例年以上に熾烈を極めた2020年の調教師全国リーディング争い。大晦日までもつれた結果、1勝差で角田輝也調教師(名古屋)がトップに立ち、3年ぶり4回目のNARグランプリ最優秀勝利回数調教師賞に輝きました。8月には雑賀正光調教師(高知)が更新し続けていた地方競馬における調教師の通算勝利記録を上回り、現在その記録を更新し続けています。
2020年の全国リーディング獲得おめでとうございます。2位だった打越勇児調教師(高知)とは1勝差で、高知は大晦日まで開催がありました。心中はいかがだったのでしょうか?
まずはたくさんのいい馬たちを預けて下さったオーナーに感謝しています。そして、一生懸命頑張ってくれた馬たち、スタッフにも感謝しています。僕一人では決して成し遂げられることではないですから、周りの方々のお陰です。本当にありがとうございます。その上で、リーディングということに関しては、以前にもお話したと思いますが、特にこだわっていないんですよ。自分たちの仕事を精一杯やって、自分の厩舎の仕事が終わったところでその年は終わりですから、周りのことは気にしていなかったです。
リーディング1位と決まった時はどんなお気持ちでしたか?
馬主さんから連絡をいただいて、リーディングになったんだなと知りました。先ほども言いましたが、特に意識はしていないというか、意識しても仕方ないことかなと思っていますので。うちのスタッフもリーディングを獲って喜ぶというよりは、1年間の反省点を考えて、来年はどうしようかという話し合いをしているくらいで、リーディングを獲ったということで特別なことはなかったですね。
周りの方の反応はいかがですか?
いろいろな方から「おめでとう」と言っていただくのは嬉しいです。ただどうしてもリーディングにこだわるのであれば、名古屋だけではなく笠松にももっと使いに行ってということも出来たわけです。スタッフが一生懸命頑張っている中で、1年を通しての結果がリーディングという形になったのかなと。
昨年は176勝を挙げ、3年ぶり4度目の全国リーディング獲得。8月には雑賀調教師の記録も抜いて、地方競馬最多勝利記録を塗り替え続けています。こちらの記録についてはいかがですか?
そこもまったく意識していないですね。やっぱり僕一人の力では出来ないことをオーナーの皆さまやスタッフに支えられ、僕はマネージメントをしているというだけに過ぎないですから。自分一人で成し遂げられたことではないので、ここまで勝たせていただいたことには心から感謝していますが、まだまだ僕の競馬人生は続いていますから、勝ち鞍というところには着眼点は置いていないです。
名古屋記念(2021年1月4日)をアドマイヤムテキで勝利
では、なぜこんなに勝てるんでしょうか?
う~ん......。というか、まだこれだけしか勝てないのか、というところに問題点を置いています。預けていただいた馬をいかにいい状態に仕上げてレースに臨めるか、そこからいかにいい結果に結びつけるか、ということを重視していますから、もっといい成績を挙げられたのではないかと反省点をいろいろと考えています。他の先生たちもそうだと思いますよ。
オッズパーク地方競馬応援プロジェクトのサムライドライブが長年お世話になりました。昨年末に引退して、今後は繁殖になるということですが、近くで見ていてどんな馬でしたか?
たくさんの重賞を勝たせていただいて、その中で喜びも辛さも感じさせてくれました。とても繊細な馬で難しいところもありましたから、色々なことを勉強させてくれましたね。レースを見ていてお気づきかと思いますが、自分の形になるとすごく強いけれど、そうじゃないと脆いところがあって。気が弱くてすごく繊細なので、ちょっとしたことで集中し切れなくなってしまうんです。でも普段はじゃじゃ馬で、自分の形になると本当に強いんですよね。
勝てない時期が続いて、もう一線級では勝てないのかもしれないと考えた時もありましたが、そこから盛り返して昨年マイル争覇を勝った時には感動しました。
古馬と戦うようになってから、なかなか自分の形にならない時期がありました。結果を出せず申し訳なかったですが、オッズパークさんの方からは現場サイドの話を取り入れてやらせていただいて、とても感謝しています。マイル争覇を勝った時には僕もものすごく嬉しかったですね。本当に長い間よく頑張ってくれました。
サムライドライブにとって最後の重賞制覇となったマイル争覇(2020年1月16日)
では、今年の目標を教えてください。
管理馬が怪我もなく、いい結果が取れて、オーナーの喜ぶ顔が見たい、という気持ちが一番強いです。今はコロナの影響で直接は見られないですけど。
オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願い致します。
いつも名古屋競馬を応援していただき、ありがとうございます。無観客での開催がある中で、これだけ馬券が売れているというのは、ネットで馬券を買ってくれるファンの皆さまのお陰です。今後もスタッフ一同、一生懸命頑張って馬たちを仕上げますので、うちの厩舎の馬を応援していただけたら嬉しいです。どんなレースでも1番人気というのは嬉しいですし、僕らのモチベーションも上がります。すべての馬が1番人気で、その期待に応えて勝てるよう、精一杯頑張ります。今年も名古屋競馬、角田厩舎を宜しくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)
9月7日に地方競馬通算3000勝を達成した愛知の角田輝也調教師。12月24日現在、熾烈な全国リーディング争いで、僅差でトップを守っています。リーディングへの想い、そして4戦無敗のサムライドライブについて語っていただきました。
3000勝達成おめでとうございます。
ありがとうございます。特に伝手もなく厩務員から調教師になって、最初はここまで数字を重ねられるとは思っていなかったです。たくさんのいい馬たちを預けてくれるオーナー、頑張ってくれる馬たち、スタッフのお陰ですね。ここまで1戦1戦前向きに取り組んで、がむしゃらにやって来ました。開業当初から名古屋でリーディングを獲りたいという夢を持っていて、「3年でリーディングを獲りたい」って最初の調教師インタビューで答えたら「生意気だ」って言われていろんな人に叩かれて(笑)。でも、それくらいの想いを持ってやらないといけないなと思いました。結局4年掛かっちゃいましたけど。
4年でリーディングを獲ったというのも十分すごいです。秘訣は何だったんですか?
