『ばんえいアワード2017』のベストトレーナー賞を受賞した、槻舘重人調教師(57)。ばんえい記念を連覇したオレノココロや4歳三冠馬のセンゴクエース、マルミゴウカイなどを管理し、2017年度は重賞25レースのうち11勝を挙げています。通算1111勝(5月18日現在)、重賞は48勝と50勝まで王手をかけています。
ベストトレーナー賞、おめでとうございます。
思った以上に馬が一生懸命走ってくれました。今年もチャンスがあれば、一つでも多く獲りたいですね。
管理馬について教えてください。ばんえい記念馬オレノココロは2年連続のばんえいアワード「ベストホース」に選ばれました。
ありがたいですね。オレノココロは真面目で力持ちな馬です。開幕日の特別戦は脚を痛めて除外になりましたが、症状は軽くその後は順調です。翌週のオッズパーク杯は5着でしたが、どうしても春先はペースが速いから、重い荷物に慣れているこの馬には不利になる。障害で膝を折る不安もあるしね。
センゴクエースは年齢的に、昨年よりも重賞挑戦が増えるでしょう。障害を一気に抜けられるレースが理想。母のサダエリコの厩務員さんが今年から担当しているんだよ。
オレノココロ(2018年3月25日ばんえい記念)
5歳になったマルミゴウカイは、古馬ともいい戦いをしていますね。
まだ荷物が軽いとはいえ、想像以上。気性が勝っているし、センゴクエースよりも障害がいい。馬体もこれから大きくなるだろうし、重いレースに慣れてきたら、引けを取らなくなるんじゃないかな。重賞挑戦はどうかな? 狙うとしたらドリームエイジカップ。6月に5歳オープンの特別戦・瑞鳳賞があるので、そこでいい結果を出したいです。黒ユリ賞馬のミスタカシマも順調です。きれいな馬だよね。そのほかだと、ジェイコマンダーは降りてからの切れ味がいい。まだ勝ちきれないけれど、これからだね。ジェイワンも、力はあるんだろうけど、飼い食いと迫力がもう少しかな。
さて、出身は岩手県二戸市ですね。
競馬場で騎手をしていた兄を追って、中学を出てすぐ競馬場に来ました。
晴披孝治厩舎で20年近く厩務員をして、いろいろといい馬を担当させてもらいました。中でも思い出に残っているのはカヤベヒカリ(オイドンの祖母)。小さくて、930キロくらいだったはず。ゲート開いてすぐにキャンターで走れずスタートはゆっくりなのだけど、第2障害の手前で他馬と並べば、障害を降りて強い。全身バネのようでした。
ヤマトウンリュウという馬は、そろそろばんえい記念に出そうかな、というところで疝痛で命を落としてしまった。今でも残念に思っています。
マルミゴウカイ
そして1999年に開業しました。
騎手になりたかったけれど怪我をしてしまったので、晴披厩舎の解散後2、3年後に引き継ぐかたちで開業しました。
最初に在籍していたのはホワイトキャップ(2001年北斗賞など)。デビューから管理して活躍した馬にはミサイルテンリュウ(2006年帯広記念など)がいます。ミサイルは若い時は病気がちであまりレースも使えなかった。
誰が、というのではなくどの馬にも教わることはあるよね。いつも勉強です。
大事にしているのは健康面。えさの食べ方で、調教の仕方がかわってくる。ミスタカシマは、デビューしてからえさを食べなかったので休ませたんだ。
それが今の活躍につながっているんでしょうね。
毎日、馬場に出る前の午前2時には、馬たちがえさを食べているか確認する。今は10時ころまで調教しています。
常識なんだけど、疲労を残さないようにしている。走る時疲れちゃうようではね。調教がある程度できていないと、馬に無理をかけるレースになる。
微妙な感覚っていうのかな。自分なりの経験を積んできたと思います。
先生から見て、調子のいい馬、というのはどのような馬でしょう。
うーん、調子が良くても、オレノココロみたいにパドックであくびをする馬もいるからなぁ(笑)。マルミゴウカイみたいに抑えきれないほど元気な馬がおとなしいと、どうしたんだろう、と思うけれど...。体重は減るよりは増えている方がいい。とはいえ、今年のばんえい記念のオレノココロはすっきりした方がいいと思って減らし、マイナス21キロだし。難しいね。
自分なら、うるさいくらい元気な馬がいいような気するけどな。調教もやりやすいし、手応えがあるんだ。
センゴクエース
先生は気性の勝っている馬が好きな印象があります。それにしても、ばんえい記念や三冠のかかるレースなどで人気を背負うことが多く、プレッシャーは相当なものと思います。どうやって打ち勝っているのか気になります。
プレッシャー、ないことはないけど...。ばんえい記念の日は他にも出走馬が多くて、緊張する暇がなかった(笑)。でもレースが終わってから1週間は疲れが取れなかったな。気が張っていたんだろうね。
レースをテレビで見るのもいいけど、厩務作業も楽しみながらやっています。長いこと厩務員をしていたけれど、自分が触っている馬が1着を獲ったり、いい方向に向かっていくのがいい。結果がうまくいくと、苦労も忘れて励みになります。
オッズパーク会員の方に一言お願いします。
最近は本州からの馬主さんも増えているし、全国にばんえい競馬が広まっているのを感じます。できれば本場で、馬と一緒に歩いてレースを見てほしい。真近で見る馬の迫力は全然違うから。十勝は温泉もたくさんあるし、食べ物も美味しいからね。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香