
陶文峰調教師は騎手として昨年まで25年間で地方通算913勝の成績を残し、調教師に転身した。最後の重賞騎乗となった北上川大賞典で勝利するなど引退直前まで活躍し、強烈な印象を残した。そして調教師としても初出走翌日に初勝利を挙げ、順調なスタートを切っている。
いつ頃から調教師を目指そうと思いましたか?というあたりからお話を始めることにしましょう。
騎手としては2000年のデビューだったので、20年続けた2020年からちょっと考え始めていました。その前からも考えてはいたんですけど、20年という節目にきて、そろそろいいかなと思って。それから調教師試験に向けた勉強を始めましたね。
ということは、ちょうど40歳になったあたりで考えたということですね。それ以前からも将来は調教師にと考えていたんですか?
いや、騎手の時は毎年毎年怪我なく乗り越えられればいいかなと思っていて、特に目標はなかったんですけど、だんだん年齢を重ねてきて、そろそろ違う事をと色々考え始めた時に、その20年目というのがひとつの節目になたのかなと。
今は無事調教師になったわけですけど、調教師免許を交付されて厩舎開業までの苦労というか、忙しさというか、どんな感じでしたか?
自分は乗る方がメインでしたから、馬房周りの作業、飼料だとか、馬主さんとの契約関係だとか分からない部分が多すぎて。幸いなことに木村暁先輩がいたし、調教師試験に向けて一緒に勉強した同期もいたし、そういう人たちに教えてもらって進めていました。
盛岡で開業して、新しい厩舎でゼロからのスタートでしたしね。
自分は馬に乗る方はできると思うのですけど、それ以外の部分が、どこからそこに持っていくかが分からなくて。大変というわけではないですけどやらないと分からない、覚えられないところがあると思うから、周りの人にいろいろ聞きながらやっています。そうやって教えてくれる先生も一杯いるから、自分は恵まれていると思いますよ。
陶調教師は騎手時代に盛岡所属だったこともあるから、盛岡で調教するのが初めてではないけれど、厩舎開業となったら水沢と勝手が違うところもあったのではと思いますが、その辺は大丈夫でしたか。
そこは大丈夫でした。調教の流れとかもある程度わかっていたから大丈夫だったんですけど、スタッフを見つけるのがちょっと大変でしたね。水沢から一緒に来てくれる人がなかなかいなくて。今回2人が一緒に働いてくれている事をすごく感謝しています。
新規開業にあわせて、厩務員さんも2人、新人さんでスタートしましたね。
一人は以前競馬場でゲート係をやっていて、厩務員になりたいと言っているという話を聞いたものですから、スカウトしました。すぐに厩舎のリーダーみたいな、お姉さん的な感じでやってもらっているんで助かっています。もう一人は自分を凄く応援してくれる方の親戚で、北海道の育成牧場の経験もあって。馬の仕事をしたいというので、自分も調教師になるからその時は......みたいな話をしたことがあったんですが、自分が合格して改めて聞いてみたら"やりたい"と。それで来てもらいました。
その新人の勤務員さん2人の働きぶりはどうですか?
よく頑張ってくれていると思いますよ。SNSもこまめにやってくれて盛り上げてくれていて、凄く助かっているし、ありがたい。競馬以外の所も頑張ってくれているんでね、良いスタッフに恵まれたと思います。
厩舎初勝利を挙げたスピードスターを出迎える陶調教師
そして初出走から2戦目で見事初勝利を挙げました。
オーナーさんからは1月にお話をいただいていて、厩舎を開いて1週間ほどした頃に入厩したんですけど、これはちょっと面白い馬だなと感じました。雪が積もったりして調整しづらい事もあったんですが、馬に能力がありますからね。上手く応えてくれて、全てが噛み合ったような勝利でした。ちょうどオーナーさんが来ていた時で、厩務員さんも、担当者だけでなくもう一人の方もお手伝いという事で来てもらっていたから、全員揃っていたところで勝てたのもタイミングが良かったです。
厩舎初勝利の口取り(2025年3月10日水沢1レース)
前に聞いた時に、馬をちゃんと作って無事に出してあげたいと言っていた陶調教師でしたが、最初のレースは勝てなくてもいい競馬だったし、2戦目で勝って、うまくいってると言ってもいいのかなと。
そうですね、最初勝てなかったのはいい薬になったし、思っていたより早く勝てたのは嬉しかったですね。次に繋がるレースをどういうふうにやろうかというところで、皆がちょっともがいているような段階なんですけど、みんな前向きにやっている。勝てないとがっかりする......というのも少しあると思うんですけど、そこは自分の感じた手応えとかを説明しつつね。本当に今みんなで勉強中という感じでやってます。
最初の1カ月を終えて、まずは順調なスタートだったと言っていいですか。
そうだと思います。勝てたのは嬉しいですけれど毎回毎回勝てるかというと、なかなか難しい事ですからね。"馬を無事に送り出して、無事に帰ってきてくれる"という僕が思っていることは厩務員の二人も分かってもらっているし、厩舎としてもこれからやるべき事、これからどういうふうに改善していくかというところを見つけて、話し合いをしながら進めていきたい。自分も納得の結果。僕が納得するということでもないんでしょうけど、良かったと思います。
いやあ、もっと喜んでいいスタートだったと思いますが(笑)。
最初良すぎて後でガクっときちゃうのも嫌ですしね。ここからどうやって走ってもらうか、どうやったら勝ってもらえるか、ということを試行錯誤しながらやるのはいい勉強だとも思うし。どんどん勝てればそれもいいですけど、どうやればいいのかという正解はいろいろあると思うんですけど、その過程も大事じゃないかと。
では、ちょっと格好良く言ったら"勝った事で満足しないで、そこからまた勉強していけばいい"みたいな?
そうですね。そうやって悩むくらいの程度がちょうどいいかなと思いますね。
自身が騎手として騎乗していたローガンマウンテンと
では、最後にオッズパークで馬券を購入してくださっているファンの皆さんにひと言と、この先の目標などを改めて聞かせていただければ。
人馬とも無事で、というところを目指してるので、まずそこから。そのうえでオーナーさんなり、ファンの方々にも喜んでもらえるようなレースをして、ちゃんと結果を出せるように送り出していきたいと思います。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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