昨年はキャリアハイの122勝を挙げ、笠松リーディング第2位の成績を残した筒井勇介騎手。12月30日には地方通算1000勝を達成し、大晦日には久しぶりの重賞制覇。最高の形で2018年を締め括ったように見えますが、実際はどうだったのでしょうか。
まずは、1000勝達成おめでとうございます!
ありがとうございます。1000勝という数字は前から意識していました。実際に近づいて来て2カ月くらいはなかなか勝てなくなって...。11月の半ばくらいから全然勝てなくて、12月の最初の開催なんて1勝しかできなかったんです。その開催くらいで達成できるかななんて思っていたのに全然勝てなくて、足踏み状態が本当に苦しかったです。
やはり数字というのは大きいんですね。
そうですね。自分ではそこまで意識しないようにと思っていたんですけど、振り返ってみるとだいぶ意識していたのかなと。1000勝を達成するまでは苦しんだのに、勝った次の日からはポンポンポンといきましたから(苦笑)。
地方通算1000勝達成(2018年12月30日、笠松第7レース)
12月30日、笠松第7レースのゴッドミラクルに騎乗しての達成でした。
デビュー当初からお世話になっている馬主さんの馬で、自厩舎で達成できたので、そこはすごく嬉しかったです。嬉しいの一言ですけど、いや~長かったなって思いました。1000勝もありましたし、同じ時期にリーディング争いもあったので、そういうのもいろいろ重なって。勝てないし、どんどん差は広げられるし...。いろいろと考えさせられる時期でした。
昨年は122勝を挙げ、笠松リーディングは2位という輝かしい成績でしたけれども。
一応キャリアハイだったのでありがたいです。たくさんいい馬に乗せてもらったので、そのお陰でたくさん勝つことができました。まだ取りこぼしも多いですし、実際に後半勝てない時期もあった中で、本当にたくさんの方々に支えていただいたなと。感謝の気持ちでいっぱいです。
リーディング2位というのも初めての経験でしたが、トップが見えた位置での騎乗というのはいかがでしたか?
やっぱり今までとは違った感じで、周りも『リーディング獲れるぞ』っていう目で見てくれるので、いろいろと考えるところはありました。気にしないようにはしていましたけど、どうしても意識していたんだと思います。
先ほども仰っていましたが、1000勝を達成した次の日には4勝の固め打ち。しかも東海ゴールドカップで久しぶりの重賞制覇を果たしました。
1000勝も達成して、リーディング争いも決着して、気持ちが落ち着いたからなのか...まぁ、こんなもんなんだなって(笑)。久しぶりの重賞はすごく嬉しかったです。(2013年のライデンリーダー記念以来)5年ぶりですから。
ダイヤモンドダンスは6番人気でしたけれども、レース前の雰囲気というのはいかがだったんですか?
調子がすごく良かったんですよ。追い切りも今までで一番良かったので、いい走りができるんじゃないかと期待していました。人気はあんまり気にしていなくて、最初からああいうレースをしようと思っていて。落馬のアクシデントもあったけれど、人気どころが前でやり合う形になって、思った以上に流れが向きました。向正面からすごい手ごたえで上がって行って、マクり切ったところでなんとかなるなと。あとは後ろから来ないでくれと思いながら追いました。すべてが上手く行ったし、上がって行った脚がすごく良くて、本当に気持ち良かったです。
2018年大晦日の東海ゴールドカップをダイヤモンドダンスで制覇
ゴール板のところでは気持ちの入ったガッツポーズが飛び出しましたし、その後流していって1コーナー過ぎでもガッツポーズしていましたね。
はい。嬉しくて自然に出ていました。1コーナー過ぎの外側には装鞍所があって、あそこにも厩務員さんたちがいたので「やったー!」って。馬主さんにとっても花本厩舎にとっても初重賞制覇だったし、最近笠松の馬が重賞を勝てなかったので、みんなに向けてという気持ちもありました。
お世話になった方々に、いい恩返しができましたね。
まだまだ足りないですけど、でもすごく嬉しかったです。馬主の安東純二さんにはとてもお世話になっていて、よくご飯とかにも連れていっていただくんですけど、笠松の表彰台に立つのが夢だって仰っていたので、叶えることができて嬉しくて。花本正三厩舎にもすごくお世話になっているし、僕にとっては義理のお父さんなので。
え?そうだったんですか?!
