スーパーバンタムに騎乗して、西日本ダービーを制した青柳正義騎手(金沢)。昨年末から8連勝と才能開花したスーパーバンタムについて、お話を伺いました。
西日本ダービー制覇、おめでとうございます。初めての遠征でしっかり結果を出しましたね。
ありがとうございます。馬運車の中では少し入れ込みも見られたそうですが、競馬場に着いたら落ち着いてくれて、馬体重もそれほど減っていなかったので、輸送は無事にクリアしてくれました。基本的には大人しい馬ですが、牝馬ですし突発的なことがあったらわからない部分もあるので心配もありましたが、普段からパドックで跨るとどしっとしているので、案外大丈夫かなとも思っていました。
レースは2番手からスムーズな競馬でした。
馬場傾向が内有利に感じましたし、距離も長いので、ハナか2番手と思っていて、思い通りの位置は取れました。ただ、その前の加賀友禅賞の時ほどの手ごたえはなくて、焦りはあったんですけど、ペース自体はゆったりしていて、相手は内の2番(フィールマイラヴ)だなと。その馬を見ながら早めに仕掛けて行きました。直線で少し相手に抜けられた時にはちょっとびびりましたが、しっかり交わしてくれて、馬に感謝しています。
8連勝で西日本ダービーを制したスーパーバンタム
昨年12月のあての木賞から8連勝!すごい馬ですね。
本当にすごい馬ですよね。正直、昨年はここまで強くなるとは想像も出来なかったですから。これまでたくさんのいい馬に乗せていただきましたが、短期間にここまで成長した馬というのは、僕は初めてです。僕らが思っていた以上に強くなってくれましたし、目標としたことをすべて叶えてくれて、スーパーバンタムには頭が下がります。
昨年6月の新馬戦では、まさかの競走中止というアクシデントがありました。
競馬場に来てからずっと調教で乗っていましたし、ゲート練習もすべて順調に行っていて、もしかしたら勝てるかもという期待を持っていました。たまたま自厩舎の馬が重なってしまって、僕はもう1頭の馬に乗っていたんです。レース中に「あれ?いないな」とは思っていましたが、まさか競走中止していたとは......。すごくびっくりしました。
調教ではそういうそぶりはなかったんですか?
ゲートも上手でしたし、追い切りもゲートから出したらよく動いて、とても順調でした。順調に行きすぎたのが逆に良くなかったのかもしれないですね。新馬戦は900メートル戦だったので、内に逃げやすい場面ではあるんですけど、馬を怖がって一気に内に飛び込んでしまって......。2戦目からは僕が乗せていただいて、とにかく真っすぐにゲートを出て、真っすぐ走って来るということに重きを置いてレースをしていました。幸いスピードがある馬なので、いい位置を取りやすいんですけど、それでも1コーナーで内に馬がいると逃げたいそぶりはしていて。そういうところを直しながらのレースでした。その名残で、未だにレースでもマルタン(マルタンガール:両手綱を通して腹帯で固定する馬具)を着けてレースをしています。
どのあたりから強くなったと感じましたか?
今年に入ってからですね。昨年は12月に準重賞のあての木賞を勝たせていただいたんですけど、それでも重賞には手が届くかどうかという印象でした。今年に入ってオーナーや鈴木正也調教師、スタッフさんたちとローテーションを決めて、重賞を一つでも取れるように頑張って行こうと話していました。今年の初戦は3月のアッサム特別で、休み明けですが気乗りしやすいタイプなのでそこまで仕上げていったわけではなかったんですけど、使っていたスターフジサンに並ばれても交わさせなかったので、すごく成長したなと思いました。
石川ダービーを意識したのはどの辺りですか?
今年3戦目のノトキリシマ賞を勝って、これでダービーを意識して挑戦できるなと思いました。北日本新聞杯は「次に繋がるレースをしたい」というふうに思っていましたが、こちらが考えていた以上に強い勝ち方をしてくれましたし、石川ダービーは3番手で溜めも利いて、最後しっかり脚を使って突き放してくれて、春からやって来たことが実ったレースでした。
この馬の距離適性というのはどう感じていますか?
3歳同士ならば2000メートルもこなしてくれますが、レベルが上がって来ると、1500~1800メートルくらいがいいと思います。以前はテンに仕掛けていくと慌てるところがあったので、あまり短い距離はどうかなと思っていましたが、久しぶりの1400メートルだった加賀友禅賞でもいいレースをしてくれましたから、今ならば1400メートルも大丈夫ですね。
では、スーパーバンタムの強みを教えてください。
西日本ダービーの時もそうですが、パドックで僕が跨ると不安になるくらい大人しくなるんです。歩かないんじゃないかと思うくらいで。度胸があって、落ち着きがあるというのは大きな強みです。
現状課題をあげるとしたらいかがですか?
