12月4日の3歳牝馬による「第47回ばんえいオークス」(BG1)は、9番人気のダイヤカツヒメが優勝。勝利に導いた赤塚健仁騎手に話をうかがいました。
ばんえいオークス優勝、おめでとうございます。普段ほめるコメントの少ない久田調教師が「完璧な乗り方」と絶賛していました。
馬場が軽く、スタートがいい馬なので馬なりで先頭に立ち、楽に障害手前につけることができました。息を入れられ、うまく障害を上がってくれた。ゴール前15メートルくらいで脚色が鈍るところがあるので、障害を降りてから(ゴールまで)もつか不安でしたが、みんな来ないし行けるかな、と思いました。オークスは定量なのでびっくりした、という気持ちが一番。馬が一生懸命頑張ってくれました。先生は、たまに褒めてくれます。
ダイヤカツヒメでばんえいオークスを勝利
2月の黒ユリ賞は2着でした。
この時も障害の下で力を溜めて、降りてからの脚を生かせるような乗り方をしました。2歳時はまだ体ができてなかったですが、馬場が軽い時はスタートが良く、障害を降りてからの脚も良かったので、力がついてきたら活躍できるのでは、と期待していました。臆病なところがあるが、まじめで頑張り屋です。
重賞勝ちは、2014年のばんえい菊花賞を勝ったハクタイホウ以来です。先日亡くなってしまったと聞き残念です。思い出はありますか。
担当厩務員にはおとなしいが、自分は遊ばれていたなぁ。機嫌が悪いと襲ってきます。もくし(無口頭絡)が脱げて脱走して追いかけまわったことも2、3回あります(笑)。
2014年ばんえい菊花賞を制したハクタイホウ
やんちゃな馬だったのですね。帯広市内で馬車を引くムサシコマにも騎乗していました。
ムサシコマは、自分が若いころに担当していましたが、なめられていました......。まだ馬車には乗りに行けてないんです。弟のムサシブラザーが厩舎にいるので、一緒に馬車できないかな(笑)。
2011年のデビュー以来、自分で変化したと感じるところはありますか。
まだまだ下手ですが、落ち着いて乗れるようになったかな。もっと勝率を上げていきたいです。
期待する馬について教えてください。1歳馬の馴致もあって大変そうです。
カツテルヒメ(牝2)はまだ幼くて、道中バイキ(バック)しないところもあるが、障害はいいし、降りてからの脚もいいので楽しみです。馴致は無理させないで、優しく教えていけば大丈夫。押し付けないように、だましながら教えていきます。
そうそう、キタノココロ(牝4)のコマーシャル出演を狙っています。脚を伸ばして"ヨギボー"のCMの馬と同じような寝方をするんです。妻の前では耳を絞るけど、自分にはその格好で甘えるので動画を撮ろうとするんですが、いざ撮ろうといるとうまくいかない(笑)。
想像するだけでかわいいですね。さて、出身は根室市です。
実家のそばに祖父の牧場があったので、小学生くらいから馬に触れ、騎手を目指していました。たまに帰って、競馬場に来る予定の馬を見に行きます。今は兄が牧場を手伝っていて、家族が馬好きでよく触るようになったからか、若馬でも扱いやすいです。
普段は寝ているか、馬好きな妻と牧場に行ったりしています。
2018年には、ばんえいグランプリの日に行われたイベントのゲストで来ていた新根室プロレスとも対戦しましたね。
当日は、松田騎手と村上騎手に連れていかれました(笑)。プロレスラーの"アンドレザ・ジャイアントパンダ"は威力がありました。代表のサムソン宮本さんが亡くなったと聞いて驚きましたが、根室の宣伝になるのでこれからも応援しています。
松田道明騎手(左)と村上章騎手(右)に連れられて入場する赤塚騎手
オッズパーク会員に一言お願いします。
競馬場では、若いファンを見かけるようになりました。いつも声援が聞こえています。まめに競馬場に来ると、馬の変化に気づくことがあります。毎週競馬場にきたり、ネットで見てくれたらうれしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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デビュー5年目を迎えた赤塚健仁騎手(24)。大レースに騎乗する機会も多い期待の若手騎手のひとりです。昨年はばんえい菊花賞をハクタイホウで勝ち、念願の初重賞制覇となりました。
