渡邊竜也騎手は2022年9月23日に通算500勝を達成。2017年4月のデビューから5年半での達成ですが、およそ8カ月の開催自粛期間がありましたから、実質的には5年弱のスピード記録。今年は笠松で2位以下に大差をつける成績で、初めてのリーディング獲得が濃厚です。
今年の好成績の要因はどのようなところでしょうか。
いい馬にたくさん乗れたことが最大の要因ですね。今年は3歳馬が古馬戦に入るといまひとつという感じで、自分が続けて乗せていただいている馬で多く勝てたという感じもあります。
昨年はケガもあって3位でした。
今年はその影響はほとんど感じないですね。いまのところ、不安なく乗れています。これから寒くなってくると分からないですが......。
さらに名古屋競馬場でも、笠松所属騎手としては抜けて多い勝ち星を挙げています。
新しい名古屋競馬場は、最初のころは馬場が安定していませんでしたが、徐々に落ち着いてきた感じがします。個人的には、名古屋はむしろ乗りやすいというイメージです。景色が広く感じるので、心に余裕ができるといいますか。
10月5日に行われた通算500勝達成セレモニー(写真:岐阜県地方競馬組合)
その名古屋競馬場では、惜敗だった東海ダービー(笠松のイイネイイネイイネに騎乗してアタマ差2着)が思い出されます。
あのレースはくやしい結果でしたし、今でも『あれがああだったら......』とか思うのですが、自分でもあのレースで一皮むけたな、という感覚があります。あの経験は本当に大きな収穫でしたし、あれからいろいろと考えるところもありましたから、今の自分なら着順が変わるかもしれません。
それにしても今の勢いは驚異的。10月5日と6日の笠松では4勝ずつを挙げました。
今のクセが少ない馬場は乗りやすいですね。馬場にクセがあると人間が考えすぎてしまいますし、危ない競馬につながる可能性も出てきます。1日4勝は出来過ぎだとは思いますが、でも今日(10月6日)の競馬は楽しかったです。今日もそうですが、勝っても負けても岡部(誠)さんと勝負をするのは楽しいですね。同じレースに乗るたびに岡部さんを意識しますし、岡部さんを少しでも多く負かそうと考えます。岡部さんは大きなカベであると同時に、大きな目標。間近で見ることが勉強になります。
10月6日の最終レースでは岡部誠騎手を1馬身差でしりぞけ勝利
リーディングを獲れば、岡部騎手をはじめとした名手と別の競馬場で乗る機会も得られます。
そのために、とにかくケガをしないように気をつけたいですね。来年、トップジョッキーのみなさんと乗る機会があることは意識しています。そこで笠松競馬の代表として、笠松競馬をアピールしたいと思っていますから。そういう舞台に向けてという意味でも、引き続き頑張っていきたいです。
今年の冬は各地からたくさんの騎手が笠松に来ましたが、いかがでしたか?
笠松は騎手が少ないので、とてもありがたかったです。新型コロナで陽性になった人が多くて、一緒に乗れる期間は短かったですが、ほかの騎手の乗りかたを見るのは面白かったです。こんどの冬も各地から来てくださると聞いていますので、楽しみにしています。
渡邊騎手は昨年9月の笠松競馬再開のとき「新人騎手が笠松で乗りたいと思ってくれるような競馬場にしたい」と話していました。
ファンのみなさんにはぜひ、若手騎手に注目していただければと思います。地元の騎手はもちろんですが、デビューからそれほど経っていない騎手が期間限定騎乗で来てくれるケースも増えて、チャンスと騎乗技術の向上を求めているという気持ちを感じます。それも含めて、笠松競馬に注目していただけるとうれしいです。
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※インタビュー / 浅野靖典
笠松の騎手として初めてNARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した渡邊竜也騎手。まもなくデビュー3年目を迎える彼は、重賞初制覇にあと一歩まで手が届きかけています。また、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)を経験したことであどけなかった表情は凛々しくなってきました。着実に成長を遂げている彼に、現在の心境を伺いました。
NARグランプリ優秀新人騎手賞の受賞、おめでとうございます!笠松の騎手がこの賞を受賞するのは初めてです。
ビックリしました。他の先輩方が受賞されてそうですけどね。加藤聡一先輩(名古屋)や鈴木祐先輩(岩手)が新人賞を獲ったのを見て、勝利数で一番になればいただけるのかな、と考えていました。なので、「獲れるんじゃないかな」と思っていました。デビューした時からずっと新人賞を獲りたくて気にしていたんです。嬉しいですね。
デビュー2年目となる昨年は64勝。前年の38勝から大幅に勝ち星を量産しました。振り返ってみてどうですか?
