今年9月、ヤマトタイコーで銀河賞を制し12年目にして重賞初制覇。その後、11月にばんえい菊花賞とドリームエイジカップ、12月にはばんえいオークスと立て続けに重賞を勝ち、今年度のばんえいリーディング2位(12月13日現在)と波に乗る渡来心路騎手(32)です。
重賞制覇は今年でしたが、2018年度は勝ち星を前年の倍に増やして78勝、19年度87勝、昨年度は122勝。6月には通算500勝達成と活躍が著しいですね。きっかけはあったのでしょうか。
それが、特にないんです。何かをつかんだ、というのもない。チャンスと馬がまわってきた。運が良かったんだと思います。
デビューした2010年度は11勝で、それから30勝前後。2015年度はわずか2勝という年もありました。
はい、この年はレースには勝てない、勝てないと乗る馬もいなくなる。この時は本当に騎手をやめようかな、と思っていました。ジムに通って体力作りもしていたのですが。なかばあきらめながらも、当時人が少なかった久田厩舎に移りました。久田先生が馬に乗せてくれて勝てるようになり、他の厩舎からも声がかかるようになりました。ただ、馬にまかせた騎乗をしているだけ。帯広出身ですが厩舎育ちではない。営業をしているわけでもなく、人付き合いがいい方ではないのですが(笑)。
下積みがあったのですね。渡来騎手といえば思い切って先行する姿が見ていて気持ちいいです。
先行しているように見えますが、自分で前に行くわけではなく、馬にまかせた結果、そうなったんです。だから失敗もありますよ。ただ、逃げ切った時の印象が強いんだと思います。
そのインパクトが強かったのが、銀河賞のヤマトタイコーですね。
7番人気で、強い馬もいるから勝つのは難しいかと思っていました。ただ、ハンディも馬場も軽いので行っちゃえ、とレースをした結果です。
真面目な馬で、切れる脚はないが止まらず歩いてくれる。障害も上手です。今年は春から馬場が軽いのもこの馬に向いていた。最近体ができてきたし、先行しても障害力があるのがこの馬のいいところです。
ヤマトタイコーで重賞初制覇
そしてばんえい菊花賞、サクラヒメで重賞2勝目となりました。3週間後にはドリームエイジカップで、10歳のシンザンボーイを優勝に導きました。
(サクラヒメは)障害も良くなってきて、タイミングがいい時から乗せてもらいました。とても気持ちが強い馬。乗りやすいです。
シンザンボーイはスタートが遅い馬ですが、この日は出だしから走ってくれたので楽にレースができました。障害はしっかり上がり、降りたら歩いてくれる。10歳になっても頑張ってくれます。
牡馬や牝馬、ということは特に気にしていないです。
シンザンボーイ
「馬にまかせる」といいますが、その見極めはどのようにするのでしょうか。
スタートしてからです。「走ってるな、行きたいな」と思ったら行かせる。辛そうなら息を入れる。馬のことを考えて騎乗します。テン乗りもありますが、その時は「最近障害上がっていないな」と思ったら無理に先行せず、障害を上げるように乗るなどしています。いちかばちかが、たまたまうまくいっているんだと思います。
サクラヒメの場合は、気持ちの上で「行かない」がない。自分のレースをすれば勝てる馬です。ばんえいオークスも、先行した馬がいましたが(イオン)、気にせずに自分のレースをした結果。
馬は、一緒にレースに乗って楽しい存在。勝つとうれしいのは重賞でも普段のレースでも同じです。成績を残してこその騎手だと思います。
瞬時の判断力なんですね。自然と馬の特徴を捉えているのでしょう。サクラヒメはばんえいダービーも楽しみです。他に期待の馬はいますか。
ウンカイタイショウは、強いんだけど......。真面目だし、いいところがある馬。ただ、荷物が重くなると少し辛いところがあるので、まだ重賞では難しい。力をつけてからですね。
2歳は、ピュアリーナナセで黒ユリ賞を狙いたいです。ヤマノコーネルは年を取ってからの方がよさそう。
テン乗りでも結果を出している渡来騎手、今年はばんえい記念の出走もあるでしょうか。
ばんえい記念は負けても拍手をもらえるし、特別なのかなと思う。1トンを引くレースは経験したことがないので、どんなものなのかという興味があります。
厩務員時代には大きなけがをされたと聞きましたが、騎手になってからはいかがですか?
大きなけがはないです。ただ、最近体重制限が厳しくなってきました。年のせいか肉が落ちにくくなりました(笑)。昨年結婚して、気持ちの面ではストレスもなく過ごしています。
サクラヒメで勝った菊花賞
家庭ができたことも結果に結びついているのでしょうね。今後の目標などはありますか。
今年が良かったから、このままいい状態を続けていきたい。乗る馬を勝たせられるように。騎手は、一時期よりは賞金も増えている。頑張り次第でいくらでもよくなる世界です。
では、オッズパーク会員の皆さんに一言お願いします。
まだ「来てください」とは言いにくい時期ですが、来られるようになったらぜひ生で見てほしい。やはり迫力が違います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香