デビュー1年目に重賞初制覇を果たし、この7年は地元リーディング6位以内と、堅実な活躍を続ける大山真吾騎手。兵庫ダービーはこれまで2着2回、3着2回と手が届きかけたものの、意外にも未勝利でした。しかし今年6月10日、ついにスマイルサルファーで兵庫ダービー初制覇を果たしました。待望のダービージョッキーとなった今の心境とは。
兵庫ダービー制覇、おめでとうございます!一番喜びが沸いてきたのはいつでしたか?
次の日に「あ~、勝ったんやなぁ」という感じでした。1回は勝ちたいレースですね。
スマイルサルファーにはデビューから騎乗しています。最初の頃の印象はどうでしたか?
デビュー前の発走検査と能力検査から乗って、「そこそこ走ってくるかな」とは思いましたけど、当時は「普通」という印象でした。新馬戦を勝った後にすぐ牧場へ休養に上がって、帰ってきてから西脇トレセンへ能力検査に乗りに行った時に、「これは走るな」と感じました。成長したのか、いい休養になったのか、その辺りは分からないですけど、パワーアップして帰ってきました。
スマイルサルファーにとって兵庫ダービーが重賞初制覇でもありましたが、これまでで一番変わったと感じるのはその時ですか?
2歳10月のJRA認定レースを勝った後にまた休養に上がって、休養明けの兵庫ユースカップからはずっと強い相手とやってきたので力をつけてきたんじゃないかなと思います。兵庫ユースカップの時は休み明けが響いたかな、という感じのレースぶり。菊水賞は初めての距離でもしっかり走ってくれました。その辺りで「どこかで重賞を勝てるじゃないかな」と思いました。
兵庫ダービーの本場馬へ向かうスマイルサルファー
兵庫ユースカップ、菊水賞とともに4着でしたが、着差は詰めてきていましたね。続く5月14日の3歳A特別は菊水賞馬シェナキングにクビ差まで迫り、兵庫ダービーを迎えました。
差が縮まったかな、とは前哨戦で思っていました。兵庫ダービーは道中は内でずっと溜めたいなと思っていたので、内枠が当たったのは良くて、最後でどこか外に出られたらと思っていました。理想的な流れにもなりました。
3~4コーナーで大外からグーンと伸びてくるシーンを見て、4年前のスリーピーアイで2着の悔しさを思い出した人も多いと思います。
僕は全然(笑)。必死で、「なんとか」という感じでした。スリーピーアイの時は着差が着差(アタマ差)でしたし、「交わせるかな」と思っていました。でも、川原(正一)さんとブレイヴコールがもうひと伸びした感じでしたね。
今回は3頭横並びでしたが、きっちり差していました。勝ったと分かりましたか?
ゴール後、ゆっくり帰ってきていて、厩舎スタッフとかみんなが「勝った!勝った!」と言っていました。僕は確定するまでは「ホンマに勝ってるんかな?」と確信は持っていませんでした。
兵庫ダービーはゴール前3頭横一線の接戦を制した(手前、写真:兵庫県競馬組合)
大山騎手はこうして豪快に外から差す印象が強いです。YouTube生配信『オッズパークLIVE』でも競馬ブック・松原秀隆トラックマンが「人気薄の無欲の差しで、外を回してくる時によく馬券に絡む印象」と話していました。
馬場にもよりますけど、勢いがついたらブレーキをかけるよりかは少々ロスをしてもいいのかなと考えています。
松原TMとは幼馴染だそうですね。立場は違えど、同じ職場ってすごいですね。
小中学校と同じで、部活も塾も一緒でした。当時、競馬の話をそこまでした記憶はないですけど、競馬キンキ(2021年2月に休刊)に入社したと聞いた時は「なんで?」って感じでした(笑)。
さて、晴れてダービージョッキーとなったわけですが、大山騎手にとって兵庫ダービーとは?
馬も一度しか出られないですし、重みがあるレースだと思います。なかなか獲るのが難しいレースじゃないかなと思いますけど、木村(健)さんは5回も勝っていますもんね(笑)。すごいと思います。
木村元騎手(現調教師)は初ダービーまでは少し時間がかかりましたが、1回勝つとポンポンと勝っていきました。大山騎手も"ポンポン"があるんじゃないですか?
そうなればいいですけど。気持ちとか乗り方に変化があるのかどうか、来年も乗っていれば分かるんじゃないですかね。
園田・姫路では新人騎手が3名デビューしました。減量を生かしたレースが目立ち、展開がこれまでとは変わってきました。
3キロ減や女性騎手は4キロ減なので、一緒のレースやったらどれだけ追いかけたらいいのかは考えますね。逃げたらなかなか止まらないので、意識します。かと言って、追いかけると自分が止まっちゃいますしね。3人もいるので、一緒に乗っていたら難しいです。
そうした中、大山騎手もどんどんキャリアを積み重ねています。今の目標などは?
