デビュー3年目の落合玄太騎手は、6月に行われたダートグレードの北海道スプリントカップJpnIIIをメイショウアイアンとのコンビで勝利。地元北海道勢に、同競走では00年オースミダイナー以来20年ぶりとなる栄冠をもたらしました。
今シーズンはここまで門別では23勝を挙げてリーディング7位(7月9日終了時点)ですが、ご自身の戦いぶりを振り返っていかがでしょうか。
ここまでいい馬に乗せていただき、恵まれた環境にもいさせてもらっているなかで、本来ならばもっと上にいなければならないと思っています。個人的には、今の順位には満足していないですね。
オフシーズンは南関東で期間限定騎乗を行い、10勝を挙げました。何か得るものはありましたか?
競馬場が4場それぞれでコースが違いますし、普段一緒に騎乗しないジョッキーたちとレースに乗ったので、一人ひとりの乗り方の特徴が分からないなか、一からレースを組み立てなければならなかったのが勉強になりました。川崎とか浦和のような小回りの競馬場は普段乗ってこなかったので、特に難しかったですね。浦和は気がついたら位置取りが後ろになることが多く苦労しました。
10歳のメイショウアイアン(右)で北海道スプリントカップを勝利
6月の北海道スプリントカップではメイショウアイアンとのコンビでダートグレード初制覇。昨年(2着)のリベンジを果たしました。
去年も馬が本当によくがんばってくれたおかげで2着に来てくれたんですけど、あとひとつ着順が上だったら......と考えたら悔しかったんですよね。コーナーでもかなり外を回されてしまって、1着の馬(ヤマニンアンプリメ)からは離されてしまったのは確かですが、2着となるとやっぱり欲がちょっと出てしまったというか。これが3着だったら違ったかもしれないんですけどね。
今年は牧場から帰ってきた当初は状態面も正直なところひと息だったんですけれども、トライアル(5月5日キンシャサノキセキ・プレミアム=3着)を叩いてから調教での動きや体の使い方がどんどん変わってきて、抜群と言っていい状態でレースを迎えることができました。
今年のレースではどのようなことを意識されていたのでしょうか。
いつも通りにはなるんですけど、とりあえず出していって、あとはあまり外々を回って、ポジションを下げないようにすることは意識しました。去年と同じで、砂を被らずにすむ外枠が引けたのはよかったですね。マテラスカイがテンから飛ばす展開になって、ある程度前がバラける展開になって、コーナーであまり外々を回らずに済んだのも、この馬にとっては好都合でした。仕掛けたときの反応や、直線の手応えなんかも、変わらず良かったです。
ゴールの瞬間は、正直勝ったのかどうか自分では分かりませんでした。でもコースから引き上げるとき、マテラスカイに乗っていた武(豊)さんから「おめでとう」と声をかけていただいたので、そこで「ああ、勝ったのかなあ」と。厩務員さんも笑顔で出迎えてくれて、厩舎のみんなでひたすら喜んで、ようやく勝ったことを実感することができました。自分自身、まだ3年目で特に力があるわけでもないのに、こんな大きなレースでこれほどの馬に乗せていただけるなんで滅多にないと思うんです。オーナーさんや先生や、関係者の皆さんには本当に感謝しかないですね。
それにしても、10歳にしてこの走りというのは驚くべきものがあります。あらためて、メイショウアイアンの良さを教えてください。
オンとオフの切り替えがはっきりとしているところですね。厩舎にいるときや普段の運動では牛みたいにボーっとしていて、誰でも乗れる乗馬みたいな感じなんですけど、追い切りやレースになると、ガチッとハミを取って走ってくれるんです。無駄な力を使わないのは、競走馬としてすごく大事な資質なんじゃないかと思います。
グランシャリオ門別スプリント(7月2日)は2着でした。
