3月31日に地方通算500勝を達成した岡村卓弥騎手(高知)。所属は高知を代表する雑賀正光厩舎で、兄弟子にはリーディング上位の永森大智騎手がいる中、奮闘しています。「いまがチャンス」と気合いの入るその理由とは。
地方通算500勝、おめでとうございます。意識はされていましたか?
あまり気にしていなかったんですけど、モーニング展望で橋口アナウンサーから「あと十何勝」と聞いてから、「あ、そのくらいか」と思いはじめました。橋口さんは「3月中に達成できたらいいね」って言っていたんですけど、できるとは思っていなくて、なんとか年度内に決められてよかったです。
500勝目となったのはJRAから移籍初戦のユピテルルークスでした。
調教からずっと乗せてもらっていました。レースは約10カ月ぶりで、能検からでした。ダートはこれまで走ったことがなくて、トビも芝馬だったので、「ダートが合うのかな?」と思っていたんですけど、結構走りますね。直線も手応えはまだまだ余力がありました。
2021年3月31日、高知第4レースで地方通算500勝達成(写真:高知県競馬組合)
大台の1000勝へ向けて、折り返し地点となる500勝というのはいかがですか?
11年かかりましたからね(苦笑)。まだまだです。通算勝利数はあまり意識していなくて、いい馬に乗せていただいた時にしっかり結果を出せたら、と思っています。
雑賀厩舎を所属騎手の一人として支えているわけですが、所属の経緯というのは?
兄弟子の永森さんも僕も所属の経緯は同じで、中学生の時の職場体験がきっかけです。実家が高知競馬場のすぐ近くで、同級生のお父さんが馬主をしていて、小学生の頃に浜(海岸)で馬に乗せてもらったことがありました。その時に「小さいから騎手になったらどうや?」と言われて、中学校の職場体験で競馬場に行った先がたまたまうちの厩舎だったという流れです。
偶然にも兄弟子と同じ経緯での所属だったんですね。その永森騎手は調教中に落馬して骨盤骨折のため療養中とあって、調教が忙しくなったり騎乗馬が回ってきたりしているのではないですか?
仕事はたしかに今はむちゃくちゃ忙しいですね。今がチャンスだと思っているんですけど、なかなか。こないだの競馬なんかでも「はぁ......」とため息が出るレースばかりで。やっぱり永森さんはすごいなと感じました。永森さんが乗っていた馬に、今は僕が乗せてもらうことも結構あって、余計にそう感じます。
所属の雑賀調教師は「ある程度までは自分で這い上がってほしい」というタイプの方ですね。
うちの厩舎で続けていたら、たぶん勝手にそこまでいくと思います。いい馬もいっぱいいますし、調教も自分で考えてやるようになります。調教メニューがキャンターを2周乗るんだったら、1周目と2周目のペースを考えろって先生からも言われます。
高知はいま、売り上げが急増していて、全国のファンから注目を集めます。
また4月から賞金が上がったんですよね。だから、なかなか重賞を勝てないですけどね。
賞金が上がると、レベルの高い馬の入厩も増えるでしょうし、競争もより熾烈になりますね。昨年12月には金の鞍賞をブラックマンバで差し切り勝ちを決めました。
重賞を勝つのが久々でしたし、あれは嬉しかったです。道中、楽に行けた時はいい脚を使う馬なんですけど、人間が早く動いちゃったりして、馬を信じきれていないところがあるというか。そういう面では倉兼(育康)さんはすごいですよね。後ろからじーっと行って、最後にシュッときますから。僕、倉兼さんの追い込みを見て、「うわー、カッコいいな」と思って、騎手になろうと思ったんですよ。
ブラックマンバで金の鞍賞制覇(2020年12月26日、写真:高知県競馬組合)
追い込みで勝つ方が好きなんですね。後ろから行く馬といえば、真っ白な馬体のチャオとのコンビも印象的でした。
引退しちゃいましたけど、ファンの多かった馬ですね。2~3着が多くて、実は勝ったのは(自身の騎乗で)2回しかないんですけど、いまは誘導馬を目指しているらしいですよ。高知に移籍してきた頃は調教でも暴走しちゃっていたので、気性的になかなか難しいかもしれませんが、牧場に行ってから最近は落ち着いたみたいです。牧場で訓練をしているのかな?高知競馬場で誘導馬になれたらいいですね。一緒になって走っていっちゃうかもしれないですけど(笑)。
これからの目標はなんですか?