スピードがある馬なので、これまではハナや2番手から競馬をすることが多かったですが、もっと強い馬たちと走る場合は被されて馬群に入る競馬もあると思います。そうなった時のことを考えると、これからは砂を被るレースも克服していきたいです。
今後の予定は決まっていますか?
馬の様子を見てオーナーと調教師が判断しますが、楠賞(11/2園田)かお松の方賞(11/1金沢)を両にらみで調整しています。初めての遠征後、多少疲れはありましたが、今は元気に調教を重ねていますので、順調に次に迎えると思います。
今後の目標を教えてください。
まずはスーパーバンタムという素晴らしい馬に出会えて、馬にも関係者の方々にも感謝しています。西日本ダービーを勝ったことで、金沢はもちろん西日本の代表になったわけですから、これからも恥ずかしくないよう、いいレースをしていきたいです。その中でも金沢にはハクサンアマゾネスという女王がいるので、その馬といい勝負をするところを皆さんにお見せできたら嬉しいです。
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。今年はいろいろ重賞を勝たせていただいて、年初めの目標を実現することができました。今年もまだ3カ月ありますし、金沢リーディングもかかっているので、これからも気を抜かずに頑張ります。
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※インタビュー / 赤見千尋
8月24日に地方通算1,000勝を達成した青柳正義騎手。自身2回目の地元リーディングに向け、現在勝ち星トップに立っています。リーディングを狙う意気込みや、近年、毎年のように馬場傾向が変わる金沢の砂、11月に控えるJBCのことを伺いました。
1,000勝達成、おめでとうございます。残り3勝くらいからプレッシャーがあったとか?
ありがとうございます。100勝や200勝はそんなに気にならなかったんですけど、1,000勝となると意識しちゃいました。自覚はなかったんですけど、近づいてくるとプレッシャーが予想よりもあったのかもしれないです。
メモリアル勝利のモアナスターは移籍初戦の馬でした。逃げて4コーナーでは2着の兼子千央騎手に前に出られましたが、激しい接戦を制して勝ちましたね。
調教をずっとつけていて、条件的にも馬の能力的にも勝たなきゃいけないところだったんですけど、男馬で暑さに参っているところがあったので、少し不安な面はありました。4コーナーで兼子騎手に一瞬、前に出られましたけど、馬が頑張ってくれました。直線は「ここで負けたらマズい」と思いました。自厩舎の馬で、一番お世話になっている厩務員さんが担当されていたので、どうしても決めたかったです。ゴールの瞬間はホッとしました。
モアナスターに騎乗して地方通算1,000勝を達成
重賞戦線では今年、ファストフラッシュで金沢スプリングカップを勝ちました。
気性が素直すぎるというか、金沢だとポンと行っちゃうとハナや2番手になってハミを取ってしまうんですけど、去年1年を通してだいぶ成長して、今年はだいぶ辛抱が利くようになったので重賞も獲れたのかなと思います。いまは骨折して回復待ちなんですが、1,000勝目を挙げたモアナスターの弟で、厩務員さんも一緒なんです。
4月25日、ファストフラッシュで金沢スプリングカップを制覇
そんな繋がりがあったとは。現在、金沢ではリーディングに立っています。
まだ今年の後半戦がありますが、去年は大きなケガをして順調さを欠いたので、今年は頑張らなきゃなと思っていました。前半で思った以上に勝たせていただいた分、夏場になって少し勢いが止まり気味ではあるんですけど、後半戦に向けて巻き返していけたらと思います。
金沢は2018年は内ラチ沿いが圧倒的に有利でした。開幕前に馬場改修が実施された2019年、砂の産地が変わった今年と、毎年のように馬場傾向が変わっています。現在はどうですか?
今年は砂を変えてすごく走りやすくなりました。馬も楽そうには走っているんですけど、時計は結構出ていますよね。騎手として一番良かったなと思うのは、砂を被っても痛くないことです。以前は砂の目が粗くてすごく痛かったんですけど、いまは全然気にならなくて、砂を被るのを嫌がっていた馬でも案外辛抱できるようになったりもしています。今のように内ラチ沿いを開けると展開的には乗りづらい面が出てくるんですけど、2018年のようなレースよりは安全だなと思います。
現在の馬場での脚質や展開の有利不利はどう感じますか?
