コウシュハウンカイ(牡8)やカネサブラック(2011、13年ばんえい記念)、トモエパワー(2007~09年ばんえい記念)などの名馬を管理し、2017年5月には通算1000勝を達成。2016年ばんえいアワードでは勝率1位でベストトレーナーに選出され、今年もリーディングトレーナー争いを続ける松井浩文調教師(53)に話をうかがいました。
左のポスターに写っているカネサブラック、トモエパワー、フクイズミは全て管理馬
父が元調教師の松井浩(こう)さんで、1989年に騎手デビュー。2004年に引退するまで1104勝をあげ、三冠馬で名種牡馬であるウンカイに騎乗していました。残念ながら10月に24歳で息を引き取ったウンカイの思い出を聞かせてください。
ウンカイは、地味だけどじわじわと歩くタイプ。3歳三冠を獲ったけれど、イレネー記念はゴール前で止まったんだよな。4歳のシーズンが終わってから、盲腸便秘で腹を切ったんだ。それであそこまで活躍するとは。おとなしい馬だった。障害は、止まったら意外と下手だったんだ。だからばんえい記念も苦戦した。アンローズ(2004~06岩見沢記念)と同じように、旭川や岩見沢はよかったけど、帯広が苦手だったんだ。
産駒は体ができていて、平均的に力がある。コウシュハウンカイはタイプが違って、どちらかといえばオレノココロの方がウンカイらしさが出ているかも。ばん馬で20歳以上生きるのはすごいよ。
似ている産駒はいますか。
ジェイエース(牡2)がタイプ的に似ているな。速い馬場が苦手で、降りてからは平均歩ける。2分以上かかるようなレースが増えるような、年齢が行けば活躍できるかな。
ほかに騎手時代の思い出の馬を教えてください。
牝馬でダイヤコトブキって馬がいた。騎手になって2年目だった1990年のイレネー記念を獲った馬だが、その後のオフシーズンに心不全で亡くなったんだ。あの馬なら、ばんえい記念を獲れたと思う。
それから調教師に転身しました。
一番の理由は、父が定年(65歳)を迎えたからです。減量もきつくなってきたしね。2005年に調教師になって、2年目で存続の危機が訪れた。厩舎を開業した時の設備投資のすぐあとで、お金がかかったあとに手当も下がって大変だった。他にできることないから、これで頑張るしかない。赤字だらけで大変だったが、存続してよかった。
2017年5月、1000勝セレモニーで父・松井浩さんから花束を渡される
思い出の管理馬を教えてください。まずはトモエパワーでしょうか。
4歳までは騎手として乗っていました。速い脚はなかったが、2歳から強かった。この馬はオープン行くと思っていたよ。最初のばんえい記念は、障害で止まって膝を折ったのに、それでも勝ったからね。ばんえい記念向き、という思いはあったが力が違った。
トモエパワーのほかにも、乗っていた馬が厩舎に入ってきた。そのうちの1頭、フクイズミ(2009、10帯広記念)は偉い牝馬だった。降りてからの末脚がすごかったね。厩舎に来た時は4歳で体もできていたが、障害で上がらないと、そのまま止まってしまうところがあった。どうやったらいいのか、いろいろと試した思い出がある。
カネサブラックは、力はないが瞬発力がすごかった。根性もあった。重い荷物を引かせて調教するとだめだから、大変だったよ。この時も考えた。
所属していた全部の馬が、いろいろなことを教えてくれた。調教すればいい馬もいれば、だめな馬もいて、一頭一頭違う。それがわかるまでが大変だよね。
連対率は3割を越えるなど今年も好成績を残しています。調教や管理において、こだわっていることを教えてください。
俺は馬に触る(自分で調教する)。触ってみなきゃだめ。レースを見たあとに、なんでこんなに障害が下手なのか?と思ったら、自分でやってみる。触るの好きだからね。
厩務員は4人いるよ。厩務員と仲良くなかったらうまくいかない。大切にしなくてはいけないところだ。でも、人集めが大変。ばん馬が盛り上がって賞金も上がって、馬はいるんだけど人がいない。一時期は人がいても、馬がいなかったのに。募集しているのになぁ。
馬が1着を獲った時の気持ちに勝る物はないよ。
調教師として思い出のレースを教えてください。
いろいろあるけど......(考えて)、カネサブラック最後のばんえい記念かな。その前の年は(コロナウイルスに罹って)出られなかったから。定年最後の年(11歳)を勝って、重賞21勝という記録を作って引退だからね。
ばんえい記念を2度制して引退したカネサブラック
カネサブラックの子もカネサダイマオー(牡3、イレネー記念)などで重賞勝ちを出しています。産駒についてはいかがですか。
体は小さいけど、走る子が出できたね。もっと強い馬が出てきてほしい。
現在の所属馬について教えてください。
コウシュハウンカイは、今年は前半活躍しすぎたから、ハンデを背負うことになるのがつらい。体調はいいよ。降りて一回止まったら弱いところあるな。岩見沢記念は、レースの前々日につなぎ場の棒を蹴ったことによる打撲。すぐ治ったから調教も再開できて、北見記念を勝つことができた。調教では、オレノココロやフジダイビクトリー、センゴクエースを見かけると怒るんだ。いつも同じレースに出ているからわかるんだろうね。気性は昔と変わらないね。
コウシュハウンカイの運動
マツカゼウンカイ(牡4)は、じわりじわりと進む馬。体があるし、古馬オープンでも入着しているから、ペースに慣れてくればそこそこいくんじゃない。
ギンノダイマオー(牡2)は、ナナカマド賞は1着馬(メムロボブサップ)が強すぎた。それでも、障害がうまいから楽しみ。インビクタ(牡2)は障害を降りてからが課題だね。カネサダイマオーは、イレネー記念を勝った後は調子悪いんだわ。堪えたかな。
期待しているのは、ハイトップフーガ(牝2)。重くなれば楽しみです。
では、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
馬券買う人は買って、馬が好きな人は馬を見て、いろいろな形でばんえいを応援してください。ファンは一人一人違うからね。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香