去年は取りこぼしが多かったなって思います。所属の笹野博司厩舎は昨年、笠松リーディングですし、先生がいい馬に乗せてくださるのでもうちょっと勝つべきですね。
昨年は笹野厩舎にホッカイドウ競馬から水野翔騎手が移籍してきました。3年先輩にはなりますが、年が近くて仲が良く、ライバルとしてもいい刺激になっているように見えます。
刺激は少なくともあるかもしれないですね。僕の中では水野さんと競争しているって感じは特別ないですが、水野さんから学ぶこともあります。技術的な面は向山(牧)さんとかに聞くことが多いです。一緒にレースビデオを見ている時に「こうですかね?」とか「あそこはこうした方がよかったですかね?」と聞くと、答えてくださることもあります。
昨年は年末に重賞で惜しいレースが2つありました。まずはボルドープラージュ。ライデンリーダー記念では7連勝中だったエムエスクイーンにクビ差まで迫って2着でした。エムエスクイーンより内の枠で、同馬より前でレースを進めましたが展開としてはどうでしたか?
枠の並びが逆だったら、エムエスクイーンをマークしたかったですね。ボルドープラージュは先頭に立ったり、距離だったり、何かしらの理由で最後に止まるところがあるんです。枠順が逆だったら、ぴったりマークしてレースができたかな、と思います。
2月には遠征して園田ユースカップでも惜しい2着。レース後は悔しそうな表情が印象的でした。
1400メートルでしたし、馬場も味方して最後までもってくれました。でも、この距離でも直線は止まってしまうので油断はできなかったです。決め手勝負になると、勝ったジンギの方が断然上ですし。勝てなくてめっちゃ悔しかったですが、ビデオを見ると楽に交わされてしまっていましたね。園田には同期が2人(長谷部駿弥騎手、永井孝典騎手)いるので、同期の前で重賞を勝ちたかったです。検量室前に戻ってきたら長谷部に満面の笑みで「惜しかったな」って言われて、余計に悔しかったですね。
ボルドープラージュで惜しくも2着だった園田ユースカップ(写真:兵庫県競馬組合)
昨年末にはもうひとつ、カガノカリスマで東海ゴールドカップ3着がありました。カガノカリスマではその後、川崎記念や佐賀記念など全国に遠征に出ていますね。
いろんなところに連れて行ってくれる馬ですね。以前はあまり歩様が良くなかったんですが、僕のところに回ってきてから調教でしっかり乗ったら結構良くなってきて、いろんな競馬場に行けるようになりました。ダートグレードレースで上位争いに加わることはなかなか難しいですが、こうして馬と遠征できるのってすごく楽しいですね。
YJSでも全国の競馬場で騎乗し、2年連続でファイナル進出を果たしました。振り返ってみていかがですか?
YJSは僕のモチベーションでした。この2年間はYJSを追いかけていたら終わっていましたね。「今度YJSで乗る競馬場ってどんな感じなんだろうな?」とイメージして、笠松のレースでもそれに例えて乗ってみたりしました。イメトレの効果があったかどうかはわからないですが、いい馬が当たって予選も突破できたので、やっておいて良かったかなと思います。昨年は予選ラウンド地方全国1位で行きたかったんですが、最後の最後に櫻井(光輔)にやられちゃいましたね(苦笑)。
昨年12月に通算100勝を挙げ、減量を卒業しました。先輩たちと同じ条件でレースに騎乗することになりますが、これからの目標はなんですか?
やっぱり重賞制覇ですかね。ボルドープラージュは水沢に移籍しちゃうそうなのですが、そろそろビップレイジング(東海ダービーなど重賞2勝)が帰ってくるらしいので、期待しています。あとは、また先生がいい馬を連れてきてくださると思うので、そこで期待にも応えたいですね。今年は尾島(徹)先生も勢いがあって笠松リーディングなので、自厩舎がリーディングになれるようがんばりたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
YJSには出場できなくなって、いろんな競馬場に行くことがなくなったので、みなさんに忘れられないようにしたいです。笠松に引きこもっていても仕方がないので、いろんな所に行って顔と名前を覚えてもらえるように頑張りたいと思うので、僕を忘れないでください。
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※インタビュー / 大恵陽子
ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンド笠松で、見事勝利を挙げた笠松の渡邊竜也騎手。4月のデビューから2カ月経った現在の様子を伺いました。
まずは騎手になったきっかけから教えて下さい。
母方のおじいちゃんが競馬が好きで、小学校1年生くらいの時から一緒に競馬を見ることが多かったんです。何番の馬を応援する!みたいな感じで、どの馬が好きとかはなかったんですけど。中学3年生で進路を考えた時、「騎手をやってみれば?」って言われて、じゃあやってみようかなって。
かなり大きな決断をあっさりしましたね。
自分はサッカーをしていて、高校から声をかけていただいていたので、受験勉強に対してあんまり切羽詰まった感じがなかった、というのがまずあって。中学3年でJRAと地方を受けて、ダメだったら高校へ行こうと思いました。それで、JRAは落ちてしまったんですけど、地方は受かったので騎手になる道に進みました。
周りのほとんどが高校へ進む中で、迷いはなかったですか?
