デビュー9年目を迎え、3年連続で年間100勝越え。2月には3歳牝馬重賞・黒ユリ賞をジェイカトレアで制するなど、伸び盛りの西将太騎手を紹介します。
騎乗について、大事にしていることを教えてください。
周りの馬は見ずに、自分の馬が余裕あるところまで行かせる。馬が止まりたかったら止めて、馬のペースにまかせます。
馬が行きたがらないこともありますよね。
それは気合入れます。「しゃきっとすれ!」って。だらだらしないようにする。前向きな緊張感を与えます。
どのようにして、馬の意志を受け取るのでしょう。
耳の動きを見るのと、ちょっとしたハミ受けの感度ですね。自分は声を出す方なので、俺の声聞いてるのかな、って耳を見ます。
静内農業高時代、馬術部だったことがハミ使いにも生きているのでしょうか。
自分では気づいていないけど、そうだと思う。そう思いたいな。時間がなくて乗馬はしていません。パドックで乗っているだけ(笑)。パドックでは、馬をリラックスさせています。ゲートに入るまで、緊張感を持たせないように。だらーんと頭を下げて、落ち着いて静かに歩いてくれたら、と考えています。
最近、追うときのアクションが大きくなったように思います。
自分ではわからない。周りの見る目が変わったんじゃないかな。
馬を追う時に、無意識に体が動いているのでしょうかね。
騎乗が、レースが楽しい。「こんなに(道中)止めてんのに(障害)上がれないのかー!」と思ったら、思わず笑ってしまうこともある。レースに乗るのが好きなんだと思う。
でも、他の人なら山(障害)を上げられるのに上がらない時は、どうしたらいいか、と思う。その時笑いはないよ。自分が乗って上がらないような時は、いつも藤野さん(俊一騎手)に聞く。新人の時から、ずっと騎乗を見ている。自分が持っていないものをいっぱい持っている。技術を少しでももらって、自分のものにできれば、と思っています。
まずは、(年間)100勝を自分の目標として頑張っている。それからは、前の年を抜くことを目標にしています。
西騎手は馬好きという印象がありますが、レースも好きなのですね。レースについてお聞きします。ジェイカトレアで勝った黒ユリ賞については。
調教を頑張った甲斐があった。2週前のレースの時に障害で止まったんです。黒ユリ賞は重量が重いし、道中も障害も、楽に行けるよう頑張ろう、と、そのためには基礎の調教(ズリ引き)を頑張ろう、と。体があるのにもったいないよな、と思っていた。調教はレースと違って、スパルタです(笑)。
黒ユリ賞を制したジェイカトレア(2019年2月10日)
2017年には、ナカゼンガキタでばんえいオークスを勝利しました。
うれしかった。厩舎(所属する父の西康幸厩舎)初だったしね。真面目な馬。一生懸命引っ張ってくれる。普段もおとなしくて、お嬢様タイプ。ついてくる系。
ナカゼンガキタでばんえいオークスを勝利(2017年12月3日)
セイコークインは。
最後のレース(2月で引退)まで面倒見よう(一緒に乗ろう)と思った馬でした。正直で素直。馬場が重いと行かない。軽いとどんどん行っちゃう。かわいかったね。
ばんえい菊花賞(2013年、ゴール前で止まって3着)は悔しかった。何センチだろう、って。どうにかならなかったかな、って思う。
スピードスター賞(軽量の特別戦・2018年2月12日)の優勝はうれしかったね。軽量戦は最高に気持ちいい。楽しい!何も考えなくていいから自分にぴったり。スタートから道中、さーっと走らせて、第2障害手前から直行!
タカラシップの天馬賞(思い切って先行し3着)も、最高のレースだったけどなんとかならなかったかな、と思う。
今は2歳馬の馴致が始まっていますね。
けがしないよう、楽しくやっています。レースと、馬を馴らしている時が一番楽しい。何するかわからない。飛び跳ねたら「馬らしいことしてるな」って思う。「よく笑いながらやってるな」と言われるけど、楽しくて。厩務員も減っているが、俺と仕事したら楽しいと思うんだけどな(笑)。
西騎手を中心に若手騎手は、クリスマスには厩舎内の子どものところにサンタの格好をして行くと聞きます。
節分やクリスマスにやっている。自分が楽しいし、周りも楽しんでくれればいいな、と。ファンも見られるかもしれない。見れたらラッキーと思って。
では、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
ばんえいはいつも、自分が楽しんでいる。それを見て、一緒に楽しんでほしい。「将太頑張れよ」って、ファンの声援も聞こえています。馬券買ってるのかな、って思っている(笑)。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
笠松の騎手として初めてNARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した渡邊竜也騎手。まもなくデビュー3年目を迎える彼は、重賞初制覇にあと一歩まで手が届きかけています。また、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)を経験したことであどけなかった表情は凛々しくなってきました。着実に成長を遂げている彼に、現在の心境を伺いました。
NARグランプリ優秀新人騎手賞の受賞、おめでとうございます!笠松の騎手がこの賞を受賞するのは初めてです。
ビックリしました。他の先輩方が受賞されてそうですけどね。加藤聡一先輩(名古屋)や鈴木祐先輩(岩手)が新人賞を獲ったのを見て、勝利数で一番になればいただけるのかな、と考えていました。なので、「獲れるんじゃないかな」と思っていました。デビューした時からずっと新人賞を獲りたくて気にしていたんです。嬉しいですね。
デビュー2年目となる昨年は64勝。前年の38勝から大幅に勝ち星を量産しました。振り返ってみてどうですか?
