8月29日、金沢競馬第4レースのバトルオサンナの勝利で、地方通算1000勝を達成した松野勝己調教師。その想いとこれまでについて聞きました。
地方通算1000勝達成おめでとうございます。お気持ちをお聞きかせください。
ここまで長かったですね。1000勝は目標でした。達成したら引退しようと思っていたくらいです。以前の面接試験の時に試験官が「1000勝までがんばれ!」って言ってくれたんです。応援してくれる人がいるんだなと思ってがんばってきました。これまで、生え抜きの馬で重賞は全部獲ってきましたし、ほかの調教師には負けていないと思っています。
調教師として25年。どんなことを大切にこの仕事をされてきましたか?
一番大切なのは馬です。ケガをさせないように、勝てるような調教をしてレースに勝つ。これが仕事ですからね。昔は喧嘩っ早かったし厩務員とも良く口論しましたが、今は良いのか悪いのか穏やかになりました(笑)。
これまで特に印象に残る馬は?
それはもう、トゥインチアズが一番ですね。出会った時は、他の馬と比べても小さかったし、こんなに強い馬だと全く思いませんでした。ただお尻だけが大きかったんです。それでデビューからぶっちぎりで3連勝。これは走ると分かって中央に挑戦しました。初参戦のダリア賞は出遅れて、しかも前が詰まって3着で残念でしたね。
2002年2月6日、園田クイーンセレクションを制したトゥインチアズ。鞍上は吉原寛人騎手。左が松野勝己調教師(写真:兵庫県競馬組合)
そして、京都競馬場で行われた『もみじステークス』を見事に勝利。当時のことを教えてください。
その時、ちょうど吉原寛人騎手が新人で所属していたんですが、ダリア賞の後、「次はお前で行くから!」と言って連れていきました。レースのことは今でもはっきりと覚えています。先手を取って進めましたが、4コーナーを周る時に後続と5馬身くらい差があったんです。そこからは人目をはばからず飛び回って応援しました。周りには中央の調教師がいましたが、関係なくそこら中走り回って「いけー!いけー!」って(笑)これまで地元でも重賞をたくさん勝たせてもらっていますが、こんなに興奮して応援したのはこの時一回だけですね。勝った後は、「桜花賞はどうしますか?」などとマスコミの取材もすごかったです。
トゥインチアズが秀でていた部分はどんなところですか?
気性が荒い馬でした。その代わり調教に耐えてくれました。普通だったら1周か2周しかしないところを、この馬は5周半くらい乗っていましたから。中央は坂路があったりプールがあったりと色々なことができるから馬が強くなります。でも、金沢ではそれがありませんから、地元の馬と同じ調教をしていてもかないません。ですから2倍くらいの調教をして負担をかけていました。それに耐える体力と精神力を持っていた馬でしたね。この馬を管理できたことは本当に誇りです。
松野厩舎の代表馬には、金沢三冠馬のノーブルシーズもいます。この馬についてはいかがですか?
デビュー前、もともとは違う厩舎にいたんですが、ゲートがどうにもならないからと馬主さんから連絡をもらって預かることになったんです。デビュー戦の時、その馬主さんがちょうど入院をされていて、電話で勝利を伝えたらすごく喜んでくれました。実は、その後に亡くなったんです。息子さんが引き継いでくれましたが、三冠を獲った時も本当に喜んでくれましたね。この馬に関しては騎乗した中川雅之騎手の力が大きいです。レースの時に遊ぶところがある馬だったんですが、中川君が上手く乗ってくれて能力を引き出してくれました。
2008年10月12日、サラブレッド大賞典(金沢)を制したノーブルシーズ(写真:石川県競馬事業局)
今や地方競馬のトップジョッキーとして全国区の活躍をしている吉原寛人騎手は、松野厩舎からデビューしていたんですよね。
見習いの時は、家から毎日走らせて鍛えました。仕事が終わった後も、毎日追い方の練習をしましたね。やはり初めからセンスがありました。だから今みたいになったんだと思います。当時は、自分の子供だと思って一生懸命に怒りましたが、彼もまだ若かったし反発もありましたよ。今の活躍を見ると本当に頑張っているなと思います。
ほかに、注目している騎手はいますか?
中島龍也騎手は上手いですよ。まだ若手ですが、おそらく金沢競馬の看板を背負って立つ人間になるでしょう。乗り方は頑固で荒い部分もありますが、馬を動かしますから。何より、一生懸命に乗っていることが伝わってきます。他の騎手には負けないぞっていう気持ちが。やはり競馬は勝ち負けの世界です、気持ちで負けてはダメですからね。
これからの目標はいかがですか?
今は目の前のレースを勝ちたいです。勝って、また次の馬を入れてもらえるように。とにかく結果を出したいです。
最後にオッズパークの会員のみなさんにメッセージをお願いします。
お話したように、特に中島騎手の騎乗には注目する価値があると思いますのでぜひ応援してください。そして、自分も結果を出せるようにがんばっていきたいと思います。
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※インタビュー / 秋田奈津子