アイバンホーと共に金沢の3歳戦線をけん引する中島龍也騎手(金沢)。大目標である石川ダービーに向けてお話を伺いました。
3月から新シーズンが始まりましたが、金沢競馬場は馬場改修して砂の質も大きく変わったそうですね。
そうなんです。路盤を改修して、これまでと違う産地の砂を全面入れ替えました。キレイだし痛くないし、すごく乗りやすいです。変わって良かったなと思いますね。
ここ何年かの金沢競馬場は、内有利や外有利の傾向が極端に変わっていた印象です。
時期によってかなり極端でしたよね。内ラチ沿いぴったりがいい時期だったり、内はまったく伸びなくて外が伸びやすい時期だったり。「同じコースでこんなに変わるの?!」という感じでしたけど、新しい馬場になってからはそこまで極端な傾向はないですね。1カ月以上使って、今のところは2、3分所から外がいいかなと。一番いいのは真ん中なので、道中2、3分所を走って直線になったらちょっと外に出してというのが現状王道かなと感じています。
中島騎手は2014年のデビューで去年は500勝達成。順調にキャリアを積み上げていますね。
順調に来られたのは関係者の方々のお陰なので、とても感謝しています。今年もいいリズムで勝てたらいいなと思っていますし、一番はアイバンホーでダービーを獲ることが目標ですね。
アイバンホーで金沢ヤングチャンピオン制覇(2020年11月22日)
金沢ヤングチャンピオン、北日本新聞杯と強い勝ち方でした。ただ何というか、外から見ていると難しい馬なのかなと感じます。
めちゃくちゃ難しいですよ!特にゲートですよね。もともとそういう雰囲気はあったんですけど、川崎の全日本2歳優駿に遠征に行った時、中で何度も立ち上がろうとしたじゃないですか。あそこから覚醒したのか、ゲートは本当に大変です。
全日本2歳優駿の後は休養を挟んで、3月23日の準重賞若駒賞に登場しましたけれども、12キロ体が増えてレースも圧勝でした。
若駒賞はゲートさえ出てしまえば勝てると思っていました。多少出遅れましたけど無事に出てくれて、その瞬間「勝てる!」と。あとは馬が勝手に進んでくれましたし、休養前より乗りやすかったです。
調教も大変なんでしょうか?
調教は担当厩務員の辻加武斗君がしています。マナバレンシアも担当しているんですけど、今の金沢の中では一番調教が上手いと思いますね。僕より年下ですけど、小さい頃から馬に乗っていたし、加武斗君が乗れない馬は他の誰も乗れないんじゃないかって思うくらい信頼しています。アイバンホーに関しては、僕はたまに追い切りに乗るくらいなので、加武斗君にお任せしています。
アイバンホーは北日本新聞杯も勝利(2021年4月18日)
石川ダービーへの手ごたえはいかがでしょうか?