荒川友司先生(笠松)も川島正行先生(船橋)もご存命で、その先生方にいろいろと教えていただきましたし、その教えを忠実に守るということを大事にして来ました。一番になりたかったら、一番の先生に聞くというのが近道だと思っているので。先生方も快く教えて下さって、本当に感謝しています。
具体的にどんなことを教えていただいたんですか?
いい運動、いい食事、いいケアという3つを教わりました。いい運動をするためにはちゃんとしたケアと食事を取らなければならないし、いい食事をするためには体のどこも痛いところがない状態にしないといけない。この3つのバランスが大事なんだと考えています。
現在は名古屋リーディングだけではなくて、全国リーディング上位の常連ですもんね。
そこはそんなに深く考えていないです。名古屋では獲りたいと思いますけど、全国リーディングは意識していません。
そうなんですか?! 現在熾烈な全国リーディング争いのトップを走っていますけれども。
周りからは言われますけど、全然意識していないです。だって、全国リーディングを獲りたいって思っていたら、前開催(12月4~8日)の笠松に使いに行ってますよ。1頭たまたま使う馬はいましたけど、先日忘年会と3000勝のパーティーをした時に「次の笠松開催は基本的に休みます。全国リーディング狙ってませんので」と公言しました。
狙っていけば獲れるところまで来ているのに何故ですか?
自分の欲でいくと馬に負担が掛かるんですよ。そこはやっぱり全国リーディングを獲らせてもらって、あの時(2015年)は馬主さんからも「どうしても獲ってくれ」と言われて厩舎一丸となって目指したわけですけど、やっぱりその後馬に負担を掛けたなと。まずは馬の体調を優先したいです。
角田調教師、高知の雑賀正光調教師、金沢の金田一昌調教師のリーディング争いを見てドキドキしているんですけれども。
もちろん獲れたら嬉しいですよ。でも本当にすごい方々を見ていると、数字は気にしていないですからね。あくまでも数字は結果論ですから。
続いてはサムライドライブのことを伺いたいんですけれども。オッズパーク地方競馬応援プロジェクトの3世代目で、デビューから4戦無敗でゴールドウィング賞を制しました。
本当にセンスがいいんですよ。だけど、これまで万全の状態で出走したのは3走目のJRA認定競走だけなんです。この時は追い切りもしっかり行くことができて、いい状態で挑めました。
10月24日、ゴールドウィング賞を制覇
体質が弱いと前々から言われていますが、ゴールドウィング賞はそこまでの仕上げではなかったんですね。
もちろん重賞ですし人気になる馬ですから、ある程度は仕上げていますけれども、まだ体質的にびっちりと攻め馬をしてレースに挑めるほどの体ではないんです。そこはこちら側が配慮をしてあげないと。
前走はゲート入りにかなりてこずったそうですね。
そうなんですよ。1600mのスタート地点が初めてだったせいか、新しい場所だとかなりイヤがってしまって。基本的に怖がりなんですよ。昨日と風景がちょっとでも違うと、納得するまで動かなくなってしまったり。馬場の中の木を少しでもカットしたら、それに気づいてびっくりしてしまうんです。認定も勝ってますし、本来ならば遠征も経験させたいんですけど、ムリをしてしまうとマイナスの方向に行ってしまうのではないかなと。体もですけど、もう少し精神的に余裕が出て来てからと考えています。
2か月間お休みしましたけれども、現在の様子はいかがですか?
馬体もだいぶしっかりして、440キロ台から今は450キロ台まで増えました。ただ、この仔の成長期はまだ先なのかなと。本当はもう少し増えて欲しいですね。今は元日のレース(湾岸ニュースターカップ)を目指して調整しています。追い切りも本数を重ねていますし、順調ですよ。休み明けというのはありますが、ここまで無敗できていますから勝ちは意識しています。
ゴールドウィング賞の記念撮影
精神的にも肉体的にも成長期がまだ先だとなると、育てて行く上でなかなか難しいですね。
そうなんです。3歳の秋頃にはもっと成長してくれると思うんですけど、今はとにかくムリしない範囲で調教を積みながら筋肉をつけていきたいです。そこのバランスは大事にしていかないと。ゆくゆくは東海ダービーを獲りたいですし、精神面が成長してゲートが安定すれば、他地区への遠征にも行きたいです。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。うちの厩舎は調教師一人ではなくて、スタッフ全員でレースに挑んでいます。レースに出る限りは人気に関係なく精いっぱいのレースをしたいと考えていますので、応援よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)