去年も不良馬場でレコードタイム(58秒6)で勝っていましたし、状態も前走くらいの高いレベルをキープしていたので、期待はしていたのですが、勝ったアザワクは軽量(51kg)でしたし、スピードも一枚上でした。去年と同じくらいの上がりの脚(上がり3ハロン34秒6)を使ってくれて、この馬もよく差してはいるんですけれど、ポジションの差も出てしまいましたね。ただ、やっぱりこの馬にとってのベストは1,200mなので、負けたのはもちろん悔しいですが、結果に関してはそんなに悲観しなくてもいいのかなとも感じています。
次はクラスターカップ(8月10日、盛岡競馬場)ということになると思います。また強いメンバーを相手にしなければなりませんが、いつも一生懸命走ってくれる馬ですし、相手が強くなった方がこの馬の持ち味が生きるんじゃないかと期待しています。
今年は所属の田中淳司厩舎の勢いが凄いですね。騎乗している2歳馬のなかで、特に期待している馬を教えてください。
短いところで言えばトンデコパですね。栄冠賞では11着に負けてしまいましたが、抜群のスタートセンスとスピードを見せてくれました。レースを使っていくうちに少し気持ちが入ってきたかなとも思いますが、それでも乗り手がコントロールできない範囲ではないですね。次の牝馬重賞(8月12日、フルールカップ)は1,000mなので、この馬にとってはベストな条件だと思います。
長い距離の馬で言えば、シビックドライヴですね。能検の走りから「長いところの馬だな」とは思っていましたが、2戦目の1,700m戦で変わり身を見せてくれました。しまいの脚もしっかりしていますし、相手が強くなってもがんばってくれるんじゃないかと思います。牝馬だったら、5月28日のフレッシュチャレンジ(1,500m)を勝ったケープホーンも、競馬が上手な馬ですね。
厩舎の2歳馬には、乗り慣らしを含めてもひととおり乗っていますが、今は自分が乗ってレースに行く馬はできる限り自分で調教をつけているという感じです。今年はJBC2歳優駿もありますが、まずは1頭1頭が目の前のレースを勝てるように、先生とも相談しながら調教を進めているところです。
4月23日のフレッシュチャレンジを制したトンデコパ
今シーズンもいよいよ中盤に入ろうとしています。今後の目標を教えてください。
まずは勝ち星を重ねて、去年(北海道で63勝)以上の勝ち星を挙げたいですね。まだ2歳重賞を勝ったことがないんですが、今年はチャンスのある馬に乗せていただいているので、結果を出せるようにがんばっていきたいです。もちろん、メイショウアイアンもそうですし、古馬も楽しみな馬がいるので、そういった馬たちでも大きいところを狙っていきたいと思います。
リーディング5位以内に入れば、また南関東への期間限定騎乗という道も見えてくると思います。
リーディングの順位は、ジョッキーみんなが意識しているところだと思います。5位以内とは言わず、ひとつでも上を目指さなければいけませんし、そのためにはレースの大小にかかわらず、ひとつひとつ勝ち星を積み重ねていかなければなりません。
今シーズンのホッカイドウ競馬は開幕からずっと無観客競馬が続いていますが、馬券の売り上げは極めて好調です。応援してくれるファンの皆さんへメッセージをお願いします。
こういった大変な状況のなかでも、馬券を買って楽しんでくださり、とても感謝しています。これからもファンの皆さんに楽しんでいただけるような競馬をしていこうと思います。
無観客競馬というのは、レースそのものには直接的な影響はないと思いますが、やっぱり盛り上がりに欠けますよね。パドックでもコースから引き上げるときでも、お客さんがいてくれた方がいいですね。ファンの方も早く生で競馬を観たいでしょうし、僕も早くたくさんの方に競馬場に来ていただけるようになってほしいです。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
今年4月に川崎競馬場でデビューした池谷匠翔(たくと)騎手は、6月6日から佐賀競馬場で期間限定騎乗をスタート。初勝利の喜びや、今後の目標を語っていただきました。
初勝利おめでとうございます。1番人気馬(6月13日佐賀11レース、エーティーキンセイに騎乗)での初勝利でしたが、プレッシャーも大きかったんじゃないですか?
