2016年から2年連続で笠松リーディングを獲得し、笠松の顔となった佐藤友則騎手。各地の重賞にスポット参戦し、8月からは初の南関東での期間限定騎乗に挑戦。JRAでもコンスタントに騎乗して結果を出しています。上を目指してフル回転を続ける原動力とは?
2016年に初の笠松リーディングを獲得し、そこからは不動の1位。もともと技術には定評がありましたが、どうやってこの上昇気流に乗ったんですか?
いやいや、本当に周りに恵まれただけなので。感謝しかないです。実はジョッキーになってからずっと、1年が終わる時に「やり切った」と思えたことがなくて。くすぶっていたんですよね。「このままじゃダメだ」と思いながらも、言葉にも出せなかったし行動にも移せずにいたんです。でも2014年の終わりに、名古屋の角田(輝也)先生が「お前、このままでいいのか?来年リーディング獲れよ」って言ってくれて。「いや~、厳しいですよ」って言いながらも、自分なりに意識改革して、言葉にも行動にも出すようにして。その年(2015年)は3位で結局リーディングは獲れなかったんですけど、初めてリーディングを目指せる位置まで行くことが出来て「今年、頑張ったな」って思えたんです。それと、僕にとっての偏西風が吹いたんですよね。何だかわかりますか?
偏西風??
尾島徹の騎手引退と、調教師になってからのバックアップです。徹が引退した時、「ともくんを10年連続リーディングにする」って言われたんですよ。後輩にそんなことを言わせた自分が情けないなと思いつつ、「絶対にやらなきゃ」って思いました。
尾島調教師はどんな存在ですか?
後輩なので、抜かれた時は悔しかったし、正直嫉妬もあったんです。でも、こいつスゲーなって思ってて。例えば、岡部(誠)さんと3人でご飯に行った時、当たり前のように岡部さんが奢ってくれようとしたんです。僕はその時、「すみません。ご馳走様です」って言ったんですけど、徹は「いや岡部さん、ダメです。僕出します」って言いだして。「いやいやいや」みたいなやり取りになって、徹がそこで「岡部さん!僕、岡部さんに奢ってもらってたら、いつまで経っても岡部さんを抜けないので」って言ったんですよ。その時、上に行く奴ってこういう奴なんだなって思って、後輩ながらグッときました。徹は体が大きくて減量に苦労して騎手を引退したから、本当は未練もあっただろうし、そんな奴に言われたんでね、これはもうやるしかないと思いました。
ご自身でも仰っていましたが、長年くすぶっていた中で一念発起しても、狭い世界ですからなかなか上手くいかないことが多いと思うんです。殻を破ることが出来た秘訣は何ですか?
僕は本気で騎手を辞めようとしたことが2回あるんですよ。どん底も味わっているし、正直怖いものはないんです。辞めようとした2回とも、周りに引っ張り上げてもらっているし、自分が恵まれているということにやっと気づきました。今までは、頑張ってやってダメだった時に、「やっぱりダメだ」みたいに思ってしまったんですけど、何でもっと周りを信じてもっと頼らなかったんだろうって思うんです。本当によくしていただいているので、もっともっと上手くなって恩返ししたいです。
2年連続笠松リーディングを獲りました。次の目標は何ですか?
今は期待してもらって、すごくいい馬にもたくさん乗せていただいているので、とにかく自分のレベルを上げたいです。それで今年は外に出ようかなって。8月から初めて南関東期間限定騎乗に行くし(8月27日~10月26日・大井所属)、笠松開催があっても他地区の重賞に声が掛かればスポット参戦したり、積極的に外で乗ることを意識しています。
JRAでもよく騎乗していますよね。
有難いことに、たくさんチャンスをもらっています。でも活かし切れていないんですよ。南関東やJRAは多頭数の競馬じゃないですか。それにコースもいろいろあって、そういうところでの駆け引きが僕には足りないんです。(吉原)寛人や(赤岡)修次さんを見ているとすごいなと思いますね。僕ももっともっと経験を積んで、あの2人のように地方を代表する騎手になりたいです。笠松の、ではなくて、地方の佐藤友則と言われるような存在になりたいです。
外で騎乗するのは、地元開催があるとなかなか難しいこともあるのでは?
そうなんですけど、寛人も修次さんも言うんです。「地元のリーディングにこだわっていたら上にいけない」って。もちろん獲れたら嬉しいですけど、それに捉われたらこれ以上上には行けないですから。今のままではまだまだ足りないし、周りに頼りっぱなしなんです。技術面もそうですけど、精神的にも「俺に任せろ!」ってドンと構えていられるような自信がまだなくて。外に出てたくさん経験して、もっと成長したいです。
リーディングを獲って満足!という感じではないですね。
全然満足してないです。もちろん獲れたことは嬉しかったですけど、獲ったら獲ったで次もって思うし、もっともっとってなる。それに、ジョッキーレースに呼ばれるようになったんですけど、周りを見ると負けているんですよね。結果も出ていないし。そこでも負けない技術を吸収したいです。
2018地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップは総合8位だった(後列右端)
そのモチベーションはどこから来るんですか?