そうなんですよ。花本先生の娘さんと結婚しているので。嫁さんもすごく喜んでくれました(照)。
2018年は苦しみながらも最高の締め括りでしたね。2019年はどんな年にしたいですか?
毎日の仕事をコツコツ積み重ねていくというのは当然ですが、やっぱりリーディングは狙っていきたいです。(佐藤)友則さんが抜けているので難しいところもありますけど、諦めずに食らいついて行きたいですね。去年は友則さんが南関東に行っていた時期があって、だからこそ大きなチャンスだったのに、僕が勝てない時期があって、友則さんがポンポンポンと勝っていったので差を広げられてしまいました。今年も遠征に行くことも多いだろうし、友則さんからも「がんばれよ」って言ってもらっているので、なんとか食らいついて行きたいです。
佐藤騎手が全国的に活躍して、地元を空けることが多くなると、筒井騎手にかかるプレッシャーも大きくなりそうですね。
そうですね。去年はそこでプレッシャーを跳ね返し切れなかったなと。簡単なことではないですが、一度経験したというのは大きいので、今年こそはと思っています!
では、オッズパーク会員の皆さんに笠松のPRとメッセージをお願いします。
笠松のレースでのポイントは、まずスタートと、向正面の仕掛けどころです。前に行っていてもスローに落とすと一気にマクッて来る人もいるので、そこをどう対処するか。油断しているとマクり切られたりするし、でも前に行って楽をしたいので、そこの攻防が一番の見どころだと思います。僕自身のことは、ありきたりなんですけど、これからも1つ1つ丁寧に乗って、全力で頑張りますので長い目で見て応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
今春、デビュー10年目を迎える杉浦健太騎手は重賞通算9勝(1月21日現在)。特にマイタイザンとのコンビでは重賞6勝を挙げ、同馬は2018年兵庫県競馬の年度代表馬に選出されました。この馬に巡り会えたことで自信がつき、周囲からの評価も変わったといいます。節目を前に、マイタイザンとのことやご自身の目標について語っていただきました。
前回こちらにご登場いただいてから約4年が経ちました。その間にマイタイザンとのコンビで2015年兵庫若駒賞を勝利し重賞初制覇。ゴール手前で喜びのガッツポーズが出ましたね。
そうでしたね(笑)。嬉しすぎて自然と出ちゃいました。その1カ月前の園田プリンセスカップに3戦無敗で1番人気のスマイルプロバイドと挑んだんですが、8着に惨敗。重賞初勝利を期待していたので、「まだまだ早いのかな」って感じていたところだったんです。兵庫若駒賞は周りから「絶対勝つやろう」オーラがすごくて、人生で一番緊張しました。マイタイザンはもともと掛かる馬で、兵庫若駒賞でも持ちきれないくらいの手応えで2番手でレースを進めました。4コーナーで後ろから他馬が来る気配が一気に近づいてきたんで一瞬ヤバいと思いましたが、途中からは「大丈夫かな」と思えました。喜びよりもホッとしたのが一番でした。初めて重賞を勝たせていただいて、自信にもなりましたし、いい勢いがつきました。当時、験担ぎであごヒゲを伸ばしていたんです。僕、結構そういうのを気にして、「このパンツ!」とか「流れが悪いから髪の毛を切ろう」ってなるんです。あごヒゲは役割を果たしてくれたので「重賞勝てました。ありがとう」ってすぐに剃りました。
その後、マイタイザンとは中距離戦線でお馴染みのコンビとなり、2018年は新春賞、兵庫大賞典、園田金盃を制覇されました。すべて逃げ切り勝ちで、自分の形に持ち込むと本当に強いですよね。
こんな馬に巡り会えたのはすごいことですよね。最近は馬自身が抜くところは抜いて、パッと走るところは走るっていう気合いのオンオフがつけられるようになってきました。若い時は行きたがってなだめるのが大変だったんですが、最近はレースに向けて仕上げやすくなりました。それもいい結果につながっているんじゃないかなと思います。2018年は年明け最初の重賞・新春賞をマイタイザンで勝って、12月の園田金盃も勝利。マイで始まってマイで終わった1年でした。
