10月14日の名古屋競馬第12レースで勝利(ウォーターレラ騎乗)し、地方競馬通算4,000勝を達成した岡部誠騎手(名古屋)。最近の心境を伺いました。
地方競馬通算4,000勝達成、おめでとうございます。
ありがとうございます。いい馬にたくさん乗せてもらっているので、周りの方々のお陰です。まぁ、長いことやっているということもありますが、自分でもよくここまで来れたなとは思いますね。ただ数字的なことはそこまで意識していないので、数字よりも中身のいいレースをしたいと思っています。
2,000勝を達成した10年前のインタビューでは、「もっと上手くなりたい」と仰っていました。
もちろんそれは今もですよ。競馬に乗っていても1頭1頭の馬で全然違いますし、明確な答えはないですから。なるべく勝利に近づける競馬をしたいと思っています。
2,000勝からの10年というのはどんな時間でしたか?
いろいろな競馬場へ行かせてもらうようになって、たくさん挑戦させていただきました。年も年なので、なるべく色々なところで動けるうちに乗りたいという気持ちが強いです。それぞれの競馬場で馬のつくり方も違うし、レースの展開も違うので、遠征が多くなって引き出しが増えたかなとは思います。
今年はコロナ渦で大変な状況が続きました。
いろんな遠征も中止になってしまって、とても残念でした。乗るはずだった馬が別の騎手で競馬をしているのを見て、悔しくないといったらウソですけど。でも普通に競馬を開催出来ることが、どれだけありがたいかも実感しました。気持ちを切り替えて、地元や乗れるところでしっかり結果を出そうと。南関東への遠征は現在も控えていますけど、感染に気をつけながら遠征出来る競馬場もありますし、なによりオッズパークなどで馬券を買っていただけることがありがたいです。本当に感謝しています。
10月14日、地方競馬通算4,000勝を達成
4,000勝という大きな区切りを達成しましたが、その中でも会心のレースはありますか?
ないですよ、そんなの(笑)。皆さんからは大きなレースとか言ってもらうことありますけど、昨年の名古屋グランプリとかね。確かに終わってみれば「上手いこと乗れたな」とは思いますが、会心というわけではないですね。平場のレースでも勝ったら嬉しいですし、馬が頑張って走ってくれた結果なんでね。これは!というようなレースはないです。
昨年の名古屋グランプを振り返っていただいた時、「名古屋なら(オイシン)マーフィー騎手にも負けない」と仰っていました。
デルマルーヴルという能力の高い馬に乗せていただきましたし、どこの競馬場にも有利な場所、仕掛けどころがあって、それは開催ごとに違って来ます。名古屋に関しては長いこと乗っていて、その特徴を掴むことに関しては負けないというか、負けられないですよね。
逆に遠征の時はどういうお気持ちですか?
遠征に行く前に傾向を研究して行きますよ。何日か前からとか、勝つ馬はどこを走っているのか、どこから仕掛けているか。地元の上手い騎手の乗り方を研究してからその競馬場に行くようにしています。
以前からかなり競馬を見ると仰っていましたね。
その時のその競馬場に合った乗り方をしないと結果は出せないですから。今はちょっとした合間でもスマホでレースが見れらますから、便利になりましたよね。
ご自身が乗っていないレースで、印象に残ったレースはありますか?
JBCスプリントですね。先日、矢野(貴之騎手)が名古屋に遠征に来た時、本人にも言ったんですけど、見ていて感動しました。やっぱりJRAの馬の方が基本的には強いですし、調教施設もいいという中で、ああやって地方馬でも大きいレースを勝つというのは、夢があっていいなって。地方の馬で勝つというのは、見ている僕にとっても嬉しかったです。
では、今後の目標を教えてください。
一番は上手くなりたいです。いろんな馬のつくり方を知りたいですし、もっともっと馬のことを勉強したいですね。
数字的にはいかがでしょう?
