真面目で、馬を大切にすると関係者からも信頼が厚い船山蔵人(くらんど)騎手。デビュー7年目を迎えました。
船山:出身は道東の浜中町です。幸太(長澤騎手)も近くに住んでいて、昔から知っていました。
父が馬を飼っていたことや、周りに馬や牛が多かったので、動物、特に大動物の仕事をしたいと思っていました。獣医になりたかったんです。父も馬が好きで、2人で道東の馬を見て歩いていた時に知り合った人に、ばんえいで働いてみないかと誘われました。父は自分が騎手になってから馬主になったんです。
斎藤:初勝利もお父様の馬、コトノカツマでしたね。
船山:今は種馬になりました。初年度が1歳ですが、いい馬が出ているみたいで、種馬としても活躍していますよ。
斎藤:昨年、ヒロインズカップで初重賞制覇したエンジュオウカン(牝12)について教えてください。
船山:自分が競馬場に来た年に、エンジュオウカンもデビューしました。1歳の時から草ばん馬で活躍していたので、名前は知っていたんです。ヒロインズカップは馬が自分でレースをしたので自分は乗っているだけ。騎乗前には、(以前乗っていた、同厩舎で元騎手の鈴木)勝堤さんに話を聞きました。ヒロインズカップ後、久田調教師に「ばんえい記念も乗れ」と言われ、その時は「無事ゴールできるかな......」と。ただ、コロナウイルスにかかって、取り消すことになってしまいました。ばんえい記念は一番上のレースですから、憧れです。うちの鈴木邦哉厩舎は、先生もだし、その兄の勝堤さんも2着までしか取れなくて。
斎藤:背が高くて、手足も長いですよね。2年目の舘澤騎手が、似た体形の船山さんにアドバイスを伺っていると聞きました。
船山:183センチです。有利なように思われますが、足場が狭くて乗りにくく、不利なところもある。
舘澤とは普段仲もいいんです。経験ないところ、センスないところが僕とそっくりじゃないですか(笑)。あいつはビュッフェとかおしゃれなところが好きなので、ランチに連れていかれます(笑)。
同期のケン(西謙一騎手)も仲がいいです。センスもいいし、今は若手のリーダー的存在になっています。上位騎手ともつきあいながら、自分の持ち馬を若手に乗せたりしています。
目標はやはり、鈴木恵介騎手です。兄弟子の村上章騎手は、みんながいやがる2歳馬の馴致や厩務作業も張り切っていて、1人でもやっています。そのようなところが目標ですね。
斎藤:ばんえいでは、左利きが有利と言う人もいます。今は、大口騎手と2人ですね。
船山:馬が進むのは叩くだけではなく、レース展開も重要だから、左というのがすごく有利かというと......ただ、ソリの立ち位置やハミの当て方も右と左では違うので、その点も違ってきます。
調教では、あまり叩くと馬の寿命が縮むという勝堤さんの教えがあるので、あまり叩かずにトレーニングをしています。ここぞ、というときだけ。
斎藤:レースで大事にしていることはなんでしょうか。
船山:馬との関係です。初騎乗の馬は運動を良く見るようにして、引っ張る格好やウイークポイントをチェックします。
斎藤:普段の生活を教えてください。
船山:調教は4時半頃から午前中いっぱいまで。今はデビュー前の馴致もあり、先日は旭川まで行って来ました。レースがない時は、午後も厩務員作業があります。今は、オイドン(牡5、ばんえいダービー、天馬賞など重賞5勝)と妹のハイカラサン、父が持つキタノリョウマとアキシノブを担当しています。
馬は驚くと普通は横や後ろを向くけど、オイドンは、前に飛ぶ(走る)んです。それでも大人になりました。年齢もありますし、荷物張るようになったので......。若い時は、体ができていないので無理させず、成長させるために調教の荷物も小さくします。今は体ができたので、レースもですが、運動も荷物を重くするんです。
ハイカラサンは気性が似ています。いつでも走ってるし、性格はキツい。ちゃかちゃかしてるから、危ないです(笑)。
馬との関係は、友達や兄弟のような感覚ですね。めんこがり、怒るときは怒る。オイドンは、タイプでいうと兄かな......意外と、構ってくれないんですよ。ハイカラサンは妹ですね。手を焼きます......。
斎藤:オイドンに乗りたいんじゃないですか。
船山:オイドンはトップホースすぎて、今の僕ではまだ無理です。
斎藤:そういえば、安藤勝己さんが騎手を引退しましたが、JRAジョッキーデーで話はしましたか?
船山:あまり話はしなかったのですが、安藤さんならばんえいの騎手になってもかなり乗れるんじゃないですか。地方から中央に行ったくらいだし、感覚がよさそうです。来られたら乗り馬が減るから困ります(笑)
斎藤:最後に目標を教えてください。
船山:今の目標は、自分というよりは、オイドンを一番の馬にすることです。これからもっと活躍しますよ。自厩舎の成績がいいことで、自分も含めて厩舎全体が盛り上がっていくような流れを作りたいです。
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インタビュー・写真 / 斎藤友香