10月10日に地方通算300勝を達成した木之前葵騎手。今年度のレディスヴィクトリーラウンド(LVR)では10月7日の開幕戦・佐賀ラウンド第1戦で勝利を挙げました。昨年度はLVRで未勝利だった木之前騎手。しかし、1年の間に騎乗について「これでいいんだ!」という発見から「追えるし、動けるようになった」と言います。さらに「前よりは競馬が絶対に上手くなっている」と話す理由とは。LVRの目標も含めて語っていただきました。
地方通算300勝、おめでとうございます!
ありがとうございます。あと2勝の状況でLVR佐賀だったので、そこで2連勝をすれば決められる!と思ったのですが、甘くなかったですね(笑)。それでも佐賀で1勝を挙げて、名古屋に帰って開催2日目で達成できたのでよかったです。自厩舎(の馬)で300勝を達成できたことも嬉しいですね。
いま話題にも出たLVRについてお伺いしたいのですが、まずは開幕に先立って行われたばんえいエキシビション(2位)の感想を教えてください。
超たのしかったです!まゆゆ(鈴木麻優元騎手)と接戦だったので、「行けーいけーっ!」って追っていて、1人で盛り上がっていました。騒がしかったと思います(笑)。ばんえいはまだ慣れていませんが、初めてだった昨年よりは動けました。私だけスタートから立っていって、途中からは鞭も入れました。ばん馬はハミに敏感で、真っすぐに走らせるのが大変でした。馬にもよりますが、もしかしたらサラブレッドより口が柔らかいのかもって思うくらいでした。
木之前葵騎手(4)と鈴木麻優元騎手(3)(写真:ばんえい十勝)
昨年のLVRは残念ながら未勝利でしたが、今年は開幕戦の佐賀でいきなり勝ちました。幸先のいいスタートを切れましたね。
昨年は全然歯が立たなかったですね。1年目のLVRは盛岡ラウンド(2016年11月7日)で勝つことができたので楽しかったです。やっぱり勝てないとつまらないから、今回久しぶりにLVRで勝つことができて嬉しかったです。レースはスタートを決めたんですが、周りが速かったので控えて、終い重視のレースをしました。必死に追っていたので、最後はゴール板がどこかわかりませんでした。LVRを行う佐賀競馬場と高知競馬場は内を空けて走るので、慣れなくて乗りにくいですね。いつもなら「ここを取っちゃえば内からはこないだろう」っていうのがあるのに、インから来られると「うわ~来ちゃった」ってなります。佐賀で勝った時は、4コーナーで地元の岡村健司騎手が内を通っていたので「ここは走って大丈夫だろう」とインを選びました。
昨年、LVR開幕前に「馬に乗る場所(重心)の感覚が0になる時がある」と悩んでいました。それは解消されましたか?