5,000とかってことですかね?!数字はあんまり気にしないですけど、現役でいられる以上は頑張ります。今43歳ですけど、体力的な衰えは感じていなくて、毎日調教にも顔を出して、体のケアはしっかりしています。若い頃はイケイケなところもありましたけど、年齢を重ねてどんどん競馬に対する熱さが増してきているように感じていて。もっともっと、馬や競馬に真摯に向き合いたいという気持ちが強いですね。まだまだ空回りすることもありますが、少しでも上手くなれるよう頑張ります。
オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、オッズパークで馬券を購入していただき、ありがとうございます。今はなかなか競馬場に来ていただくのは難しいですが、面白いレースをお見せ出来るよう頑張りますので、これからも競馬を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)
デビュー11年目の石川慎将騎手(佐賀)は、今年93勝(10月28日現在)を挙げ、キャリアハイだった昨年の95勝を上回る勢いです。佐賀リーディング第2位まで上がって来た心境を伺いました。
今年は初のリーディング2位に付けています。勝利数も93勝と、キャリアハイだった昨年を超えそうですね。
たくさん勝たせていただいていることはありがたいですし、周りの方々に感謝しています。ただリーディング順位に関しては、佐賀には絶対王者の(山口)勲さんがいますから、ぶっちぎって2位にいないとあんまり意味はないかなと。勲さんとの差が開き過ぎているので、自分の中では2位も3位も4位も変わらないです。
勝ち星に関しては意識されていますか?
目標は年間100勝と思ってやって来て、去年はあと少しのところで達成出来なかったので、今年こそはという想いはあります。その目標に順位がついてきたという感じですかね。
2010年のデビューから、今年11年目です。すっかり佐賀を代表するジョッキーの一人になりました。
いやいやいやいや、まだ全然ですよ。わからないことだらけですし、自分ではまだ新人だと思っています。これまで、「完璧に乗れた!」というレースがあんまりないんですよね。勝った時よりも、「よくこの馬を2着に持ってきたな」とか、負けたけど内容が良かったというレースはありますけど。でもその前には、必ず山口勲がいますから。
"ミスターほとんどパーフェクト"と呼ばれる山口勲騎手は、どんな存在ですか?
佐賀で乗っているジョッキーにとっては、みんな目標にする騎手ですし、あの人のようにならなければと思いながらレースをしていると思います。一緒に乗っていて、ペース配分、展開の読み方、位置取り、最初から最後まで上手いなと思うことが多いですね。なので、基本的には勲さんの近くにいれば、人気がない馬でも着に入ったり、勲さんの後ろにいれば道が開いていくので、そういうセコイ乗り方をする時もあります(笑)。
かなり大きな存在ですね。
勲さんと競って勝つ1勝は、自分の中では2勝の価値だと思っています。今僕は11年目になって、やっと勲さんを意識してレースが出来るようになったので、そこは成長したのかなと。もちろんまだまだ雲の上の存在ですけど、少しは近づいている感覚です。これを勲さんに聞かれたら「100年早い」と言われるかもしれませんけど(笑)。
昨年からはミスカゴシマとのコンビで重賞戦線を沸かせて来ました。この馬との出会いも大きかったんじゃないでしょうか?
大きかったですね。これが騎手としての分岐点になったなという馬で、本当にいろいろなことを教えてもらいました。
ミスカゴシマで佐賀皐月賞制覇(2020年5月3日)
デビュー2戦目からコンビを組んでいますが、どのあたりで走るなと感じましたか?
もともとはデビュー戦から乗る予定だったんですけど、自厩舎の馬がいたので2戦目からになりました。能力検査を受ける前、ゲート練習の段階でいいスピードがあったので、デビュー戦は勝てるだろうなと思っていましたが、正直最初はここまで走るとは思っていなかったです。
相当走ると確信したのはいつ頃ですか?
小倉に遠征に行った時(8月10日フェニックス賞)くらいには、同世代の佐賀では一番強いだろうなと思っていました。金沢シンデレラカップでもいいレースをしてくれて、自分の仕掛けがちょっと早かったので2着に負けてしまいましたが、佐賀からの遠征馬で舐められていたところもあったと思うので、いいところを見せられたのは良かったです。
常に人気を背負った中でのレースというのは、プレッシャーも大きかったですか?