自分のこともそうですけど、笠松にもっと人を呼びたいという気持ちも強くなったんです。笠松は騎手も少ないし、今は全国で勝ち負けするような強い馬もいない。リーディングになったからこそ、僕がもっとアピールしたいなと思うようになりました。今は夜中の1時半に起きて調教に乗る毎日で、辛いなと思う時もあるけど、「忙しいって幸せだな」って。努力を怠って調子に乗ったら終わってしまうので、今攻めないといけないなと思っています。
リーディングを獲った今だからこそですか。
そうです。どうしてそう思ったかというと、プロレスラーの内藤哲也選手の影響なんです。新日本プロレスはしばらく低迷した時期があったんですけど、今、内藤選手が注目を集めてまた人気がすごくて。でもそんな内藤選手が言うんですよ。「今僕が攻め続けないと、また暗黒期と言われた時のように戻ってしまう。だから僕は攻め続ける」って。僕も競馬界の内藤というくらいの気持ちで、攻め続けていきたいです!
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。ファンの方の声を直接聞いて、ファン目線の競馬場にしたいと思っています。僕は今、騎手会の副会長なんですけど、ファンサービスもいろいろ考えているので良かったら参加してください。今、勝率も上がっているので、笠松開催では僕が来ない日はないと思って馬券をたくさん買っていただけたら嬉しいです。皆さんの馬券に貢献できるように頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋
10月30日笠松競馬第9レースで、地方通算1000勝を達成した佐藤友則騎手。取材に訪れたこの日(11月26日)は、1日5勝の固め勝ちで年間100勝にも到達し、絶好調の様子。他地区への遠征も多く、その明るい性格からも全国にファンが多い騎手です。今年の活躍の理由などを聞きました。
地方通算1000勝達成おめでとうございます。率直なお気持ちはいかがですか?
今までこんなに良いペースで勝てたことがなかったですし、900勝から1000勝までの100勝は、周りの方のバックアップというのをすごく感じて、とても嬉しかったですね。うまい具合にいい馬にたくさん乗せていただいたり、他場でも乗せて頂いたり、JRAでも乗せていただいいたりと、これまでとは全然違う100勝の内容でした。
デビューから16年目でのこの数字はどう感じますか?
遅いですよね。900勝達成の時は全然納得していなくて、900勝までこんなにかかったのかと。インタビューの際、今の気持ちは?って聞かれて「特にない」って言ったことを覚えています。それまで1年間を通して納得して終われた年がなかったんです。それなのに一回腐ってしまって、騎手もやめようと思ったこともあります。でも、よく考えたら、大した努力もしていないし、何もしていないなって。だから納得して1年が終われるように努力したいと考えてやって結果が、この1000勝なのではないでしょうか。
どんな努力をしたんですか?
これまで体重調整の時、けっこう減量をしていたのですが、普段から体重を2キロ減らしてキープしたり、食生活も自炊で野菜を多く食べたり、トレーニングをしながらも、とにかく体重調整をしっかりするようにしました。
それと、笠松競馬場は調教をしっかり乗っていればレースも乗せてくれる競馬場なんです。それなのに調教にあまり乗っていなかったんですね。騎乗依頼は来るというプライドもあって。でも今のリーディングの吉井(友彦騎手)を見ていると、朝早くから遅くまで調教もこなしているし、挨拶もちゃんとしているし、レース後のコメントもしっかりしている。まず吉井を認めて、そういうところから見習っていこうと決めたんです。自分のプライドやスタイルを捨てて、考え方を全て変えましたね。
そんな中、この1000勝までに印象に残っているレースはありますか?
(尾島)徹が引退して調教師になる時に「僕がトモ君をリーディングにする」って言ってくれたんです。だから、シンゼンライカーという馬で徹の厩舎で初めて勝った時はすごく嬉しかったです。あの言葉を言われた時に思ったのは、絶対に2人でリーディングを獲りたいということ。良い目標ができましたね。
佐藤騎手といえば、遠征をたくさんしているイメージがありますが、大変ではないですか?
休みもないですが、全然大変じゃないです。2、3日競馬がないと体がなまりますし、毎日乗っていた方がリズムもいいんですよ。移動中にすぐに寝られる体質なので、飛行機が離陸するのも気づかないくらい(笑)。それである程度疲れもとれます。
他地区はもちろん、最近はJRAでも多く騎乗されていますが、刺激を受けることはありますか?
JRAですと、多頭数で位置取りの厳しさをとても感じています。笠松だと少し馬がよれても被害を与えることは少ないですが、JRAだと被害が大きくなる。そういう経験もあって、最近では笠松でも常にまっすぐ走ることを心がけています。だから今年は制裁がないと思います。
いろんな競馬場にファンも多くて、横断幕も出ていますよね。気づいていますか?