金沢はフラットで乗りやすい馬場なので、2~3番手での先行が有利で、少々外を回っても大丈夫です。ただ、ペースが速くなりすぎたら差しも決まります。枠は1~2枠だと、内の砂が重たいので乗りづらい面はあります。
今年は金沢でJBCが開催されます。前回は2013年に行われましたが、当時の雰囲気はどんな感じでしたか?
金沢にあんなにお客さんがたくさん入ったのは初めて見ましたし、あれだけの観客の中でレースに乗るのは騎手冥利に尽きます。1レースから入っている人の数が違ったので歓声もすごくて楽しかったです。
2回目のJBC開催に向けてパドックも綺麗に整備されたようですね。
馬が歩く部分のウレタン舗装を替えて、真ん中の部分も芝生から人工芝に替えて綺麗になっています。
関係者同士でJBCの話はしますか?
もちろん出ます。コロナのご時世なので何とも言えないんですけど、可能であればお客さんは入れたいですよね。
最終的には行政を含め主催者の判断になるでしょうが、コロナを抜きで考えると、せっかくのJBCですからたくさんのファンに来てもらえるのが一番ですね。さて、このあとの目標を教えてください。
いまの順位をキープしてリーディングを獲れたらな、というのと、怪我なくというのが一番です。1年を無事に終えることが成績的にも一番なのかなと思います。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
JBCがあるので、金沢競馬場もどんどん綺麗にしていますし、僕らも気合いが入っています。普段、見ない方でもこれをきっかけに金沢競馬の馬券やレースを気にしていただければ幸いです。吉原寛人騎手もいますし、僕らも吉原さんに負けないように頑張っているので、ぜひとも金沢競馬場の応援をよろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:石川県競馬事業局)
今冬、兵庫で初めて期間限定騎乗を行った青柳正義騎手。地元に帰ると、3月25日に開幕した金沢でリーディング2位につける好調ぶり(4月25日時点)。兵庫での期間限定騎乗でどんな変化があったのだろうか。
金沢競馬がオフシーズンになる冬はこれまで福山や笠松などで期間限定騎乗をされていましたが、今年、兵庫に行ったきっかけは何だったんですか?
昔、福山競馬に遠征した時に面識ができた高本友芳調教師(当時、福山)が今は兵庫で調教師をされていて、声を掛けていただいたのがきっかけです。園田に所属できたら高本先生のところでお世話になる予定でしたが、西脇所属でということになったので橋本忠明厩舎所属になりました。
兵庫で初めて期間限定騎乗をしましたが、金沢との違いは感じましたか?
初めは違いしか感じなかったです。金沢のコースは1周1200メートルでゆったりとしていますが、園田は1周1051メートルでコーナーが急です。1400メートル戦でテンに仕掛けていくのは一緒でも、園田は金沢ほど長いこと仕掛けずに1コーナーで息を入れることを考えます。みんな折り合いに専念して、ペースを落とすことを考えていましたね。馬場も金沢だとインが有利ですが、園田では内外の傾向が変わるので難しかったです。
レース中、騎手同士の駆け引きなども違いましたか?
金沢は騎手が20人もいないので、レース中にどういう動きをするかは10年以上乗っていればだいたい分かってきます。でも園田は騎手も多いし、1レースの馬の頭数も多いので、なかなか難しかったですね。でも、僕と同世代が多くてよかったです。プライベートでは西脇所属で同年代の中田(貴士)騎手や鴨宮(祥行)騎手、大柿(一真)騎手に良くしてもらいました。金沢ではちょうど僕の世代が空いちゃってるんですよ。
2日目に初勝利を挙げ、約1カ月半の騎乗で3勝でした。
初勝利の時はいい馬に乗せてもらっていたので、結果を出せてよかったです。初めての所なので最初は焦りや不安がありましたね。最終日に勝たせてもらったアローフロストはズブさのある馬と聞いていたので、あまり気を抜かせないように注意して乗りました。レース前に新聞を見ると、2着馬と僕の馬の2頭の時計が抜けていたので、相手は1頭かなと思っていました。レースは最後まで2着馬とビッチリ併せる形。あれを負けていたら、金沢に帰れないところでした (笑)。
金沢に帰って、今シーズンは絶好調です。開幕から1カ月で21勝。このペースを維持できれば、キャリアハイの2016年113勝(笠松での14勝を含む)を上回りそうです。園田の経験で生かせていることはありますか?