去年は取りこぼしが多かったなって思います。所属の笹野博司厩舎は昨年、笠松リーディングですし、先生がいい馬に乗せてくださるのでもうちょっと勝つべきですね。
昨年は笹野厩舎にホッカイドウ競馬から水野翔騎手が移籍してきました。3年先輩にはなりますが、年が近くて仲が良く、ライバルとしてもいい刺激になっているように見えます。
刺激は少なくともあるかもしれないですね。僕の中では水野さんと競争しているって感じは特別ないですが、水野さんから学ぶこともあります。技術的な面は向山(牧)さんとかに聞くことが多いです。一緒にレースビデオを見ている時に「こうですかね?」とか「あそこはこうした方がよかったですかね?」と聞くと、答えてくださることもあります。
昨年は年末に重賞で惜しいレースが2つありました。まずはボルドープラージュ。ライデンリーダー記念では7連勝中だったエムエスクイーンにクビ差まで迫って2着でした。エムエスクイーンより内の枠で、同馬より前でレースを進めましたが展開としてはどうでしたか?
枠の並びが逆だったら、エムエスクイーンをマークしたかったですね。ボルドープラージュは先頭に立ったり、距離だったり、何かしらの理由で最後に止まるところがあるんです。枠順が逆だったら、ぴったりマークしてレースができたかな、と思います。
2月には遠征して園田ユースカップでも惜しい2着。レース後は悔しそうな表情が印象的でした。
1400メートルでしたし、馬場も味方して最後までもってくれました。でも、この距離でも直線は止まってしまうので油断はできなかったです。決め手勝負になると、勝ったジンギの方が断然上ですし。勝てなくてめっちゃ悔しかったですが、ビデオを見ると楽に交わされてしまっていましたね。園田には同期が2人(長谷部駿弥騎手、永井孝典騎手)いるので、同期の前で重賞を勝ちたかったです。検量室前に戻ってきたら長谷部に満面の笑みで「惜しかったな」って言われて、余計に悔しかったですね。
ボルドープラージュで惜しくも2着だった園田ユースカップ(写真:兵庫県競馬組合)
昨年末にはもうひとつ、カガノカリスマで東海ゴールドカップ3着がありました。カガノカリスマではその後、川崎記念や佐賀記念など全国に遠征に出ていますね。
いろんなところに連れて行ってくれる馬ですね。以前はあまり歩様が良くなかったんですが、僕のところに回ってきてから調教でしっかり乗ったら結構良くなってきて、いろんな競馬場に行けるようになりました。ダートグレードレースで上位争いに加わることはなかなか難しいですが、こうして馬と遠征できるのってすごく楽しいですね。
YJSでも全国の競馬場で騎乗し、2年連続でファイナル進出を果たしました。振り返ってみていかがですか?
YJSは僕のモチベーションでした。この2年間はYJSを追いかけていたら終わっていましたね。「今度YJSで乗る競馬場ってどんな感じなんだろうな?」とイメージして、笠松のレースでもそれに例えて乗ってみたりしました。イメトレの効果があったかどうかはわからないですが、いい馬が当たって予選も突破できたので、やっておいて良かったかなと思います。昨年は予選ラウンド地方全国1位で行きたかったんですが、最後の最後に櫻井(光輔)にやられちゃいましたね(苦笑)。
昨年12月に通算100勝を挙げ、減量を卒業しました。先輩たちと同じ条件でレースに騎乗することになりますが、これからの目標はなんですか?
やっぱり重賞制覇ですかね。ボルドープラージュは水沢に移籍しちゃうそうなのですが、そろそろビップレイジング(東海ダービーなど重賞2勝)が帰ってくるらしいので、期待しています。あとは、また先生がいい馬を連れてきてくださると思うので、そこで期待にも応えたいですね。今年は尾島(徹)先生も勢いがあって笠松リーディングなので、自厩舎がリーディングになれるようがんばりたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
YJSには出場できなくなって、いろんな競馬場に行くことがなくなったので、みなさんに忘れられないようにしたいです。笠松に引きこもっていても仕方がないので、いろんな所に行って顔と名前を覚えてもらえるように頑張りたいと思うので、僕を忘れないでください。
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※インタビュー / 大恵陽子
カツゲキキトキトを管理する錦見勇夫調教師は調教師歴41年。これまでかきつばた記念JpnIIIや東海ダービーといった大レース勝利のほか、JRAでも勝ち星を挙げています。また、所属する大畑雅章騎手と木之前葵騎手も活躍。ご自身の半生とカツゲキキトキトの現在の状況をうかがいました。
騎手から調教師に転向されて41年。開業当時のことは覚えていらっしゃいますか?