休み明け初戦だった若駒賞の時、返し馬で乗って、あまりにも抜群過ぎてやばいかもしれない...と感じました。我の強い馬で、ゲートも心配だし、道中もやめちゃうからやめさせないように促して。その状況で大差勝ちですからね。能力的には頭一つも二つも抜けていますし、距離が長くなっても全然大丈夫だと思います。
石川ダービーといえば、2019年にロンギングルックで勝ちましたけれども、あの時は吉原寛人騎手騎乗の1番人気スターキャデラックをがっちりマークしていって、ダービーの舞台で腹の座った騎乗をするなと感動しました。
いろいろなことがラッキーだったと思います。その前の北日本新聞杯で、3~4コーナーで上がって行くレースをしたらスターキャデラックに完敗してしまって。この形では勝てないと痛感して、「こうなったらマークして最後直線で末脚勝負や!」って思っていたら、想像以上に手ごたえが良かったですね。
ダービーで逆転出来たというのは、自信になったのではないでしょうか。
あの時は追い切りも乗せてもらって、自分なりに考えて仕上げたことが、レースで上手くハマって嬉しかったですね。勝てたのは馬の頑張りと、普段から一生懸命やってくれている厩務員さん、乗せてくれたオーナーや調教師のお陰です。初めてダービーを勝ってすごく嬉しかったですけど、あんまり実感はなくて。デビュー前の能力検査の頃から乗せてもらった馬でダービーを勝って、他にも重賞をいくつも勝たせてもらって、ロンギングルックはすごく思い入れが強いです。今も頑張っていますから、今年も一緒に勝ちたいです。
改めて、今年の目標を教えてください。
いつもコツコツ小さいところから、と思っているので、まずは目の前のことを一つ一つ積み上げて行きたいです。数字的には去年以上に勝ちたいですし、アイバンホーと石川ダービーを勝ちたいです。ダービーを勝ったら新潟のレースに挑戦するプランがあって、それで中央デビューしたいですね。中央に乗りに行くチャンスはなかなかないので、このチャンスを掴みたいです。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
金沢競馬を応援していただきありがとうございます。これからも一生懸命頑張っていきますので、よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:石川県競馬事業局)
デビュー4年目の金沢・中島龍也騎手は、6月11日に地方通算200勝を達成しました。金沢リーディングは2位(8月27日現在)に上昇し、さらなる高みを目指します。
まずは200勝おめでとうございます。4年目での達成となりましたね。
ありがとうございます。思ったより早く達成できたから良かったなと思う反面、正直もうちょっと勝ちたいなという気持ちもあります。今の目標は年間100勝なので、そこは達成したいですね。
今年はここまで53勝(8月27日現在)。金沢リーディングは2位ですよ。
もう本当にがんばってくれる馬たちと、乗せてくれる関係者のお陰です。途中1位になった時もあったんですけどね。もっと努力して、乗り馬を集めて上に行きたいです。スーパージョッキーズトライアル(SJT)も目標の1つなので、このままキープして来年に繋げたいですね。
騎乗に関して、意識していることはありますか?
所属の加藤(和義)先生から、「ガツガツ追い過ぎて、馬の能力を損なってしまう時がある」って言われていて。元高崎の乗り役で3000勝している加藤和宏先生からも、「追うことはいいことだけど、追い過ぎるのはダメ」とアドバイスしていただきました。追い過ぎることによって人間のバランスが崩れるし、そういうのは馬の負担になるので、そこは意識していますね。もちろん必死に追うんですけど、追い過ぎて自分のバランスを崩さないようにしないと、勝てるものも勝てないですから。
勝ちたい気持ちが強いと、ガツガツいきたくなっちゃいますよね。
そうなんですよ。まだ「勝ちたい勝ちたい」が強く出過ぎてしまう時があるので、バランスが変になってしまう時もあります。そこは今後の課題ですね。
去年金沢リーディング5位に入って、若手の枠で南関東期間限定騎乗ができることになりました。来年1月から大井での期間限定騎乗が決まっていますが、これは大きな挑戦ですね。
ずっと目標にしていたので、すごく嬉しいです! どうなるかわからないですけど、とにかく1勝が目標です。自分はコツコツ小さな目標を積み重ねていくタイプなので、まずは南関東1勝目指してがんばります。
