9月3日から岩手競馬で期間限定騎乗している高野誠毅騎手。これまで笠松・佐賀・福山・北海道・高知で期間限定騎乗してきた高野騎手だが、岩手での騎乗は今回が初めてとなる。盛岡・水沢の両競馬場で騎乗しての感想などをうかがってみた(成績等は11月21日現在)。
これまでも全国各地の競馬場で期間限定騎乗をされている高野騎手ですが、今回初めて岩手を選ばれた理由からお聞きしたいと思います。
いろいろあるんですけれど、まず行った事がない競馬場だからというのがひとつ。あちこち回っている理由というのが『もっと競馬に乗りたい』からで、それはもちろんそんなに簡単に乗せてもらえるわけではないのは分かっていますけれども、それらを考えた時に今度は岩手に、と決めました。
高野さんは乗ってない競馬場の方が少ないですよね。
行っていないところというと金沢と兵庫ですね。
福山でも乗った事があるというのは今になるとレアな経験ですよね。
確かにそうかもしれませんね。
岩手での初騎乗(9月3日水沢3R)は7着だった
さて、岩手で騎乗してみて『盛岡と水沢の違い』を感じるところはありましたか?
水沢はまだ実質6日しか乗ってないですけど、自分は小回りは結構好きなんですよ。ただ盛岡に慣れたのか『盛岡の方がなんか良いな』って最近は感じます。
騎乗依頼をもらえる厩舎も増えてきましたよね。
最初の頃は調教も自厩舎(佐藤浩一厩舎)メインでなかなか他の厩舎に乗れる事がなかったんですけども、時間の合間とか遅い時間とかに乗せてもらえる厩舎を探して。あとは装鞍を手伝いますって声をかけて、そこから話を拡げて......とかしてきて。それで乗せてもらえる機会も増えたように思います。
岩手初勝利(9月18日盛岡9R)
そう。装鞍所によくいますよね。ふと見ると高野さんが装鞍を手伝ってる。
乗り馬を増やすには......と考えたときに、やっぱりできる事をやらなきゃって。盛岡の馬に乗りたいとか考えると、そうやって存在感を出さないと......と思ってちょろちょろしていますね。最近は乗せてもらう数が増えたおかげでなかなかいけなくなりましたけども、顔を売るのは大事だなって。
岩手で順調に勝ち星を増やしている印象ですが、現在はその通り"順調"という見方で良いでしょうか?
そうですね、まず順調でしょう。勝てそうな馬にも乗せていただいていますし、順調だと言って良いと思いますね。
11月13日盛岡のノベンバーカップをギャレットで勝利
この勢いの流れを水沢でも続けたいですね。
最初に水沢で乗ったときは自分の中の『乗る感覚』がちょっと無かったんですよね。高知から大井に戻ってしばらく乗れない時期があって、そこからの水沢でしたからそういう感覚が戻ってなかった。勝てる馬にも乗せていただいたのに結果を出せなかった。今はたくさん乗せていただいていて、騎乗の感覚があるので、それを大事にして水沢に臨みたいですね。
時に、水沢はこれからどんどん寒くなっていくんですけども、寒さ対策は何か考えていますか?
寒いのは苦手なんですよね。寒いとやっぱり身体が動かなくなって感覚が鈍りますから。そこはしっかり対策して、騎乗して寒くないようにとか合間合間にストレッチしたりとか、身体を冷やさないようにといろいろ対策を考えています。
昨年は後半に門別で騎乗されていましたが、向こうも寒かったんじゃないですか?
それが去年はそれほど寒くなかったんですよ。例年だともっと寒いと言われていたんですけども意外にそうでもなかったです。今年行った笠松は寒かったですね。今年の冬は暖かいって言われていますけども、気をつけて頑張りたいです。
岩手で騎乗するのは12月までですが、ここから残りの期間、岩手でやっておきたい事とか目標などはありますか?