生まれは競馬場の近くで、16歳で騎手免許をもらって30歳から調教師になりました。弥富トレーニングセンターができてから1年弱はジョッキーとして乗っていたんですが、厩舎が一杯だったので早めに調教師試験を受けたんです。1年目は10馬房、2年目が12馬房、3年目が13馬房でそれからしばらく増えなかったと思います。私の後に調教師になった人で開業を半年か1年ほど待った人もいました。
最初の頃は調教師も多く、馬房数が少なかったんですね。そんな中で一番印象に残っている馬を教えてください。
運良くたまたま開業の時にアラブでもサラブレッドでもオープンまで上がる若馬が入ってきましてね。おかげさまで頭数が少ない割にはそこそこの活躍馬に恵まれました。特に1989年東海ダービーを勝ったサンリナールや98年にJRAで中京日経賞(3歳以上900万下)を勝ったダイユウカイソク、2005年かきつばた記念を勝ったヨシノイチバンボシなんかが当時は地元で一番強かったですね。昔はC1特別で好勝負ができる馬は中央の500万下でも勝負ができたり、しまいに脚を使う馬はこっちでは差し切れなくても直線の長い中央に行くと出世したりするので、そういう馬はよく中央に移籍していましたね。
馬はご自身で牧場などへ行って見定めていらっしゃったのでしょうか?
昔はしょっちゅう牧場に行っていました。血統がいいか、体型の良さそうな馬を選んでいました。胴があまり長くなくて腰のしっかりした馬がいいですね。あとはとにかく平均的にしっかりしていて、ダート向きな馬がいいです。ただ、燕麦とかが中心だった昔と比べて、いまは濃厚飼料があったり食べ物が良くなっているので馬のつくり方もちょっと変わってきています。
ヨシノイチバンボシではJRA馬相手にかきつばた記念を制覇されましたが、どんな馬でしたか?
コロッとした感じの馬体でした。調教では掻き込むような走り方だったので吉田くん(稔騎手)はよう乗らんかったですが、レースではトビがしっかりしていました。初めて東海ダービーをサンリナールで勝った時(当時、名古屋優駿)も嬉しかったですが、かきつばた記念を勝った時もやっぱり嬉しかったですねぇ。3歳の時はJRA新潟にも何度か遠征したけど、なかなか勝てそうで勝てませんでした。それでも着は確実に拾っていたんですよ。
JRA遠征といえば、昨秋はJBCクラシック(12着)にカツゲキキトキトで挑戦しましたね。
揉まれてしまって、道中はチグハグな競馬になってしまいました。地元でもそういうレースになって馬が掛からない時がたまにあるんです。どちらかといえば1900メートルか2000メートルくらいが一番合っているのかなと思います。
名古屋記念(2019年1月4日、写真:愛知県競馬組合)
その後、地元に戻ると重賞2連勝。名古屋グランプリ5着ののち、前走・名古屋記念は楽勝でしたね。
名古屋記念はスタートからちょっと気合いを入れたので、2番手にスッと行きました。3コーナーでは、「あ、楽に勝つな」と。見ている方は楽でした。
なかなかそう思える馬やレースなんて少ないんじゃないですか?
カツゲキキトキトは3歳で(木之前)葵くんを乗せて秋の鞍を走った時、出遅れて後方からになってしまったのですが、それでも一気にまくって4馬身も離して勝ちました。それを見て、「やっぱり力が抜けとるんだな」って感じましたね。
秋の鞍(2016年9月19日)を木之前葵騎手で勝利(写真:愛知県競馬組合)
1月4日に名古屋記念を勝利後、カツゲキキトキトはレースから遠ざかっていますが、近況をお教えください。
2月14日の梅見月杯を使おうと思って調教をしていたんですが、調教後に左前の球節をぶつけて外傷を負ってしまいました。もう腫れも引いたので大丈夫だと思います。わんぱくな馬で、気に入らないことがあると調教中でもクルっと回ることがあるんです。でも、最近は運動では多少大人しくなりました。名古屋大賞典は日程的には厳しいかもしれませんが、間に合えばぶっつけで行くか、あとは地方馬同士のところで斤量やメンバーを見て、(木之前)葵くんを乗せて勝たせたいなと思っています。葵くんも最近、バランスや格好が良くなってきて、安心してレースを少し見られるようになりました。
カツゲキキトキトは地元の大将格ですし、ダートグレードレース制覇を期待するファンも多いかと思います。これからの目標となると、やはりそういったあたりでしょうか?
そうですね、ダートグレードも目標ですが、なんだかんだで中央の強そうな馬が次から次に出てきますから、なかなか勝つのは難しいかもしれません。それ以外では地方競馬の勝ち星ナンバー1を狙うとか!?アラブで一番勝ったモナクカバキチはうちにいた時もあったんですよ。うちでは15勝しました。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
もう1頭くらい、またサンリナールやカツゲキキトキトくらいの馬を出したいと思っています。一生懸命がんばりますので、これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子