マイタイザンで制した園田金盃(2018年12月13日/写真:兵庫県競馬組合)
マイタイザン自身は2018年は6戦5勝。それだけに、東海菊花賞でカツゲキキトキト相手に持ち前の逃げの手に出て3着に敗れたのは悔しかったのではないかなと想像します。
強い馬から逃げてもダメなんでね。強い相手と戦えば、どんどん強くなっていくと思っていますし、もっともっと強いステージでやっていきたいと思っている馬です。キトキトに真っ向勝負を挑んで負けたことは、結果的には園田金盃の勝ちにつながったと思っています。今年も遠征プランもあります。まだ先着できていないので、なんとかキトキトを目標にがんばりたいですね。
マイタイザンには杉浦騎手の特別な思いもありますしね。
レースもですが、調教でもずーっと乗っています。この馬と大きいところをたくさん勝たせてもらってすごく自信にもなりましたし、この馬のおかげで周りからの評価も変わりました。めちゃくちゃ感謝しています。それと、「タイザン」はオーナーの冠名なのですが、「マイ」は僕の妻の名前なんです。妻も喜んでいますが、レースで走る度に「私が一番緊張する」って言っています(笑)。
同じオーナーのノブタイザンでも2018年は六甲盃を後方から差し切り勝ちされました。どんな1年でしたか?
ノブタイザンらしい気持ちいい勝ち方をしてくれて、すごく嬉しかったです。重賞もいっぱい勝たせてもらって、そういう面ではよかったですが、2018年は勝ち星が伸び悩みました。2016・17年はキャリアハイの82勝だったのですが、74勝に落ちちゃって不甲斐ないです。2着が飛びぬけて多い(98回)んですよ。納得の2着と「ああしとけばよかったな」っていう2着もありました。それをきっちり1着に持ってこられたら、もっと勝ち星も増えるので、「2着を1着に」って気持ちを強く持って今年は乗っています。
六甲盃をノブタイザンで勝利(2018年3月1日/写真:兵庫県競馬組合)
なにか最近、取り入れたことや変えたことはありますか?
以前より自分の中で気持ちに余裕ができて乗れているなって感じます。馬のリズムを大切に、馬の邪魔をしないことをすごく考えています。木村さん(木村健元騎手・現調教師)がすごい憧れで目標にしているんですが、桁違いに上手いので、自分でちょこちょこアレンジしながらやっていたら、馬に合わせてっていう方向になってきたんだと思います。
2019年に入って、現在の調子はいかがですか?
良くもなく悪くもなく、ですね。毎年、どこかで勝てない時期が1~2カ月単位で入るんですが、今年はトンネルをなくして平均ペースで勝ちたいです。
身近なところでは、吉村智洋騎手が2018年地方競馬全国リーディングに輝きました。毎晩、調整ルームでお鍋を囲んでいるそうですね。
ずっとレースのことを喋ったり、身近で見ている方なので刺激になります。僕ももっとがんばらなあかんなって思っています。
春にはデビュー10年目を迎えます。今後の目標を教えてください。
早いですね~、そんなに経つんですね。まだ自分では若手だと思っているので、フレッシュにもっとがんばりたいです。目標は、3年連続で言っているんですが、年間100勝です。上位の騎手から勝ち星をとっていかないと上っていけないですが、10年目の節目になんとかがんばりたいです。
最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
みなさんが馬券をいっぱい買ってくれたら、僕らもすごくやる気が出ますし、刺激にもなってもっとがんばれます。ぜひ応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子
今年のばんえい菊花賞をミスタカシマで、クインカップをメヂカラで制した工藤篤騎手(48)。12月28日現在1,481勝は現役5位。1500勝を目前に、お話を伺いました。
メヂカラ(2018年11月11日、クインカップ)
レースで心がけていることを教えてください。
