デビュー2年目となった岩本怜騎手の2019年は、活躍と飛躍の1年になった。6月の早池峰スーパースプリントでは自身の重賞初制覇を飾り、年末のヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンドでは見事総合優勝。NARグランプリ優秀新人騎手賞も受賞した。今回その活躍を振り返っていただいた。
ヤングジョッキーズシリーズ優勝、改めておめでとうございました。
ありがとうございます。
まず大井競馬場でのYJSファイナルラウンド前半を振り返ってください。
初めて乗った大井競馬場のコースは、直線が長くて、3~4コーナーがちょっと急で外に振られる感じがして対応が難しかった気がしました。YJSの2戦目で勝てたのは、馬の力が抜けてましたね。馬の力のおかげで勝てました。
YJSファイナル大井第2戦、チチブリュウセイに騎乗して勝利
その夜は中山競馬場の調整ルームに入ったんでしょう? 他の騎手と何か話し合ったりした?
ヤングジョッキーで来ていた皆と一緒に晩御飯を食べながら"明日の中山、楽しみだね"って話し合ってました。あと、ルメール騎手がおられたんですが、もう筋肉ムキムキで。凄い身体だなって。
そして翌日の中山競馬場での後半戦。その最初のレースで見事に勝って。これも素晴らしかったですね。
調教師からは馬群の中で脚を溜める感じでという指示があったのですが、スタートが良かったので先行する形になりました。2番人気だったのは、それほど人気になるとは思ってなかったからちょっと緊張しました。勝って馬主さん達もすごく喜んでくれたので良かったです。
YJSファイナル中山第1戦、クリノオスマンで勝利
3戦目でポイント1位になったので4戦目はポイント的に逃げ切れたら総合優勝という状況になっていました。最後の一戦はどういう気持ちで挑みましたか?
ハナに行ってこその馬だと考えていたので、できればハナに......と思っていたのですが、思っていたより進まなくて3番手ぐらいになってしまいました。3~4コーナーでもすごく楽に動けて実況でも"手応えが良い"と言われていたのが聞こえて。これなら......と思ったんですが。止まったっていう感じではなかったんですけど。気がついたらいつの間にか皆に交わされていた感じ。ゴールした時には"あっ、これ何着だ?"って周りを見回しちゃいましたね。
それを見ていて自分もちょっと焦った......。しかし見事総合優勝達成でした。
表彰式で表彰台の真ん中に立った時には"若い騎手の頂点に立った!"みたいな感覚がやっぱりありました。一番高い所じゃないですか、表彰台の。だからこう、本当に気持ち良かった。
YJSファイナル中山の表彰台では一番高いところに立った
もうちょっと派手に喜んだりするかなと思ったんだけど、意外に抑え気味だったね。
全国に映像が流れるのかも......と思ってちょっと控えめにしていました。
さて、ヤングジョッキーズシリーズを振り返って、若手同士の戦いは面白かったんじゃないですか。
予選もファイナルラウンドもめちゃくちゃ面白かったですね。お互いに切磋琢磨できますし、負けても勉強になる。自分の同期はどんなふうに乗っていたかとかいろんな研究ができて、いろいろな競馬場にも行ける。やっぱり同世代じゃないですか。負けていられないなって改めて感じました。
そしてそんな活躍が認められて"NARグランプリ優秀新人騎手賞"を受賞しました。岩手からは鈴木祐騎手に続いて2人目の快挙です。その表彰式に出席して、いかがでしたか。
こういう名誉ある賞をいただいて嬉しいです。何より一生に一度の新人賞ですから。表彰式ではもの凄い数のマスコミの人たちに囲まれて緊張しました。ヤングジョッキーの大井や中山で乗っている時の方が気が楽でした(笑)。でも、どんな形でもいいのでまたこういう表彰式に出たいとも思いました。
岩手競馬での昨シーズンを振り返りましょう。デビュー2年目でジャンプアップしましたね(18年度:48勝→19年度:89勝)。
たくさん乗せていただけたおかげですね。こんなに勝てるとは思ってなかったです。重賞も勝つことができましたし、自分的には良かったシーズンだったなと。
1年目よりはよく考えて乗るようになったんじゃないでしょうか。デビューした年は乗り方がちょっと荒かったり、落ち着いて騎乗できなかったんですけど、2年目の昨シーズンは周りの馬の動きとかペースとか、自分なりにいろいろ考えながら乗るようにしていた。それが良かったのかな。
早池峰スーパースプリントをサインズストームで制し重賞初勝利
最後に、怪我で乗れずに終わったのが残念(1月5日のレース中に骨折し、出場が決まっていた高知・全日本新人王争覇戦と佐賀競馬での期間限定騎乗を辞退)。
佐賀で期間限定騎乗して自分をレベルアップさせたいと思っていたんですけど、怪我でできなくなったのは残念でした。
その怪我の具合はどうですか? 新シーズンには間に合いそう?
3月の開催からレースで騎乗するつもりです。ただやっぱり怪我から復帰して体がレースに慣れるのを待たないといけないでしょうし、特に目標とかは立てずに、徐々に調子を上げていればいいなとも思っています。
では、最後にオッズパークで馬券を買ってくださっているファンの皆さんに一言。
新シーズンは怪我からの復帰で一からやり直しになりますが、改めてスタートして、昨シーズンよりも良い結果が残せるよう頑張りますので応援よろしくお願いします。
YJSファイナル中山ではJRA初騎乗で勝利
シーズン最後の週になって運悪く怪我をし、その後の予定が変わってしまった岩本騎手だったが、ここで話してくれたように3月20日からの岩手の新シーズン開始からレースに復帰するつもりとのこと。昨年以上の活躍を見せてくれることを楽しみにしたい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視