水沢に来た時のセレモニーでも話したのですが、何勝するとかという目標は無くて、常に思っているのが、自分のできる事、やれる事をやるっていうのが目標です。それを軸にしてやっていれば結果は自ずと付いてくるでしょうし、それで結果が悪くても納得できると思うんです。さっきも言ったように乗り鞍が少ない時は増やすように努力するというのがいろいろ繋がって、今はけっこう乗り鞍をいただけているのかなと思うんですよね。
最近の流れで行ければ良いですよね。毎週一つ二つ勝ち星を挙げられている今の流れで。
勝つ事はどの競馬場でも簡単な事じゃないと思うんですよ。勝つために努力したりいろいろ考えたりして欲を言えば、欲を言えばですよ、毎週勝てれば良いですけども、まあそれは結果論なので。勝つために頑張ります。
過去の勝ち星数を見ていたらですね、年間の最高勝ち星数が2012年の14勝なんですけども、今年は既に超えているんですよ(11月21日現在、21勝)。
そうなんですか?あはは、凄いって言っていいのかな(笑)。ただ最近思うようになったんですけども、2000勝、3000勝している騎手と自分とを比較しても仕方がない。自分は自分のキャリアハイじゃないですけども、自分の成長は大事だなと。今、最高勝ち星数だと言われましたけども、過去の自分を超えられるようにがんばろうと。だからこうして機会をいただいて乗せてもらえるって事は本当にありがたいですね。
そうなんですね。こうやって全国で乗っていく事で高野さんの目標が達成できるなら、それで良いんだと自分は思いますね。
僕も全然それでいいと思います。
ところで、これまであちこちの競馬場を回ってみて、ここは、と記憶に残っている所はありますか?
そうですね、行った競馬場ではみんな良くしてもらえるので、"どこが"という事はないですね。どこも良い方が多くて、競馬場もアットホームで。どの競馬場も過ごしやすかったですよ。
そしてこの先、岩手の後はどうするかとか決めておられますか?
考えているのはやはりまだ行ったことがない競馬場で乗ってみたい。金沢と兵庫、金沢は冬はやっていないから兵庫で乗りたいなと。まだ連絡はしていないんですけどね。
姫路は冬しかやってないですものね。あそこで乗れるのもレアですよね。
冬に行ければチャンスですからね。
春まで兵庫で乗って、それから開幕した金沢に行ければちょうど良いですよね。
そううまく進むかどうかは分かりませんが(笑)、そうなればコンプリートできますからね。
やっぱり福山で乗った経験があるのは大きいですね!今からではもう乗れない。
まあそういうところは内田利雄さんという偉大な先輩がおられますから(笑)。
高野さんも、内田騎手のようにあちこちを渡り歩きながら、いつまでも。
目標にしてがんばりますよ(笑)。
では最後に、オッズパーク会員の皆様へひと言を。
今は皆さんネットで馬券を買えるようになって、自宅とかで気軽に競馬を楽しむ方も増えたと思います。そういうファンの皆さんの期待に応えられるようにがんばりますし、競馬場にも来ていただいて、そして一緒に岩手競馬を盛り上げましょう。
インタビュー後に始まった水沢競馬では、その最初のレースを見事勝利して「小回リが好き」という言葉を見事に結果で証明してみせた。この稿が掲載される頃には騎乗期間も残りわずかになっているだろうが、最後のレースまで高野騎手の騎乗を応援し続けたい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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2002年に益田競馬場が廃止になり、若きリーディングジョッキー御神本訓史騎手が大井競馬場に移籍しました。
あれから8年。大きな落馬事故、地方馬による初のJBC制覇、そして度重なる騎乗停止...輝かしい栄光と、大きな挫折を繰り返す激動のジョッキー人生を歩んでいます。
今年2月から始まった3ヶ月の高知遠征。最後の騎乗日に、現在の心境をお聞きしました。
赤見:高知遠征最終日ということで、この3ヶ月を振り返ってみてどうでしたか?
御神本:騎乗停止になってレースに乗れなくなって、色んなことをリセットしたかった。そういう意味で、この場所が一番いいなと思ったので、自分から申請をしたんです。
3ヶ月という短い期間でしたが、いい意味でリセット出来たと思ってます。
いろいろあってこっちに来て、ゼロからのスタートだったけど、ものすごく温かい人たちに恵まれて、この遠征を終えることが出来ました。
赤見:高知では南関東や他地区からの修行的な遠征を多く受け入れていますもんね。ここで修行して大成したジョッキーもたくさんいますが、実際どんな生活をしていたんですか?