まずは、まっすぐ走らせること。そして馬の雰囲気を見る。スタートしてから「いつもより重く感じてそうだな」といった感覚を掴むことだね。レースの流れも、瞬時に判断する。
そのつど臨機応変に対応しているということですね。その感覚はどのようにして磨いてきたのでしょうか。最近の馬場水分を判断するのも難しいと思います。
感覚は、経験で磨いてきた。馬場のタイムも2年前くらいから変わっている。2%でも、前ならスピード競馬だったけれど今ではそうでもない。変化も、ファンにとっては逆におもしろいんじゃないかな。
夜になると馬場がしまって軽くなると聞きます。
日が暮れて気温が下がったら、多少は早くなるかな? でも時間的にクラスが上の馬が走っているというのもあるからね。今は予想紙も少ないから、ファンも予想は難しいよね。
さて、工藤さんといえば馬を大事にしている印象があります。
それは大事にしているね。背中に乗った時の雰囲気で、今日は元気だな、とか。それでもゲート開いたら「あれっ?」ということもあるけどね。パドックで見て、元気いいな、と思う馬はたいていレースでも元気だよ。
では、騎乗馬について教えてください。ミスタカシマはどのような馬でしょうか。牝馬限定戦とばんえいダービーは調教をつけている鈴木恵介騎手に乗り替わりとなりましたが...。
先行できて、障害が上手。馬のペースで行けるという先行馬の強みもある。センスはあるし、いつも全力で走ってくれる真面目な馬だね。
強いから、誰でも乗りたい馬。そりゃもちろん乗りたい。ファンの立場からみると、ずっと同じ人が乗るよりも違う騎手が乗っても面白いんじゃない。
ミスタカシマ(2018年11月4日、ばんえい菊花賞1着)
センゴクエースはいかがですか。
どうしても重量を積むと、障害に難があるからね。でも常に上位には来ている。馬格があって、能力も高い馬です。
クインカップを制したメヂカラは。
体力的に弱いところがあったけれど、夏くらいから、あれ、成長しているな、と感じていた。クインカップは、前哨戦の紅バラ賞も手応えがあったので、末脚を信じていました。これからも楽しみです。
「牝馬の工藤」とも言われていますが...。
特に牡馬だから、牝馬だからとは考えていないですね。
個々の性格、ということでしょうか。末脚勝負の馬が多いですね。
そうだね。ナナノチカラとか、いい馬ばかり乗せてもらえたから。ナナノチカラは体が小さいけれど、根性は男勝りだった。差し馬、嫌いじゃないな(笑)。スーーッ、とする!
好きな脚質は、好位差しが多い。一歩間違うと障害で苦労する。先行するイメージはないでしょ。
アサヒリュウセイも楽しみですね。
一生懸命走っているけど、今はスピードのある若馬と一緒に走るからおじさん(9歳)は辛いな。人間と一緒(笑)。調子は悪くないし、落ち着いたペースだと走れる。
期待している2歳はいますか。
サカノハマナカはね、調教ではタフなんだけど、砂の中に入る(レースに出走する)とまだ......。気持ちも若いから、これから期待している。
センゴクエース(2018年8月12日、ばんえいグランプリ2着)
騎手の数も減って19人ですが...。
今の騎手は、その分乗れるチャンスが多いからうらやましい。俺らが若手のころは40人近くいて、指をくわえて騎乗をみていた。その分技術的に思うところもあるけれど、みんな頑張っているからね。昔は騎手を目指して厩務員になった人がほとんどだった。頭(1着)を獲って、厩務員の喜んでいる顔を見たらこっちも嬉しいね。なんともいえない顔をするんだよな。声出す人もいれば、ニヤッとする人もいる。騎手の魅力は、頑張った分がそのまま賞金というような結果に表れるところだね。
これからばんえい競馬は大きなレースが続きます。帯広に来るオッズパーク会員の方に一言お願いします。
帯広は地方都市にしては活気がある街。いろいろな店があるから食事なども楽しめるよね。これからも一歩一歩頑張っていきますので、ばんえいともども、よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保友香、小久保巌義)