克服しました!鐙を1つ伸ばしていたんですが、それを戻したら「なんだ、これがいけなかったのか。私、ここでハマれるんだ!」って思いました。追い方もバラバラになっちゃっていましたが、それからはいい感じに追えるし、動けます。
モヤモヤ悩んでいたのが解消されて何よりです。でも、鐙を短くして乗るのは体力を使いそうですね。
そうですね、脛(すね)にきます。日々の調教がトレーニングになりますね。調教では1日の半分の体力を使っちゃうんじゃないかってくらいで、いまは平均して23頭、自厩舎をメインに乗っています。笠松開催中は攻め馬が多くて、調教が終われば急いでレースに乗りに行くので体力不足を感じます。でも、いい波に乗れている時は体の使い方が違うのか疲れないんですよね。気持ち的にも何でもできそうな気がします。その代わり、波に乗れていない時はダメなので、波を平均にしていきたいですね。
数字の面では2016年70勝をピークに2017年58勝、今年はここまで46勝と減っているようには見えますが、経験を重ねるごとにその内容も変わっているのではないかと思います。
3年目くらいまでは乗っていれば勝てるようないい馬が自厩舎にたくさんいて、そのおかげでたくさん勝たせていただいていました。今は本命がつかないような馬でどうやって勝つかっていうことを考えています。だから、前よりは絶対競馬は上手くなっていると思います。力が五分の馬で、いかにソツなく回って勝つかですよね。位置取りが全てだと思っています。ハナに行ければやっぱり楽だし、逃げ馬の後ろもめっちゃいいですよね。4コーナーで進路が空くと思うので、焦らないで待つようにしています。
そうなると、スタートもポイントになりそうですね。
私、スタートが下手なんですよ。いい時はピシッとなって馬が私の乗っているところで動けなくなるんですが、ダメな時は馬がゲートの中で動いちゃってタイミングがズレるんです。先輩方はいつもできているのに、なんで私はできないんだろう?って思います。まだまだ上達への道のりは長いですね。
それではLVRでの抱負と、これからの目標を教えてください。
LVRは佐賀ラウンドで1勝を挙げられたのですが、逆転される可能性があるので、この後の高知・名古屋でも勝てるようにがんばりたいです。これからの目標は、上手くなりたいっていうのはあるけど、そろそろ重賞も勝ちたいって思います。2017年1月に園田クイーンセレクション(カツゲキマドンナ)を勝って以来、重賞制覇がないのでがんばります。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
いつも名古屋競馬を観戦していただいてありがとうございます。年間100勝を目指してがんばるので、応援してください!
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
板垣吉則調教師は2015年度にシーズン127勝という大記録を打ち立ててから3年連続で調教師リーディングを獲得。今シーズンもここまで1位を守り続けている。オッズパーク地方競馬応援プロジェクトのマリーグレイスでは8月の若鮎賞を勝利。昨年はキングジャガーが3歳重賞を4勝するなど重賞戦線でも存在感を示し続ける。その秘訣はどこにあるのかを改めてうかがってみた。
まずマリーグレイスについてうかがいます。若鮎賞では8番人気ながら1着と見事な走りを見せてくれました。
厩舎に来た当初は小柄ですが気が良い馬だという印象で、仕上げにはそんなに手間取らないだろうなと思っていました。実際能力検査もすぐ合格してくれましたね。
デビュー戦のマリーグレイス
結果的にはデビューから3着→2着→1着で重賞制覇ということになりましたね。
デビュー戦の時は期待していたんですけど、ちょっと外に膨らむようなレースになってね。その時は3着という残念な結果でしたが、2戦目には好スタートを切って先頭を進んだらよく粘ってくれた。現時点ではそういう形のレースが理想なのかなと、その時から感じていました。若鮎賞は、1600メートルという距離がどうなのかなと思って挑んだのですが、頑張ってくれました。
普段のマリーグレイスはどんな馬なんですか?
調教なんかでもちょっとピリピリした所がありますね。競馬場に来る前からそういう面があったそうなんですが、牝馬らしい気が勝った感じというかね。でも悪さはしないですよ。素直です。
若鮎賞を制したマリーグレイス。8番人気での勝利
では話題を変えて。今年もここまで調教師リーディングの1位を守ってきています。今年も、馬の回転とかいろいろうまくいっているように見えます。
自分としてはもっと上手くやれた部分があるような気もするのですが、欲を出してもキリがないですし。今一番上にいるというのは、良くやって来たということにしていいかな。
過去との比較ですが、2015年のペースにはさすがに届きませんが2016年よりは良くて、去年と比べるとちょっと遅れてきたという感じです(夏の水沢開催終了時点で比較すると、2015年は79勝、2016年は49勝。2017年が61勝で、今年は53勝)。
相手があることですし生き物を扱っているわけだし、良い時悪い時の波があるのは仕方がないですよね。毎週コンスタントに勝てるというものでもない、そういうものだという覚悟はしながらやっています。
今年ここまでの手応えとしては? 手駒の揃い具合とかは。
だいたいシーズンの半分が終わった所になりますが、そうですね、例年は2歳馬の成績がもうひとつなのですが、今年はわりと良く走ってくれる馬が揃っていますし、古馬も勝つべき所は勝ってくれている。あと、自分の所は3歳馬が多いから、このあとは有利な戦いができるのではないかな。
今年は古馬の強い手駒がちょっと少なくて、古馬の重賞なんかはなかなか手が届かないなとは感じているんですけど、その代わり2歳や3歳の若馬に良い馬が多いのでね。そこは楽しみにしています。
毎年感じるのですが、板垣厩舎は馬の入替が早いというか柔軟というか、どんどん入れ替わっていく印象があるんですけど、そこは調教師の意向や指示なんですか?