リーディング5位に入って南関東へ行ってみたいと、前から言ってましたもんね。
そうですね。ひとまず達成できて嬉しいです。あと他にも、先日初めて中央交流を勝つことができたし、準重賞やトライアルを勝つことができました。少しづつ少しづつ目標が達成されつつあるので、このまま進んで行きたいです。まだ重賞を勝っていないので、そこは大きな目標ですね。
今年はサッキーヘラクレスとのコンビで、北日本新聞杯2着、石川ダービー3着に入りました。重賞まであと一歩です。
サッキーヘラクレスにはデビューから乗せてもらって、攻め馬もずっと乗せてもらってて。馬の癖が強いというか、我が強くて気難しいところがあるんです。MRO金賞は初めて深いブリンカーを試したんですけど、それがマイナスの方に出て集中力を欠いてしまいました。前走は浅めに戻したらまたいい走りをしてくれたし、まだ能力は未知数なので、一緒に重賞を勝ちたいです。普段からやんちゃな子なので(笑)、走ってくれるとすごく嬉しいですね。
前走勝った時も嬉しくて、とっさにガッツポーズが出ちゃいました。C1だったんですけどクラスとか関係ないし、相手はMRO金賞を勝った重賞馬だったので。
4連勝中のヤマカツトップガンも勢いがありますね。
あの馬はどんどん成長してくれていて、今度はクラスが上がってA級に入りますけど、まだまだいい競馬ができるんじゃないですかね。最初はすごく硬い感じで、「この馬走るのかな?」って半信半疑だったんですよ。でもレースに行ったら走りが良くて、他の馬が来た時の反応とか、ひと脚の使い方とかが器用だなって思いました。そしたら2戦目で逃げて4着に来てくれて、期待が高まって。調教でもどんどん動くようになって、すごく成長してくれてます。まだ底が知れないので、上のクラスでも楽しみです。
現在ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)が開催されていて、同期(水野翔騎手、鈴木麻優騎手)が出場していたり、金沢の後輩2人(栗原大河騎手、柴田勇真騎手)は減量のルールが変わって再び減量騎手になって出場しているじゃないですか。いいな、と思いますか?
もちろん大井や中山で騎乗できるチャンスというのは羨ましいですし、YJSには出たかったですけど、減量騎手にはなりたくないです。デビュー前から早く減量を取ることを目標にやって来たので。減量騎手ってだけで明らかに新人ていう扱いになるじゃないですか。だから、自分はもう減量はいらないです。
中島騎手は金沢で10年ぶりの新人騎手としてデビューしましたけど、すぐ次の年に後輩が2人デビューしました。意識はしますか?
後輩には負けたくないですね。でも2人ともすごくがんばっているし、先日のMRO金賞で(栗原)大河が勝ったじゃないですか。あれはいい刺激になりました。人気薄だったし、「マジか?!」と思いましたね。どんどん上手くなっているし、自分も負けてられないです。
今の目標は何ですか?
一番は重賞を勝つことで、1年を通した目標は年間100勝してリーディング1位を獲ることです。リーディングはコツコツ積み重ねていった結果なので、1レース1レース大事に乗れば近づいてくると思ってます。あとはSJTに出たいです! 2つ上の阿部龍さんも出てますし、憧れますね。名前も広まりますし、いつか吉原(寛人)さんのようにいろんな競馬場で乗れるようになりたいです。
吉原騎手は全国の重賞に乗って、しかも結果も出してますもんね。
すごいですよね。全国でトップの活躍をしてますから。あれだけ全国から声が掛かる人もいないですよ。吉原さん、最近うちの厩舎の所属になったんですよ。だから金沢にいる時は厩舎にいるんです。普段は陽気な感じなんですけど、レースになると一気にスイッチが変わるし、あれだけすごい人を近くで見られて、いっぱい刺激をもらってます。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
これからも1鞍1鞍真剣に、1着目指して一生懸命騎乗しますので、応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋
今年4月にデビューした新人騎手は12名。その中でも順調に勝ち星を伸ばし、存在感を示しているのが金沢の中島龍也騎手。デビューしてから3カ月、明確な目標もできたようだ(インタビューは7月1日)。