僕は逃げ・先行が多いんですが、同じ戦法でも去年より道中で息を入れることを意識して乗れています。金沢はある程度スピードを持ったまま道中流しても、ダラダラっと流れ込める競馬場なんですが、そうではなくてちゃんと息を入れて、直線でも伸びれるように、と考えています。今の成績がそれを生かせての結果だといいんですけどね。いい馬に乗せてもらっているので、なんとか...という感じです。
2016年は金沢リーディング2位であと一歩でしたから、その先も期待してしまいます。
あの年はヤマミダンスが2歳で、たくさん勝たせていただきました。プレッシャーもかかっていましたし、それによって色んな方向でいい流れになりました。あの馬に引っ張ってもらったんですよね。そんなんじゃまだまだダメで、コンスタントに勝たないといけないんですけど。逆に去年はヤマミダンスの調子が落ちた時に、僕自身もうまく持ち直せませんでした。去年は悔しい思いもしましたし、色々悩む1年でした。
金沢シンデレラカップを制したヤマミダンス(2016年10月18日)
それを乗り越えての今シーズンの好調ですね。目標を教えてください。
800勝が当面の目標です。いま677勝なんですが、兵庫で橋本先生に「早く800勝しろ」ってハッパをかけられたんですよ。800勝を挙げれば、南関東での期間限定騎乗の基準をクリアできます。そういういいプレッシャーもあって、今シーズンの好調かもしれません。
あと、いい加減リーディングも獲りたいです。毎年それなりの位置にいるんですが、抜け切れていないので。
期待している馬を教えてください。
ジュウワンローズ(牡3、中川雅之厩舎)です。まだキャリア4戦で、幼くて競馬に集中しきれない面はありますが、2連勝したように力があります。スンナリしたレースだと乗りやすいし、折り合いがつくので距離も融通が利きそうです。このインタビューが掲載される頃には重賞・北日本新聞杯の結果も出ていると思いますが、まだ胸を借りる立場。これからの成長に期待ですね。
オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
幸いなことに、今年開幕していい馬に乗せていただき、それなりに結果もついてきています。リーディングを獲って、来年は地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップにぜひ出場したいので、応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 大恵陽子
金沢が熱い。昨秋のJBCの話ではない。今の話だ。金沢が誇る最強馬ナムラダイキチが11カ月の長い休養から復帰すると、6月15日には伝統の百万石賞を連覇し、秋の中央勢撃破へ名乗りをあげた。6月4日の東京ダービーではハッピースプリントで金沢のプリンス吉原寛人騎手が南関二冠目を制し、ジャパンダートダービーで三冠目を狙う。そして、忘れてはいけないのが、6月6日の東海ダービーで初めて金沢にタイトルを持ち帰った青柳正義騎手とケージーキンカメのコンビだ。地方では後続をすべて秒単位で突き放す"新怪物"の強さの理由や、ジャパンダートダービーへの意気込み、自身の今後の目標を青柳騎手に直撃した。
東海ダービー制覇おめでとうございます。レース前、自信はありましたか?
ありがとうございます。名古屋の強豪リーダーズボードが回避したので、一本被り(単勝1.4倍)で正直、緊張しました。輸送競馬は中央時代にも結果は出てませんし、金沢に来てからも初めてだったので、走ってみないと分からないと思ってました。
しかし、走ってみれば、金沢と同じような圧倒ぶりでした。
名古屋の馬はテンが速いと聞いていたので、位置取りが悪くなるかもと心配してました。でも、負けないくらいのダッシュができて、2番手につけられたので安心しました。道中も手応えがいいので、これなら大丈夫と思いました。3コーナー手前から先頭に立ちましたが、そこからも伸びましたし、輸送も関係なかったですね。
ケージーキンカメで東海ダービー制覇(写真:愛知県競馬組合)
リーダーズボードとの対戦が見たかったというファンの声が多く上がりました。
レース前は、不安もあって半信半疑でしたが、レースが終わった今なら、勝ち負けは分かりませんが、いい勝負にはなると思います。僕自身もすごく興味はありますし、あの馬と走ってみたいですね。
ケージーキンカメは中央では1秒1、3秒1、2秒5、4秒4、2秒3と5戦大差負けが続き金沢へ。でも金沢では1秒1、2秒4、1秒5、1秒0、2秒2、1秒3と6戦すべて圧勝と激変しました。
2月に金沢に来た時は先生(鈴木正也調教師)が攻め馬に乗ってましたが、テンションは高いし、乗り手の扶助には逆らうし、気性が難しかったです。3月から僕が乗り始めて、少しずつ走りに集中してきたのと、レースを覚えて素直になったのが大きいです。レースでも少々ハイペースで逃げてもバテないし、しまいもしっかり伸びる。とにかく心臓が強い。気性難が解消されて、強い心臓をフルに生かせるようになったのが、一変した理由です。乗り始めた頃は走らない馬とは思わなかったが、ここまで走るとは思わなかったので、びっくりです。本当に化けましたね。
普段はどんな馬ですか?