いや、その辺は全て馬主さんの意向ですね。馬主さんが諦めようかという馬を、力があると思うからもう少し頑張ってみましょうと提言することはもちろんあるけど、基本的には馬主さんの考え通りかな。そこは"馬主ファースト"ですね。
板垣厩舎というとですね、厩務員さん達がずっと同じ顔ぶれですよね。良い厩務員さんが長く勤めているのも良い成績が安定している要因なのではと思いながら見ています。
うちの厩舎は、例えばどういう飼い葉にしようとかどういうケアをしようとかいう部分はほとんどをそれぞれの厩務員に任せています。もちろん自分が指示を出すこともあるんですが、ほとんどの場合は厩務員自身の判断でやってもらっています。自分は気になる馬を自分で調教で乗って確認したりするくらい。
厩務員さんの自主性に任せるわけですね。
やっぱり自分の考えでやってみないと腕が上がらないし、上から"今日はこれだけ食べさせろ、これだけ調教しろ"と指示されてやっても楽しくないと思うんですよね。自分の考えで馬を仕上げてそれで良い結果が出ればやりがいにもなるでしょうし。自分はそういうスタンスでやっていますね。
あともうひとつ聞きたいのがですね、以前、所属する厩務員さん全員が、担当馬が重賞を勝ったということがありました。そういう馬の分配のようなのは調教師が決めるんですか?
それはほとんどの場合は"手が空いている順"です。ごく稀に、例えばこの馬の性格ならこの厩務員が合いそうだなと思って任せることはあるし、馬主さんの希望で担当者を決めることもありますが、ほとんどは馬が来たその時に馬房が空いている厩務員が担当するようにしています。
じゃあ本当に運というか公平というか。厩務員さんもやる気になりますよね。
任せてみてどうしても合わない、どうしても結果が出ないという時は担当を変えることもありますけど。でも"良い馬は全部この厩務員に"ということはないです。
さて、これから楽しみな馬とか注目の馬とかを挙げていただくとすると?