ありがとうございます。かなり緊張しましたね。実は自分が初勝利する前日に、同期の古岡(勇樹騎手)が川崎で初勝利したんです。そのレースを見ていて、「これは自分も勝たないとまずいな」と。しかもエーティーキンセイは強い馬で、周りの方々からも「ここで初勝利だな」とう感じで言われていたので、相当緊張しました。特にパドックとゲート裏、ゲートの中に入った時までめちゃくちゃ緊張したんですけど、ゲートを切ったらレースに集中することが出来ました。
直線では追いながらビジョンを見ていましたよね? 初勝利のわりにすごく冷静だなと思いました。
いえいえ、あれは後ろから他の馬の脚音が聞こえなくて、ちょっと不安になってしまって......。それでチラッとビジョンを見たんです。そうしたら後ろとはかなり離れていたので、これはもう初勝利出来たなと。ただ先頭でゴールをした瞬間はあんまり現実感がなくて、検量前に戻って来て1着の枠場に入った時に「勝ったんだな」って。乗せてくれた関係者の皆さんと、頑張ってくれた馬に感謝しています。
エーティーキンセイに騎乗して初勝利(2020年6月13日)
周りの方々の反応はいかがでしたか?
皆さんから「おめでとう」って言っていただいて、すごく嬉しかったです。レース前に真島(元徳)先生から「スタートを出たらすぐにステッキ打って前につけて、あとは3コーナー辺りから何も考えず全力で追ってこい」と言われていて、その通りに乗れたことも嬉しかったですね。
さらに、すぐ次の日には8番人気の馬で勝利(6月14日佐賀11レース、ヒューズラインに騎乗)。初勝利までは少し時間が掛かりましたが、そこからは早々に2勝目を挙げましたね。
この時は向正面くらいから手ごたえが良くて、もしかしたらいけるんじゃないかと思いました。真島先生からは「あまりゲートが速くないから、出たなりの判断で」と言われていて、思っていたよりもゲートが速かったので、積極的に行って番手につけました。先生からも「自分で考えて乗ったな」と言っていただけて嬉しかったですし、今のところ一番会心のレースですね。
8番人気ヒューズラインで2勝目をマーク(2020年6月14日)
前日の初勝利が自信になったのでは?
そうですね。もし前日勝ってなかったら、2勝目はなかったかもしれません。初勝利するまでは焦って追い出しが早くなったり、馬にも僕の緊張感が伝わってしまったり......。なかなか上手く行かなかったんですけど、ひとつ勝ったことはすごく大きくて、少しは落ち着いて乗れるようになったかなと思いますね。今もまだまだですが、川崎でデビューしたての頃は、レースの流れに乗るだけで精一杯で、周りにいる先輩方に迷惑ばかり掛けてしまいました。技術的な面はもちろん、気持ちの面でもかなり落ち込むことが多くて。
どんな時に落ち込んだんですか?
一番は初めて1番人気の馬に乗せてもらった時(4月22日浦和5レース、ゴールドサミットに騎乗して10着)です。せっかくいい馬に乗せていただいたのに全然結果が出せなくて、すごく落ち込みました。その日はとことん落ち込んで、次の日に馬に乗ったら自然と前向きになれたんですけど、やっぱり勝てない時期が続くとキツイですよね。実際にデビューしてみて、想像していたことと全然違ったというか、もちろん厳しい世界だとはわかっていましたが、ひとつ勝つことの難しさを痛感しました。だからこそ、改めて先輩方のすごさを感じています。もともとすごいとは思っていましたけど、森泰斗騎手とかあんなに勝っているところを見ると、デビュー前よりもよりすごさを感じるようになりました。
デビューしてから約2か月で所属の川崎を離れて、佐賀で期間限定騎乗することに迷いはなかったですか?
それはまったくなかったです。大井の真島大輔さんから、「たくさんレースに乗せてもらえるから、佐賀で修行してみないか?」って言われて、すぐに「ぜひお願いします!」と答えました。所属の内田勝義先生も快く送り出してくれたので、佐賀にいる間にたくさん吸収したいです。
実際に佐賀で騎乗していみて、戸惑いなどは感じましたか?
最初はありました。そもそも右回りの経験が教養センター以来で、競馬では初めてでしたし、さらに内側を大きく開けるというのも難しかったです。今は毎朝1時過ぎくらいから17~18頭の調教をしていますし、レースもたくさん乗せていただいて、とてもいい経験をさせていただいています。
佐賀に来て約1か月で5勝(2020年7月6日現在)を挙げました。今回の期間限定騎乗は9月30日までの予定です。この間の目標は?
佐賀では20勝するのが目標です。ここで経験出来るだけのことをして、今後に繋げていきたいです。たくさん乗せていただいて、少しだけ下半身の筋肉がついたかなと思いますし、レース中ちょっと気持ちに余裕が出来て、少しは周りが見えるようになったかなと。
ここ数年、佐賀で期間限定騎乗する若手騎手が増えました。佐賀はどんな雰囲気ですか?