ばんえい菊花賞について教えてください。
レース前は緊張しました。重賞だって考えないようにしていた。ゴール前はあせった。(2着のキサラキクが)来てるな、と思いました。重賞を勝つチャンスは結構あったのに、取りこぼしていた。やっと勝ってほっとしました。いい馬に乗せてもらえて感謝しています。
その後のばんえいダービーは自身の誕生日を飾れず残念でした(3着)が、積極的ないいレースでした。
菊花賞ほどは緊張はしなかったけれど、もう少し前に行ってもよかったかな。あれだけ刻んだんだから、もっと行けるかと思ったけれど、レース使っていなかったからかな(菊花賞からぶっつけ)。ばんえい大賞典(2着)と刻み方は似たイメージだったけれど。
ダービーは10日前、菊花賞は1週間くらい前から、調教師に自分で触りたいと言ってみずから調教をしていました。自分で納得できるし、疲れさせないことを意識しました。
ハクタイホウの性格は、ちょっときつい。馬房の前や、つなぎ場でも前を通るとかかってくる。でも、ゴール際弱いところはあります。これからはハンデとの戦いですね。
ハクタイホウでばんえい菊花賞制覇
思い出の馬は? 初勝利(2011年1月15日)はエンジュオウカン(2004年ダービー、オークスなど重賞7勝)でした。
(ゴール前)ぎりぎりでしたね。馬になめられながら乗ってました(笑)。
あと、カツダイヤのオークス(2012年、2着)は緊張しました。馬もですが、騎手も頑張った(笑)。
カツラ、カツと付く馬は祖父の馬。祖父は根室の実家の近くに住んでいて、一緒に草ばん馬を見たり、2人でそりに乗って運動したりしていました。ばんえいのレースも小学校の時から一緒に見ていて、そのうち自分で乗りたくなって騎手を目指しました。
若手騎手が騎乗することの少ないばんえい記念に、デビュー2年目の2012年、アアモンドヤマトで出走しました。
オーナーから、レース直前に「乗って」と言われてびっくりした(笑)。「行けたら行け」とだけ言われましたが、慌てないようにしました。オーナーとはほとんどしゃべったことがないし、息子さんに飲みに誘われることはありますが、馬の話はしない。なぜなんでしょうか(笑)。
同じ根室出身だからでしょうか。好きなレース展開は。
先行、逃げが好き。どれだけ馬をもたせられるか。でも、2着が多い。カツダイヤも、山降りてからもうちょっと行ってよかった。
ハクタイホウも、(ばんえいダービーは)もう少し前行ってれば、ぎりぎり逃げ切ったかな......。くよくよしても仕方ないとはいえ、もう少し考えていれば、と思います。これからは、道中周りを見ながら、臨機応変に展開を読めるようになりたいです。
現在所属している久田厩舎で、以前騎手だった高橋洋典さんのフォームをビデオで見て研究しています。一緒に仕事をしたことはないですが、祖父の馬に乗っていました。ソリの上でものすごく体を動かします。(名騎手だった)久田先生も、叩き方とか教えてくれます。
いつもにこにこしていますね。ポーカーフェイス?
心の内がわからないように(笑)
デビュー5年目、変わったと思うことは。
昔よりあせらなくなった。
これから期待している馬は。
レジーナ(牝3)は、真面目な女の子。来年、再来年によくなるかも。ハナ早いし障害もうまい。ダントツ(牡3)も成長しています。上に背が伸びている。それと、カツオーカン(牡5)かな。
最近の競馬場について。
若い人増えましたね。若い女の子がいると気になります(笑)
でも、帯広に住んでいても、まだばんえいを見たことがない人が多い。映画の『銀の匙』などが、いいきっかけになればと思います。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香