現役通算3373勝を挙げたトップジョッキーで、昨年調教師試験に合格。今年度の開業を待つ大河原和雄調教師(57)に話を聞きました。
2017年11月27日第9レース、最終騎乗を終えて
騎手生活お疲れさまでした。調教師試験の合格は西弘美調教師以来8年ぶりで、久々となります。
ありがとうございます。調教師試験を受けたのは今回が初めて。馬学の本や医学書を読んで勉強しました。
今まで調教師の免許は1月1日交付だったから、試験に受かっても12月まで乗るつもりでいた。今年から12月1日交付に変更になっていてショックだったな。試験に受かってから手続きが忙しかったよ。引退セレモニーでは、家族や親戚が集まって、親孝行ができたと思う。
騎手の引退はいつ頃から考えていたのですか。
キタノタイショウが引退したタイミング(2017年3月)だね。ただ、調教師には2000勝した時点(2006年)からやりたいと言っていた。もともと育てながら乗るタイプだったから。調教師は、スタッフにしても馬にしても、自分で全て責任を持ってやらないといけない。騎手の方が、調教してレースにも乗れるから贅沢だけどね(笑)。
育成に定評がある大河原さんならではですね。それでも、いままで騎手を続けていたのはなぜですか。
一番はキタノタイショウがいたこと。長澤幸太騎手が競馬場に来た。鈴木恵介騎手も(自分と同じ)服部厩舎所属になったから。
長く乗りすぎた(笑)。体力的にも辛くなってくる。ケガ(2014年にアキレス腱断裂)もしたしね。
ばんえい記念(2015年3月22日)を制したキタノタイショウ
騎手生活で、心に残っている馬を教えてください。
やはりばんえい記念(2015年)を勝ったキタノタイショウだね。2歳から引退までずっと関わることができた。それは騎手として最高の幸せだ。
昨年命を落としてしまったが、種牡馬としては人気で60頭くらいに種付けしたと聞いている。最近のばん馬にしてはかなり多い。
道東の浜中町にいたけど、十勝や上川からも種付けする牝馬が来た(注:ばん馬の繁殖牝馬はその地域の種牡馬をつける事が多い)。
牧場でも、水たまりをおっかながったり、納得するまで動かなかったり、競馬場と同じ性格だったって。
最初の子は3月末くらいに弟子屈町で生まれる予定。一度はタイショウの子をやってみたいな。
リキミドリには競馬の仕方を教えてもらった。特にレースでの"待ち方"。自分の引退式の日に、自分が勝った重賞レースのDVDをもらったからリキミドリのレースを懐かしく見ていたよ。俺がしくじって乗っていても、勝っていたんだよね。馬がカバーしていた。馬を育てながら乗ることも、リキミドリから教えてもらった。
1985年に初騎乗初勝利したカツハルのことは覚えていますか。
覚えていますね。「やっと仕事が始まったかな」と思った。自分で調教してレースに乗った馬で、自信満々で乗ったんだ。「このメンバーなら勝てる」と、ワクワクした。印はなかったけどね。トラックマンに「山さえ上がれば勝てるわ」って言ったんだ。
すごい新人ですね。
厩務員4年やっていたからね。
引退セレモニー(2017年11月26日)。服部義幸調教師と
それにしても(笑)。今はどのような生活ですか。
忙しいよ。競馬場では、服部厩舎やほかの厩舎の若い馬の調教を手伝っています。
まだ馬房数が決まっていないので新馬登録はまだだけど、スタンバイしている馬が牧場にいます。看板も出来ている(笑)。
開催日はだいたい競馬場だけど、それ以外は馬主のところに行ったり、スタッフを集めたり、馬主に連れて行ってもらって馬を見に行くなど道内を訪れています。前、キタサンブラック見てきたよ。
門別競馬場で話を聞いたりね。スタリオンでも乗馬にしても、いろんなところにいって話聞けば、かなり刺激もらえるからね。いいと思ってこだわる人はやはり違う。もう一歩先、一歩先を目指している。
スタッフ集め、ですか。
サラブレッドの牧場にいた人が来るよ。珍しがって来るんだ(笑)。サラブレッドというより馬を知っている人。馬のことで、聞きたいことが山ほどある。今の競馬場は頭が固いから。
スタッフには「かわさん」と呼ばせている。「先生」って呼んだら罰金だ(笑)。
4月の開業に向けて豊富を聞かせてください。
調教師になったからには、たくさんのファンに愛される馬を作りたい。そしてばんえい記念に出せる馬を牧場で探し、作り上げたい。1年目は極力無理せず、やれることを確実にやろうと思います。試したいことは山ほどある。馬も、スタッフも。
幸太(長澤騎手)も「どうやって乗ったらいいかな」って聞くけど、「好きなように乗ってこい」と言う。アドバイスは小さいことだけするよ。騎手には乗った後に話を聞くね。俺はそっちの方を大事にしている。ハミはどうだった、とか。感じ方はそれぞれ違うから、言葉一つ一つが楽しい。騎手の能力を知りたいんだ。
自分に余裕ができたら、ファンに対しても自分でできることを協力できればと思う。使命だしね。騎手は騎手、調教師は調教師の指命がある。
今は、ファンへの発信が少ないよね。はじめてばんえいを見る人とキャッチボールができたらいい。スタッフもファンも含めて、投げた球を返してくれるかどうかなんだ。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保友香、小久保巌義)