皆さんが「育てよう」という感じで、どのジョッキーというわけではなくて、先輩ジョッキーの皆さんがアドバイスしてくれます。毎回レースが終わった後に「ここもうちょっと行った方が良かったんじゃないか」とか、細かく教えてくれるのがありがたいですね。所属の真島先生は厳しいですが、たくさんレースに乗せてくれて、上手くなるようアドバイスもしてくれますし、周りの方々には本当に感謝しています。
初勝利の記念撮影
池谷騎手のお父さんは元体操選手でタレントの池谷直樹さんということで、デビュー前から注目度が高かったですが、ご自身では感じますか?
そうですね。そういう空気は子供の頃からちょっと感じていました。でも前からなのであんまり気にならないですね。父にはかなり熱く応援してもらっていて(笑)、初勝利した時には連絡をくれました。「せっかくこういういい機会を与えてもらっているので、少しでも成長して帰って来なさい」と言われているので、今はとにかく少しでも上手くなれるよう頑張ります。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
初勝利までは落ち込むことも多かったのですが、今は馬に乗ることがとても楽しいです。新人らしく一鞍一鞍大切に乗ってくるので、応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)
6月21日、金沢第3レースをサブノタマヒメで勝って、金沢現役6人目となる地方競馬通算1,000勝目を挙げた39歳の畑中信司騎手。2001年デビューで、今年は20年目。ナムラダイキチとのコンビで一世を風靡した名手のこれまでとこれからを伺った。
1,000勝おめでとうございます。振り返って、どうですか?
あっと言う間でしたね、デビューしたころは、ここまで勝てるとは思ってませんでした。これまで支えて下さった方々のおかげです。本当に感謝しています。
出身は大阪の岸和田。金沢でデビューとなった経緯は?
騎手になりたくて、実家の近くの牧場に問い合わせたら、師匠になる寺田茂先生(2016年引退)を紹介して下さったのがきっかけでした、師匠は元々、岸和田にあった春木競馬場の騎手で、廃止後に金沢へ移籍しましたので、岸和田とも深いつながりがありました。
高校卒業後に教養センターに入所しました。
同期には北海道の岩橋(勇二)、大井の真島(大輔)、名古屋の大畑(雅章)もいて、今、思えばまずまずのレベルでしたね。成績は同期の中では真ん中くらいだったでしょうか(笑)。
師匠の寺田先生はどんな方でしたか
厳しい方でした。ほめてもらえることはなかったですね(笑)。勝っても、下手に乗った時なんかは、よく叱られました。「好位でじっとしてたらいいのに、なんであんなに競り合って、馬に無理をさせるんだ」っていう風に。でも、しっかり僕を見てくれているというのは感じましたし、僕が下手に乗った次のレースでも、馬主さんに頭を下げて、引き続き僕を乗せて下さったり、そういう優しさもある方でした。
畑中騎手の勝負服(胴袖黄・赤山形一文字)は寺田先生から引き継いだものでしたね。
はい、そうです。「その服でブザマな競馬をして、オレの顔に泥を塗るんじゃないぞ」とよく言われました(笑)。先生は引退されましたが、今も近所に住んでおられるので、買い物の時とか、時々お会いします。その時は「しっかりやれよ」と声をかけて下さいます。自分がここまでこれたのは関係者の方々のおかげですが、その中でもやっぱり、師匠の存在は大きいですね。
畑中騎手と言えば、ナムラダイキチとのコンビで全国にその名前をとどろかせました。地元重賞12勝、笠松・オグリキャップ記念1着、白山大賞典2着の名馬ですが、やはり、一番の思い出の馬ですか。
自分が乗った馬の中ではダイキチは最高の馬ですね。けがさえなかったら、中央の馬ともいい勝負ができたはずだし、いっぱい夢を見させてくれました。特に2013年に地元金沢で行われたJBCは出たかった。あの頃のダイキチが一番強かったですね。
ナムラダイキチ(2013年5月5日、北國王冠)
ナムラダイキチとの思い出はたくさんあると思いますが、中でも印象に残っているレースはどれですか?