4月にデビューして6月までで22勝。同期の中ではダントツの勝ち星です。特に1番人気馬では19回騎乗して、連対を外したのは1回だけです。
いや、まだぜんぜんですよ。(1番人気の連対率は)特に意識していなかったので、初めて知りました。一鞍一鞍がんばって乗るだけだと思っています。
では、まず騎手になったきっかけから教えてください。
小学6年か中学1年のころだったと思うんですけど、祖父が競馬が好きで、「運動神経も悪くないし、小さいんだから騎手でも目指してみたら」って。それまで競馬のことを意識はしてなかったんですけど、中学2年くらいから考えるようになって、そのうちに本気で目指すようになりました。中学を卒業して、茨城にある国際馬事学校に1年間行って、試験に受かって(地方競馬)教養センター入りました。
出身は千葉県ですよね。
千葉県の鎌ヶ谷市です。最初は船橋に所属したいと思っていたんですけど、教官に、「お前の人間性や技術じゃ通用しない」とか言われて迷っていました。そのうち、今所属している(金沢の)加藤和義先生が、調教師の試験を受けるための研修で3週間くらい教養センターにいらっしゃっていて、調教師試験に合格したらということで、先生から声をかけてもらいました。時期的にも1年の終わり頃で、どうしようかと思っていて、船橋だと乗り鞍に恵まれるかどうか不安だったので、それだったら金沢なら南関東より騎手の数も少ないし、乗せてもらえるんじゃないかということで金沢に決めました。
あらためて、ここまで22勝、勝率11.0%という成績はすばらしい。
(金沢では)新人が久しぶりということもあって、いろんな先生に乗せていただいてる感じで、乗り鞍には恵まれた中で、たまたま勝ててるのかなという感じです。でも乗っていて思うのは、やっぱり難しい。競馬はひとりでやってるわけじゃないので、まわりの騎手に気遣いながら乗るのが難しい。勝ち星なんて関係ないです。難しいに尽きますね。
1番人気や断然人気の馬でプレッシャーは感じますか。
そういう感じはないです。前の日に予想紙とかを見て、人気になっているときのほうがやっぱりやる気は出ます。印が付いてない馬よりは、印がついているほうがチャンスがあるってことですからね。
そういう意味では、わりといい馬に乗せてもらっていると。
「いい馬に乗りすぎてる」って加藤先生から言われます(笑)。
レースを見ていると、人気薄の馬に乗った時でも積極的に前に行こうとしているように見えます。
そうですね。やっぱりダート競馬ということと、減量のあるうちはそれを生かした騎乗もしないといけないんで。うしろのほうにいて、競馬を諦めてるんじゃないのかとか思われてマイナス評価になるんだったら、やっぱり前に行って負けたほうが悪い印象は与えないと思うので。とりあえず減量のあるうちは、減量を生かした積極的な騎乗を目指しています。
思い通りに乗れたレースはありますか。
10勝目のフレンドリーゼウスという馬で、それまで乗っていた藤田(弘治)さんから、「口が堅い」とか、「馬のうしろに入ったら掛かって乗り上げてしまうかもしれない」って言われていたので、内枠ということもあって、できれば前に行きたいと思って、いい感じに先行できたので、ペースを少し落として自分の有利なペースに持ち込んで。吉原(寛人)さんの馬がうしろから来てたんですけど、追い始めてムチを入れるとまた伸びてくれたので安心しました。
期待している馬はいますか。
3勝したグランラファルという馬と、4連勝したあと2着が続いてるんですけど、自分の厩舎で攻め馬からやらせていただいているトモヲエラババです。あと自分の初勝利で、2連勝したニシノオタフクですね。今ちょっと疲れてるんですけど、休んで調子を取り戻してくれたらまた勝ち負けになると思います。
デビュー前のインタビューでは、1年目の目標として減量がとれる30勝と言っていました。その目標はもうクリアできそうですね。
どうですかね、がんばりたいですけど。できれば(NARグランプリ)優秀新人騎手賞と、一番の目標は、プロスポーツ大賞の新人賞を狙いたいと思っています。(笹川)翼先輩(昨年のNARグランプリ優秀新人騎手賞)より上にいけばとれるのかなって。それを目指してやっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤修