佐賀競馬において燻し銀の存在感を放つ長田進仁騎手が、この秋の重賞戦線では、ロータスクラウン賞をキリノトップランで制するなど大活躍しています。地方通算1600勝を目前にした今の心境をうかがいました。
上妻:まずは長田さんが騎手になったきっかけを教えてください。また、福岡県ご出身とのことですが、当時は佐賀競馬のことはご存知でしたか。
長田:小さいときに家の近所にポニーがいて、それに乗っていたんで、こういう職業もあるということで、その道を目指しました。生まれは久留米ですが、小学校高学年のころに親の転勤で福岡市に引っ越したので、佐賀で競馬をやってることは知りませんでした。佐賀に所属することになったのは教養センターからの紹介です。
上妻:ロータスクラウン賞(9月22日)をキリノトップランで優勝されましたが、スタートから振り返っていかがでしたか。
長田:そうですね、スタートはあまりよくなかったんで、とにかく道中折り合いを付けることだけ考えていました。1コーナーでいきなりペースが落ちたんで、無理せずさっと流して上がっていい位置がとれました。(直線でムラサキコマチが来ていたが)馬がまだ少し伸びていたので、ゴールしたときはなんとか残ったかなという感じでした。
キリノトップランでロータスクラウン賞制覇
上妻:九州ジュニアチャンピオン(10月25日)ではケンシスピリットで勝ち馬から半馬身差と惜しい2着でした。
長田:三小田調教師から、前付けできたらという話だったので、スタートはよかったんですが、逃げるつもりまではありませんでした。休養明けだったので、ゲート練習を1週間前に乗って追い切りを掛けたんですけど、馬がまだプラス11キロと重かったですね。デビュー戦も内にササって、内から捲って勝ったんですが、今回も4コーナーでササってしまって、あそこでなんとか外に持ち出し切っていたら勝ってましたね。
上妻:これまで騎乗された馬のなかで、思い出の馬を1頭挙げるとしたらどの馬でしょうか。
長田:マイサクセスが一番ですね。デビューから5戦5勝でダービー(2001年・栄城賞)まで勝ちましたからね。先行馬だったんで、あとは信じて乗るしかなかったんで、プレッシャーはありませんでした。ダービーではその後もなかなかいいところまでいきましたが、30年乗って、まだ2本(ほかに、2011年コスモノーズアート)しか勝ってませんから。マイサクセスは翌年に大怪我してしまって1年近く休養に出ていました。その時に馬主さんが厩舎を移動してしまったんで、その後は乗っていないんですが、怪我がなければもっと大きいところを走っていたでしょうね。
2011年の栄城賞をコスモノーズアートで制覇
上妻:長田さんのダイナミックなフォームから、実況の中島アナウンサーが「踊る長田」と形容されてファンも多いのですが、そのあたりはどうでしょうか。
長田:実況の方がそう言われているのは知っていましたが、それは特に意識してないですね。どれぐらいファンがいるのかはわかりませんが、ありがたいことですね。
上妻:先行して勝つのと、追い込んで勝つのではどちらがお好みでしょうか。
長田:あーー、それはケツから一捲りが一番気分がいいですね。
上妻:やはり押して押してで。
長田:そうですね。
上妻:パドックでの長田さんは黒のゴーグルを付けてらっしゃいますが、それが白とピンクの勝負服とのコントラストで非常にカッコいいと思ってるのですが。
長田:そうですか(笑)。黒を使っているのは特に理由はなく、雨の日は黄色とか透明とか見やすい方を付けているんですけどもね。まぁ若いときからずっとゴーグルは下見所から付けっぱなしですね。
上妻:現在1600勝を目前(11月18日現在1596勝)とされていますが、今後の目標として2000勝とかは意識されてますでしょうか。
長田:ぼちぼち乗っていければいいですね。僕らのデビューしたころは、佐賀では最初の3、4年はほとんど乗せてもらえない時代だったんですよね。それで全然勝ち鞍がないですもんね。まだもうちょっと乗れるみたいんなんで、2000勝目指して頑張ってみようかなと思ってます。
上妻:佐賀競馬では今年からS2重賞を多数創設していて、長田さんはS2を既に3勝していますが、従来からのS1重賞と比べてどうでしょうか。
長田:そうなんですか? やはり前からあった重賞(S1)のほうが「勝った」という実感はありますね。
上妻:最後に、今後の期待馬がいたら教えてください。
長田:うーん、やっぱりこないだのケンシスピリットですかね。まだ3走目であれぐらい走ったんで、今後はもっとよくなると思いますけどね。来年も期待しています。
上妻:来年の栄城賞はこの馬で、ということですね。そこではマツノスピリットら東眞市厩舎の有力馬相手との再戦となりますね。
長田:一泡ふかせたいですね。
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※インタビュー・写真 / 上妻輝行