初めて重賞を勝った2011年暮れの中日杯ですね。前任者の中川(雅之)さんが調教師への転向が決まったので、中日杯の前のレースから乗り始めました。調教では全然走らないのに、レースとなるとエンジンが違いました。すごい反応でした。自信になりましたし、走る馬とは、こんな馬だと教えてもらいました。
ダイキチとのコンビで中日杯を勝った翌月の2012年1月から3月までの金沢の冬期休みの間、福山で短期騎乗を始めます。期間中、地元騎手を差し置いて、リーディングになるほど勝ちました。
超小回りコースの福山(1周1,000メートル)は乗っていて、勉強になりましたし、楽しかったですね。広いコースだと、どうしても馬の力通りに決まることが多くなるけど、福山ほどの小回りだと力の足りない馬でも、その日の馬場状態や位置取りや展開次第で力のある馬に勝つことができる。初めての時の福山は、それがバシバシ決まって勢いに乗れた。福山には2013年も呼ばれて、その年に福山が廃止になり、2014年には高知に呼んでもらえた。高知でもかなり勝つことができたし、高知のクロスオーバーで佐賀の花吹雪賞も勝った。今年も高知で乗ったのは、そのつながりですね。福山や高知で学んだ技術は、金沢でも活かせるし、騎手としてステップアップにつながった貴重な経験ですね。
佐賀・花吹雪賞を高知のクロスオーバーで勝利(2014年1月19日)
今、畑中騎手は昨年、金沢の年度代表馬になったティモシーブルーというお手馬がいます。6月23日には百万石賞連覇を狙いましたが、惜しくも3着でした。
急に暑くなって、昨年の状態にはなかったです。百万石賞の前のレース(利家盃)では百万石賞で1番人気になったサノサマーにぴったりマークされて2着だったので、百万石賞の本番では逆にサノサマーをマークする形でレースを進めました。レースは勝ったサウスアメリカンが向正面から動いて、押し切りましたが、ティモシーブルーの調子が良かったら、サウスが外から上がってきた時に、一緒に動けてました。それでも直線では、しぶとく3着に粘りました。先頭に立つとソラを使う乗り難しいところはありますが、最近はスタートも安定しています。自分でレースもつくれる強みもあるし、6歳と若いので、まだ強くなる余地はあります。
2021年には2度目のJBCが金沢で行われます。
前回の金沢のJBCではダイキチで出られなかったので、次は出たいですね。ティモシーはダイキチと比べるのはかわいそうですし、中央馬と渡り合うにはまだまだ強くなる必要はあります。でも、JBCが行われることで、全国から金沢が注目されますし、馬主さんがJBCのために、いい馬を入れてくれれば、盛り上がりますし、すごく楽しみですね。
ティモシーブルー(2020年4月28日、金沢スプリングカップ)
これからの目標を教えてください。
特に数字を挙げてというのはありません。ひと鞍ひと鞍、大事に乗っていきたいと思ってます。あと、もう一度、どこか海外に再挑戦したいですね。初めて挑戦した韓国のソウル(2017年1月~2018年6月)では23勝しましたが、なかなか人間関係が難しくて、いい馬に乗せてもらえず不本意でした。今すぐとなると、コロナの影響もあるので無理ですが、韓国での経験を次の挑戦に活かしたいですね。
最後にオッズパークのファンの方にメッセージを。
今はコロナの影響で無観客開催が続いて、大変ですが、オッズパークのファンの皆さんがたくさん馬券を買っていただいているおかげで大きく売り上げが減ることもなく、競馬の開催を続けられることに本当に感謝しています。これからも、よろしくお願いします。
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※インタビュー / 松浦渉(写真:石川県競馬事業局、佐賀県競馬組合)
鈴木祐騎手は2016年デビューで今年5シーズン目に入った。3歳クラシック路線ではグランコージーの、古馬戦線ではランガディアの手綱をとってビッグタイトルを次々と手にしている。デビューから5シーズン目前後の若手騎手がみちのく大賞典を制したのは30年ぶりくらいの快挙でもあった。今回はそのパートナーたちの話を中心にうかがった。
ではまずグランコージーの話から聞かせてください。鈴木祐騎手がずっと手綱を取っているということで(南関東所属時を除く)最初からお話を聞きたいんですが、2歳時の頃のグランコージーはどんな印象の馬でしたか。
デビューする頃はまだ体ができていなかったですし、走る"気"をあまり感じさせない馬だという印象でしたね。
自分も見ていましたが、デビュー戦は逃げ切って勝ったんだけども、2歳馬っぽい、気持ちで一気に逃げ切る感じではなくて、なんというか淡々と走りきって勝った様な印象でした。
ふわっとした感じの走りでしたね。正直その頃は、ひとまずデビュー戦に向けて仕上げていこうという調整。最初のレースは、差のないメンバーになったから"まずは良い競馬が出来たらいい"と思った記憶があります。
グランコージーのデビュー戦は6馬身差の圧勝(2019年6月2日)
それが新馬勝ちして2歳の重賞も勝ってどんどん力をつけて、今や周りからもあの馬は強いなぁと言われるくらいになりました。そんなグランコージーが去年と今年、2歳時と3歳時でどんなところが成長したと感じますか?