御神本:朝は2時半から10時くらいまで調教をして、午後は厩務員さんたちの作業を手伝っていました。
南関東だと毎日競馬があるので、午後の作業を手伝うことはなかったけど、こっちは人手も少ないので、1日動いてる感じですね。
赤見:かなり濃厚な厩舎生活を送ってたんですね。
半年ぶりの騎乗初日にいきなり4勝と大活躍でしたが、実際レースに復帰することに不安はありましたか?
御神本:そうですね。身体はトレーニングをしていたので全く不安はなかったけど、レース勘を取り戻せるのかな、とは思っていました。
でも初日からいい馬にたくさん乗せていただいて、結果を出すことが出来ました。本当にありがたいです。
赤見:見ている方も、いきなり4勝は衝撃的だったし、さすが御神本騎手と思いましたよ。
高知のレースは南関東とはまた違った面白さがあると思いますが、その辺りはどうでしたか?
御神本:高知のジョッキーたちは1人1人個性も強いし、今までずっと一緒に乗って来たわけじゃないので、色んなことを勉強したし、刺激も受けました。
赤見:そして...4月7日には、久しぶりに大井で騎乗しましたね![ポートジェネラルで東京スプリントに騎乗]逃げてあわやの4着!!スタンドはかなり盛り上がりましたけど、あの時の心境は?
御神本:今までも一緒のレースに乗ったことがあって、かなりスピードのある馬だな、とは思ってたけど...まさかあそこまで頑張ってくれるとは思わなかったです。直線向いた時は、ちょっとやったかなと思いましたよ。
正直、最初に話を聞いた時には行きたくない気持ちもあったんです。
でも実際大井に行ってみて、パドックとかで声援をもらって...すごく温かかったですね。待っててくれる人がいる...今は本当に行ってよかったと思ってます。
赤見:ヤジはなかったんですか?
御神本:そう、なかったんですよ1つも!たくさんの方が声援を送ってくれた。本当に温かくて...ありがたかったです。あの時の経験があるから、また南関東で頑張ろうって思えますね。
赤見:高知での所属の雑賀正光調教師も、あのレースの直後に「これで南関東に帰れるな...」と仰っていました。 これまでを振り返ると、他の誰も経験したことのない、すごいジョッキー人生を送ってますよね。
御神本:本当にそうですね。色んなことがあったけど...。デビュー2年目でリーディングを獲ったし、益田が廃止になってすごく辛かったけど、大井に受け入れてもらえました。努力もして来たけど、上手く行く事の方が多かったんですよ。そういう意味では、大井に移籍して半年後に起こった落馬事故が、初めての大きな挫折という感じでした。
赤見:あの時はくも膜下出血で意識不明だったんですよね?
御神本:そうなんです。怪我して半年で1度復帰したんだけど、その後また休んだり復帰したりを繰り返していて...。なんてゆうか...それまで順調に来てただけに、躓いた時の対処の仕方がわからなかった。鬱みたいに落ち込んで、調教以外はずっと部屋に引きこもってました。人と話をするのも、接するのも嫌でしたね。
赤見:そこから、どうやって立ち直ったんですか?
御神本:所属の三坂盛雄調教師が、親代わりとしてとにかく親身になって支えてくれたんです。しばらく休んでいた時に、三坂先生のアドバイスで、高橋三郎先生のところで勉強させてもらった時期があって。騎手としても調教師としてもすごい結果を残している偉大な方ですから、近くでいろいろ教えてもらいました。その頃に、復帰の糸口を掴んだんです。
一時は引退も考えたけど...もうダメなんじゃないかって...。本当に、周りの人たちに感謝しています。
赤見:三坂盛雄調教師、高橋三郎調教師、そして高知での所属だった雑賀正光調教師と、たくさんの関係者に支えられているんですね。 今日(5月10日)で高知での騎乗は終わりますが、今後についてはどんな気持ちですか?
御神本:来週福山で騎乗して、その後は南関東に帰る予定です。 帰るキッカケをくれた高知の関係者には、本当に感謝しています。
厩舎関係者みなさん温かく迎えてくれて...益田に戻って来たような感覚もありました。高知と交流が深い福山にも益田から移籍したジョッキーがいるし、そういう人たちと久しぶりに話せたのも大きかったですね。
たくさんの人たちに感謝して...今は、早く戻って1つずつ恩を返していきたいです!
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※インタビュー/赤見千尋