来た頃の気難しさがなくなって、今は基本的におとなしいですね。ただ、馬場に出るとテンションが高くなるところは今でもあります。
これまでの6戦の中で一番印象に残っているレースは?
やはり、東海ダービーです。会心のレースだったのもありますが、自分にとっては去年の北日本新聞杯に続く2度目の重賞制覇ですし、遠征での重賞制覇は初めてですから。
青柳騎手にとって遠征での初めての重賞制覇(写真:愛知県競馬組合)
次走はジャパンダートダービーと聞いてます。
前走後も何ともないし、輸送も大丈夫だったのは収穫。相手が強くなるので、胸を借りるつもりで挑戦しますが、僕の馬も、まだ底を見せていないので、どこまでやれるか、楽しみはあります。
金沢にはナムラダイキチという中央勢とも互角に戦える馬がいます。
いずれ対戦する日が来ると思いますが、名古屋での勝利でダイキチに挑戦する資格はできたと思ってます。ただ、時計だけを見たら差はないので、これからの成長も見込んで、いい勝負ができればいいですね(ケージーキンカメの5月13日の稍重1700mの勝ち時計が1分50秒0に対し、5日後18日の良馬場同距離でのナムラダイキチは1分50秒3。一杯に追われたキンカメと気合いをつけられた程度のダイキチとでは手応えが違い、単純比較はできないが、タイムはキンカメの方が速い)。
青柳騎手の勝負服はケージーキンカメの父キングカメハメハの金子オーナーと同じです。キングカメハメハ産駒にはよく似合う勝負服です。
ありがとうございます。教養センターにいる時、金子オーナーのクロフネが活躍していて印象的だったのと、僕の好きな青色が入っていたので、これを勝負服にしました。これからもキングカメハメハだけでなくクロフネやディープインパクト産駒の強い馬にも乗りたいですね(笑)。
今後の目標について教えて下さい。
昨年、ワイルドカード2位で出場したスーパージョッキーズトライアルに今年も出てみたいです。よその地区の上手な騎手と一緒に乗るのは、直線での追い方、コーナリング、仕掛けどころとか、勉強になったし、すごく刺激を受けました。今のところ、出場できるか微妙ですが(6月20日時点の金沢リーディングで2位とは4勝差の4位)まだ8月まで時間はあるので、2位までに入ってワイルドカードからでも出場したいです。あとは重賞の勝ち鞍を増やしたいです。今年はケージーキンカメがいるので、あと1つでも2つでも上乗せできればいいですね。
最後にファンの方へのメッセージを。
昨年には金沢ではJBCも行われましたし、ナムラダイキチも復活して、ケージーキンカメという未来のスター候補も出てきています。僕もケージーキンカメをもっと強くするように頑張りますし、馬も成長すると思いますので、これからも成長する姿を見に、競馬場に来てもらいたいですし、ネットでも見てもらいたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
7月末現在、青柳正義騎手は金沢競馬のリーディング争いでトップを維持。8月に入ってリーディングの常連、吉原寛人騎手にその座をゆずってしまったが、その地位を取り返すべく、奮闘を続けている。
浅野:今年の金沢競馬場での勝ち星が、すでに昨年(53勝)を超えました。躍進の秘密はどこにあるのでしょう?
青柳:やっぱり福山競馬場に行ったことが勉強になりましたね。金沢とはコースの形が違いますし、なにより馬群が金沢より詰まりますし。金沢は最後の直線になればある程度バラけるんですが、福山だとそうはいかないんですよ。だから、少しでもロスを減らそうと考えました。具体的には、位置取りとコーナーの回り方ですね。
浅野:福山での成績は、88戦11勝でした。
青柳:金沢競馬場は強い馬が勝ちやすいコースだと思うんですよ。でも福山はそうではなくて、力が上でもひとつミスしたら勝つのが難しくなる感じがありました。あのきついカーブでインコースをピッタリとは、なかなか回れませんよ。でも渡辺(博文)さんとか、みんなうまく回ってくるんですよね。
浅野:そこでの経験が大きな糧になって、今年の快進撃につながっているのでしょうね。
青柳:金沢での乗り方も昨年までとは違っていると思います。自分でも3~4コーナーをキッチリ回ってくるようになったと感じています。あと、福山ではロスをなくすために、誰がどこにいるのかとか、周りをよく見るように心がけたんです。それを金沢でも実践していることも、去年とは違うところです。それから、例年は金沢競馬の開幕日が久々の実戦となるんですが、今年は冬の間も競馬をしていましたから『いつもより体が動くなあ』という感覚がありました(笑)。
浅野:それ以前の冬はどういう過ごし方をしていたのですか?