もちろん、見ていますよ! 本当に嬉しいことです。遠征が増えてから多くのファンの方の応援を感じていて、他場に行った時はすごく励みになります。
来年の目標を教えてください。
まずは、東海リーディング。笠松だけというより、東海といえば佐藤友則と思われたいです。そして、JRAでも二桁勝ちたいです。
これからの目標は?
ワールドオールスタージョッキーズに出て優勝したいです。今は以前と違って予選のワイルドカードがあって、自分にもチャンスがありますよね。その時に言う言葉は決まっているんですが、(2位で出たならば)「予選を優勝して、本戦に出場して下剋上してやる!」って。それでワールドオールスタージョッキーズで優勝して、シャンパンファイトをやりたいです!
では最後に全国の佐藤友則ファンにメッセージを。
最近は、毎週どこかの競馬場で乗っていると思われていると思いますが、乗っているんじゃなく、毎週どこかで勝っていると思われるよう、全国で勝ち鞍をあげていきたいです。周りの支えのおかげで、やっとリーディングを狙えるところまできているので、来年はリーディングを獲ります。全国のみなさんの期待に応えられるようがんばりますので、応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 秋田奈津子
3月1日時点で笠松リーディング5位、2月にはゴールドジュニアで久々の地元重賞Vを果たした佐藤友則騎手。そんな好調期まっただ中、レース直前の慌ただしいところ時間をいただいてインタビューしてきました。
地元のゴールドジュニアをゴールドブラザーで制覇(13年2月15日)
坂本:今年に入って調子がいいようですが?
佐藤:そうですね、リズムはいいですね。
坂本:先月(2月15日)にはゴールドジュニアも勝ちました。重賞は久しぶりのように記憶してますが?
佐藤:そうですね。地元重賞は久しぶりですね。オグリシルクの東海ゴールドカップ(08年12月31日)以来ですね。他地区も含めると、去年の盛岡での絆カップ(11月10日、トウホクビジン)以来です。
坂本:ご自身で『調子がいいな』という感じはありますか?
佐藤:トウホクビジンへの騎乗を頼まれるようになってから、ほんとにリズムがいいというか、他場でも勝つようになって、今まで東海以外では(JRA)阪神でしか勝ててなかったんですけど、盛岡、園田、大井でも勝たせてもらってるんで、リズムはいいですね。名古屋も今年はもう勝ってますし。
坂本:去年までと今年とで、乗っていて違いというのはありますか?
佐藤:う~ん、そういう違いというのはないんですけど、なんか流れがいいというか、リズムがいいなという感じはありますね。
トウホクビジン
坂本:最近、トウホクビジンで他地区へ遠征するようになりました。そういった他地区へ遠征したときの気持ちはどんな感じですか?
佐藤:関東へ行ったときは、雰囲気もいいですし、普通のオープンとか地方重賞とかだと勝ち負けしてくるから、気持ちは違いますよね。そこそこいいところまでくるんじゃないかという期待感と、馬もがんばってくれるので。
坂本:トウホクビジンの絆カップのときはありえないような位置から追いこんできました。
佐藤:馬主さんからも『着には来てほしい』というのはあって、折り合いだけをつける乗り方をしようと思ったら結果的に位置取りが後ろになっただけなんですけど、ペースも速かったので思った以上に後ろになっちゃったんですけど、まぁ、焦らず乗れたから馬も頑張ってくれたっていうのもあると思います。勝とう勝とうという気持ちよりもちょっとでも前にっていう気持ちがあったので、馬に余計な力をかけさせない乗り方ができたんじゃないかと思いますし、それが結果につながったと思います。
坂本:どのあたりで『勝ち』を確信しましたか?
佐藤:直線ですね。直線入るまでは3着はあるなと思ってたんですが、直線向いたら前が見えたので。直線に入る瞬間に馬もグンとハミ取って、一気に前との差がなくなったので、『これはとらえられるな』と思いましたね。
坂本:今年、まだ始まったばかりですけど『ここで乗ってみたい』という競馬場はありますか?
佐藤:3月(17日)に金沢での騎手招待レースに呼ばれてるんですけど、そういった招待レースというのには呼ばれたいですよね。正直なところ、WSJSの予選にも出てみたいですね。今のところ、リーディング争いも横並び状態ですし、今の調子が続けばチャンスは十分あるんじゃないかと思ってます。藤原(幹生)もがんばって勝ち鞍伸ばしてますし、お互いにいい刺激になってます。
坂本:では、今後の抱負を。
佐藤:まあ、焦らずのんびりと(笑)上位争いできればと思ってます。
他地区への遠征というチャンスからしばらくの間遠ざかっていましたが、『現役最多遠征馬?』トウホクビジンとのコンビで、はたまた招待騎手として活躍の場を広げるであろう佐藤騎手の今後の活躍に期待です。
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※インタビュー・写真 / 坂本千鶴子