やっぱり兄弟子の永森さんに早く追いつきたいです。永森さんは調教からもキッチリしていて手を抜かないので、僕もちゃんとやれているんだと思います。すごい方なのでなかなか難しいでしょうけど、追いついて追い越せたらいいですね。
最後に、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
高知はすごく売り上げもよくて、いい馬が入ってきているので、今まで以上にもっともっと迫力のあるレースになっていくと思います。その中で、僕は1つでも多く勝てるよう頑張るだけです。僕は競艇が大好きで結構するんですけど、ファンの気持ちはよく分かります(笑)。だから、馬券を買ってくれているファンのみなさんに納得いってもらえるよう、一生懸命がんばっている姿勢を見せたいです。
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※インタビュー / 大恵陽子
ベテラン勢が活躍を見せている高知競馬で、デビュー8年目を迎えた岡村卓弥騎手も奮闘中。昨年の秋は門別競馬場で期間限定騎乗をするなど経験を重ねています。
最近の高知競馬でもっとも変化したところといえば、昨年12月18日から賞金額がそれまでよりおよそ倍になったこと。競馬に携わるみなさんの雰囲気はどうでしょうか?
確かに変化は感じますね。厩務員さんは特に。騎手はそれほどまではという気はしますが、でもモチベーションが上がっているのは間違いないです。
重賞の1着賞金額が27万円というレースもありましたから、それに比べるとぜんぜん違いますものね。
そうですね。重賞はみんな気合が入っていると思います。自分もそれにつられてヤル気が出てきていますから。そのほかのレースでも接戦が増えているように感じます。前でガリガリやりあうことが多くなったように思いますし、それからインコースを狙う騎手が多くなったかな。インは使える日と使えない日があるのですが。
そして高知では2歳新馬戦が復活しました。
僕自身はまだ2歳馬を一から育てたという経験はないですが、昨年9月から北海道に2か月弱、期間限定騎乗をしに行ったときに、調教が進んでいる1歳馬に乗せてもらいました。北海道のデビュー前の馬は年齢を感じさせないというか、背中がしっかりしていますね。驚きました。高知でもディアマルコが新馬復活の1年目から活躍しましたが、すごいことだと思います。ああいう馬と巡り会って、遠征してみたいです。
ということは、あまり遠征の経験はないということでしょうか?
期間限定騎乗は金沢と北海道がありますが、金沢にいたときに南関東の川崎に1回行っただけなんです。ウチの厩舎(雑賀正光厩舎)は騎手が4人いるので、自厩舎だけなら仕事的に多少の余裕がありますから、よその競馬場に行かせていただけているところがあると思います。普段はほかの厩舎の攻め馬も頼まれますから、だいたい朝は2時半から10時くらいまで、20頭くらいに乗っています。
地元での成績ですが、昨年も今年も勝ち星より2着3着のほうが多くなっているのですが。
そうなんですよ。ほんのちょっとだけ負けるというケースが多い気がするんですよね。すごく悔しいんですが、そこは技術の差なんでしょうね。本命の馬はもちろん勝つレースを心がけますが、それ以外の馬に乗っても最低でも3着は目指そうと考えています。以前と比べて変わったところといえば、いい意味であまり考えなくなったことかな。以前はレース前に展開などをいろいろと考えていましたが、思い通りにはいかないのが競馬ですし、考えすぎるといい結果は出ないように感じたんです。だから最近はゲートが開くまでは余計なことを考えないようにしています。
そのほかに、最近になって意識していることはありますか?
騎乗するときに、以前よりもくるぶしで馬の体を締めることを意識していますね。それからハミのかけかたも。以前から先生に「道中で手を動かしすぎ」と言われていましたが、それができることで、3コーナーあたりでハミをかけていくことをより意識できるようになったと思います。ただ、そのためには足の筋力が必要ですから、調教のときからアブミを短くして、楽乗りをしないようにしています。
そういったことも、今年の高知での騎乗数がトップを争っているというところにつながっているのかもしれないですね。
本当にたくさん乗せてもらえているのでありがたいです。ウチの厩舎にいたらチャンスは巡ってくると思うので、そのときにきちんとそれを掴めるようにしたいですね。それから最近は、自分が担当している馬がレースでカチ合ったとき、先生がどちらに乗るか、選ばせてくれるようになったんですよ。そこも以前とは違うところですね。そういう流れをもっと積み重ねていくことが今の目標です。結果がすべての世界ですから、実力がある馬に乗せてもらったときに結果を出せるように、そして人気になっても気負わないで乗れるようになりたいと思っています。
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※インタビュー / 浅野靖典