最低でも年間100勝はしたいなと思いますけど、去年が勝てなかったので......。そこが最低ラインかな。あとは毎年重賞を勝ちたいなと思っています。
最後にオッズパーク会員へメッセージをお願いします。
スマイルサルファーで今後、遠征に行く予定です。7月19日には西脇へ自主参加の能検に乗りに行ってきました。相手も強くなりますけど、よその大きいレースへ使いに行っても応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
2015年は113勝を挙げ、兵庫リーディング第5位となった大山真吾騎手。若手の代表格のような存在だった大山騎手も、今年デビュー14年目を迎えました。さらなる飛躍が期待される今、現在の心境をお聞きしました。
去年は113勝を挙げ、6年ぶりに100勝の大台を突破しましたね。
たくさんいい馬に乗せてもらったお蔭です。それに、木村(健)さんと(田中)学さんが休んでいたことも大きかったです。僕にいい馬が回って来ましたから。ただ、自分ではもう少し勝てたんじゃないかって思います。取りこぼしもあったし、全然満足はしていません。
特に去年の後半あたりから、兵庫を代表するような馬たちへの騎乗機会が増えたように思います。ご自身ではいかがですか?
そうですね。特にトーコーヴィーナスに乗せてもらえたのは大きかったです。夏を越えて休み明けから乗せてもらっているんですけど、毎日の調教からやらせてもらっているので思い入れも強いですね。けっこううるさい女の子で(苦笑)、キャンターに行くまでに止まってみたり、けっこう時間が掛かるんですよ。でも毎朝騎乗して意思の疎通はできていると思います。
ロジータ記念では、南関東の強豪を相手に2着に踏ん張りました。
休み明けを一度使って馬が良くなっていたので、勝負になるかなとは思っていたんです。ハナに行くつもりで押して行って、そこから少し競り込まれましたけど、それでもムキにならずに息を入れながら走らせることができました。それが最後の粘りに繋がったんだと思います。あの競馬ができたことは自信になりました。あの馬と一緒に、南関東の重賞を勝ちたいっていう気持ちが大きくなりましたね。
そして今年の新春賞では、1番人気エーシンクリアーの鞍上を任されました。こちらも兵庫を代表する1頭ですよね。
ここも2着だったんですよね......。勝ちたかったです。人気馬なので当然ですがマークも厳しくて、キツい展開になりました。途中から動かされましたけど、それでも58キロを背負って一番強い競馬だったと思います。負けたのは悔しいですけど、改めて強い馬だなと思いました。
大山騎手といえば若手の代表格のように感じていましたが、今年デビュー14年目を迎えるんですね。
早いですよね。僕はデビュー2年目から50勝させてもらって、本当に恵まれた環境の中で育って来ました。だからこそ、本当はもっと上に行かなきゃいけないんですけど......。ここ何年かは頭打ちというか、もどかしい感じが続いています。去年からいい流れが来ているので、今年は勝負の年だと思っています。
兵庫は上の層がかなり厚いですもんね。特にトップ3(川原正一騎手、木村健騎手、田中学騎手)の壁は大きいですか?
大きいですよ。でもだからと言って諦めてはダメなので、そこを突き破る気持ちでいます。僕ね、毎年川原さんに言われるんですよ。「お前に負けたら引退するわ」って。今は笑って言ってますけど、いつか本当にそういう存在にならなきゃいけないって思ってます。川原さんに引導を渡すつもりでがんばります!
大山騎手はいつも元気で明るいイメージですが、落ち込むこともあるんですか?
そりゃ落ち込むこともありますよ。でもあんまり引きずらないんですよね。パーっと飲んで終わりです(笑)。馬に乗るのが大好きだし、レースに乗るのがとにかく楽しくて。だから仕事しててストレスも感じないんです。周りからは、「だから風邪ひかないんだな」って言われますけど(笑)。
では、今後の目標を教えて下さい。
去年区切りの1000勝を達成することができたので、次の目標は2000勝です。デビューした時はまさか1000勝もできるなんて思っていなかったけど、関係者のみなさんやファンのみなさんのお蔭でここまで来ることができました。本当にありがとうございます。去年は重賞を勝つことができなかったので、今年は絶対に勝ちたいです。大きいところでしっかり結果を出していきたいですね。僕の狙い馬券ですか? やっぱり逃げ・先行だと思います。人気薄でも思い切って行くので、ぜひ注目して下さい!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:斎藤修)
兵庫の若手筆頭、大山真吾騎手。実は動物が苦手、でも馬は好き、なんだそうです(笑)。これまでの競馬人生を振り返ってもらいました。
秋田:デビューしてから10年目に突入です。これまでの騎手生活はいかがでしたか?
大山:もう10年ですか?!あっという間ですね。僕はすごく恵まれていると思います。最初からいろんな馬に乗せてもらえましたし、 いろんな経験もさせてもらえましたから。デビューした時に厩舎の先生が、いろいろなところに頼んでくれたことが大きかったですね。
秋田:周りからの期待や評価は気にしましたか?