マリーグレイスは、そうですね、小柄な馬なので芝とかの方が良いのかもしれませんが、粘り強いレースをしてくれるので楽しみにしています。それからミラクルジャガー。まだ馬体に緩さが残っていて成長途上なのですが、良いものは持っていると思う。良くなるのが2歳のうちなのか3歳になってからなのかはまだ分からないですけどね。兄(キングジャガー)もそういう所があったので、いずれ変わってくると思っていますよ。
2017年、3歳重賞で4勝を挙げたキングジャガー
30代のうちに騎手を引退し調教師に転身した板垣吉則調教師は今年がまだ9年目のシーズンなのだが、すでに通算605勝(9月27日現在)を挙げしっかりとした足場を築いているように見える。何よりも衝撃的だったのは2015年に叩き出したシーズン127勝という岩手競馬の調教師歴代最高となる勝利数で、そう簡単には破れないと思われていた旧記録(113勝)を大きく超えた所に調教師としての手腕の凄みを感じさせられたものだった。9シーズン目ながらもまだ40代の若い板垣調教師だけに、その覇権の時代はまだしばらく続くのではないだろうか。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
宮川実騎手は、高知競馬でリーディング上位を常にキープ。キャリア20年目の今年は、初めての高知リーディングが視野に入っています。
今年は所属する打越勇児厩舎が全国リーディングを狙える勢い。宮川騎手も順調に勝ち星を積み重ねていますね。
厩舎に良い馬がいて、その馬に乗せていただけて、本当にありがたいと思います。厩務員さんがしっかりと馬をつくってくれていますし、厩舎全体がひとつになっている感じがしますね。それはもちろん、以前から変わりないことなんですが、今年はその積み重ねが実を結んでいるように思います。
それにしても、打越厩舎はかなりの好成績です。
高知のローテーションだと連戦になりがちですが、調教で僕が乗って気になるところがあるとか、厩務員さんが馬の体調に不安があるとか、感じたことを先生に伝えると、馬を休ませてくれることが多いんです。馬は本当に調子が悪くなると、立て直すのはとても難しいこと。でも、そうならないうちに休ませてもらえるんです。たとえば次の週に開催がないときなどは"もう1回だけ"と出走させるケースが多いんですが、それをガマンできているというか。1開催休んだだけでもけっこう違うものなんですよ。
そういう厩舎の好成績に、宮川騎手も乗っているところがあるのでしょうね。ただ、高知での勝ち星は永森大智騎手と競っている状況です。
年末までは時間がありますから、まだそれほどの意識はないですけれど、リーディングを取れるくらいの馬にたくさん乗せてもらっていると思います。でもまだまだミスが多いとも感じます。それを減らしていくのが第一。そういったなかでも、自分が納得できるレースができればと思っています。
ゆくゆくは赤岡修次騎手のように、高知以外でも活躍できればいいですよね。
いやいや、そこまでの余裕は今のところないですよ。でも修次さんとか、巧い人の乗りかたを間近で見るのは勉強になります。見習いたいのは精神的な勝負どころや、瞬間の判断力などですね。道中の仕掛けがほんの少し遅れるだけでも結果はすごく変わりますし、自分がちょっと気負うだけでも悪いほうに違ってきます。僕が常に考えているのは、馬のリズムを壊さないようにすること。馬を気持ちよく走らせることがいちばんだと思っています。
それは現役でいる間はずっと課題になりますね。
負けたとき、『あの場所で馬が行きたいと言っていたのに、それに対応してあげられなかったな』とか感じることがありますね。結果が伴わないことが続くといろいろと考えてしまいますので、いつも自分に対して「レースを楽しめ」と言い聞かせているんですけれど。修次さんは控室では笑っていますが、レースになるとすごく集中している顔つきになるんですよ。そういうところも見習っていきたいです。
それでも大ケガがありながら、今年でキャリア20年になりました。
年とともに、だんだんと体が張ってくる、その間隔が早まっている気がしますね。以前からマッサージや整体にはよく行っていたんですが、その回数が増えました。若いころは腰がけっこうキツくて、でもしばらくしたらあまり気にならなくなったんですが、最近また張りが出てくるようになってきて......。それがあると体のバランスが悪くなってしまうんですよね。
となると、普段の生活も変わってきましたか。
そうですね。遊びに行く回数は減ったかなと思います。とくにサーフィン。無理してケガしてもしょうがないですし(笑)。
最近の高知競馬といえば、売り上げの上昇と賞金の上昇が目につきます。
2歳の新馬戦も始まりましたし、以前よりもいい馬が来るケースが増えたことは実感しています。デビュー前の馬の調教は危険が多いんですが、昔に比べればかなりマシですよ。厩舎にもデビュー戦から連勝したグローサンドリヨンとか、期待できる2歳馬がいます。高知の馬場で鍛えられて上のクラスまで行けた馬は、県外でも通用しますからね。騎手も増えてきましたし、以前よりも活気があるのは間違いないです。
一方で、騎手が増えるということはライバルも増えるということですよね。
自分としては、前の年よりも多く勝ちたいと思っています。ただ、この世界は上を見るとキリがないですからね。それでもこの春には福永洋一記念(ティアップリバティ)を勝たせてもらいましたし、今年は厩舎の勢いをジャマしないようにできればいいかな。
そしてこの9月には別府真衣騎手との入籍が発表されました。それもプラスになっているのではないですか?
