチャンピオンシップの時もびしゃびしゃでした。
斎藤:ばんえいの騎手は、ほぼ真下にいるようなものですから大変ですね。この時もですが、穴をあける騎手という印象があります。
菊池:人気がないのは乗りやすいです。印がついていたら、ある程度前に行って競馬をしなくてはいけないですが、じっくり構えられる。ばんえいは5重勝や、最近7重勝もスタート(オッズパークLOTO)しましたから、人気薄で勝てるといいですね。
斎藤:もともと、平地競馬のファンだったんですよね。
菊池:はい、テイエムオペラオーが勝った有馬記念(2000年)を見た中学生の時にのめり込みました。出身は岩手ですが、馬の仕事をしたいと高校時代、求人で見つけてばんえいの世界に入ったんです。騎手という点では、平地では難しいのでばんえいでよかったと思いますね。いろいろと経験させてもらっています。
今でもJRAは見ますよ。オルフェーヴルのダービーや阪神大賞典はおもしろかったですね。ゴールドシップは強いです。JRAジョッキーデーで、JRAの騎手に会うこともありますが、藤田(伸二)さんは男らしくてかっこいいですね。いろいろとお世話になっています。
斎藤:今後の目標を聞かせてください。
菊池:(繰り上がりでなく)1位入線で重賞を獲りたいです。
斎藤:そうですよね。期待している馬はいますか。明け3歳馬はいろいろな馬に騎乗していますね。
菊池:自厩舎のマツリダワッショイで大きいレースに出られればいいなと思います。多分、今3歳で一番大きい(1月4日現在1065キロ)んですよ。力はあるから、重いレースで有利だと思います。古馬では、メンコイワタシの調子がいいですね。重賞は、ゴールドシップの小林オーナーが寄付していただいた、特別報奨金の出るレースを獲りたいです。(報奨金は)ものすごく励みになっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香