プレッシャーはそんなになかったですね。ミスカゴシマが一番強いという意識で乗っていたので、あとは自分がしっかり乗りさえすれば勝てると思っていました。
以前は逃げ馬でしたから、佐賀3歳三冠に差し掛かった頃には、かなりマークがキツかったですよね。
相当キツかったですね。でも僕としては、それが嬉しくて。そういう風に重賞でマークされる馬になかなか巡り合えないですから。マークされる存在になったんだって、緊張よりも面白さの方が大きかったです。とてもいい経験をさせてもらいました。
九州ダービー栄城賞では1番人気3着でした。
2000メートルは少し長いという意識もあって、みんなが目標にして来るのなら、前に行きたい馬は行かせようと。自分の中で、相手は前に行く馬たちではなく、後ろだと思っていたので、腹を括って逃げない競馬を選択しました。逃げていたらどうだったかというのは見たかったお客さんもいたと思いますが、自分自身で考えてやったことなので、悔しいですけど仕方ないなと。ダービーが終わってからいろいろ考えて、ずっと前に行く競馬だけでは勝てないですから、控える競馬も試していこうと、初めての古馬オープンだった大分川特別で控える競馬をしました。今まで砂を被ったことがほとんどなかったので最初の1~2コーナーはけっこう嫌がっていたんですけど、その後はしっかりハミを取っていたので、慣れればオープンでも通用するなと思いました。まさか(古馬オープン)2戦目の吉野ヶ里記念で勝てるとは思ってなかったですけど、改めて強いなと感じましたね。
ミスカゴシマは古馬相手に吉野ヶ里記念も制覇(2020年7月19日)
西日本ダービーでは山口勲騎手が騎乗して8着でした。レースをご覧になっていかがでしたか?
勲さんが乗るミスカゴシマを見られたというのは、また一ついい経験になりました。勲さんはこういうレースをするんだとか、自分に戻って来たらこういう乗り方をしたいなとかいろいろ考えましたし、たとえ戻って来なくても、他の人がどう乗るかというのはすごく気になりますね。僕は基本的に緊張しないんですけど、自分が乗った時より見ている方が緊張しました。ミスカゴシマはいろいろなことを教えてくれて、いろいろな想いを感じさせてくれて、騎手として大きな財産だと思っています。
佐賀は10月3日からほとめきナイターが始まりました。ナイターでの騎乗はどうですか?
薄暮開催で暗くなってからのレースもやっていましたし、門別でもナイターに乗せてもらっていたので、特に違和感はないですね。お客さんも入り出して、競馬場が華やかになった気はしています。
今年の夏時期に3年ぶりに走路の砂を全面入れ替えしたそうですが、現在の馬場状態はいかがですか?
良馬場だと若干時計は掛かっているかなと思いますが、雨が降ると一瞬で速くなるので、本当に判断が難しいですね。これは今の佐賀の面白さの一つでもあると思うんですけど、ジョッキーでもその日の馬場傾向がわからないという。
我々馬券を買う側は、どう判断したらいいでしょうか?
僕らも乗ってみないとわからないので、最初の2レースか3レースくらいでみんな試行錯誤しています。基本的には先行有利、内を開ける、という2つのポイントは変わらないですけど、日によってどのくらい内を開るかというのは悩みどころですね。あと30センチ内に行ったら重いかなとか、もう少し外がいいかなとか、人によって全然違うので、乗っていても「この人ずいぶん内行くな」とか、「そんなに外行くの?」とか。前半の傾向を掴んで後半に活かすので、ファンの皆さんもぜひ前半の傾向を見ていただけたらと思います。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
佐賀もナイターが始まって、遅くまで楽しめるようになりました。最近は若手の騎手もすごく頑張っていて、みんな「打倒!山口勲」を目標に戦っています。レースでもそういう部分が見えると面白いですから、絶対的な存在の織田信長を倒しに行くような感じで頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)
調教師生活27年目の小林勝二調教師が、9月27日にシンエイジョッパリが勝利し、通算1,000勝を達成しました。馬にも人にも優しく、真摯な仕事ぶりが光る先生です。
ばんえいの世界に入ることになったきっかけを教えてください。
(北海道上川郡)下川町出身で父は馬を飼っていました。自動車整備の仕事をしていたけれど、同級生の田上忠夫調教師に誘われて、20歳の時に競馬場に来ました。田上調教師とはお互いの父同士も馬産振興会のつながりがあったんです。
1,000勝表彰式では、調教師会会長の田上調教師から花束