青柳:岡山県の栄進牧場久世育成センターに何年かお世話になりました。そこでは2歳馬の育成が主な仕事になるんですけれど、金沢ではなかなか乗れないようなすばらしい馬がたくさんいますから、それはそれで勉強になりました。岡山ではエーシンクールディにも乗ったことがありますよ。
浅野:でもやはり、育成の現場と競馬場とでは得るものが違ったということですか。
青柳:そうですね。福山に行ったのは、金沢の調教師さんに、福山に冬の間は馬と一緒に遠征に出るから手伝ってくれないかと言われたことがきっかけでした。でも、行ったことがないところだし、福山には(教養センターでの)同期もいないし、不安がありましたね。行ってみたら、まったく問題なかったんですが。
浅野:そして、金沢での快進撃。周りの評価などはどうですか?
青柳:リーディングになっているのはたった3カ月とか4カ月程度なんですけれど、馬主さんや調教師さんにいろいろと声をかけていただきますし、明らかに昨年とは違う感じがありますね。でも個人的には、まだまだだと思っていますよ。デビューしてからしばらくは成績もよくありませんでしたし、先輩騎手などからは騎乗についてアドバイスを受けたことがありますが、"コイツはライバルにはならないな"と思われていたからこそ、教えてもらえたんだと思いますし。
浅野:確かにリーディング10位以内に入ったのは、昨年が初めてです。
青柳:デビュー当初に現役だった渡辺壮さんは、僕なんかがマネなんてできるわけがない、というレベルでした。どうやったらあんなに楽に乗れるのかと......。それでも平瀬(城久)さんとか吉原(寛人)さんとか、参考にしてきましたね。ただ、自分が吉原さんの乗り方を真似しても、しょうがないと思うんですよ。体型も違いますし。自分としては、柔らかく乗れて、いい位置につけて差す競馬ができるという点をアピールしたいですね。現在の金沢競馬場は昔と違って、内をさばいても勝てる馬場になってきましたし。
浅野:ただ、吉原騎手が成績を伸ばしてきました(取材日の7月29日時点では青柳騎手が2勝差でリード)。
青柳:なんとか、スーパージョッキーズトライアルの出場権を獲得したいと思っているんですけれど......。
浅野:第1ステージは青柳騎手の出身地(千葉県印西市)近くの船橋競馬場です。
青柳:船橋競馬場は車の窓から眺めた記憶はあるんですが、行ったことはないかも。子供のころ、父によく連れて行ってもらっていたのは中山競馬場です。その中山競馬場で叔父が馬場を作る仕事をしていて、その人に騎手という仕事を勧められました。当時は体がすごく小さかったんですよね。で、その気になって、小学4年のときに「将来は騎手になる」とクラスメートに話していたくらいです。初めて馬に乗ったのは、教養センターでの試験のときなんですけれど(笑)。
浅野:となると、地元に凱旋しての騎乗、実現させたいですね。
青柳:そうですね。それに、この仕事をしている限りは、やっぱり一番になりたいですから。
浅野:ところで、青柳さんからいい香りが漂ってくるんですが。
青柳:一応、(調整ルームの)外に出るので、香水をつけておこうかなと思って。自分の部屋にもありますし、ルームの部屋にも置いてあります。僕らは慣れているから感じないんですが、競馬場以外の人からは馬の匂いがするとか言われることが多いので。
浅野:ということは、独身?
青柳:ハイ。前は合コンとかにも行っていましたが、最近はあまり......(苦笑)。
でも今は本業を一所懸命にするべき時なのでしょう。8月18日現在の成績は第2位ということでワイルドカード(9月10日・門別競馬場)からのスタートとなりましたが、そこを乗り越えてスーパージョッキーズトライアルの舞台に立つことができるのか、注目です。
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※インタビュー / 浅野靖典