テンマダイウェーヴとのコンビで重賞2勝を挙げた、兵庫の渡瀬和幸騎手。1999年のデビューから、20年目の悲願の重賞初制覇。ここまでコツコツと努力を重ねて来た苦労人に、現在の心境をお聞きしました。
兵庫若駒賞、園田ジュニアカップと重賞連勝おめでとうございます!
ありがとうございます。すごく嬉しいです。兵庫若駒賞の時は馬自身まだ勝利を挙げたことがなかったし、初の重賞挑戦でどのくらいやれるかなという気持ちでした。でも勝負どころで手ごたえバツグンで、「あれ?あれ?あれ?」という感じでしたね。
どの辺で勝ちを意識しましたか?
4コーナーで前が開いた時です。僕,最初は(下原)理さんの内を狙ったんですけど、バッと閉まってしまって。でも外が開いたので、そっちに切り替えました。そうしたらすごく良く伸びてくれて。
勝った時はガッツポーズをしていましたけれども。
ゴールに入ったら自然とやっていました。馬も初重賞勝利ですし、僕にとっても初めてで本当に嬉しかった。何より、仕上げてくれた陣営に感謝しています。
人馬ともに重賞初制覇となった兵庫若駒賞(2018年10月18日)
テンマダイウェーヴとは4戦目のJRA認定競走からコンビを組んでいますね。
最初は(杉浦)健太が乗っていて、その時のレースで健太が違う馬に乗るということで回って来たんです。初めて乗ったレースは2着だったんですけど、ちょっとまだ後ろ脚が甘かったりしてコーナーで外側に流れて行くようなところもありました。馬場が悪かったのもありますし、これからどんどん成長してくれるだろうなと。2着で賞金加算したので、次は兵庫若駒賞へという流れになって。もともと健太が乗っていた馬ですから『健太で』という声もあったんですけど、新井先生が「渡瀬で賞金加算したんだからこのままいきましょう」って言ってくれたんです。
それで結果を出せたことは大きいですね。
そうなんです。実際僕より先生の方が嬉しかったんじゃないですかね。先生はもともと(渡瀬騎手が所属する)碇(清次郎)厩舎で厩務員をしてから調教師になった方で、昔からずっと一緒にやって来たんです。だからこうして結果を出せたことは本当に嬉しいです。
次のJRA認定競走から逃げる形での競馬を覚え、園田ジュニアカップも逃げ切り勝ち。より強い競馬で重賞連勝でした。
最初は逃げようとは思っていなくて、好位の外取れたらみたいな気持ちでした。スタートも速かったですし、他の馬が意外と行かないから中途半端になるよりはと逃げました。ずっと気合を付けながらで、ずっと遊んでいる感じでした(笑)。それでも(相手が)来れば来る分だけ伸びてくれて、本当に強い競馬でしたね。
園田ジュニアカップ(2018年12月31日)
兵庫若駒賞は人気薄での勝利でしたが、園田ジュニアカップは1番人気での勝利。プレッシャーはありませんでしたか?
僕、基本的にあまり緊張しないタイプなんですけど、さすがにこの時は緊張しました。これまでで一番緊張したんじゃないかっていうくらい。先生のプレッシャーの掛け方もすごかったんです。装鞍が終わって「お願いします」って言ったら、「勝って帰ってこいよ」って。それまではあんまり緊張してなかったんですけど、パドック行ってからなんだかすごくしゃべっている自分がいて。これは緊張を誤魔化しているんかなって。とにかくめちゃめちゃ緊張しましたね。
そのプレッシャーを跳ね退けて見事な勝利でした。またひとつ大きな経験を積みましたね。
これは大きいですよね。今回は絶対に勝たなければならないって思っていて。でも競馬で絶対勝たなければならないという立場って、どんなに強い馬に乗っていてもキツイですから。だから(武)豊さんとか本当にすごいなって改めて思いました。こんなプレッシャーをGIでやっているなんて...、想像しただけで本当にすごいです。
初遠征の笠松(ゴールドジュニア・7着)は残念な結果でした。
そうですね。馬も人も初の笠松だったので、理さんや(田中)学さんにアドバイスをいただいたりもしたんですけど、枠も外だったし、結果あそこまで外を回るなら下げても良かったかなと。惨敗という形になってしまいましたが、馬も人もいい経験をさせてもらいました。馬自身は幅も出て、後ろ脚もしっかりしてきたので、これから暖かくなってさらに楽しみです。
この馬はどんな存在ですか?
やっぱり、こういう馬がいるとモチベーションは違うと思います。自分自身ではそれほど意識はしていないですけど、やっぱり違うのではないかと。それに、普段この馬の攻め馬は健太がずっと乗っているんです。「いつもありがとう」と言っていますし、本当に感謝しています。
これまで渡瀬騎手もそういう経験があったんじゃないですか?
それはそうですね。だからこそ感謝してます。僕はデビューして20年経って、ようやく掴んだ重賞だったので。重みありますよね。でもここまでジョッキーをして来て、辞めたいと思ったことないんですよ。ずっと馬に乗っていられて楽しいというのが大きくて。怪我もそんなになく休むこともなかったし、とにかく馬に乗ることが好きなので。
園田ジュニアカップの口取りにはお子さんが4人写っていましたけれども、渡瀬騎手のご家族ですか?
うちの家族と甥っ子が1人混ざってます。うちの子供は5歳、3歳、0歳なんですけど、本当に可愛いくて...。励みになりますね。保育園から帰って来て、その金ナイターとか見ているらしいんですけど、一番上の子が「パパいつも勝てへんなぁ」って言ってたらしくて(苦笑)。口取りに写ったのも初だったと思うし、僕が目の前で勝ったのも初めてだったんじゃないかな。「おめでとう!」って走って来てくれて。もう勝った瞬間よりもそっちの方が泣きそうでした(笑)。記憶に残ってくれるといいんですけど。
奥様はいかがでしたか?
めっちゃ笑顔ですごく喜んでくれましたね。やっぱり奥さんがいるから頑張れるんです。子供もいるし、家族のために一生懸命頑張らないと。それが力になってます。大晦日に競馬終わって嫁さんの実家に行ったら、垂れ幕とか飾ってあって、クラッカーでお祝いしてくれて。本当に嬉しかったですね。
今回ジョッキーインタビューは初登場です。オッズパーク会員の皆さんに自己PRをお願いします。
園田のペリエと呼ばれています。髪型的に(笑)。厩務員さんや調教師さんからもそう呼んでもらっているので、そのあだ名で覚えてもらえたら嬉しいです。騎乗に関して負けない部分は、今はゲートですね。出遅れはほぼないと思っていただいて大丈夫です。昔はそうでもなかったんですけど、ここ何年かずっと乗り方を研究していて、他の人の真似をしたりいろいろ試してみたんですけどなかなかしっくりこなくて。それで、アブミの長さを2、3穴(約5cm)伸ばしたらすごくしっくり来て。重心の問題だと思うんですけど、しっかりとゲート出るようになって、自分の形ができました。
そういう時期にテンマダイウェーヴのような馬と出会えたのも良かったですね。
本当に今で良かったですね。園田は若くて活きのいい騎手もどんどん出て来てますけど、追い比べになったらまだまだ負けないですよ。若い子らには、「もっと来い!」と思っています。今回こういう馬に出会って成長させてもらっているし、まだまだ頑張ります!これからもよろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:兵庫県競馬組合)