中学2年から乗馬を始めたんですけど、それがすごく楽しかったですし、おじいちゃんが本当に競馬が好きで、今までおじいちゃんにすごく迷惑をかけてしまったので、おじいちゃん孝行じゃないですけど、やってみようかなと思いました。親に怒られた時とか泊めてもらったりして、いつも味方になってくれたんです。
おじいちゃん喜んだんじゃないですか?
そうですね。今はすごく喜んでくれてますけど、地方競馬教養センター時代は本当にキツくて、辞めたいと思ったこともあって...。その時は心配しながら支えてくれました。
センターはキツかったですか。
同期が競馬関係者が近くにいたり、所属が決まっている人が多かったんですけど、僕はまったく知り合いがいなかったですし、所属も決まっていなかったので焦りました。とにかく、自分は騎手の卵なんだっていう実感が欲しくて。センターに合格したことは嬉しかったですけど、所属競馬場や厩舎がなかったので、ずっと実感がなかったんですよね。
どういう縁で笠松に決まったんですか?
実は、最初は船橋競馬に入るという話があって、中間査閲の時に調教師さんも会いに来てくれたんですけど、「南関東は騎乗数を確保するのが厳しいぞ」と言われて。騎手になるからには、たくさん乗って上手くなりたいと思っていたので、チャンスの多い競馬場を探すことになりました。教官たちとも話して、笠松は騎手も少ないしたくさんチャンスをもらえるんじゃないかということで、笠松で探してもらったら、笹野博司先生が所属にしてくれるということになりました。
笠松はいかがですか?
楽しいです。厩舎関係者の方々も、騎手の先輩方もみんな優しいです。笠松に入れて本当によかったですね。
特にどなたが優しいですか?
佐藤友則騎手です。優しいですし、全国で活躍しているのでとても尊敬しています。
実際にデビューしてみていかがですか?
レースは、デビューした頃は本当に緊張してました。いろいろな厩舎の方々が、まずは1勝させてあげようみたいな感じで応援してくれて、いい馬にも乗せていただいたんですけど、緊張してまったくレースができなかったです。思い描いたレースにならなくて、本当に申し訳ないですし、すごく悔しかったです。
4月26日、笠松第3レース、サムライズムで見事初勝利を挙げました!
はい、ありがとうございます。あの馬に乗せていただいたのが2回目だったんですけど、1回目が逃げろという指示だったのに、スタートで出遅れてしまって前に行けず、4着に負けてしまったんです。その悔しさがあったので、まずは逃げることだけを考えていたんですけど、勝った時は本当に嬉しかったです。ようやく勝てたか...と思いました。
4月26日、記念すべき初勝利
4月デビューですからタイミング的には遅くないですけどね。
ただ、たくさんチャンスをいただいていましたし、同期も勝っていたので、焦る気持ちもありました。関係者の皆さんと、馬ががんばってくれたお陰で初勝利を挙げることができて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
2勝目がヤングジョッキーズシリーズの笠松ですよね?
そうです。本当に嬉しかったですね。2、3番手につけられたらいいなと思っていて、その通りの位置につけられました。道中もいい手ごたえで行けて、ちょっと先頭に立つのが早かったですよね。4コーナーで被された時には、まずいな...と思いました。もうちょっとじっくりと行けたらもっと楽に勝てていたかもしれません。
地元のヤングジョッキーズシリーズではゴール前の接戦を制した(左)
早め先頭から一度抜かされたように見えましたけど、よく差し返しましたね。
本当に馬ががんばってくれました。ゴールした時は勝ったとわからなかったです。ただただがむしゃらに追っていました。ヤングジョッキーは楽しみにしていましたし、地元戦で絶対に結果を出したかったので、勝ててすごく嬉しかったです。周りの方からも「おめでとう、よかったな」って言ってもらいました。
今、6勝を挙げて(6月15日現在)順調ですね。
気持ち的に少し落ち着いたかなと思います。3勝目がようやく自厩舎の馬で初勝利だったんです。そこも大きかったですね。
今の課題はありますか?
スタートでよく躓いてしまうんですよ。ガクッとなってしまうので、気を付けたいです。あと、内ラチギリギリを回ってしまうこともよく注意されますね。コーナーがかなり小回りなので、コーナーの入りとか、大型馬だと弾かれたりして危ないことがあるので。先輩方は本当にすごいですけど、減量もありますし、そこを活かして積極的なレースをしたいです。
おじいちゃんは勝ったところを見たんですか?
いや、生ではまだ見ていないんですよ。2回くらい見に来てくれたんですけど。実家も遠いですし、平日開催ですし、なかなかタイミングが難しいですね。でも、早く勝ったところを見せたいです。
今後の目標を教えて下さい。
たくさん乗って、たくさん勝ちたいです。ヤングジョッキーズで今いい位置にいるので、トライアルラウンドの金沢(8月22日)もがんばって、年末の大井と中山を目指します!
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
まだまだ足りないところがたくさあんりますが、一生懸命努力して、馬券に貢献できる騎手になります。注目していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)