2018年9月、デビュー7年目で重賞初制覇を遂げた鴨宮祥行騎手。兵庫所属ながら初タイトルは金沢で行われたイヌワシ賞、騎乗馬はホッカイドウ競馬所属のモズオトコマエでした。そのいきさつに秘められていたのは偶然の積み重ねと、彼の行動力。その後地元でも重賞を制し、今年はキャリアハイの勝ち星を挙げる鴨宮騎手に重賞制覇の振り返りとこれからの目標を語っていただきました。
まずは騎手になったきっかけから教えてください。
父が競馬が好きだったのと、友達から「騎手にならへんか?」って言われたのがきっかけでした。小学生の時は京都競馬場にレースを見に行ったりしていたんです。勉強ができなくて、中学2年生の三者面談でその場しのぎで「俺、ジョッキーになる」って言ったんです。先生と親の前で言ったからには、と本気になって、中学卒業後は国際馬事学校に1年間行って、地方競馬教養センターに入所しました。
デビューは2012年4月17日、園田1レース。いきなり1番人気に騎乗し、2着でした。
1番人気だったんですね。外枠で、馬幅が分からなくてずっと外々を回っていました。レースから上がってきてビデオを見ていたら中田さん(貴士騎手)に「もっと内に入ってこいよ」と言われました。次の日に「いつ勝てるんやろ?」と心配になったのですが、その翌日(デビュー3日目)に勝てたので嬉しかったです。
2014年には全日本新人王争覇戦に出場し、2着、1着で総合優勝。この頃にはすでに地元では「期待の新人」と評判でした。
減量が取れたのが1年目の秋と早かったんですけど(※当時は20勝で減量卒業)、そこからがしんどくて苦しかったです。「うまくいきすぎやなぁ、そのうち勝たれへんようになるやろうな......」と思ってはいたんですが、意外とそれが早くきたのでキツかったですね。右も左も分からない状態でみんなと同じ舞台に立っちゃって、馬も動かなくなりましたね。
普段から田中学騎手を慕っていますが、そんな時、何かアドバイスはありましたか?
あの時は「教えても分からへんから」と、あんまり深くは教えてくれなかったです。それに学さんは「見て学べ」というタイプ。「俺が辞めるまでに、10個教えられることがある。でも、まだお前に言うのは早い」と言われたので、細かくは聞かずに見ていました。「乗ったら自分の責任や」という感じで、レース後はたとえ不利があっても何も言わないなど、騎手としての立ち居振る舞いが綺麗だなぁと思います。
今年5月30日には門別競馬場で初騎乗初勝利(6Rサロルンカムイ)。翌月にも北海優駿の騎乗依頼があり、たまたま当日の9R、急遽乗り替わりとなったモズオトコマエで門別2勝目を挙げました。
5月に初めて門別に行ったのは北斗盃の騎乗依頼をいただいたからなんですが、レース前にお世話になっている方が坂東牧場さんへ連れて行ってくださいました。そこで「来月のダービー、決まっていないなら、うちの馬に乗ってよ」と言っていただきました。その北海優駿当日、乗り替わりが出て、モズオトコマエを管理している(田中)正二先生がパドックから馬場への出口で僕の前を歩いていた騎手に「54kgやけど、乗れるか?」って聞いていたんです。その方は残念ながら無理で、すぐ後ろにいた僕が「乗れます!」と言って、乗せていただきました。先に声を掛けられていた方が乗れていたら僕は乗れなかったですし、パドックから出ていく順番が違っていても乗れなかったかもしれません。接戦でしたが、勝ててよかったですね。
モズオトコマエではなんとその後、9月11日に金沢・イヌワシ賞でも騎乗し重賞初制覇を飾りました。このエピソードからして本当に偶然が重なって重賞制覇に繋がったんですね。
いいタイミングで乗せていただきましたし、地震があった直後に北海道の馬で勝てたのも良かったです。向正面では畑中(信司)騎手のナガラオリオンが離して逃げていて、僕は2番手。「これ、捕まえに行った方がいいのかな?」と迷っていたら、外にいた吉原さん(寛人騎手)が追いかけに行ったので、ついていったらいい併せ馬になりました。直線に向いて、先頭の馬が止まったので「あ、これは交わせる!」とは思ったんですが、なんせ初めての競馬場やったんでゴール板がどこか分からなくて(苦笑)。「本当に届くよな?」と思いながら追っていました。
重賞初制覇となった金沢・イヌワシ賞(写真:石川県競馬事業局)
同じ時期、地元にも重賞制覇を期待できるエイシンエールやセンペンバンカなどお手馬がいましたね。
まわりからは「重賞3連勝できるぞ」と言われたのですが、「そんなに甘くないよなぁ」と思っていました。そしたらセンペンバンカが予定していた9月7日の園田チャレンジカップが台風の影響で日程が延びちゃって、エイシンエールの園田オータムトロフィー(9月13日)は「勝ちたい!」って気持ちが強すぎて失敗してしまいました。その失敗があったから、21日に延期された園田チャレンジカップのセンペンバンカは少し落ち着いて乗れたのかもしれません。3コーナー手前で(田中)学さんが一気に上がって行った時は焦ったんですが、思いのほか馬は何とも思っていなかったようです。すごく反応のいい馬なんですが、あの時は馬が行かなかったんですよ。いや、僕が動かせなかったのかもしれないですけど、結果的にあれがいい目標になって最後までしっかり伸びてくれました。馬が教えてくれたって感じですね。ゴールの瞬間は「うぉっしゃ~、替わったー!!」と思ってガッツポーズをしました。検量室前では大柿(一真)さんが抱きついてきたり、あとから聞くとみんな応援をしてくれていたみたいで、嬉しかったですね。
センペンバンカで地元重賞初勝利(写真:兵庫県競馬組合)
今年は12月10日時点でキャリアハイの73勝。地元リーディングも7位につけていますが、来年の目標は何ですか?
今年、これだけ勝てているのはまわりの方がいい馬に乗せてくださっているからです。1つ1つ「勝ちたい!勝ちたい!」という気持ちだけできたので、なんでこんなに勝ったのか自分でも分からないくらいです。おかげさまで今年は去年よりいい成績を残せました。来年も同じような目標じゃダメやなって思うので、トップ5に入りたいですね。でも、みんな上手くて壁が厚いんでね。なんとか......。あと、デビュー前から乗っているエイシンエールでどこか大きい所を勝ちたいですね。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
園田競馬だけじゃなく、各地の競馬場では毎日レースをしているので、みなさんにぜひ買ってもらえるようがんばります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子