大山:あんまり気にしていませんでした。毎日の調教やレースで必死でしたね。
秋田:2003年にデビューした時、当時のリーディングを見ると豪華な面々ですよね。
大山:小牧さんや、赤木さんとは短かったのですが、この騎手達と一緒に乗れたのは財産になったと思います。今になって生きているというのはありますね。
秋田:そんな中、2004年には新人でもう50勝!
大山:うーん。この年は騎乗停止など処分も多かったので、反省することの方が多かったんです。若さゆえというか......。
秋田:この年は、菊水賞で初重賞勝利もあげました。
大山:重賞に騎乗したのが2回目だったと思うんですが、ヤッターとうより勝っちゃったという感じでした。正直、僕自身が重賞の重みを分かっていなかったので。そういう意味では、今年勝った六甲盃の方が嬉しかったです。
秋田:2007年から2009年まで、3年連続で100勝以上、騎乗回数も1000鞍を超えています。この頃は、自信もついてきたのではないですか?
大山:そうでもないです。
秋田:でも、このメンバーの中で騎乗数を確保することも相当大変だと思うのですが。
大山:誰かが乗れなかった馬に乗せてもらったりだとか、良い感じに馬がまわってくれていたので、確保という意識はありませんでした。
秋田:この時は、リーディング5位まできました。その上の壁ってあるんですか?
大山:はい。リーディング3位以上の、その壁はものすごく高いです。技術的なことなど、上位の騎手との差を感じることはありますけど......。でも、そこを目指していかないと。
秋田:その壁を超えるにはどうすればいいと思いますか?
大山:うーん、何をすればいいのか......。それを常に考えている状態です。
秋田:2010年、大井競馬に所属して、南関東で期間限定騎乗しましたね。
大山:25歳以下の若手騎手という条件がもうこの年しか当てはまらなかったので、行ける時に行かないと、もうこんな機会ないと思いまして。南関東は頭数も多いし、馬群をさばくのも大変でした。それに、左回りに乗ったことがなかったので、川崎、船橋、浦和で乗れたのは良かったです。上手い人もたくさんいますから、良い経験になりました。
秋田:期間限定騎乗では、81戦1勝、2着5回、3着4回という成績でした。
大山:2着が1日3回という日があったんですよ。写真判定で負けたりして、悔しかったですね。たくさん乗せてもらえましたが、もっと勝ちたかったです。
秋田:去年は大きなケガがあり、長期離脱をせざるをえませんでしたね。
大山:5カ月くらいかかりました。落馬した時にその後立てなかったのでダメだなと思いました。病院でレントゲンを見たら、膝のお皿がクシャってなっていて。最初は2カ月って言われたんですが、リハビリしていくうちに2カ月じゃ無理だろ、って感じていて、そうしたらやっぱり無理でしたね。
秋田:不安や焦りは?
大山:焦っても仕方ないと思っていました。ちゃんと直さないと迷惑かけちゃうし。レースを見ると乗りたくなりますけど、でも見ていました。外から競馬を見るのも良かったというのは感じましたね。
秋田:園田競馬は、今年の9月からナイター競馬が始まりました。
大山:レースは明るかったですし、乗りやすかったですよ。特に初日はお客さんがたくさんいたので嬉しかったです。金曜のナイターってちょうどいいですよね。仕事終わって、お酒飲みながらなんていいじゃないですか。お客さんあっての競馬場ですから、もっと知ってくれるといいですね。
秋田:これまでに、思い出に残っている馬やレースを教えてください。
大山:デビュー2年目で、帝王賞に乗せてもらえたことがすごく思い出になっています(05年、ニューシーストリーで10着)。JpnⅠなんて、ここまで大きいレースに騎乗したことがなかったですし、ましてやお客さんもめっちゃ多かったから。感動というか、こんなところで乗せてもらって幸せ者だなと思いました。やっぱり、お客さんがたくさんいるとテンション上がりますね。僕はそういう状況だと、気持ちも乗っていくタイプなんで(笑)。
秋田:ライバルだと思っている騎手はいますか?
大山:同期の山崎誠士(川崎)には負けたくないなと思っています! 向こうは分かりませんけど(笑)。誠士は南関東でもけっこう勝ってますもんね。デビューの時はお互い新人賞をもらっていたりしましたし。
秋田:仲も良さそうですね(笑)。じゃあ、いつかはSJTなどで対戦できるといいですよね。
大山:はい。いつかそうなるといいですね!
秋田:騎手生活も10年目に入りました。これからの目標を教えてださい。
大山:正直、ちょっと伸び悩んでいるので、ガツンともう一皮むけたいですね。
秋田:では最後に、大山騎手の夢は?
大山:リーディングジョッキーです!!
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※インタビュー / 秋田奈津子