やはり馬体ですね。身体がすごく大きくなっていましたね、去年と比べて。南関東に行って帰ってきてから見たらいい身体つきになったなと感心しました。身体がひと回り大きくなって、がっしりして帰ってきました。
自分も去年の写真と見比べてずいぶん変わったなと思いました。肉付きが良くなったし幅も増した。南関東に行った効果はありましたね。
そうですね。南関東で揉まれてきた事で終いの粘りも一段と良くなってると感じました。
ダイヤモンドカップ優勝(2020年5月3日)
さて、東北優駿から2日経ちましたが、振り返って、"あの時はこうしたら、こう乗ったら......"みたいなのが浮かんでくるんじゃない?
そうですね......。今回のレースはマークが厳しかったですね。控える競馬も試してみるべきだったのかな......と自分では思っています。
東北優駿の1周目(グランコージーは8番)。息の抜けない流れになって4着に終わった
と言うと、他の馬に行かせてしまって、いっそ3番手ぐらいになってもいいか、みたいな?
なんなら砂をかぶるくらいの位置でも良かったかなって。南関東ではそういう競馬をしていますし(クラウンカップは後方から追い込んで6着)。レース前半の速めのペースからそのまま全体に息が抜けない流れになってしまって、向正面で少し息を入れようとしたら、すぐ後ろにもうピアノマンが来ていたじゃないですか。それで余計に息が入らなくなって。結果論ですけれど、周りから目標にされていることをもっと考慮すればよかったと。
他の馬の思惑もあるからなかなか思い通りにならないですよね。その、向正面あたり、もう少しだけ楽ができたら、息が入ったら、展開や結果も変わっていたんじゃないのかなと思ったりもしました。
なので最初から"差す競馬のイメージ"で乗っていた方が良かったのかもしれないですね。
その辺、他の馬の動きの捌き方も含めて、これからの、秋の課題になっていくのかな。
今年岩手1戦目(ダイヤモンドカップ)を大差(9馬身差)で勝ったことで東北優駿では余計に厳しくマークされたとも思います。そういうのをできるだけ受け流すというか、やり過ごすような戦いをしていきたいですね。
距離も、実は2000メートルはもしかしたらグランコージーにはちょっと長いのかもしれないけども、3歳馬同士だったらあまり気にならないのかなと思うんだけど。東北優駿だって最後はたしかに止まったけど、厳しい展開ながらよく踏ん張っていた。むしろグランコージーの地力を感じさせてくれたレースだったのでは。
1600メートルまでの経験しかなかったので不安は確かにあったんですけども、それは他の馬も同じですし、グランコージーは十分やってくれると思っていたので距離はあまり気にしていなかったです。先行した馬の中では最後まで頑張ってくれていましたし、力がある馬なのは間違いないと改めて思いました。
次の三冠目が同じ盛岡2000メートルの不来方賞。秋は頑張ってください。
はい。がんばります。
次にランガディアのお話を聞かせてほしいと思います。ランガディア、どういう強さを持った馬なのでしょう?
そうですね、どこからでも競馬できるし折り合いも付きやすい。乗りやすくてレースもしやすい、本当に良い馬だと思いますね。JRA時代は芝ばかり走っていた馬ですから砂を被った時にどうなのかな?と思っていたのすが、砂を被っても嫌がらなかった。ダートも全く問題ない馬ですね。
地方競馬の深い砂がどうなのかなと思ったんだけども、むしろ合うぐらいな感じ?
