12月10日、地方通算1000勝を達成した上田将司騎手。騎手会長を歴任した人望と、2020年には韓国に長期遠征する向上心を持ち合わせます。最近は、かつての騎手仲間が調教師になり、タッグを組むことも増えるなど新たな局面に突入しています。
地方通算1000勝おめでとうございます。カウントダウンが始まった頃、『モー展。ジョッキーズトーク』で「あと3年くらいかかりますかね」なんて冗談を言っていましたが、年内(2023年)にしっかり決めました。
年内には無理だとずっと思っていましたけど、馬が頑張ってくれました。1000勝目のマリンジェミナイは相手関係がこれまでより恵まれていました。4月から攻め馬に乗り始めたんですけど、レースで乗るのはこれが2回目。スタートから勝手に馬が出て行ってくれて、直線も手応えがありました。
マリンジェミナイで地方通算1000勝達成
1000勝を達成して周囲からの祝福は?
別にないですね(笑)。上がってきて、「あぁ、そうか」って。
そう言いつつ、祝福されていたんだろうなと想像します。最近は騎手時代に一緒に乗っていた西川敏弘調教師や宮川真衣調教師の管理馬にもよく乗っていますね。
西川(敏弘)さんの厩舎では調教に乗っていないんですけど、レースで乗せてくれます。(宮川)真衣ちゃんの厩舎はレベルスリーに調教から乗っています。二人ともいい馬に乗せてくれて、ありがたいです。
黒潮ジュニアチャンピオンシップ(2022年)をハチキンムスメで勝ちました。のちの高知三冠馬ユメノホノオを抑えての大金星でしたね。
今となっては、うんと差を広げられてしまいましたね。ハチキンムスメは最初から悪いところがなくて、賢くて、乗り味も良くて、手前もちゃんと替える馬でした。トモが弱いとか、「ここが良くなれば」というのがありませんでした。小柄でポンポンと勝って、勢いが当時はあったんじゃないかなと思います。
ハチキンムスメで22年黒潮ジュニアチャンピオンシップ制覇
もう1頭、最近の上田騎手を象徴する馬がダノンジャスティス。園田で重賞2勝を挙げました。
園田だと走りが全然違います。高知では3コーナーで不正駈歩(前肢と後肢で手前が異なる)になってモタついちゃって、そこで外から被せられて前と離されてしまいます。直線に向くとチョロチョロ差してはくるんですけど届かない、というレースが多くなります。でも、園田だと3コーナーで下がらないでついていけて位置をキープできます。たぶん高知より馬場が浅いのがいいのでは、と思います。
兵庫ゴールドカップ(23年10月20日)では南関東の重賞馬ベストマッチョに勝ちました。
4コーナーを回った時には「先頭のベストマッチョには届かないな」と思ったんですけど、予想以上に相手の脚色が鈍ったこととダノンジャスティスがジリジリ伸び続けていたことで勝てました。
上田騎手といえば、一発逆転ファイナルレースでの3着内率が高いです。あの難しいレースを攻略するコツは?
たまたまです。若手騎手たちの気迫や積極的すぎるくらいのレース運びはすごいです(苦笑)。だから、僕が勝つのは大外か最内が多いはずです。
今度、調べてみます。ところで、上田騎手は高知県最西部の宿毛市出身ですよね。競馬との接点は?
友人2人とサッカーをやりたくて中学校はバスで県境を越えて愛媛県の学校に行っていたんですけど、そこの同級生が競馬が好きだったんです。当時はインターネットがなかったので、その子が新聞を持って来たのをみんなで見て、ゲーム感覚で楽しんでいました。その後はテレビゲームの『ダービースタリオン』をやって、ハマっていきました。両親が「高校は卒業しなさい」ということで高校まで進学しました。
バリバリのサッカー少年だったんですね。
高校は僕たちが小学生の頃に全国大会で優勝していて、サッカー部員だけで150名くらいいました。県外からも進学してきていたんですけど、身体能力の高さや体格差を感じて1年で辞めました。
それが騎手になって1000勝を挙げるんですから、人生の転機はどこにあるか分からないですね。20年からは韓国に長期遠征しましたが、コロナの影響もあって翌年帰国。また行く予定は?
タイミングが合えばまた韓国に行きたいですね。
1000勝達成セレモニー。ご家族、打越勇児調教師会長、宮川真衣調教師らと
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
おかげさまで高知競馬も売上が上がって、ここから先はいかに下がらないように維持するか、ということになると思います。最近は寒いので、みんなで家に集まってビールを飲みながらワイワイ馬券を買うのが最高だとは思いますが、ぜひ機会があれば高知競馬場にも来て、馬券を買ってほしいです。今春に完成したバババパーク(大型遊具)があるので、お子さんも楽しめると思います。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:高知県競馬組合、大恵陽子)
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毎年高知リーディングトップ10に入る活躍を見せている、デビュー16年目の上田将司騎手。中堅ジョッキーとして高知を支える存在となった今、これからの抱負をお聞きしました。
上田騎手といえば人気薄の馬を持って来るイメージが強いのですが、ご自分でそういう意識はありますか?
