2014年度101勝を挙げ、ついにホッカイドウ競馬リーディングに輝いた岩橋勇二騎手(32)。2001年のデビュー以来徐々に勝ち星を増やし、昨年11月に通算500勝を達成しました。
ついにリーディングジョッキーとなりました。自分自身で変わったと思うところはありますか?
変わったところ? ないですよ(笑)。チャンスがあるところで、乗せていただいているからですね。まだまだ、チャンスを生かせてないと思うことの方が多いですが......。気をつけているのは、馬の性格に合わせて乗ってあげたい、ということ。馬が入れ込んでいれば落ち着かせて、のんびりしていたら気合を入れたり。
所属している田中淳司厩舎の雰囲気はいかがですか。
勝つために、先生やスタッフが、みんなで力を合わせることができているのが、素晴らしいと思います。
騎手になろうと思ったきっかけを教えてください。佐賀県鳥栖市出身ですね。
兄と競馬を見ていたんです。それが、1997年の秋の天皇賞。エアグルーヴとバブルガムフェロー(の一騎打ち)ですね。ただ、ぼーっと見ていたのに、この時の勝った武豊さん(エアグルーヴ)を見て、すごいな、と思いました。中2の僕を、一瞬で騎手になりたい、と思わせるんですから。存在が違いますよね。
2001年に佐賀で騎手になったのですが、すぐに、もう騎手としては無理だと思ったんです。でも、馬主の清島紀子さんに「北海道でやってみないか」と声をかけていただいて。
そうだったのですね。遠い北海道に来るということに不安はなかったですか。
やってみようかな、という気持ちのほうが強かったです。きちんと挨拶する前に、清島さんは亡くなってしまったのですが......。
2003年に道営に来た時は、成田春男厩舎所属でした(勇退により2011年からは田中淳司厩舎)。
厳しさの中に優しさのある先生でした。大事にしてもらっているな、と感じましたね。
ドリームチャッターで重賞(2005年華月賞)を勝たせてもらったし。この馬の存在は大きかったです。前走のフロイラインカップで出遅れてしまい、クビ差で負けたんです。悔しい思いをしたあとだったから、嬉しかった。
思い出の馬は、ドリームチャッターのほかにはコパノハート(2014年フルールカップ)。田中淳司厩舎で門別の重賞を初めて勝ったので、嬉しかったです(門別以外では、2013年にビューチフル・ドリーマーカップをシャイニングサヤカで勝利)。
勝負服が途中(2008年)で変わりましたね。
柳澤好美先生の騎手時代の勝負服でしたが、次の年から門別競馬場でナイターがはじまるということで、ナイターのイメージ(黒)にしました。大金星を獲れるように、ということで、大きな星です。
2012年にはフランスにも行かれました。勉強熱心ですね。
世界って、どんなものなのかを目の前で確かめたかったんです。肌で感じることで、自分との距離を感じ取りたかったというか。中央の騎手は騎乗を目の前で見られることも多いですが、デットーリさんや、ペリエさん、ルメールさん......地方だと見られないじゃないですか。行きたい、と言ったら田中先生も「いいぞ」と言ってくれました。大変なことばかりでしたが、騎手人生の中で良い経験になったと思います。乗り方が、人それぞれ違うことが印象的でした。
昨年のSJTワイルドカードでは、久しぶりの佐賀競馬での騎乗でしたね。
懐かしかったです。佐賀時代は少ししか乗らなかったけれど、体が覚えているんです。検量所の匂いとか。実家から競馬場行きましたよ(笑)。
今年はホッカイドウ競馬所属騎手から1人、『ワールドオールスタージョッキーズ』(8月29、30日・札幌)に出られます。一番近いところにいるんじゃないですか。
どうでしょうね、出られれば嬉しいですね。フランスに行くときに思ったように、世界のトップジョッキーの方々と乗れたらいいな、と。
騎手になるきっかけとなった、武豊騎手とは話しましたか?
ないんですよ~。門別に来られたこともありますが、このように(影に隠れる仕草をしながら)遠くから見ています(笑)。武さんは今でも憧れです。
道営で、目標にしている騎手はいますか。
宮崎光行さん、五十嵐冬樹さんですね。宮崎さんの勝負強さはすごいです。勝たなきゃ、という時に勝つ。あのようになりたいです。
逆にライバルはいますか?
ライバル? うーん、気持ちが弱い方なので、そういうところを出す自分がライバルです。負けないように。相手より自分。どうしても不安が強くなるので、大丈夫だ、と思うようにしています。弱気で負けると後悔するから。馬にも申し訳ないし。弱気に考えることで、人生を損してしまうと思うんです。
今年から門別には1500、1600の内回りコースがスタートしました。騎乗してみていかがですか。
難しいですね。特に仕掛けどころが。忙しすぎないけど忙しいというか......わかりますかね。旭川とも違う。コーナーがゆったりしている。名古屋で乗りましたが、名古屋はコーナーすぎるとふくれるんです。でも門別は丸いイメージで、きっちり回れる。
ファンに一言お願いします。
門別には内回りもできたし、ここでデビューする馬が多い。全体的にフレッシュで、生き生きとした元気のいい競馬場だと思うんです。それが面白いし、馬券も楽しめると思います。
自分の目標としては、一鞍一鞍大事に乗りたいです。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 小久保友香