パワータイプの走りをするので地方の砂もちょうど良いくらいかなと思います。
あの馬で重賞を2つ勝ったんですけど(インタビュー時はみちのく大賞典の前)、そのおかげと言うか、今シーズンは鈴木祐騎手もいい感じでスタートできたんじゃないですか?
ランガディアといいグランコージーといい凄く走る馬ばかり乗せてもらって、自分の経験にもなります。それがこれから良い方向になって行ってくれれば良いですね。
やっぱりああいう"強い馬に乗って強いライバルと戦う"というのは乗っている騎手にとってもいい経験になるんじゃないのかなと思うけれど?
凄く良い経験になっていると思います。自分にとっても馬にとってもですね。本当に恵まれているなと。
ランガディアはレースぶりも良いものね。シアンモア記念の激闘なんか見事でした。
ファンの皆さんにも楽しんでいただけたレースになったんじゃないのかなと僕も思っています。
シアンモア記念ではエンパイアペガサス(右)との激闘を制した(2020年5月10日)
ああいうレースは、乗ってる方はやっぱり神経が擦り減る感じ?
もう本当にひやひやですよ。心臓がバクバクです(苦笑)。
それは強い馬を勝たせなきゃいけないっていうことで?
本命馬、人気の馬に乗っているというプレッシャーはありますね。絶対に失敗はできないという気持ちで乗っていますから。
シアンモア記念では返し馬で"赤松杯の時よりも元気がないのかな"と感じて、レース中も若干手応えが薄いかなっていう所があったのですが、自分の指示にしっかり反応してくれたし最後まで頑張ってくれた。すごく一生懸命走る馬。力がある馬なんだと改めて思いました。
今後距離が延びたり、あるいは短くなったり、はたまた芝になったりという可能性もあると思いますが、どういう走りができる馬だと思いますか?
あまり短い距離だと流れに乗り切れなくて厳しい競馬になるかもしれません。終いの脚を使ってくれる馬なのでマイルより短くなると持ち味が活きないかもしれないですね。長くなるのは問題ないと思います。良い競馬ができるんじゃないのかな。芝の実績もある馬なのでこれからどう変わっていくか自分も楽しみにしています。
一條記念みちのく大賞典も制しランガディアで重賞3連勝達成
さて話を変えて。鈴木祐騎手がデビューして今年で5シーズン目。もう新人・若手というよりは中堅という感じにもなってきたんだけども、最近の自分に"何か変わった感"のようなものはありますか?
ちょっとスランプ気味と言うか。今ちょっと壁にぶち当たってるような感覚ですね。それは勝ち星的にも、乗り方的にもですかね。どうやればもっと勝てるんだろう......って考えすぎちゃって、迷っている段階ですね......。
随分正直に言うね
いやそれだけ本気でそう思っているんですよ。
見ている分にはよく頑張ってると思っているんだけども。
まあ騎手にゴールはないですからね。常に研究ですから。チャンスがあれば他地区で乗ってみるとかそういう経験を積むのも有りかなと思っています。
一條記念みちのく大賞典は久しぶりに若手騎手の制覇になった
では最後に、ファンの皆さんに一言。
まだしばらくは無観客ですが、自分も頑張りますので応援してください。
あ、もうひとつだけ。ヤングジョッキーズシリーズは、やっぱり若い騎手にはあったほうがいいと思う?本戦まで進んだ先輩として(インタビュー時、今年のYJSの開催は未発表)。
それはあった方が良いと思いますね。かなりいい経験になると思います。ヤングジョッキーズシリーズに出るのはいろいろな経験ができて自分の経験値になってくれると思います。少々日程が厳しくなっても是非やってほしいと思いますね。
今年の鈴木祐騎手はシーズンの1/3を終えた時点で騎手リーディング8位前後に留まっており、その辺が「スランプ気味」と本人が言うことにもなっているのだろう。
とはいえシーズン前半の3歳戦線・古馬戦線のいずれもで有力馬とコンビを組み、大きなタイトルを次々獲得してきたその活躍ぶりは非常に印象深いのも確かでやはり"華"のある騎手だと改めて感じさせてくれた。今年が飛躍の一年になることを楽しみにしたい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視