そうですね。どんな馬に乗る時でも一発狙ってはいますよ。ただ、それが成功するかどうかは......馬に聞いて下さい(笑)。レースを見てもらったらわかりますけど、僕は逃げが少ないんですよ。現実的に、能力の抜けた馬にはあまり乗っていないので、その中で勝とうと思ったら最後の直線まで力をいかに温存できるかなんです。もちろん、その馬に合わせた騎乗を心掛けていますけど、3~4コーナー回ってまだ手応えがあったら「勝負になる!」と思いますね。
今年でデビュー16年目になりますが、新人の頃から勝ち星も多かったですし、ここまで順調に来ていますね。
たくさん乗せていただいて、関係者の方々には本当に感謝しています。高知の中でも騎乗数はトップクラスなので、そこは本当にありがたいですね。ただ、現状には満足していません。比べるわけではないですけど、僕の同期はみんなすごいんですよ。金沢の吉原寛人、去年調教師になった笠松の尾島徹、高知に移籍して来た三村展久、それに去年大ブレイクした金沢の藤田弘治もいますからね。厳しかった教養センター時代を一緒に乗り越えた仲間たちが頑張っているので、僕も負けてられないなと思っています。
確かにすごいメンバーが揃っていますね。でもデビュー2年目に重賞(2002年南国桜花賞・スマノガッサン)を勝ち、5年目に高知優駿(2005年・スマイルリターン)を勝った上田騎手もすごいと思いますよ。
ありがとうございます。スマノガッサンは当時のリーディングだった北野真弘さん(その後兵庫へ移籍し、現在は調教師へ転身)のお手馬だったんです。北野さんには教養センターの実習時代から可愛がってもらって、一緒に併せ馬をしたりいろいろ教えてもらいました。北野さんが関係者の方に、「将司に乗せてやって」って頼んでくれて、それで乗せてもらえることになったんです。すごく強い馬で、3コーナーから勝手にハミを取って走ってくれました。僕にとってレースを教えてくれたのはこの馬ですね。
高知優駿はたまたまだったんですよ。所属の國澤輝幸厩舎にトップアオバという強い馬がいて、その馬は乗せられないけど、國澤先生が「将司のために」って用意してくれたのがスマイルリターンだったんです。だから高知優駿を勝てて恩返しができたと思ったんですけど、実はトップアオバがその時2着で、高知優駿を勝ってたら三冠達成だったんですよね......。なので、ちょっと複雑な気持ちもありました。
上田騎手とのコンビで重賞4勝(2013年金の鞍賞、2014年土佐春花賞、黒潮菊花賞、土佐秋月賞)したニシノマリーナとのコンビも印象的でした。
あの馬は本当に強かったですね。ただ、勝気がありすぎるし揉まれると弱いしで、難しい部分もありました。田中譲二先生が、厩務員さんと一緒に好きなようにやっていいと言ってくれたので、2人でいろいろ相談しながら試行錯誤しました。その中で結果を出せたのはすごく自信になりました。
一時期は脱臼に悩まされて長期休養を余儀なくされましたが、もう完全復活ですね。
はい! 今はもう大丈夫です。脱臼に関しては......、本当に長年悩まされましたね。最初は4年目に脱臼したんですけど、すごく単純に考えていたんです。でも、200勝達成の時に鞍上でまた脱臼してしまって......。そこで1回目の手術を受けました。でもその後も脱臼することが続いてしまって。パドックで馬に乗ろうとしただけで脱臼してしまったこともあるんです。このままじゃ騎手を続けられないと思って、一時期は辞めることも考えました。その時、赤岡修次さんが有名な病院があるからって調べて来てくれて、2回目の手術をすることになったんです。これでダメなら騎手を辞めるしかないと腹を括っていましたが、その手術が上手くいって今続けていられるんです。本当にたくさんの方のお蔭です。
脱臼は相当痛いと聞きますが、気持ち的にも落ち込んだんじゃないですか?
本当に痛いですよ! 僕は骨折の経験もありますけど、脱臼の痛さの比じゃないです。騎手を辞めるしかないところまで追い込まれましたから、落ち込んだ時期もありました。でも、赤岡さんや倉兼育康さんが毎日誘ってくれて、いつも一緒にいてくれたんです。お蔭でなんとか踏ん張ることができました。
では、2016年の抱負をお願いします。
まずは700勝までもうすぐなので、そこを早く達成したいです。あとはケガをしないで乗り続けることですね。本当にいろいろな厩舎の方に声を掛けていただいて、たくさんレースに乗せてもらっているんです。2013年には年間騎乗数が800を超えて高知1位だったんですけど、すごく嬉しかったですね。常に一生懸命仕事して、今年もたくさんの馬たちに乗りたいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:浅野靖典)