生活のリズムが同じですし、僕の多趣味に付き合ってくれているうちに自然と......という感じです。一緒にいて気持ち的に楽ですし、この夏に行ったキャンプにもついてきてくれました。普段の生活が楽しければ仕事にもつながっていきますし、いい影響が出ていると思います。でもレースではライバル。お互いに高め合っていければと思っています。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典
8月8日に地方通算2000勝を達成した永島太郎騎手。2000回目の先頭でのゴールは地元・園田競馬場ではなく、期間限定騎乗中の門別競馬場でした。デビュー28年目を迎えてもなお「勉強になることばかりだった」という門別での日々や、8年ぶりのJRA遠征、後輩騎手との交流、そして2000勝を達成したことで新たに見えてきたことなど、たっぷりと語っていただきました。
地方通算2000勝おめでとうございます! 門別競馬場での達成でしたが、まずは門別で期間限定騎乗をした経緯を教えてください。
9年前に門別で期間限定騎乗をさせていただいた時、大きい馬場での競馬で勉強になることがいろいろあったので、翌年から「もう一度行きたい」とずっと思っていました。でも、なかなか行けるタイミングがなくて、さらに父の病気が見つかり関西を離れられませんでした。父は残念ながら今年、亡くなったのですが、時間ができたのでジョッキーの間にもう一度行ってみようと思ったんです。
普段、騎乗している園田競馬場は1周1051メートルで小回りコースと言われます。1周1600メートル(外回り)の門別競馬場はどういった点が違いましたか?
もう、まったくスタイルが違いますね。走る馬は同じでもコース形態によってこんなにも走らせ方が変わるんだな、と衝撃的でした。競馬は決められたルールで乗っていますが、ルール上では収まりきらない位置の取り方などが園田と門別は両極端なくらい違います。ペースも園田だと2ハロン目に時計が一番遅くなるんですが、門別はJRAと同じで2ハロン目が一番速くなって、馬の抑える場所や抑え方もまるで違いました。勉強になりましたね。
そうなると、門別は直線も330メートル(外回り)ありますから、差しも決まりやすそうですね。
テレビで見ていると、4コーナーを先頭で持ったまま回ってきた馬が絶対に伸びるだろうと感じるのですが、後ろの馬に差し切られたりするんですよね。まだ期間限定騎乗は2回目ですが、今回の2カ月でもまだまだ分からない部分がいっぱいありました。
期間限定騎乗は7月10日からでしたが、前週には重賞・グランシャリオ門別スプリントに騎乗。その日、エキストラ騎乗の1鞍目をマイコートで勝利しました。今回の門別遠征では実質的な初勝利で、同馬とはJRA札幌競馬場でコスモス賞(6着)にも挑みました。2010年以来となるJRAでの騎乗はいかがでしたか?
札幌競馬場なんて乗れることがないので、ありがたかったですね。門別は冬のオフシーズンに騎手やスタッフが1歳馬や2歳馬を乗り慣らして競走馬に育て上げています。だから、仕上げた馬は自分たちが乗りたいっていう気持ちがあるでしょうし、地方競馬のジョッキーはみんなJRAで乗りたい気持ちが強いです。そんな中で僕が乗せてもらえたっていうのは、騎乗できたこと以上に感謝の気持ちが大きかったです。阪神競馬場や京都競馬場でも乗せていただきましたが、その感触とはまた違って、洋芝で生えそろった根付きのいい、1本1本が太い芝のじゅうたんの上を走っている感じでした。馬の脚には優しいけど力もいるであろうクッションのいい芝でした。いい経験をさせてもらいましたね。
貴重な経験といえば、門別競馬場には屋根付きの坂路コースがあります。調教で乗ってみていかがでしたか?