それから厩務員を3年やって、騎手試験には2年目で受かりました(1982年デビュー)。当時は40人ほど騎手がいて、現調教師の金山(明彦)さん、山田(勇作)さんなどが活躍。乗れなくてね。それでも12年やったかな。1994年、調教師になりました。
馬の特性を生かせられる調教方法を考えています。障害が悪くても、降りて歩ける馬だっている。とはいえ、この世界は正解がないから手探りですね。やればいいわけでも、やらなくていいわけでもないから。だから面白い。
思い出の馬について教えてください。まずは重賞勝ちの3頭について。
初重賞制覇となったニシキタカラ(2004年ばんえい菊花賞)は、重賞でも3着と惜しいレースが続いていた。この時はチャンスが巡ってきた気がする。でもレースの日は、二人三脚でやっていた妻がちょうど実家に帰ってていなくてなぁ。電話したよ。真面目な馬だった。
04年ばんえい菊花賞を制したニシキタカラ(写真:ばんえい十勝)
その菊花賞で8着だったのがニシキダイジン。開催が終わると、地元に帰って下川町の家で預かって、調教をつけていたんだ。デビュー前からやっていた。ダイジンは2歳の時から実力があったな。頭角表したのは夏からで、だんだん強くなっていった。2006年のポプラ賞を制し、3月までうちの厩舎にいました。流れに対応できるのが強み。自分でレース作れるからね。力はあったけれどばんえい記念を勝つまでは考えていなかったな。
2006年の明け3歳重賞、ホクレン賞を勝ったニシキセンプーはやんちゃだったなぁ。軽馬場が得意だった。
06年ポプラ賞を制したニシキダイジン
そのほかでは。
アグリミズキ(2009年カーネーションカップ4着)だね。いいところまで行ったが、喉に病気があって、繁殖牝馬にするために手術をしなくてはいけなくなり、競走馬人生を終わらせてしまって、かわいそうなことをした。今でも喉に穴が空いているんだ。
アグリミズキは子どもも3頭デビューしていますね。さて、先生といえば2012年にばんえいを舞台にしたNHKドラマ「大地のファンファーレ」でも協力されていました。
主役の馬、「トヨノコトブキ」を演じたハマクリシンザンを貸したんだよ。今は建て替えたけど、昔の厩舎もね。夜の撮影があって、長引いて午後11時を回ったこともあったんだ。俺の部屋も使っていたから家に入れなくてなぁ。調教師役の杉本哲太さんが入っていたんだよ。寒くて、外で薪をくべて暖まっていた。主役で騎手の高良健吾さんが、うちの柴犬とよく戯れていたなぁ。
気を付けていることを教えてください。
健康管理だね。馬は腹痛や熱発が多いから、馬は一通り、何回も見て回る。ちょっとしたしぐさを見逃さないようにする。
現役馬について教えてください。
右目だけ、黒目の周りが白い輪眼のシンエイシルビアは、昔からやんちゃだったな。青毛登録だけど、白い差し毛が多いから、芦毛じゃないかって一度確認してもらったことがあるんだよ。やっぱり青毛だった。
ペーパンヨシヒメは小さいが、体以上の仕事ができる馬。勝負は人一倍、馬一倍やる気まんまんだね。気持ちが表に出せるような調教をしている。
シンエイジョッパリのじょっぱりは「頑固者」という津軽弁で、名前通り。右引っ張ったって右に行く馬ではないんだ。でも今後期待している。
通算1,000勝を達成したシンエイジョッパリ(写真:ばんえい十勝)
厩舎には女性厩務員さんが2人いますね。
女性厩務員も増えてきているね。馬に対する手触りが良く、優しい。それもあって馬主さんは牝馬をよく預けてくれる。馬になめられることもあるけどね。女性もできる仕事と思うから。
表彰式では、娘さんがサプライズで来ていましたね。
道内で教員をしているんだ。息子もドイツで教育学を学んでいるらしいよ。
下川町出身とのことですが、下川といえばスキージャンプですね。趣味は何ですか。
スキーに乗ったりはしていたけどね。それよりモータースポーツが好き。バイクが好きで、山道をオフロードバイクで泥だらけになって、モトクロスとかね。今は忙しくて、乗る機会もなくなってしまったから、雑誌を見たりしているよ。
では、オッズパークの会員の方に一言お願いいたします。
今年はコロナで、まいっちゃったね。不要不急の外出を避けるから、「ちょっと見に行くか」って馬を見に行けない。
売り上げは伸びているよね。今は客が入っているし、やる気が出る。新聞で売り上げを見るのが毎日の楽しみになった。この調子で伸びるようになればいいな。
今年のばんえい記念も無観客で、ファンがとかちむらで見ていたと聞いたんだ。申し訳ないな。かわいそうだった。
この状況では仕方がないですが、末永くばんえいを応援してください。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香