1度だけ美浦の坂路は上ったことがありましたが、日常的に坂路調教をするのは初めてでした。馬が他に気を取られず駈け上っていくことに集中するので、乗りやすかったですね。ウッドチップなので脚にも優しいんじゃないですかね。若馬は骨がまだできていない状態で強い負荷をかけるとどうしても痛みが出たりしますが、脚元への負担が軽くなる分、もっと強い負荷をかけられるんだと思います。そうして若いうちに鍛えられるから基礎体力がついて、ホッカイドウ競馬の2歳馬は早い時期からしっかり結果を残せるのではないかと感じました。
8月8日門別10レース、ゴッドパイレーツで地方通算2000勝を達成されました。改めておめでとうございます!門別に旅立つ前からこの記録は意識されていましたが、永島騎手にとって2000勝とはどんな数字ですか?
月並みな言葉ですけど、デビューした時は「まさか」って思っていた数字です。後輩で僕より早く2000勝に到達した人もいますし、もっともっとたくさん勝っている人もいますが、僕の騎手人生でひとつの大きな数字まで辿り着けたことは幸せで、素直に嬉しかったです。
達成の瞬間は覚えていらっしゃいますか?
あの日は早いレースに勝ちを強く意識できる馬に乗せていただいていたので、それで決めなきゃなって気持ちがありました。でも、2着に負けてしまったんです。これまでどのレースに対しても「勝ちたい」って気持ちで挑んできましたが、2000勝まであと1つのレースで2着になったことは、今までにないくらい悔しさや脱力感がありました。引きずりはしなかったですが、たくさん2着に負けてきた中で、初めての感覚でしたね。
2000勝目をさせてもらったゴッドパイレーツもチャンスがあったんですが、なかなか勝ちきれない馬でした。何か足りない部分を補って勝ちきるためには、メンバーや枠を考えた末、「スタートを決めて逃げること」と考えました。その通りに逃げて勝てたことで、2000勝目にしてやっと自分が思ったレースができたなって思いました。濃い一日でしたね。
2000勝の記念撮影には多くのホッカイドウ競馬の騎手たちも駆け付けていましたね。
2着に敗れた早いレースでの達成だったら、もっと色んな人が写真に収まってくれると話してくれていました。でも、それを取りこぼしてしまったのでね。門別競馬場は調整ルームまで車で移動しないといけないくらい遠くて、2000勝目を決めたのが最終レースの1つ前。その頃まで乗っている騎手も少なかったんですが、若いジョッキー達も並んでくれました。岩橋(勇二)くんなんかは、自分のレースが終わって帰っていたのに、わざわざ着替えて来てくれたらしくて本当に嬉しかったですね。
園田競馬場でも行われた2000勝達成セレモニー(9月14日)
2000勝を達成したいま、目標やこれからのビジョンを教えてください。
長年、騎手としてやってきた中でいろんな心境の変化がありました。2000勝というひとつの区切りを達成したことと、門別では今まで自分が20何年乗ってきても分からなかったゲートや道中の運び方など勉強になることが多かったので、帰ってきた園田ではフレッシュな気持ちで乗れるんじゃないかと楽しみです。
そして、2000勝を達成した今、勝つことにすごく貪欲になりました。「乗るレースは全部勝つ!」くらいの気持ちです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
僕たち競馬人は、衣食住に関わる仕事ではなく、ともすれば世の中に必要のない部分で生きているのかもしれません。そんな中でも競馬の世界で生かさせてもらえているのは、ファンの方が馬券を買って楽しんでくださっているからです。だから、ファンのみなさんに「また買いたいな」って思ってもらえるような競馬をずっと続けていきたいと思っています。ぜひ馬券を買って楽しんでください。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子